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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
90/268

90:マジ、バイト店員になる。

 朝から頭を使うのは辛い。

 早朝からログインして、ゲーム内でステータス画面と睨めっこ。


 現在、俺の装備は……

 16上半身防具イン杖。

 16下半身防具。

 16手袋。

 12靴。

 外見としては、上半身裸……。

 思いっきり変態である。


 取り敢えず変態はおいといて、自分のレベルに対して装備が貧弱すぎる。

 まぁ、レベルの上がりやすい時期だし、装備を揃える頃には次のレベルなんだよな。

 今が21だから、いっそ次の24装備を考える方がいいんだろう。


 とは言うものの、レベル12の靴は新調しないとな。

 そうだ!

 いっそ靴と余ってる12上半身装備を合成するか!


《ぷぷぷぅ?》

「おう。俺はやるぜ。技能レベルも上がったんだ。せっかくの技能だしな、自分でやってみたいじゃないか」


 心配そうにぷぅが見つめるなか、システムメニューから合成を開始。


 枠に装備をそれぞれ乗せて――OKボタンをポチリ。

 成功すればピカっと光り、失敗すれば――


 ぐにゃり~♪


 という妙な効果音と共に、煙のようなものが昇ってゴミに……


「うおおぉぉぉぉっ! 靴とコートが融合したゴミになったぁっ」

《ぷぷっ! ぷぷうぷぷぷぅ》


 ダーリン! 裸足になってるわっ――と叫ぶぷぅの声で自分の足を見ると、裸足になっていた。

 おぅ……どんどん俺の露出度が上がっていく。


《ぷぷぅ、ぷぷぷぅぷぅ~ぷ》

「え? 裸足だと怪我をしないか? ど、どうなんだろうな」


 そこまでリアリティに再現するのかな?

 できればしないで欲しい。


「とにかく、靴、探さなきゃな」

《ぷぅ~》






 ファクトにテレポして露店巡りをする。

 足を踏まれないか不安で、つい下を向いて歩いてしまう。

 HPバーは……うん、特に減っていないから、裸足だから怪我ダメージをするという訳ではないようだ。


 ルーン、フラッシュとの待ち合わせ時間もあるし、急がなきゃな。

 まぁ現実時間の朝八時集合なわけだが、俺がログインしたのは七時少し前。

 こっちの時計だと二時少し前だった。

 現実で一時間後ってことは、こっちだと二時間後になる。

 四時に農村集合って事だな。よし、今はまだ二時半だ。なんとかなるなる!

 たぶん。


 ゲーム内では夜が明けたばかり。

 通りを歩くNPCは少ないが、じょじょに活気付いてきていた。


 そうだ。最悪、NPC売りの装備を合成して強化するしかないかもな。

 だってプレイヤーが売りに出してる装備って、軒並み万超えですもん!

 俺の所持金も結構潤ったけど、装備一式買えるほども無い。


 このゲーム。モンスターから装備のドロップが、ネームドだのボスだのからしか出ないもんだから、生産に頼るしかないんだよなぁ。

 でもコストが掛かるのか、簡単に揃えられるような値段じゃない。

 夢乃さんにタダで作って貰ってたけど、実際自分で買おうとしたらとんでもないな。

 

 せめて手持ちの素材で製造依頼できればいいんだろうけど……。

 だが俺はここで嫌な記憶を思い出した。


 以前プレイしていたVRMMOで、製造依頼請負職人に、装備一式の依頼をした。

 当時は前衛火力職だったからな。

 重装備と軽装を合わせたような胸部ブレストアーマーと、ズボン。篭手、ブーツ。そして両手剣。

 これら全部の材料を持ち込みで依頼をして――


 見事に持ち逃げされた。


 チーン。


《ぷぷぅ?》

「あ? どうしたのかって? いやな、昔の事を思い出してな」


 当時俺は中学生で、初めてのネットゲームという事もあって人を疑い事を知らなかったんだよな。

 そんな訳で、製造請負人は信用しない。


 とにかく安くて性能の良い装備を探すぞ!

 どこかに一桁設定ミスってる露店はないか!!


 きょろきょろしていると、露店に生首発見。

 生首?


「ひっ!!」

《ぷぷぅ?》

「おい見ろぷぅ。生首が売られているぞっ」

《ぷ? ――ぶぶぶぶぶぶぶっ》


 慌ててぷぅが俺の首に縋りつく。

 がくぶるしてるな。


「はっはっは。ぷぅ、冗談だジョーダン。ほらよく見ろ。店主がドワーフなんだよ」


 と、実は最初に見たとき本気で生首だと思った俺が言ってみる。

 ぶるぶる震えるぷぅを撫でながら露天を指差し、ドワーフだから丁度カウンターの棚板に頭が乗っているように見えるだけだと話してやる。

 いやぁ、しかし凄い位置関係だな。


《ぶぶぶぶ……ぷっ》

「ん? どうしたぷぅ」

《ぷぷぷぷぅ》

「何? ザグだと?」


 言われて生首店主をよく見ると、確かに白髪頭のドワーフ、ザグだ。

 ぷぅのやつ、何気に目がいいし、記憶力もあるな。


「よぉ、ザグ。儲かってまっか~?」


 ファクトの町まで道中一緒だったドワーフのザグ。

 思いっきり生産技能オンリーだった彼は、ソロではここまで来れず、だからといって同行してくれる仲間も居なかったのか、コールの町の冒険者ギルドで同行者を探していた。

 で、成り行きで一緒にここまで来たんだが……。


「おぉ、マジックどんではないかもし。もちろん、儲かってなどおらんぞなもし」

「おいおい、随分と景気の悪い返事じゃないか」

「んむ。料理技能を習得し、露店も買って売り出してはおるんだが……客がまったく来る気配が無いぞなもし」


 あー、うん。

 ドワーフの料理だしなぁ。酒でも入っていそうだよな。

 しかもこの露店看板――


【心を込めて作った父の味】


 ――だしな。

 誰だよ父って。


「そう言えばマジックどん。昨夜のイベントに参加していたらしいぞなもし」

「へ? なんで知ってるんだ?」

「んむ。公式の画像掲示板でマジックどんが光っておったぞなもし」


 ぶほっ。

 やっぱ掲示板にアップされてたか。


「それしてもふんどし祭とは……わしも誘って欲しかったぞもし」

「……持ってんのか」

「当然である」


 そう言ってザグが突然ふんどし姿になる。

 おい、それ赤いじゃねえか!!


「レアぞなもし。ノーマルが白で、レアだと赤いのであるぞもし!」

「町中でその姿は、自警団にしょっぴかれるんじゃないか?」


 と本気で心配したくなるほど、ヤバイ。

 焦ったザグも直ぐに元の姿に戻り、辺りをきょろきょろ見渡している。

 誰かに通報されていれば来てたかもな。


「ところでマジックどんよ。こんな朝早くからどうしたぞなもし」

「いや、あんただってこんな朝早くから露店出してるじゃないか」

「んむ。料理技能は昨日取ったばかりなのである。だからして、早く店に並べたくて……」


 でも誰も来ない、と。

 売っているのはクッキーだのカップケーキだのといった、女子に人気そうな菓子類だ。

 看板と店主と、そして並んでいる商品とのギャップがあまりにも激しすぎる。


「はぁ、やはり装備品も並べてみるぞなもしぃ」

「あぁ、そういや料理以外の技能もちゃんと持ってたんだったよな。何があるんだっけ?」

「装備に関係しておるのは鍛冶と裁縫、木工もし」


 裁縫だって!

 レベルを尋ねると、20まで上がっているという。


「鍛冶と裁縫が高く、木工は取ってみたもののあまり作っておらなんだ。まぁ来るべき日の為に取った技能なので、問題はないぞなもし」

「来る日?」

「んむ。この手のネットゲームといえば、自らの家、もしくは店舗を持つハウスシステムぞなもし!」


 こいつ、自分で家を造るつもりで技能を取ったのか。

 俺は――面倒くせーからいいや。


 そうだ、ザグになら……。


「ザグ、頼みがあるんだが――」






「あのぉ、クッキーください」

「は、はい、毎度! ちょ、ちょっと待ってくださいね。あ、そっちのお客さん、取引成立させてくださいね」


 ザグにレベル20装備、ないしは16装備の作成を頼んだ。

 出来れば20がいい。無理なら16でということで。

 ありったけの材料を渡し、彼が工房に行っている間、俺が店番をする。

 さっきまで……ザグが居たついさっきまで閑古鳥が鳴いていたのにっ。


《ぷぷぅ~》

「は? キラッキラしてうちのダーリンステキだわ? お前も手伝え!!」

《ぷぷぅ~ぷぅ~》


 分かったわよぉ。と言いつつ、ぷぅは露店のカウンターで踊り出す。

 手伝っているつもりなのか!?


「わぁ、あの鳥さん可愛い~」

「何なに――やぁ~ん、ちょっと可愛いぃ。え? カップケーキ?」

「わぁ、美味しそう」


 お客が増えました。

 くそぉっ! 手伝うどころか、余計に忙しくなってんじゃねえかっ。


 売っている物が菓子類だからか、NPCの客もばんばん来る。

 やべぇ。称号効果がマジやべぇ。


 ザグ、早く帰ってきてくれぇ~っ。


 心の雄叫びと共に電子音がぴこんとなり、視界にシステムメッセージが浮かび上がった。


【露店『心を込めて作った父の味』内の商品が、全て売り切れました】――と。


 その瞬間、俺のキラッキラも終了する。


「え? 完売しちゃったんですか?」

「えぇ~。欲しかったのにぃ~」

「ど、どうもすみません。あんまり数を用意してなかったようで」


 と表面では誤り、本心はというと――ヒャッホー! これで俺の仕事は終わりだぜぃ。

 もうこんな糞忙しいのは嫌だ。やっぱ自分で店を持つとか、俺には無理。

 合成ペットフードは冒険者ギルドの代行にお願いしておこう。


「な、なんと!? 完売したかなもし!?」

「あ、ザグ。今完売したところだ。今度作るときは、もう少し多めに作ったほうがいいぜ。きっと今日の販売で、リピーターがつくはずだからさ」


 同時に女性客には、こいつが店主である事を伝えた。

 完売した事実に感動をするザグ。

 今購入したばかりの可愛らしくデコレーションされたカップケーキと、ザグを見比べて唖然とする女性客。


「お、王子様の手造り、なんじゃ?」

「いや、俺、料理技能とか持ってないですし」

「ドワーフ、作?」

「そう」


 どことなく足取りの重い彼女等だが、なんか俺、悪い事言っただろうか?

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