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【神話生物】事件 後編 3

side ニャルラトホテプ





「そんなのおかしいです!!!!!!!!」


ドンッ!!!! と更衣室が風が吹き荒れる。


【流星の魔法少女】如月 桐火だった。



「私は、須藤与一さんを絶望させたうえで殺すために……蘆屋さんを殺さなくちゃいけないのに……先生、私どうすれば、これじゃあ、神様の言うことを……叶えられない……どうしよう……」


如月の本命は、蘆屋だった。


蘆屋緋恋を使って、目的を達成することが全てだったのに。


トーナメントを利用して、世界を変えるつもりだったのに。


ニャルラトホテプは考える。


それはもう、過去一番、真剣に思考を回転させている。


想定外である。


蘆屋 緋恋は神に愛された才能を持っている。


間違いなく、当代最強の陰陽師である。


ーーなぜ負けた? 毘沙門天の加護を失ったのか?


いや、力は十全に働いていた。


敗北することの方が難しいのだ。


だが何かあるはずなのだ。何かが……。


そして遂に、答えに至る。


「--惚けたのか」


「え?」


如月があっけにとられた。


「く、クク、クハハハハ、あはははは!!! なんと、なんということでしょうネ! こ、恋に、惚けやがった!!! なんっ、馬鹿なのでしょうか!? 須藤与一に夢中になりすぎて、普通に油断して、意識の全てを須藤与一に向けて!!! 足元から掬われた? そんなことあるぅ? えー?」


「え、え? ど、どういう」


「……んー。じゃあ……、んー。いや、いっか? マンネリだったし。じゃあ、あー。でもあれはひどいな。え? そうだなぁ。想定外の事したいネ。よし!」


ニャルラトホテプは元気よく如月の肩を叩いた。


「もうトーナメント使う策破綻したので、明日皆殺ししちゃいましょっか!忙しくなりますネ!」


「え? 皆殺し? でも皆殺しは良くないって……」


「えぇ! でもどうしようもないですし……。あ! もし、如月さんと蘆屋さんが、トーナメントで戦うことができるなら……話は別ですけど」


「無理、ですけど……」


「無理なんですか?」


「……?」


「対戦相手が、蘆屋さんなら、良いのですけどね?」


「--あっ! そっか! 松前鈴鹿さんを殺しちゃえばいいんだ! そうすれば私が出られるかも! ありがとうございます先生! ちょっと行ってきます! 私が松前鈴鹿さんを殺すので、皆殺しなんて駄目ですよー!」


「いってらっしゃ~い。私この二人調教しますのでー」


「はーい!」



そう言ってニャルラトホテプは、地面に転がる二つの物体を見た。


「元気です?」


「ーーころし、て、ころして、ころして、ころして、ころして、ころして、ころして、ころして、ころして」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


死んだ目で、首だけになった女が二人いた。



犬鳴 響


迫野 小登里


首から上と下が分かたれていても、二人はまだ生きている。


例えようがなく、事実としてそうなっていた。


ニャルラトホテプが犬鳴響の頭を鷲掴みにして、口に手を入れて無理やり形をゆがめる。


「ゆっくり霊夢です」


「んぐっ!? んご、おぇ、が、ぐえっ!」


「今日はこの二人と如月桐火について説明するわよ。ここからはネタバレ注意だから、ネタバレが嫌な人はブラウザバックしてね」


「んごぉおっ!? んっ!? んぐぅっ!?!?」


「さて、本来は原作キャラのヒロインとして登場する3人娘だけれど、実は今回3人は本人ではないのよね。え? それって拍子抜けだよねって? その通り。本当ならそんなことしたくはなかったの。でもね、残念なことに私ってば【契約】してしまってね。本人には手が出せなかったの」


「ご、ご、ご」


「だけど今回須藤与一を追い詰める為だけに原作キャラの名を冠した人間を3人用意したのよね。【百万の恵まれたるもの】っていう、偉大なるニャルラトホテプが選んだすごい存在よ。見事ニャルラトホテプが選んだ存在は、原作に忠実な3体のNPCを作ることに成功したの。でも、想定外なことが起きたの」


「ぎゃんっ!!!?」


犬鳴響の頭部が地面にたたきつけられた。だらだらと額から血が流れていく。


次に、ニャルラトホテプは迫野 小登里の頭を掴んだ。


「ゆっくり魔理沙だぜ」


「ぐごぉおっ!!?!?」


「じゃあ霊夢、どういうことが起きたんだ?」


「ぎゃあっ!!!?」


それだけを言わせて迫野 小登里は地面に墜落した。


白目をむいて歯が抜けた犬鳴の顔を再び掴んで頬をつねるように動かした。


「えぇ。たまたまだったのだけれど、3人の女性を生み出したことによって、クトゥルフ神話における【嘆きの聖母たち】に照応してしまったの。もちろん嘆きの聖母たちは存在するけれど、3娘がそれに近づいてしまったと言えるの。そして、犬鳴響、迫野小登里が如月桐火と式神契約を結んでしまったことで、例外が生まれてしまったの」


「あー、ぉぉ、あー」


「そう。完成してしまったの。嘆きの聖母たちの、4人目。魔法少女キリカ。いや、流星の聖母。【マーテル・キリカ】が」


突然飽きたように、犬鳴を捨てる。


「さて。なぜこんなことを言っているかというとですね。もう用意したシナリオに終わりが近づいているんですが、”こんなことに力を使いたくない”んですよ。”魔法少女”なんてサブシナリオ。”ぬらりひょん”だけが本命なんですから。ひたすら須藤与一をいじめるだけのシナリオ。しかももう2人脱落していて、狂気を感じにくくなっている。”貴方”には伝えておきましょう。つまり何が言いたいかというと」


すごく大きな、それはもう、とてもすごく大きな、ため息をついた。


「飽きたんですよネ~~~~~~~~~~。つまらないな~~~~~~~~~~~~。なんか頑張って仕掛けたシナリオとかぁ、色々あったんですけどぉ、えぐみのあるシナリオにすごくなったんですけどぉ~~~~~~~~~~。もう逆転不可能になっちゃってぇ~~~~~~~。もうバッドエンド待ったなしでぇ~~~~~~~~~~。それがもうつまらないなぁ~~~~~~~~~~と」


身振り手振りで”ある人物”に話しかける。


「違うんですよぉ。解釈違いなんですよね。私はですね、人間は嫌いではない。むしろ好きなんです。だから死ぬほど追い詰めるし狂わせるんですけど、それでも命を懸けてシナリオを乗り越えてほしいんですよネ。あの勘解由小路在信みたいな逸材なかなかいないですけどそれでも挑んで乗り越えてほしくてぇ。でももう無理でぇ。無駄でぇ。そうすると想定通りみたいな話になるじゃないですか。もう、耐えられなくてぇ。はー。やってられんのですよネ。--須藤与一には、がっかりかもしれなーー」






がちゃり、と扉が開く。


「? おかえりなさい。どうしました?」


帰ってきた、如月だった。


「先生」


涙目で、彼女が先生に話しかける。


「大人に囲まれてます」


「あらー。嫌ですネー」


「それで、その」


「?」


「■■■■さんが、こちらに来ています」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side 須藤与一









学校の地下。


ぬらりひょんは、既に脱出していた。


父の部下は、死んでいなかった。


牢屋は真っ二つになっただけ。


死者はいない。


今は救助と、捜査が始まっている。


今のところ、問題なし。


「……」


貴賓室では老人が一人発狂して倒れたらしい。


かなりのVIPらしいのだが、重篤らしい。


曰く、ニャルラトホテプの秘密を暴こうとしてそうなったと。


ーー日輪様も憔悴しているらしい。


全てが手遅れな気がしてきた。


もう、どうなるか分かったものではない。


「……どうなっちまうんだよ。これ」


ニャルラトホテプは、混沌、狂気のシナリオを全力でぶつけてくるに違いない。


今のあいつの手札は2枚。


【流星の魔法少女】【剣豪ぬらりひょん】


この2つを使ってヤバいことを起こすに違いない。


「……物語のテンプレなら、例えばトーナメントを台無しにする、とか。あとは、なんだろう。……観客を、みなご、……皆殺しにする、とか」


出来るのか?


出来るはずはない。


会場にいるのは最強の陰陽師格ばかり。


絶対に勝てる。はず、なのに。


どうしたって、胸騒ぎが止まらない。


俺は何かを、間違っているんじゃないか?




「で、どうしますか?」


ふらっと、気配無く小笠原ひとみがやってきた。


ひとみは周囲を見渡して、俺の隣に立った。


「どうするって・・・」


「? 何とか致しましょう。ぬらりひょんも、ニャルラトなんたらも。いつものことです」


「いつもって……。でも、あいつはやばいやつで」


「はい」


「……でも、でもさぁ! 俺、俺もうマジできついんだ! 幼馴染ちゃんが負けてから、なんかこう、気持ちがすごい乱れてんだよ。負けるはずない存在がなんか負けちまって、あぁ、絶対なんかないんだなって思っちまってさ、なんか、すげーしんどいんだよ。無理なんじゃないか……? 俺、そればっか……」


「与一さん……」






「大丈夫ですよ。与一様なら」




ふらりと、後ろに立っている妖怪がいた。


銀子だ。


「銀子さん」


「はい」


「で、でも……俺じゃアイツは勝てな……」


「与一様。……与一様。私が大会前に言った言葉、憶えていらっしゃいますか?」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「トーナメントなんて、私からするとどうでもいいことです。だって、貴方が動けば、助かる人間がいた。餓者髑髏の子も、もう一人の女の子も、貴方に助けられたんでしょう? 貴方は、戦って勝つ人じゃなくて、助ける人、でしょう? やれることをいつも全力でやるのが、須藤与一その人だと、認識しています」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「あっ」


そうだ。銀子さんは言っていた。勝たなくてもいい。


助けるんだと。


じゃあ、助けるってなんだ。


ーー何を?


自分を? 誰かを?


ーー全部。そうだ。俺、全部助けたい。


全部ってなんだ。


俺が、ニャルラトホテプなら、この後どうなる?


……分からない。


俺じゃ何も浮かばない。


誰かニャルラトホテプを倒せるのか?


ひとみも、銀子さんも、あの混沌には及ばないだろう。


じゃあどうする?


誰だ?


誰に助けを求めればいい?


プライドをかなぐり捨てて、「よく分からないけど全部を助ける」選択肢を選び続けるには、どうすればいい?


未来を見ればいいのか?


日輪様? それ以外にも未来を予知できる人間は?


それとも火力か? すごい火力でぬらりひょんを吹き飛ばすとか?


親父? 親父に頼れば上層部につなげられる。


誰だ。


俺だけじゃ無理だ。


俺以外の誰かがいないと、全部は助けられない。


誰に、妖怪、人間?


人間……。


人間…………。


「あ」



あった。


あってしまった。


【この状況を一旦すべてひっくり返した上で、全部救う可能性】が。


でも、どうなんだ?


できるのか?


いや、可能性は、でも、いや、それは、懸念が大きすぎる。


でも、できるのか?


ーーやるかやらないか、どちらか。







「答えが出たようですね」


銀子さんがふっと笑った。


「懐かしいですね。与一様が小さい時も、幼馴染ちゃんを倒すためにいろんなアイデアを浮かべては挑むときのことを思い出しました」


「銀子さん……」


「ーー約束、憶えていませんよね?」


「……」


「あと1年です。ふふ、その時は、私の事を……」


「銀子さん」


俺は、真顔になってこう答えた。


「嫌ですって。俺銀子さん式神にしませんよ」


「……」


「しませんって」


「--、私、諦めませんから」


「いや、ごめんなさい」


きついっす。


流石に。


「そうですか。与一様。あの日の事、まだ覚えていらっしゃるんですね」


「? どういうことですか? 与一さん」


ひとみが質問してきたので、俺は誠意をもって答えることにする。


「あれは、そう。かつて変なおっさんに襲われて暴走モードに入った銀子さんを助けた後の事だった」


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