84:マジ、脱ぐ。
「装備にはそれぞれの部位ごとに、重量ポイントというのがあるですの」
「重量ポイント?」
「はいですの。それぞれ10ポイントですのよ」
武器だろうが防具だろうが、等しく10ポイントなんだとか。実際の重量とは関係ないらしい。
じゃあなんで重量ポイントって言うのか。
「それは……」
あ、ブリュンヒルデが固まった。シンキングタイムか。
しかし、そんなシステムになっていたとは。
え? じゃあ俺って、このまま上半身裸のまま?
「創造神様が御作りなった世界の理ですの!」
「うおっ! ビ、ビックリした。そ、そうか」
急に大きな声で叫ぶんだもんな。驚いたよ。
要は開発が作ったシステムだろ。
くそう。全身合成装備の野望が。
素の状態だと装備の重量ポイントは10。合成装備の場合、形として残した方は10で、能力抽出用が5になる。
今回だと杖10、上半身5に。
上半身部分の残り重量ポイントは5しかないので、普通の状態の装備は着れないと。また合成装備であっても、上半身装備を形として残したものも重量ポイントオーバーになるので着れない。
うーん。意外と面倒だなぁ。
ひとまず裸族はまずいし、12装備のコートとズボンを合成ーー
「マジックさんはそのままでも十分素敵ですの」
「は? え?」
き、急に何言い出すんだ、ドキッとするじゃないか。
「合成前のデザインが気にいらなかったみたいですが、どんな姿でも素敵ですの。でも今は……もっと素敵ですの。マジックさんは、自分に自信をもつですの」
なんて赤い顔してもじもじしながら言われたら……
港町に戻って待ち合わせ場所で待機。
その間、道行くプレイヤーの視線を一身に受ける。
「あの……放電さん、なんで半裸に?」
第一待ち人が開口一番にそう尋ねてきた。
うん。もっともな質問だ。
だからこう答えよう。
「素敵だからだ!」
「……あ、はぁ」
どん引きだな。でも気にしない!
素敵と言ってくれる人がいる限り。
「あ、王子さ……ま?」
「今度は裸族のプリンス?」
「いいと思いますよ!」
やってきた待ち人女の子メンバーは、俺を見るなり黄色い歓声をあげる。
「うはっ。放電氏、脱いでも凄いんです?」
「STRいくつあるんだ。いい腹筋だな」
何を言ってるんだ。STRなんて1しかないんだが。
まぁ確かにいい腹筋だよな。体の作りって、ステータスに依存してないんだろう。
「集まったならこっちに来てくれ」
全員を路地裏に誘導して、合成ペットフードの講義を開始する。
木の実五個と袋一つを合成すると、いい感じの味になる。それ以上だと濃い味になってぷぅは喜ぶが、カロリーの事を考えるとなぁ。
当然、少ないと薄味だ。
「放電さん、ゲームなのにカロリー気にするのかよ」
「いや、ただでさえこんな体型なんだぜ? 万が一、食わせた物で体型が変化するシステムだったら……」
そう説明すると、何人かは「なるほど」と腕を組んで考え込む。
が、中にはこの丸いフォルムこそが魅力なのだと……。
《ぷう、ぷぷぷぅ》
「あなた、分かってるじゃない。だとさ」
まぁ他所様のペットだしいいんだけど。
何人かのピッピはもう孵化してるな。
まずは好みの木の実を探すべく、一袋ずつ各木の実を合成していく。
孵化しているピッピの飼い主にそれぞれ団子を一つ持たせて、どの木の実が好みか確認して貰った。
《ぷぅ、ぷぷぷぅぷう、ぷぷぷぅ》
「あ? あたちは好き嫌いなく、全部好きよ、だって? お前の好みを調べてるんじゃないぞ」
《ぶっ。ぶっぶっ》
「痛い、あいたたたっ」
くそ。こいつ最近、やたら飼い主を突くようになったな。
そうこうするうちにピッピの好みが分かったようだ。ついでに、同種のペットでも好みは別れる事も分かった。
と言っても、木の実合成団子ならどれでも好評みたいだ。
まだ孵化してないメンバーは適当なのを持って行ってもらい、孵化済みメンバーは好みのフードを持って行って貰う。
「放電さん、サンキュー。合成費用は?」
「え……」
考えてなかった。
ペットフードも、木の実も彼等持ちだし。合成剤は素材を集めてタダで調合して貰ったやつだしな。
《ぷ》
「あ 50エンよ? おいおい、それじゃあダークエルフの合成屋と同じ価格じゃん」
《ぷ、ぷぷぷぅぷ》
「あ? 稼げるときに稼げ?」
《ぷ! ぷう、ぷぷぷぅ》
「冒険者にとって貧乏は、天敵よ?」
まぁ貧乏だと装備も買えない。言いたい事は分かる。
「ぷふふ」
「ぷぅちゃんって世話女房ね」
《ぷ!》
「あ? 当たり前よ?」
皆の言葉に気を良くしやがって。
《ぷぷぷぅぷう、ぷぷぷぷぅ》
「はぁ、あたちがいないと、この人だめなのよぉ!?」
「「あはははは」」
「放電氏、完全に夫婦漫才だぜ」
くそっ! こいつと夫婦とか、冗談じゃないぞ!
まぁ、大きくなってもふもふできるようになれば、少しは可愛くなるんだろうけど。
その後、ペットフードの在庫が少なくなったらメッセージ送るから――彼等全員と約束され解散となる。
ご、合成剤を常備しとかないと……。




