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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

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10:NPC、考える。

【やぁ冒険者さん。またゴミを持ってきてくれたのかい?】
【いやぁ、本当に助かるよ。あんたのお陰で、この浜もきっと綺麗になるはずだ】

 ボートの残骸を引き渡し、更に周囲の流木を何往復かして集めて回ると、意外と若かった清掃員コスタのセリフが代わった。
 それまでは【ありがとう】の一言だったのにな。
 ただ悲しいかな。コスタが「浜もきっと綺麗に」と言ったが、ゴミは一向に減る気配が無い。
 まぁよくよく考えたら当たり前だよな。
 クエストアイテムなんだ。無くなったりしたら他のプレイヤー、特に後発組が困るわけだし。
 せめてプレイヤー単位で、グラフィックの変化を付けて欲しいかな。
 でないと掃除のし甲斐も無いし。

 し甲斐が無い今の状況で、なんで俺はゴミ集めをしまくっているのか……。
 いやだって、ゴミを持っていく度にコスタの顔色が良くなってる気がするんだよ。どこまで回復するのか見てみたいじゃん? 感謝だってされるし、良い事じゃん。

 そう思って流木集めに精を出す。

「ゴミ持って来たぜ。しかし、船の残骸とかっていうんなら、面白いアイテムとかも一緒に落ちてないもんかねぇ」

 どさっと置いた板切れが粒子になって消える。
 さぁ、お礼カモーン。

 ……。

 ……ん?
 コスタどうしたんだ?
 口を開いたまま硬直してんぞ。

【――やぁ冒険者さん。またゴミを持ってきてくれたのかい?】

 なんだその間は。

【おや? 船の残骸と一緒に『ライフポーション』が混ざっていたようだよ】
【私には必要ないものだし、冒険者さんが見つけた物だから使いなよ】

 お……おぉ!?
 まさか本当にあったとは。
 いや、あの間が気になる。
 もしかして、俺が言った内容に応じて、臨機応変に対応してんのか?
 よぉし、そういう事だったら!





「はぁはぁ……一時間も頑張ってしまった」

 一時間頑張っても、ゴミから出たアイテムは『ライフポーション』と『マジックポーション』ばかり。
 ライフがHP回復で、こっちは五十本ぐらいになったな。
 マジックはMP回復で、少なめの十八本か。俺の戦闘スタイル的には『マジックポーション』が欲しかったんだがなぁ。

【やぁ冒険者さん。またゴミを持ってきてくれたのか。あんたは本当に綺麗好きだなぁ】

 ピコンと電子音が鳴る。

【それに力持ちだし。そうだ!】
【私の知り合いに木こりのマサオってのが居るんだが、彼が人手を探していてね】
【良かったら手伝ってやってくれないか? もちろんお礼はちゃんと出るハズだよ】

 再びピコンという音が出る。今度はシステムメッセージ付きだ。

《クエスト【木こりのお手伝い】を受けますか?》
《『はい』 『いいえ』》

 まさかのクエストか。
 木こりの手伝いっていったら、丸太運びとかじゃないだろうな。

【仕事はいたって簡単だよ。マサオが切った木を運ぶだけだから】
「やっぱりかよ! でもまぁ、木ってことは、森だよな?」
【森だね】

 お、なかなかスムーズな応対じゃないか。
 じゃあちょっと聞いてみるか。

「ギルドで食料調達の依頼も受けてるんだが、『キッキングラビット』とか『赤眼猪』とかいうモンスターは近くに居たりするのか?」

 そして再び口を開いたまま硬直するコスタ。
 現在考え中。
 考え中。
 考え――動き出した。

【あぁ、その二種類のモンスターなら同じ森にいるよ】
「なら食材集めついでに少し手伝ってやるか」

 視界に出ていた『はい』の文字に触れる。

【ありがとう。今紹介状を書くから待っててくれ】
【これが紹介状だ】

 おい、待てって言わなかったか?
 なんで即行なんだ。
 さすがゲーム。さすがNPC。

 紙切れを受け取ると、光の粒子になって消えた。
 インベントリに入ってるよな?
 ……あったあった。

「じゃあ行ってくるよ。いくら仕事とはいえ、あんま無理すんな」
【――ありがとう。君の事は忘れないよ】

 今生の別れでもあるまいし。

 ゴミ溜めな砂浜を後にして、俺は森へと向った。





 クエスト画面を開くと、同時に地図も視界に現れた。
 またもや赤く点滅するマークがあるな。で、触れてみると『木こりのマサオ』と出てくる。
 どうでもいいがマサオって……日本人かよ。

 目的地は森の入り口だな。
 この辺のフィールドは草原で、まだノンアクティブモンスターしか生息していないようで、移動に関しては安全だ。
 海岸と違って、草原に生息するモンスターは植物系とか動物系がほとんど。雷との相性はあまり良くない。
 お陰で格下でも一撃で仕留めるのは難しいな。

「ふぅ、ふぅ……『ヒール』」

 初めての神聖魔法だ。
 一回の戦闘で一撃食らう。そのくらいの割合だが、紙装甲だし、元々HPも低いしで、戦闘終了後には『ヒール』必須状態だな。

 目に付くモンスターを片っ端から虐殺していくと、目的地であるマサオの下に到着するまでには兎の肉が十五個になっていた。
 クエスト内容には数の指定はないし、多くてもいいよな。





【おぅおぅ、大丈夫べか冒険者さんよ。ほら、次の丸太だべ。それとも終わりにするべか?】

 マサオの下に到着して早速仕事を始めて、切った丸太を数メートル先に停めてある荷馬車まで運ぶ。
 戻ってくるとこの調子だ。
 さすがマサオ。どこの方言だ。

 運ぶ丸太は太ももぐらいの太さで、長さは二メートル半ぐらいか。普通に考えたら持ち上げれる気がしないが、そこはゲームなんだよな。
 若干重みは感じるが、それでもひょいっと持ち上げられるし、苦に感じる事もない。
 終わりにするかと聞かれても、もやし君だと思われるのもしゃくだし続ける。

 そろそろ荷車がいっぱいになりそうだという所でついに――

【冒険者さん。あんた本当に働き者だべなぁ】

 こちらもセリフが変化した。

【そろそろ荷馬車もいっぱいだべ。ここいらで休憩でもすっか?】
「すっかって、丸太でいっぱいになった荷馬車はどうするんですよ。休憩後に続けるにしても、もう乗せられないだろ」

 首に巻いたタオルで顔を拭く動作のまま硬直したマサオ。
 考えてるな。どんな返事をしようか、考えてるだろ。
 このゲームのNPCって、本当に中の人いないのか?
 時々運営が画面見て、返事用テキストをその都度考えてたり――する訳ねえか。
 何千、もしかしたら何万というプレイヤーがいるかもしれねえってのに、直接テキスト入力とかやってたら、どんだけ運営アルバイトが必要なんだって話しになるしな。

【それもそうだべな。さて困っただなぁ。一度町に戻るべか】
「あぁ、じゃあ俺が行きますよ。クエストの報告しにギルドにも行かなきゃならないし。ただまた荷馬車運んでここまで戻ってくるのがなぁ」

 そしてまた硬直するマサオ君。いや、中年のおっさんだけど。

【それは大丈夫だべ。わしんところの馬っこは賢いから、ちゃあんと自分で戻ってくるべさ】
「マジかよ」

 荷馬車を見ると、何故かドヤ顔をして「ブヒヒヒン」と鳴く馬。
 まさか馬NPCにまで人工知能が搭載されてんのか?
 どんだけ無駄な経費使ってんだ。

 まぁ自分で森まで戻って来るってんなら、町に戻るだけだから楽でいいや。

「そういう事ならマサオさん、乗せられるだけギリギリまで積み込むぞ! さぁ切れ。早く切れ」
【――やれやれ、元気だべなぁ】

 マサオさんが斧を手にして振りかぶる。その脇から見える先、仲睦まじいパーティーの姿が見えた。

「やっぱり火マジさんサイコーっすね」
「うんうん。遠距離からの高火力は、やっぱ花形スター的存在だよな」
「遠距離マジ、やっぱこれだよな」
「ちゃんと遠距離だから安心できますよね」
「アコもね、女の人がパーティーに増えて嬉しい」

 ん?
 なんか聞き覚えのある声……。

 木を利用してこそこそと近づき、そのパーティーの面々がしっかり解る所までやってきた。

 剣士のケン。
 盗賊のシフス。
 タンクのランス。
 弓のロビン。
 そしてヒーラーのアコ。

 な、なんで四人が一緒にいるんだ?
 だってお前ら、知り合いに呼ばれただのクエがあるだの、観光に行くだの言ってたじゃないか。
 それになんだ、あの女魔法使いは。

 も、もしかして……

「火マジなんていくらでもいるじゃない。っていうか、基本でしょ? 火属性は」
「「いやいやいや」」
「そうじゃないのもいたんだなぁ」
「しかも……ですもんねぇ。アコ、すっごく大変だったんですぅ。常にマジックさんのHP管理してなきゃならなかったから」

 アコさん……俺、迷惑掛けてたのか。
 いやでも、一度でも『ヒール』貰った記憶、ないんですけど?

 しかし、火属性を取ってないって理由ではぶられてしまっていたとは……。
 それなんて職業差別なの?
 糞っ。前衛過多によるはぶられるのを避けて選んだ魔法使いだってのに、またはぶられるのかよ!

「でもマジックさん、すっごくイケメンで、アコうっとりしてました〜」
「……アコちゃん、あれただのアバターだから!」

 くそう。今からでも火属性の技能取れないか。

「そうそう。しかもあんだけ作り込むとか、絶対キモヲタだぜ」
「リアルでは実現できないイケメンフェイスを、せめてゲームでぐらいはっ事だよね」

 受付ロビーの女NPCは、ゲーム内でも修得できると言ってたし、どこかで教えてもらえるかもしれん。

「気持ちは解らなくは無いが、さすがにあの完成度は引くな」
「えぇ〜。アコはすっごくステキだと思うんだけどぉ」
「その辺は男女の意見の違いだと思うわ。そんなにかっこよかったんなら、私も見てみたかったわぁ」

 町に戻ったときに探してみよう。

 音を立てず、静かにマサオさんの下へと戻ると、丸太が十本用意されていた。
 ふつふつと沸きあがる苛立ちをパワーに変え、両脇に丸太を抱えて荷馬車へと向う。

「うおおおぉぉぉっ。どんと来いやぁあぁっ」
【冒険者さん。随分とやる気十分だねぇ。何かあっただべさ?】

 NPCにこんな話ししても仕方ないよな、と思いつつ、なんとなく愚痴を溢しながら丸太を運ぶ。
 かくかくしかじかで、俺は火属性魔法を取らなかった事を後悔していると。それさえあれば、俺ははぶられる事も無かったのにと。

 あ、またマサオさんが止まった。

【そうかいそうかい。なら良い事を教えてやんべ】
「いいこと?」
【そうだんべ。さっき到着した移民船に大賢者様が乗ってたんだべ】
【暫くは町にいるって事だ、探して教えを乞うてみたらいんでないべか?】

 ほうほう、大賢者か。そんな奴いたっけか?
 まぁ俺が乗ってた船以外に居たのかもしれない。
 しかし……

「ところでマサオさん。移民団が到着したのはさっきだと言っただろ。ずっと森に居たであろうあなたが、なんで大賢者の到着を知ってんだ?」

 硬直するマサオさん。
 考え中。
 考え中。

【何日も前から噂になってたんだべっ。大賢者様が移民船に乗ってやってくるってっ。だから知ってたんだべさ】
「そうかそうか。そんなに汗かかなくていいから」
【ほならわしは、仕事を続けるべ。お前さんは荷馬車と町の材木屋まで届けてくんろ】
【丸太代の一部をお前さんへの報酬として渡してくれるよう、今手紙を書くだ。待ってけろ】
【ほな、これが手紙だべ。材木屋のオムジに渡してけんろ】

 相変らず書くの早いな。

《クエスト【木こりのお手伝い】が完了しました》
《クリア報酬50EXPを獲得》
《クエスト【丸太を材木屋オムジに届けろ】を受諾しました》

 ぉ、光ったぞ。
 これでレベル5か。
 
考え中――某教育委員会クイズのアレをご存知の方は、あのフレーズで脳内再生して頂けると嬉しいです。

脳内最低→脳内再生に修正しました。
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