↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『伝説の英雄たちは田舎で静かに暮らしたい ~25年前に魔王を倒した俺たち、村の子供を普通に鍛えたつもりが全員規格外になっていた~』  作者: オレンジペコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/55

第43話 ヴェルガの防衛線

 城門の内側へ踏み込んだ瞬間、ヴェルガの狙いが分かった。


 正面には30を超える魔族。その後方には魔術師が並び、左右の崩れた建物にも兵が潜んでいる。さらに地面には複数の術式が埋め込まれていた。


「狭い場所に押し込んで、一気に潰す気だ」


 ダリオが言う。


「正解だ」


 ヴェルガが剣を抜いた。


「ゼルガほどの力は俺にはない。ならば、持っている兵と場所を使うだけだ」


 その言葉と同時に城門が閉じる。前後を塞がれた。


「上!」


 ノアが叫ぶ。


 城壁から岩塊が落ちてくる。


 アルドが障壁を張ろうとしたが、ルークが先に動いた。


「先生、待って!」


 拳が落下してきた岩へ触れる。


 衝撃が内側へ走った。


 岩塊は空中で砕け、細かな破片となって降り注ぐ。


「……それ、そう使うのか」


 バルクが感心する。


「使えそうだったから」


「俺はやったことないぞ」


「え?」


 ルークが一瞬だけ振り返る。


「前見て!」


 エマの声。


 魔族の前衛が突っ込んできた。


 ダリオたち4人が正面を受け、ルークたちは左右へ広がった。


「右の壁、3秒後に崩れる!」


 ノアの声に全員が反応する。


 直後、地面の術式が光った。


 壁が倒れ、こちらを分断しようとする。


「ミナ!」


「分かってる!」


 ミナが杖を地面へ向ける。


 土の術式が壁の下へ走り、崩れかけた石組みを下から押し上げた。


 轟音。


 倒れかけた壁が寸前で止まる。


「エマ、左から2人!」


「見えてる!」


 1人目の剣を受ける。


 2人目が脇から突く。


 エマは避けようとせず、あえて身体を沈めた。肩を押されて崩れた姿勢のまま剣を走らせる。


 低い軌道の一閃。


 2人の足元が同時に崩れた。


「今!」


 ルークが抜ける。


 ヴェルガへ一直線。


「来ると思ったぞ」


 ヴェルガが剣を振るう。


 ルークは受けない。


「右!」


 ノアの声に従い、寸前で身体をずらした。


 剣が空を切る。


 ルークの拳がヴェルガの胸当てへ触れた。


 ヴェルガは即座に後ろへ跳び、衝撃を逃がした。


「ゼルガが受けた技だろう。真正面から受けると思うか」


「じゃあ、受けなくていい」


「何?」


 ヴェルガの着地点へ、短剣が飛んでいた。


 ノアだ。


 ヴェルガが身体を捻って避ける。


 その先へエマが入る。


 剣と剣がぶつかった。


 ヴェルガはエマの体勢を崩す。


 だが、エマはそのまま斬った。


「っ!」


 肩口から血が飛ぶ。


 距離を取ろうとした瞬間、ミナの火球が迫る。


 ヴェルガが火炎を防ぐ障壁を張った。


 その直前、火球の術式が風へ変わる。


 炎を受け止めるために広げた障壁の脇を風刃が抜け、ヴェルガの脇腹を裂いた。


「くっ……!」


 剣で追撃を払う。


 その一瞬。


「そこ!」


 ノアが叫ぶ。


 ルークが踏み込んだ。


 今度は逃げられない。


 拳が腹部へ触れる。


 鎧は砕けない。


 だが、その奥で衝撃が爆ぜた。


「がっ――!」


 ヴェルガの身体が浮き、石床へ叩きつけられた。


 剣が手から離れる。


 それでも立とうとする。


 エマが右から迫る。


 ミナの風刃が左を塞ぐ。


 ノアの短剣が、後ろへ退く位置へ先に飛んでいた。


「……!」


 残されたのは正面だけ。


 そこにルークがいる。


「おおっ!」


 拳が胸当てへ触れた。


 次の瞬間、鎧の内側で重い衝撃が爆ぜた。


 ヴェルガの身体が大きく揺れる。


 膝が落ちた。


「……ゼルガを倒したというのも、誇張ではなかったか」


 黒い鎧に亀裂が走る。


 そこから淡い魔力の粒が漏れ始めた。


「ヴェルガ様!」


 近くにいた魔族が叫ぶ。


 ヴェルガは返事をしない。


 身体の端から、少しずつ崩れ始めている。


 そしてヴェルガが倒れた瞬間、防衛線の統率も切れた。


 次の指示が飛ばない。


 城の奥へ走る者。後ろへ下がる者。その場で立ち尽くす者。それまで1つの軍として動いていた魔族たちが、一気に崩れ始める。


「追うな!」


 ダリオが声を張る。


「向かってくる奴だけ止めろ! 城の奥へ進むぞ!」


 もう組織だった防衛ではなかった。


 ヴェルガという大将を失い、魔王城の入口は崩れた。


「……遅かったな」


 消えかけたヴェルガの声が聞こえた。


 アルドが振り向く。


「何がだ」


「お前たちが、止めようとしていたものだ」


 ヴェルガの視線が、城内の巨大な金属枠へ向く。


 周囲には砕けた魔石が大量に散らばっていた。


 どれも、中の魔力が抜けている。


「魔石……」


 ミナが呟く。


「王は29年前の敗北を忘れていない」


 ヴェルガの身体が腰まで光の粒へ変わる。


「あの日、王に足りなかったのは力だった」


 アルドの表情が変わる。


「だから集めたのか」


「そうだ」


 ヴェルガの口元が僅かに歪む。


「同じ4人が再び現れても、今度こそ力で潰せるようにな」


 ミナが城の奥を見る。


「じゃあ、今まで運ばれてた魔石は……」


「もう王へ渡った」


 それを最後に。


 ヴェルガの身体は、光の粒となって消えた。


 その直後。


 魔王城の奥から、重い魔力が広がってきた。


 29年前とは比べものにならないほどの圧が、城全体を震わせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。