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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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91/103

91:マジ、裸族を脱却する。

「うぉ!? こんなに作れたのか?」

 ザグとの取引画面を見て唖然とする。
 アイテム枠に表示されているのは、レベル20の上半身装備二着とレベル20と16の靴。そしてレベル20の下半身装備に同じく20の手袋だった。

「実際には素材が足りなかった」
「ちょ!?」
「いやいや、マジックどんが持ってきた素材なんだが、裁縫に使える素材が少なかっただけぞなもし」
「え、そうなのか?」

 どうやら蟹やら貝からドロップした素材が、食材だったらしい。
 やっぱ食えるのか、あいつら。
 他にも鍛冶の素材に使えたりもするんだとか。
 まぁ合成剤の材料集めで奴等をメインにここ最近狩ってたからなぁ。

 ザグにしてみれば海鮮素材は涎が出るほど欲しい食材なんだと。

「港町に行けば、魚屋ぐらいあるんじゃないのか?」
「あの海にはモンスターが出るぞなもし。NPCに聞いたが、漁師なんてものは存在しないようだぞなもし」

 オープニングイベントにも確かにモンスターが出たが……レベル低かったじゃないか。
 原住民はひ弱だなぁ。

 そんな訳で海鮮素材は貴重なのだと言う。
 しかも現状、料理技能を持っているプレイヤーが少なく、どのアイテムが食材になるのか分からない為にNPC売りしてしまう人が多いのだとか。
 じゃあ声を大にして「これは食材です、売ってください」と言おうものなら――

「足元を見て高額を請求してくるプレイヤーが多いぞなもし」
「逆にふっかけられるのか……まぁ俺は海鮮なら嫌でも集めてるから、こっちの装備素材と交換して貰えればオッケーだぜ」
「そう言って貰えると助かるぞなもし。と言っても、今回ので手持ちは出し尽くしてしまったが」
「う……マジか」

 素材を集める方法は三つ。
 一つは俺みたいに直接モンスターを狩って、ドロップを集める方法。
 もう一つは買取露店を開く方法。この方法だと足元を見られるうえ、他の買取露店より価格を下げると売り手が来ないし、上げれば転売屋がやってくる、と。
 最後の一つは、露店売りしている素材を買うか、冒険者ギルドの販売代行から買う――だそうだ。

「あ、ザグは代行販売を利用しているのか」
「んむ。昨日のメンテ後から実装されたので、まだまだ認知度は低いであるが。たまに掘り出し物があるぞなもし」

 そうか。
 俺もあとでペットフードを売りに出そう。

「しかし、一般モンスターからの装備ドロップが無いので、生産が賑わうだろうと思っておったがもし、需要に対して素材の供給が追いついてないぞなもし」
「あぁ、それで売ってる装備の値段が高いのか」

 ザグは頷く。

「装備を作る際に失敗しないのであれば、供給は追いつくのじゃが……今の儂の裁縫レベルでもノーマルなら八割、ハイクラスで六割、レアだと三割程度ぞなもし」
「うへ。意外と低いな」
「失敗は別にかまわんぞなもし。試行回数が多くなくては技能レベルは上がらぬし、経験値が入る機会も減るからなもし」

 あぁ、なるほど。何度も何度もやってレベル上げしてるんだしな。
 だが失敗すれば素材がパーになる。
 素材が無ければそもそも生産も出来ない。
 なので貴重な成功品を高値で売り、そのお金で素材をまた買う――の繰り返しだ。

「しかし、こう高いとなぁ。フル装備を集めるにも懐事情が……」
「んむ。じゃからNPC売りの装備を買う者も多いようだぞもし。これだと生産職が寂れてしまうぞなもし」

 打開策は無いものかと考えてみる。

 一。素材のドロップ数を調整する。もちろん出易い方向で。
 二。装備を作る際に必要な素材数を減らす。――が、ザグ曰く、他のゲームに比べると少ない方らしい。
 三。失敗しても再利用できるようにする。例えば――

「分解で元に戻せればいいんじゃね?」
「分解で?」

 裁縫でも鍛冶でも木工でも、製造に失敗すると2エンのゴミ屑になるとザグが話す。
 この辺は合成でもそうだが、ここでゴミにせず、分解可能アイテムになれば――

「なるほど。そうなれば分解技能持ちが活性化するぞなもし」

 主にシースターがな。
 更にダークエルフの懐も潤う。

「素材のドロップ率の修正と、分解可能。この二つが実現すれば、だいぶんマシになるんじゃないかな」
「んむ。要望を出してみるぞなもし」
「あぁ。消費者側の立場としても、装備の価格が下がるのは有り難いし、俺も要望出しておくよ」

 出すのはシンフォニアだけどな。

《ぷ》
「ん? どうしたぷぅ」

 俺とザグの話を真剣な眼差しで見ていたぷぅが小さく唸る。
 どうしたのか尋ねても返事はなく、首というか体? を振って何事も無かったかのような素振りを見せた。
 なんだ。真剣に聞いていたのかと思ったが、実はちんぷんかんぷんでしたってオチか。





「なるほど……合成する装備のレベルだけじゃなく、装備同士のレベルの違いでも失敗しやすくなるのか」
「おぅ……作りたての服がもうゴミであるか」

 受け取った装備を早速合成。
 まずはレベル20の上半身と同じく20の靴を合成すると成功した。しかもこちらは両方ともハイクラスである。
 失敗すれば靴はそのまま履いて、ズボンと合成しようと思っていた。なので調子に乗ってレベル20の上半身とレベル16の靴も合成したった。
 片方がノーマル、片方がハイクラス。
 その結果、ゴミになったのだ。

 まぁ予想でしかないけど、同クラスの装備同士のほうが成功率も僅かだが上がるのかもしれない。
 検証するにしても、そもそも装備が手に入りにくいしなぁ。

「何にしても素材が必要であるな」
「そうだな。合成する素材――を作る為に素材が、か」

 装備合成は金が掛かるな……。

 ズボンは夢乃さんに作って貰った16レア装備の方が微妙に補正が高い。
 ので、このままにしておく。
 手袋は夢乃さんに作って貰ったのも、ザグに作って貰ったのもハイクラスだ。同じ等級なら当然、レベルが高いほうが補正も高くなる。
 ってことで、手袋はチェンジだな。
 あとは……。

「この半裸族がどうにかなればなぁ」
「ふむ。何ゆえに裸なのであるかなもし?」
「武器に上半身装備を合成したんだよ。合成したうえで、別の装備を着ればいいと思ったんだけどな」

 重量ポイントがどうこうで着れなかったと。

「ふむ。では――」

 ごそごそとザグがインベントリから取り出したのは、真っ黒い布?
 ばさっと広げると、それはハーフサイズのマントだった。

「儂用に作ったマントだったのじゃが、料理するときには別の物を付けるし、そもそも生産をするときにも邪魔だったぞなもし」
「料理するとき……まさか……」

 俺の脳裏に浮かんだのは、純白のふりふりエプロンだ。
 それをドワーフのザグが……いや、想像するのはやめよう。

「料理といえばエプロンじゃろう。あれを着ると、成功率がアップするぞなもし」

 そう言ってザグはにこやかに白い布を取り出した。

 見たくない。いや寧ろ見せるなっ。
 あぁぁっ、ふりふりしてやがるぅーっ。

「今日の店番のお礼に、これをマジックどんにやろう」
「げっ。そんなふりふりエプロン、欲しい訳ねえだろう!」

 俺に何のプレイをさせる気だっ。

「勘違いするなぞなもし。エプロンは儂の大事な商売道具。譲る訳ないぞもし」
「え、違うの?」

 こくこくと頷くザグは、最初に取り出した黒いマントを押しつけてきた。

「これを羽織れば少しは隠せるぞなもし」
「おぉ! なるほど!!」

 受け取って早速羽織ると、肩から掛けるだけのタイプではなく、胸元なんかは完全に隠れるタイプのマントだった。
 しかも有り難い事に、マントは体をぐるっと包むような作りだ。じっとしていれば風でも吹かない限り、中が見えることもない。
 これで一見すれば半裸だってのも分からないだろう。

「ザグ、マジ感謝するぜ」
「んむ。いらない食材が貯まったら、またよろしくしたいのである。あと――」

 再びザグがインベントリからアイテムを取り出す。
 今度は小さいアイテムみたいだな。

「さっき露店に並べてたのは、料理教室で教えてもらえるレシピである。こっちは儂のオリジナル料理――」

 そう言って、ごっつい掌に乗せたアイテムを見せる。
 十円玉サイズのカップケーキのような、そうじゃないような?
 そんなサイズだってのに、デフォルメされたファンシーな兎の顔の形をしている。
 その顔の下は超ミニサーズのケーキか? なんか生クリームっぽくも見えるんだが。
 更にミニミニサイズの苺みたいなのが飾られてるし、リボンまであるし……。

 ザグよ、お前はどんな顔をしてこれを作ったんだ?
 興味はある。あるが、見たくない気もする。

「マジックどん。覚えておるかなもし?」
「覚えて?」

 安く料理を売ってくれ。
 なら毒見をしろ。

「ああぁぁぁっ。普段は物忘れ激しいってのに、なんでこんな不都合な事だけ覚えてるんだ俺はっ」
「ふぉふぉふぉ。さぁ、食うぞなもし!」

 ファンシーな兎ケーキを突きつけられ、死を覚悟してそれを口に入れた。





「おおおぉぉぉっ。すっげー跳ねるぞ!」
「うむ。ウサぴょんは、跳躍力が通常の二割増しになる効果ぞなもし」

 跳躍力が二割増したからといって、そんなたいしてジャンプ出来ないだろう。そう思った。
 が、実際跳ねてみると、素でも一メートル近く飛び上がれることに気づいた。
 そう、ここはゲームの中なんだ。リアルを基準にして考えてはいけない。
 二割増で二十センチアップ。
 これはなかなか楽しい。

 ザグお手製のオリジナルスィーツ『ウサぴょん』の味は、思ったほど濃くもなく、さっぱりとした感じのケーキだった。
 いや、ケーキというよりは菓子パンに近いか?

「効果時間は三分しかないぞなもし。頻繁に食すのであれば、濃厚な味付けは避けるべきであるぞなもし」
「はぁ〜、そんな事まで考えて作るのか」
「まぁぶっちゃけると、効果時間を延ばせば料理のボリュームが増えるのでな。それだと戦闘中に食べるのは辛いだろうと思うぞなもし」

 そりゃそうだ。
 他にも、効果時間を延ばせばIMPの消費も増えるとザグは言う。
 新しい料理ってのは、スキルみたいにIMP消費で作るのか。へぇ。

「他にもステータス上昇系の料理を考えておるのだが、デザインが纏まらなくて……」
「いや、そこ拘るのか?」
「当たり前ぞなもし!」

 これだと女子には人気出そうだが、男が買うにはハードルが高い気がするんだが。
 まぁ面白いから、何個か購入させて貰った。
 原価200エン。売るときには220エンにするという。

「じゃあ200エンでよろ」
「お前は鬼であるぞなもし」
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