【神話生物】事件 後編 2
【二回戦第2試合】
●【寺生まれのG】東 呉十郎
vs
〇【現代魔女】シルク・ストロベリ―
試合概要
暗殺術を警戒したシルク・ストロベリーは試合開始直後に箒に乗ってステージ全てを埋め尽くす光量のレーザーを放出。東は気合で2分耐えるも降参。誰よりも圧倒的に敵を倒す姿は、陰陽師に衝撃を与え西洋魔術の有用性を示した。
【二回戦第4試合】
●【夢幻現の如し】伏見 遊星
vs
〇【流星の魔法少女】如月 桐火
試合概要
「人の命を犠牲にする邪法に染めた人間と闘いとうない。ワイらは守るべく陰陽術を学んどんのやから」
そう言って伏見はリタイア。如月の純粋に喜ぶ声だけが、やけに会場に響き渡った。
そして。
【二回戦第3試合】
前代未聞の大逆転。
●【今毘沙門天】 蘆屋 緋恋
vs
〇【トゥス-クル】松前 鈴鹿
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side 蘆屋 緋恋
それは戦闘中の出来事だった。
試合開始7分経過。
白虎が数多の動物精霊と殺し合いをしていた。
【トゥス-クル】松前 鈴鹿は白虎を上手く封じ、1対1の状況に持って行った。
「--すごいね。貴女今までどこにいたのー?」
全く荒れていない息。
堂々とステージ中央にて薙刀を振るう蘆屋。
「--神々おわす山」
息を荒くし、「鉈」を持つ少女。
その「鉈」は刃を隠すように、包帯で巻かれていてただの鉄の塊として使用しているようだった。
シロクマの毛皮をかぶって、民族衣装に身を包む彼女を、【トゥス-クル(巫女)】と呼んだ。
「へー。すごいね。精霊? 初めてだから手こずっちゃったし、知らない呪術に知らない呪具。貴女のような陰陽師は初めて見た」
「わたしは陰陽師なのではない。よくわかんないこと言わないでほしい。……むぅ。どうして都会の人間は自分の知ってる言葉を使って相互理解をこばむ」
「陰陽師の大会で陰陽師よくわかんないって言われてもなー」
「知らない。わたしからしたらその術式は形の違う猟銃と差異は無い。ーーでも学ぶことはできた」
突然。
深。
雪が降った。
ずず、と音を立てて。
ステージ上に、苔が。
植物が。
木が生えた。
「知らない学園の小笠原何某両名が行っていた、氷と、花の御業は、美しかった。この場所は生きづらい。だから、精霊をステージに降ろしてわたしの故郷と似せればいいんだ」
ーー【トゥス-クル】松前 鈴鹿。
北海道の、アイヌ最新のトゥス-クル。
突然の覚醒。
「!? その技、何をしてるのー? 初めて見るんだけれどー」
「むぅ。説明が難しい。でも、そうだ。多分猟銃の役割しかないそのおんみょーじゅつよりも、……生きてる」
トゥス-クルは神と自然と交信することで、超常的な力を発揮すると言われている。
今まで陰陽師との関わりを断っており、研究対象になっていなかった。
やっていることは恐山のイタコに近い。
イタコは死者の魂を憑依させる力を持つ。
なんてことはない。
松前 鈴鹿はステージ上に彼女の住んでいた山の原風景を憑依させただけだ。
それ以上でも以下でもない。
何か特殊な効果があるわけでもないし、何か特別な力があるわけではない。
ーー単純に、松前 鈴鹿がフルスペックにホーム戦で戦えるだけだ。
「うん。nekon ka ku=iki wa ku=nukar poka ku=ki rusuy.そう思ってたらできた。これだ。この空気。おいしい空気。水の音。地面の感触。緑と青と、白と茶色。すっきり」
「?」
「ほ、ほむーしっく。だった。えーと。むぅ。忍坂 義和は難しい言葉を設定しないでほしい。【かいじゅ(解呪)】」
【黄泉比良坂で会いましょう】忍坂 義和。
松前鈴鹿と同じ学園で、面倒見のいい彼は彼女に武器を渡した。
「くっくっく。これは禁術なのだ……。貴様にピッタリだぞぉ?なにせその鉈は復讐鉈。ひとたび封印を解けば、人類への憎悪を発露させ、対象を傷つければ呪い倒すことができるのだからなあ!」
「え、やだ。使いたくない。なんかばっちい」
「ふぅぅん!!!? そ、そんなこと言わなくて良くない? え、僕の手汚れてた? どっち? かっこいい意味? いやでも結構良いんだよそれ。例えば動物の精霊出すでしょ? すると動物が抱いてた人間への復讐心とかを乗せてパワーアップするんだよ? 山と共生してると分かると思うけど、山を荒らす奴=人類への怒りとかでめっちゃ強くなるからね。ほんと。かっこいいよ。うん。使い過ぎると突然環境活動家とかになっちゃうだけで」
「なにそれ。鮭とか獲ってたら「密漁です」って言ってくる大人のこと?」
「文化衝突と共に生きてきたの?」
「復讐鉈【ウェンプリコロ・ピッ】」
自然の安らぎと、圧倒的呪力と、重たい人類への呪い。
それらが嵐のように鉈を纏い、ガリガリと世界を引っ掻いていく。
「さぁ。神を刺激しよう。ここしかないと理解させよう。ユク!」
白虎を食い止めていた、大きな角の鹿が突如方向を変えて鈴鹿に向かう。
鈴鹿は大きな鹿に乗って、蘆屋緋恋に向かった。
「--行けそうだけど」
緋恋は薙刀を構え、呪力を極大放出する。
「あと7手くらい足りないと思うよー」
たった一歩でユクと呼ばれた鹿を切り裂かんと薙刀を振りかざし。
『汝ぃ我が肉を斬りし罪びとよ自ら業を知らぬ溺れし代行者ぁ』
事故が発生した。
「!? 祟り神!?」
一回戦第5試合。【祟神サーの姫】姫川 杏子に憑りついた祟り神が、蘆屋緋恋の影から飛び出しまとわりついた。
『血染めの大蛇、阿頼耶識の勾玉、原初の土を二度混ぜ旭光、外様の国のまりあの諮問、餓えた鼬の晩餐歌ーー』
「ちぃ!?!??!」
即座に祟り神を切り裂いて、振り返る。
全く、トラブルに動じず。
何も考えず。
鉈が、彼女の右腕を斬りつけた。
その傷跡に、祟り神が切り裂かれた五体を投げ飛ばし、触れた。
「きゃっ、あがっ、ぐぅうううううううううう!?!?」
神と、自然の恩讐が彼女の肉体に循環する。
「むぅ。やっぱり。なんとなくいる気がした」
『ーーおぉ、おぉ杏子の友人よ。裂かれた我を助け給へ。杏子にみすぼらしい姿で会えぬのだ。助け給へ』
「ぐ、が、ぁぁあ」
「ーーわたし、使える者は使う。陰に潜んでた獣がいたのを利用して罠にかけた。ずるくはない。あるものは使う。ダメ?」
「はぁ、はぁ、ぐぅ、ぁあああああああああああああああ!」
血と共に、ぶしゃあと呪いが全身から弾き飛ばされる。
「はぁ、はぁ、ま、負け、られないぃ……、負けないぃ……、はぁ、はぁ、ごふっ、わ、私が、負けたらぁ……、はぁ、はぁ、与一くんがぁ、弱く見えちゃう……はぁ、はぁ」
「--強いね。キムンカムイ(熊さん)みたいだ」
『助け給へ』
薙刀を杖のように地面に立つ蘆屋。
それを救わんと動く白虎。
その動きを防ぐ大鹿。
すると、ふわりとステージから自然が消えた。
元のステージに戻ったのだ。
「これ以上は、死んでしまう。人を殺すために私は山を下りたわけではない。わたしは頑張った。そこまで追い詰めるために知恵を振り絞った。使いたくないばっちい武器も使った。手負いの獣も放置した。……ダメか? わたしの頑張り、貴女は認めてくれないのか」
「っ……」
歯ぎしりと、苦渋に苦しみ。
世代最高の天才が、涙をこぼした。
「……わ、っ……ぐぅ、ぅぅぅ……わたし、のぉ……、ひっく、ぐぅ、ぅぅぅぅぅぅ、ぁあぁあああ、ぁ、ぁぁっ……。………負け、です……。ぅ、ぅぅ、ぅうううううううううう、うわああああん、ああああああああああん」
「む! な、泣かないでほしい。痛いか。お父さんの作った塗り薬を後で貸そう。泣かないでほしい。困った。むぅ。どうすれば」
会場が怒号を散らす。
「おいこらー!!! 祟り神は反則だろ!!!!」
「ズルいぞー!!! 蘆屋の優勝を見に来たんだぞこっちはー!!!」
「審議だ審議ー!!!!」
「それでいいのかよ陰陽庁はよぉー!!!」
「勝負あり! 勝者【トゥス-クル】松前 鈴鹿!!!」
しかし、審議は覆らなかった。
「えー! 皆様落ち着いてください。審判団のジャッジを下します。まず祟り神はコントロール不可であり、【祟神サーの姫】姫川 杏子は関与していないことを運営及び会場警備隊が確認済み! 蘆屋本家からの声明は「祟り神の気配を【トゥス-クル】松前 鈴鹿は感知し利用した。しかし【今毘沙門天】 蘆屋 緋恋は警戒を怠り、認知できなかった。審判団も存在を感知しており、試合中であっても指摘があれば対処予定だったこともあり、指摘が無いことがすべてであると判断しますとのことでした。また、運営委員長からの声明も発表します!」
息を吸って、実況、青葉土筆が叫ぶ。
「死なない備えをした者だけが勝ちであると!! よって勝者は松前鈴鹿!!松前鈴鹿です!!!これは陰陽師史上でおそらく、最大のジャイアントキリングとなりました!!!!!!!!」
『助け給へ』
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side 須藤与一
「しくしくしくしく、うぐぐぅぅうぅぅ、ごべんでぇぎょびぢぐぅぅぅぅうん、ごべんでぇぇぇえぇ」
「……(絶句)」
「与一さん、もう1時間もフリーズしてます」
ひとみの声が聴こえる。
え?
ん?
幼馴染ちゃんが負けた?
ん?
え?
ん?
お?
あれ?
ん?
えーと。
ん?
は?
いやいや。
え?
あれ?
その。
は?
いやだって。
え?
あの。
おいおいおい。
あれぇ?!
え。
だって。
いやあれは。
いやでも。
お。
おぉ?
ほ。
ほげ。
ほ、ほげ?
「ほげぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!??!」
ん?
え?
ん?
お?
あれ?
ん?
えーと。
ん?
は?
いやいや。
え?
あれ?
その。
は?
いやだって。
え?
「動揺しすぎて何も考えられなくなってます……」
いろはもどうすればいいのか困惑して俺の肩を揺らす。
「はっ!? お。俺は一体……」
ひとみが頭を抱える。
「ようやく正気を取り戻しましたか。あのニャルなんとかに変なことされてる時よりも現を抜かすなんて」
「はぁ、はぁ。なんで、蘆屋緋恋が負けるなんて想定外、ぎ、ぃぃぎいいいいいいぃぎぎぎぎぎぎ」
どうすんだよこれ!?!!?
反対サイドのトーナメント!!!
魔法少女に勝つには幼馴染ちゃんが必須だろうがぁ!!
う、うわああああああああああ!!?!?!?!?
うわあああああああああああああああ!?!?!?!?
もう駄目だおしまいだあああああああああああ!!!!?
ぴーんぽーんぱーんぽーん。
会場から全体アナウンスが聞こえる。
「えー会場にお越しの皆様にご連絡申し上げます。試合時間が長引いてしまったため、明日の午前にベスト4の試合から実施したいと思いますので、本日のプログラムは終了とさせていただきます。明日は試合開始9時から、準決勝第一試合を行います!」
「びええええええええええん!! びえええええええええええん!!」
幼馴染ちゃんがうるさくていまいち集中して聞けなかったが、そうか。準決、決勝は明日になるのか……。
え、寝れるかなこれ。
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準決勝 トーナメント 確定
第一試合
【スケベハーレム】須藤与一
vs
【現代魔女】シルク・ストロベリ―
第二試合
【トゥス-クル】松前 鈴鹿
vs
【流星の魔法少女】如月 桐火




