9、真相
お爺様のお説教を長々と受け、口から魂が抜け出してしまったのではと思うほど放心してしまいました。
ちなみに、護衛のカイトやメイドのハンナはとばっちりを回避するべく完全に空気と化していました。
裏切り者めぇ〜•••
そして、お説教が終わり
「まぁ、今日はこのくらいにして。
国王様のご容態の事ですが•••
結論を言うなら、呪いでも重篤な病気でもないとの事です。」
「「ふへっ?」」
お母様と同時に間抜けな声が出てしまいました。
片眉がピクッと上がったお爺様にお母様と二人己の口を扇で隠し、誤魔化しました。
内心ビクビクとしながら•••。
「コホンッ それでは何なのですか?」
お母様が咳で切り替え、お爺様に問いただした結果
"始祖呪い"ではなく"歯槽膿漏"と言うものらしいです。
何でも歯茎に炎症が起き、いずれは歯が抜けてしまうかもしれないものだそうです。
説明を聞いても分からなかったのですが、今のうちに治療すれば大丈夫との言葉を聞き
安堵と共に言葉が漏れ出ました。
「はぁぁー••本当に良かったです•••。」
「フハハ、姫様の花嫁姿を見るまでは国王とて病にも呪いにも負ける訳ありませんぞ。
まして、まだ終戦に持っていけていない国もあるのにそれを残して息子に肩代わりなぞ
•••この私がさせません。」
ギルベルトお爺様の黒々とした言葉に二つの意味で胸がドキンとしましたが、曖昧に微笑んで誤魔化し
「お父様は今治療中なのですね。お爺様それでは私これで失礼させて頂きます。」
執務室を辞して、退避すべく自室へと戻りました。
その途中廊下の壁に飾られている歴代国王様方を描いた肖像画が目に入り、足を止めました。
この列に時期お父様の肖像画も飾られる事になるのでしょう。
そして、次代の国王としてアイザックのもいずれかは。
肖像画を見ながら再びゆっくり歩を進めて行くと、ある歴代国王の肖像画に目を止めました。
その肖像画を見ながら先程お爺様が言われた二つの言葉を考えていました。
今頃ユウタ医師の言葉だけの優しさに絶望を感じながら、治療を受けているであろうお父様に若干の不憫さと、同じ思いをしているだろう事に胸をときめかせながら。
和平協定を結んでいない国は確かにあります。
お互い個人としては仲が良くても、国と言うものは厄介で互いに国の重臣もが納得できる国益がないと怨恨が残っているであろう民の為に手を結べない•••。
国同士で戦争をしていたのは百年以上も前の話。
それもこれも、前国王のお爺様(高祖父)方が政権の掌握と言う名の覇王になりたかったがために。
その戦争の余波を残した高祖父に恨み辛み思いながら、溜め息を吐いてしまいました。
そしてもう一つ、"花嫁姿"と言う言葉。
その言葉で想像し、横にいる旦那様の姿は
意地悪な面もあるが安心する優しい表情をしたカイトで•••
やはり私は••••
認めてはいけないけれど、自覚と妄想くらいは許してもらいたいです。
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次回投稿予定は4/12日です。