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例えば男女比1:30の世界で、例えばそんな世界だからこそ免罪符で女の子に……とかないんだがっ!【アイスピックでそれを突き刺せよっ!!】  作者: Nomulesse oblige
第三部

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第87話 僕は螺旋の時を止める。

 僕はどこにでもある取り立てて魅力のない、観光もできない地方都市で生まれた。

 そこで、少し重い過去を持った子供だった。


 重いと言っても、創作物の中に埋もれれば、大したことはない物語をこれから聞いて欲しい。



 僕は身寄りのない子供だった。

 父は不倫で出て、母は病死してしまった哀れな子供。残った父は僕を要らない子供だと言う。


 遅かれ早かれそうなっていたのだろう。この家庭には明らかな歪があった。

 幸福と、抱擁ではなく、最悪と、暴力で支配されていた。母は毎日父に叩かれていた。そんな僕はただ、眺めていただけである。随分と昔からそうだった。始めは怯えて、どうにかしようとしていたものだけれど、その気力は無くなってしまった。この時間が早く終われ。早く眠りに就きたいんだと、無垢な子供っぽくそんなことを思っていた。そんなときに、父が、要らないなんて言ったから、この歪な家庭から、僕は脱出するチャンスを貰ったと雀躍したものだ。


 でも、すぐに行くところも無くなって、渋々ながらも母方の家へと転がり込んだ。


 母は優しかった。だから、性格がねじれなかったと言うことだった。いや、ある一定まで、ねじれなかったのだろう。


 しかし、それとは相対して、母方の家は最悪だった。

 金というものをポッと渡して置けば、それでお仕舞だった。帰っても料理は出されない。ただ健康で文化的な最低限度の生活。


 それでも、頼めば、塾代を出してくれたりする。それも、良い学歴になって、将来養ってもらえるかもしれないという打算的なことがあったかもしれない。あの家、金だけはあったから。だから、父はそんな母と結婚したのだろうね。

 それでも、別に満足だった。空虚な思いはあれど、直接的な暴力に訴えられなかったからだ。まあ。それも結局、健康で文化的な最低限度の生活だっただろう。


 そこには愛がなかった。

 だから、仕方がなく。外に愛を求める生活をしていたのだ。

 その生活を円環のように、無為に有難みの欠片もなく続けて行った。

 だが、ある日だった。ある日、それは裁断機で切られてしまったようだった。


 僕の元に大人が来た。大きな大人だった。

 僕の身長の数倍はあって、「わたしたちは、こういう会社のものです」なんて、およそ僕みたいな子供に説明するようなことを言わない。


 僕は母方の家の方に聞いた。召使の人だ。そんな人が知っているかどうかも分からなかったけれど、母方の祖母や祖父に訊くのは憚られた。だから、その人にこの人たちは誰なのって。家の方は「貴方を迎えに来た人たちよ」と、そう言われた。


「この人たちは愛をくれるの?」なんて聞いた。

「多分、多分」


 そう言われた。僕はただただ不安になった。

 だから、拒絶したい。そう逃げ出したけれど、こんな非力な僕だ。何もなかった。すぐに見つかって、すぐに連れ攫われた。


 でも、ちょっと期待はした。

 あの母方の家よりも酷くなるとは思えなかったから。

 だけれど、ここはそうじゃなかった。僕が聞いても答えてくれるところではなかった。僕に何かをして、その反応を聞いてくる。

 ただそれだけのことだった。


「ねえ。いつになったら、僕の欲しいものをくれるの」とあるとき尋ねたら、「それを尋ねないときまで」なんて言われた。

 

 僕はどんどんそれを尋ねるなんていう考えはなくなった。と、いうか思い出させもしなかった。ただ、無為にぼけえっと、日々を過ごしていた。

 そんなある日だった。


『第一区画から逃亡。第一区画から、逃亡』


 そんな警報が聞こえるけれど、僕にはどうでもいいことだった。

 どうでもいいと、会社の人は言っているのだから。

 前方から、焦った女の人が走っている。なんだろう。ただ、茫然と眺めていた。


「ああ。前、見た人じゃないか」とその女の人は声を掛けて来た。

 焦っているのじゃないのか?なんて無粋なことを言うのはやめておこうか。


「き、君は。まだ、求めているのだね」

 

 女の人は良く分からないことを言う。


「求めている?」

「私が求めているものをあげる」とそう言って、彼女は僕を抱きしめた。

 

「よく頑張ったね」とそんな人たらしみたいな言葉を吐いた。

 

 みだりに頭を撫でて来た。それは小動物を愛護するように。

 良く分からなかったけれど、心が温かったようだった。それをずっとされていることに、底知れない安心感を覚えていた。

 だから、そのよく覚えていない。



「ああ。居たぞおおお。捕まえろお」と遠くで警備員が叫んでいる。

 それに僕は不快感を覚えていた。

 

「も、もし、万が一。私の子供を、子供たちを……」と僕に手帳を手渡した。

 なんの手帳なのかは分からない。けれど、これは良くないものだろうことは、馬鹿な僕でも分かったものだ。

 だけれど、何でも聞いてきた僕だったけれど、これだけは離しては駄目なものだと分かった。


 今はその女の人はどうしているだろうか。

 僕みたいに狂ってしまったのだろうか?



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