【神話生物】事件 中編 5
一回戦第6試合
●【聖伐執行】犬鳴 響
vs
〇【トゥス-クル】松前 鈴鹿
≪試合概略≫
開始早々 犬鳴が日本刀を振り回しリードを広げる展開かと思いきや、突如犬鳴の側面から鹿が出現し激突。
それから松前は鉈を取り出し犬鳴の武器をへし折り、隙をついてバックドロップ。
犬鳴は何もできずに倒れ、松前は鉈を掲げ勝利宣言を行う。
その後、鹿はすっと姿を消した。見事なまでの精霊召喚であると評判を高めたのであった。
一回戦第7試合
〇【夢幻現の如し】伏見 遊星
vs
●【六波羅警邏 3番隊副長】常盤 夢人
≪試合概略≫
同校対決で試合は唯一30分間続くという大台になった。
伏見は九尾の狐直伝の六千もの符術を扱うという評判に恥じない千変万化の技を多用した。
しかし常盤は特殊警棒に呪力をまとわせて全ての技を叩き落とすという荒業で無効化していく。
途中から伏見が距離を取り、常盤がひたすら追いかけるという展開に。
試合開始30分が経ち、常盤が立ち止まる。
「すまない。そろそろ警備交代の時間だ。仕事は休めない。リタイアする」
と片手をあげて宣告。
「はぁ? なんでお前この日にも仕事入れとん!?」
と伏見のツッコミが会場に響き渡った。
六波羅警邏。その正体は学生をこき使うブラック企業だったのか。
陰陽庁の判断が楽しみなところである。
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Side 須藤与一
俺とひとみ、いろは、幼馴染ちゃんで廊下を歩いている。
ふと俺は思い立ったように幼馴染ちゃんに声をかけた。
「そういえば幼馴染ちゃん、今までの事あいつに伝えようぜ」
「あいつってー?」
「メスガキママだよ。あいつの力も必要になるかもしれないだろ? あいついればマジで百人力なんだけど……」
「んー。あー。まさかここで褒めが入るとはー」
「ん?」
がたんと後ろで音が鳴った。
なんだろう。廊下の曲がり角の方から音鳴ったっぽいから何も見えないけど……まぁ大したことはないだろう。
「いや、本音だぞ。あいつやっぱ普通に特級呪言の使い手だし。正直今回のトーナメントにいたら普通に俺もどうなるか予想できないし。ただなぁ。あいつずっと俺に会ってくれないじゃんか。「おご、ほぉぉお♡」されても困るけど。親父さんも反省を促すとか言って解呪しないんだろ? 今回は解呪してもらってさ。本気で動いてもらった方がいいんじゃないか? というか普通に接したいそろそろ。「おご、ほぉぉお♡」の出会い方は嫌なんだけど。てかあいつまた美人になってたよなー。すげーよなあれ。テレビの女の子よりかわいいぞびっくりしたわ」
「んー」
ちらっと後ろを見て、幼馴染ちゃんは鼻で笑った。
「まぁ。拗れてるからねぇ」
「そっか……そんなにも呪詛が……」
「まぁ、呪詛かなー」
「くそ、戦力が欲しいぜ……ん?」
向かい側から、一人の男が歩いてくる。
あれは、開会式の時にめっちゃ絡んできたメスガキママの代理で出ることになった土蜘蛛の弟子】土御門 松陽だ。
「……ん? ……ち、お気楽ハーレムか」
「すーごい斬新な煽りされるぅ……あ? お前羨ましいか? 代わっても良いんだぞ? ん?」
「嫌に決まってるだろ呪いの塊みたいなやつと天才と……、まぁその子くらいだわな良いと思えるの」
「ちゅん?」
そう言って須藤いろはに目を向ける土御門ニキ。
残念なことに見る目は無いようだ。
「ーー与一さん。後でお話があるんですけれど」
バレた。
「ち、だからお気楽って言ってんだよ。勝ったやつは気楽でいいよな。……まさか、あの安倍時晴を倒すなんてな……」
どこか遠い目でボーっとしている土御門ニキ。
「なんだよ。初見殺しなんだから別にそういうこともあるだろ」
「ーー舐めんなよ。あいつはすげぇやつだ。明晴学園のトップクラスで、天才だ。本物だ。すげぇやつなんだよ。……俺と、違ってな」
「ん?」
「分かるか? そこの蘆屋にはウチのやつらボコボコにされて、時晴超えを目標にやってきたはずなのに一瞬で潰され……、凡人だってことをずっと自覚させられたままトーナメントにおこぼれで参加させられる気持ちが。土御門の人間として、……いや、俺個人としてめちゃくちゃ屈辱だぜ。お前とは決勝で会うことができる。でも、……お前も、俺が決勝に上がると露にも思ってない。そうだろ?」
「むっ」
……言い訳がしようがない。俺はさっきまで幼馴染ちゃんが上がると思っていた。
あまり言いたくはないが、彼が決勝に行くビジョンは持っていなかった。
「はっ。だろうな。俺もそう思う。だが、舐めるなよ。凡人には凡人の意地とプライドがあるんだわ。蘆屋にも、お前にも、絶対負けない。宣戦布告ってやつだ。分かったか。逃げんなよ」
「--あぁ。分かった。俺も決勝、頑張るよ」
「--ひでぇやつだ」
そういって土御門 松陽は俺と反対の方向に向かった。
「……俺、あぁいうやつには頑張ってほしいなって思っちまうなぁ」
そういうと幼馴染ちゃんが肩を小突いた。
「なーにー。私と戦いたくないのー? ぷんぷん」
しまったぷんぷんモードだ。
ひとみ以外にも使い手がいたか。
side メスガキママ
「ちっ。余計なこと言い過ぎたな……。……ん?」
廊下の曲がり角、膝を震わせながら座り込んでいる女性がいた。
名前を、賀茂モニカという。
「あ? 賀茂のモニカじゃねぇか。何してんだお前」
「ひぃ♡ひぃ♡悔しい♡不意打ちされた♡」
「……あぁ。呪詛返しか。なんか有名なあれ。相手もしやあのお気楽ハーレムの主か」
「くっ♡そんなことない♡って言っても……通用しないんでしょうけど♡私のざぁこ♡」
「……ちっ。本当におこぼれじゃねぇか。面倒くせぇ」
「……言うてさ♡貴方強いほうでしょ♡なんで凡人とか言うの♡」
「お前が、……お前らと同じ世代ってだけで、生き地獄だろうが……。ちっ。まぁいい。いいか、この大会が終わったら次お前だからな。覚悟しろ」
「はいはい♡」
そう言って土御門 松陽は戦いに向かう。
……もはや、周囲に棘をぶつけなければ勝てないと思う程度に気持ちがすさんでいるのだろう。
普段学園で兄貴分として活躍している彼を知っている分思うこともある。
土御門一門の頼りになる存在。
血族のバランサーとしてのセンスは、彼が一際うまい。
でも、トーナメントでそれは評価されない。
そこだけが残念だ。
「あらぁ~~♪ もう行った? 気持ちいいねぇ~~♪ 須藤ちゃんの褒めでこんなにかわいくなっちゃって~~」
ボンッと煙を立てて賀茂モニカの目の前に、角と羽としっぽを生やして、露出の多い服を着た女性が出てくる。
サキュバスである。
かつて賀茂モニカが最上級好き好きビーム(正式名称:禁忌術式第3号言紡ぎ橋姫の縛)にオリジナル術式を足してサキュバス召喚でサキュバスに力を借りたことがあった。
その時のサキュバスである。
呪詛返しの影響でずっと賀茂モニカの中で生きていたのだ。
宙に浮いた彼女を見て、モニカはため息を吐いた。
「……なに? 貴方が出るなんて。呪詛返しを食らった時以来じゃない。ずっと頭の中でしゃべってただけの癖に……って、呪詛が」
「あ~~ん♪ そりゃ呪詛の塊みたいな? サキュバスの私が出たら一時的に呪詛も抜けちゃうわよね~♪ で? で? どうする? 私が出たら呪詛が抜けるのよ? ラブ? ラブっちゃう? 須藤ちゃんとくんずほぐれつラブっちゃうルート入っちゃう??? きゃ~~~~乙女回路フルバースト!」
「やめて」
ズバッと切り替えし、スカートについた埃を叩いて落とし立ち上がる。
「あのね、余計なことしないで。呪詛を言い訳にして、わざわざ与一くんから離れてるんだから。そうしないといけないんだよ。緋恋に迷惑かけたくない」
「んー。あのねモニカちゃん? ずっと貴女の心に潜んでたから分かるけど、それ健全じゃないのよ~。というか、貴女もう実力的に呪詛を取り出すこともできるのに! 蘆屋ちゃんの恋を応援するためにわざわざずっと呪詛返しを受け入れていたの?」
「当たり前でしょ。私は緋恋の悪口言ったり、与一くんを倒すために呪詛を掛けたり、最低なことをし続けた。だからもう迷惑かけたくないの。でもね、呪詛返しも悪くないよ。ーーあのあまりに強力な恋心は、ほんのちょっと文通するだけで心が満たされるんだから。それでいいの。与一くんと私の距離は、それで満足だから。彼の声を聞いて満足だし、彼の姿を見るだけでもう三日は寝れなくなるの。そんな些細な幸せで私は生きていけるから。ほら、早く戻って。私は絶対与一くんに会わないから」
一呼吸でその言葉を言った賀茂モニカに向かって、サキュバス(本名:アーニャ)は白目をむいた。
「げ、激重~~♪」
「誰が重いっていうのよ」
「ん~~。須藤ちゃんって生きる脳焼きマシーンなのかしら~。サキュバス的にも普通に会話したいんだけど~♪」
「は? 絶対会わせないから。どうせ貴女も会ったらあいつの良さに気付いて堕ちるんだから。黙ってて」
「え? あ、あの~。え?え~?」
サキュバス、アーニャ。
自身を召喚した主について、見誤っていたことに今気付く。
「ふふ、大丈夫だよ与一くん。こっちには幼馴染ちゃんっていう盗聴器があるから話全部分かってるからね。ありがとう幼馴染ちゃん。一緒にシェアハピ(意味深)しようね。でもまずはニャルラトホテプの陰謀を何とかすればいいんだよね。待っててね与一くん。私頑張るから。ほら、さっさと戻れサキュバス。仕事よ仕事。あれでしょ。【五星附属術浄学園】についてまず調べて、その後出場選手について詳細なデータを出す。学園に電話かけて片っ端から呪うよ。Hurry!」
「激重~」
本当に見誤っていたことに気付く。
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side須藤 与一
貴賓室前で待っていると、親父と銀子さんが出てきた。
「親父、緊急なんだけど」
「うん、それで何が起きるの?」
親父は話が早くて助かる。いや、もしかしたら俺の発言について過度な期待を持っている可能性はあるけれど。
「実はかくかくしかじかふにゅふにゅほにゃほにゃで」
「なるほど。ニャルラトホテプとぬらりひょん、【五星附属術浄学園】が怪しいってことだね」
流石、親父は話が早くて助かる。
「……なるほど。じゃあ【五星附属術浄学園】の教師、若流 夏は……偽名」
「うんクソみたいな偽名ぃ~」
なんやねんその偽名。おちょくってんのか。
いやおちょくってんだろうけど。
「でもね、与一。ぬらりひょんはともかく、【五星附属術浄学園】が怪しいっていうのは、若干疑問があるよ。だって、生徒3名既に脱落済みだ。そこまで期待できる生徒はいないと思うんだ」
「そこなんだよ。あのニャルラトホテプのことだから、絶対なにか仕込んでいるとは思うんだ」
原作ヒロインを、あんな風に使っているのだ。絶対、間違いなく何かある。でも証拠も具体的な行動もない。どうしたら……。
「【五星附属術浄学園】の対策が無理でも、とりあえずぬらりひょんの対策とかできないかな」
「分かった。とりあえず今連絡を取ってみるよ」
そう言って親父は電話をする。
しかし、10コール以上鳴らしても繋がらない。
「緊急事態かもしれない。もう既にぬらりひょんは脱出済みって考えた方がいいかも」
「え?」
まさか、一緒に訓練を手伝ってくれた親父の部下の皆さんが……やられた?
「くっ、警備を抜けなきゃ。ちょっと待ってて。今話をして……」
貴賓室の扉を親父が開けた。
その瞬間だった。
「「「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」
悲鳴が、会場全体を叩きつけていたことを知った。
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side ぬらりひょん
明晴学園
地下 ぬらりひょん封印場所
『あの~、儂のことないがしろにしすぎじゃないかのう? そのぉ、いつまでやっとんのじゃ』
「「「うぉい! うぉい! うぉい!!」」」
「頼重隊長が来るまでお前たちはスクワットを止めるな!! 筋トレ以外に陰陽無し! 筋トレ以外に陰陽無し!! 筋トレ以外に陰陽無し!!」
「「「筋トレ以外に陰陽無し! 筋トレ以外に陰陽無し!! 筋トレ以外に陰陽無し!!!!」」」
『誰か聞かぬかぁ~もう。仕方ないのう。……じゃあ、勝手に出るぞい』
「!? 馬鹿め、誰が出れられると思うてか! 全員戦形組め!! 無意識に受け入れるな!! 扉が動いた瞬間、或いは出口に誰かが向かった瞬間殺せ!!!」
『ーーあぁ、よくまとまってくれたのう。何年も、何年も、同じ戦形で。あぁーーご苦労』
「ーーッ!!!!? なんだこの妖気!? いや、あまりに、これはっ!? やばい、全員伏せろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
世界が切
断された。
「ほぉ~、ほぉ~。さぁ……て。ひ、ひ、ひ。儂の出番だなんて。ニャルラトホテプ様も人が悪い。ぬらりひょんを、解き放つとは」
頼重の隊は、全員が出血し倒れている。
まるでひたすら遊ばれるように、切り刻まれて。
しかし。
奇跡的に、全員生存しているのは……須藤頼重の術のお陰としか言いようがない。
「でぇ、はぁ。儂ことぬらりひょんも……動くしかあるまいて……ひ、ひ、ひ。あぁ、斬りたいのぉ。斬りたいのぉ、斬りたいのぉ、斬りたいのぉっ!!! 全てを、目に映る命を、--あの時の狐と、少年を!!!!!!!!!!!!!!!」
その場の影が揺らぐように、長い日本刀を揺らしながら、【ぬらりひょん】は学園から逃亡した。
ーー電話が鳴り響く。誰も取れる状態ではない電話が、無情にも。




