9:マジ、再び勘違いされる。
「俺はケン。見ての通り、剣使いの前衛タイプだ」
「俺も技能は『剣術』だけど、使ってるのは短剣だ。ってことで名前はシフス。AGI前衛型の盗賊系を目指してる」
「俺は槍だ。タンカーを目指してる。VIT先行なんで攻撃力はお察しなんだ。ごめんな。あ、名前はランスな」
「僕はロビン。もちろんロビンフットから取った名前で、弓使いだよ」
「アコです。アコは純支援なので、神聖魔法しか戦闘技能は取ってません。でもでもヒールは任せてくださいっ」
「おぉぉ。支援女子か。ここまでポーション結構使っちまってるから、助かるぜ」
「純ヒラだとレベル上げも大変だろ。よかったらこの後もパーティー組まない?」
「うんうん。協力するよ」
「本当ですか? ありがとうございますっ。『ライト』の魔法も弱くって、ソロだとモンスター一匹倒すのも大変で。パーティーに誘ってもらえて良かったです」
MO洞窟に入る前、それぞれの名前とメインの戦闘技能を紹介。お互いどの役割になるのか、把握しておくのは大事だよな。
六人パーティー唯一の女の子であるアコさんは、既に大人気だ。
うーん、パーティーの需要で考えるなら、支援ってのもよかったなぁ。けど、本人も言ってるように、ソロでのレベル上げ効率は悪そうだ。
何故かこちらをチラチラ見ているが、同職だとでも思われてんのかな。確かに同じローブ装備だし、同職だと自分の存在需要が危ぶまれるとでも思ってるんだろう。まぁ気持ちは解る。
自己紹介のトリを飾るのは俺。
「技能は雷を取ってるマジ系の彗星マジックです。すいせいは水性ペンのそれじゃなく、ハレー彗星のほうね」
神聖魔法も持ってるが、アコさんの為にここは内密にしておこう。
「ハレー彗星の方? でも水性マジックペンがネタなんだろ」
「え? 水属性の魔法は?」
……ありません。
「なんで水性マジックなんだよ。噴くわっ」
「え? え? でもでも、可愛い名前だと思います」
……可愛いか?
「いやいや、アコちゃんが可愛いから」
「アコさんのいう可愛いって、水性マジックのペンの事なの? それともマジ君の名前のセンスなの?」
「え? ……えーっと、両方!」
女子のセンスは良く解らない。
「まぁ名前はアレとして――」
「アレってなんだよ」
「雷の属性魔法ってのはなかなか珍しいよな。普通は火属性を真っ先に取りたがるもんだけど」
「だよね。火のほうが何かと便利だし」
「でもさ、ここのクエストに関しては、雷で大当たりじゃね?」
「「うんうん」」
ふふふ。そうだろうそうだろう。解ってて雷魔法を取ったんだぜ。
とかは当然嘘だけどな。
「こっちよっ。助けてぇー」
「こっちだー。早く助けてくれー」
おぉ、生きてる生きてる。しかも最初の位置に戻ってるじゃないか。またここからスタートかよ。
クエストが再び開始されると、ロビンとアコさん以外が迫り来る蟹の前に立ちはだかる。
うおぉ。やっぱ前衛職はこうだよな。仲間の後衛を守る為に、身を挺して敵に立ち向かう。
俺も以前やったゲームではそうだった。AGI型だったからひらりひらひと躱し、結構かっこよかったと思うんだけどな。
「蟹は引き受けるから、ロビンとマジが後ろから攻撃してくれっ。アコちゃんは臨機応変にヒールを頼む」
「はいっ」
「ヒールヘイトには気をつけてね」
「は、はいっ」
連携か。
これぞパーティープレイ!
俺も貢献しねえとな。
「よしっ。行くぜっ」
まずは防御力も低そうなシフスに援護するべく彼に駆け寄る。
レベルの低い今だと、AGIだってそんなに高くないだろうし、回避率も雀の涙だ。ここは早々に蟹を片付けないとな。
「え? ちょ、マジ? なんで前に出てんだよ?」
「ふっ。俺の戦い方はこうだからさ。『サンダーッ』」
甲羅に手を付き、ゼロ距離で魔法が放たれる。
うーん、ちょっとまだ倒しきれないか。魔法二発で倒せるといっても、こっちは属性の相性がいいからなぁ。
短剣で数回切り付けてても、ダメージは魔法一発分にも満たない、か。
やっぱ魔法の火力は半端ねえな。
蟹の姿勢が俺に向けられたってことは、ダメージヘイトだよな。
ハサミを振り上げられる前に後ろに回り込もう。その為にも蟹の足が邪魔だ。
「ぼき折って鍋に入れてやろうか?」
なんて冗談を言いながら、周りこむのに邪魔な足を鷲掴みして――
掴んだ足がぼきっという音を立てて本当に折れてしまった。
「お、折れたよ……」
足を握ったまま皆のほうを振り返る。やたらとドン引きされてるんですけど、どうしよう。
いや、別に本気で鍋にしようとか思ってないからね。
たまたまさ。そう、たまたま偶然折れてたんだよ。
ほ、ほら。ひ弱なマジが素手でモンスター倒せたりとか、しないって。
甲羅を鷲掴み――
蟹が光の粒子となって消えた。
そういや、ダメージエフェクト出てたな。このゲームって、自分のダメージは出て、他人のダメージエフェクトは見えない設定なのか?
「うあっ――だよ」
「なぐ――かよ」
「さ――だ――ぎ」
「まぁ属性乗ってるっぽいし、ここでは最強なんじゃ?」
「「それもそうか」」
なんかぼそぼそ言われてるけど、甲羅を素手で破壊する奴みたらそりゃあ驚くよな。俺も驚いた。
まぁ既に瀕死だったんだろう。でなきゃ俺みたいなSTR1が素手で鷲掴みした程度で倒せるはずが無い。
そもそも鷲掴みもダメージ判定があるのか。そういや技能取ってたしな、あれも関係してるのかも?
「かれっしたーっ」
「おつー」
「ソロだとあんだけ苦戦してたのに、パーティーだと案外あっさりだったね」
「そりゃあシークラブを一人で十匹相手にするのと、六人で十匹だと全然違うしなぁ」
「雷マジさん強かったですもんねぇ」
キラキラした目でアコさんが俺を見つめてくる。
いやぁ、雷取ってて良かった。
「あの乗客達、なんで洞窟に入ったんだろうな」
ささやかな問いに、全員が「さぁ?」というような顔で答える。
「ほんと、迷惑だよな」
「まぁこれでギルドに報告すれば、経験値貰えるんだし、いいんじゃないかな?」
「連続クエだったしな。レベル1上がるぐらいくれるといいな」
じゃあ皆はこのあと、町に戻って報告に向うのかな?
さっきこのままパーティーでもって話し出てたし、俺はウェルカムだぜ。
……ん?
なんかジェスチャー大会が始まったみたいだな。
あぁ、ステータス画面を弄ってるのか。
ステータスだけじゃなく、UIは他人には見えない仕様だもんな。この辺りはほとんどのVRがそうらしいし、この『IFO』でもそのシステムを採用している。
シークラブ戦でレベルアップしてるし、俺もステ振りしておくかな。
◆◇◆◇
名前:彗星マジック / 種族:ダークエルフ
レベル:4 /
Ht:177 / Wt:66
HP:395(395) / MP:1295(1295)
STR:1
VIT:1
DEX:1
AGI:1
INT:46+4
LUK:1
SP:0
【セット技能】
『雷属性魔法:LV4』|(1up) / 『神聖魔法:LV1』
『格闘術:LV2』 / 『敏捷向上:LV2』
『魔力向上:LV4』|(1up) / 『鷲掴み:LV3』|(1up)
【獲得スキル】
『サンダー:LV2』 / 『ヒール:LV1』 / 『ライト:LV1』
IMP:12
【称号】
『少女の勇者』
【装備】
『初心者用ローブ』|(HP+100) / 『初心者用ズボン』|(HP+100)
『初心者用のシューズ』|(HP+20)
『初心者用の杖』
◆◇◆◇
今はまだINT全振りでいいが、ある程度魔法攻撃力が確保できたら、次は何を上げるかな。
IMPも10超えたし、新しいスキルを作ってみたいな。これは時間掛かりそうだから、町に戻ってからにするか。
「よし。ステ振り完了っと。皆はこれからどうする?」
狩りに行くよな?
行くいく。皆で行こうぜっ。
そんな返事が返ってくるのを期待して、きっときらきらした目になってるよな、俺。
「あー、いや。他のクエストあるし、俺はここで抜けるわ」
「俺も。ちょっと知り合いに呼ばれたんで」
「すみません、アコも呼ばれましたです」
「ボクは町に戻って観光するんだ」
「俺は……とりあえず抜けるよ」
あ、あれ?
ここで解散になってしまうのか……うーむ。残念だ。
仕方ない。それじゃあ……
「じゃあ解散ってことで。またどこかで縁が合ったらよろしく」
パーティー解散時の定番セリフだが、本当に縁があったらいいなぁと思いつつ手を振る。
「あ、ああ……じゃ」
「おつさーん」
五人は揃って岩場を離れていく。
じゃあ俺は……ボートの残骸を拾ってさっきのNPCの所に持って行くか。