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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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75/103

75:マジ、純白の布に包まれる。(あの部分だけが)

 教えて貰った川は直ぐに見つかった。
 地図には載ってないが、ダークエルフの集落から真東に進んで森を抜けるとすぐだった。
 新しく実装された遺跡とやらは、ここから五分程度の所にありそうだな。ここがダンジョンだってのはダークエルフ達に聞いたし、今度行ってみよう。

 小石がごろごろ転がる川原に、水が流れているのは僅か幅二メートルほど。
 ざぶざぶ入って行っても、せいぜい足首ぐらいしか深さが無い。

「さぁ食らえ! 毬栗ハンマー!『サンダーッ』」

『沢ニッパー』。蟹である。
 また蟹か。
 今度は甲羅が五十センチほどで、全体的に苔色をしたハサミの小さい蟹だ。
 レベルは18で、俺と同じである。
 まぁ案の定、水属性っぽくてサンダーの通りが非常にいい。
 魔法一発、あと杖殴り一発で仕留められる、いい得物だ。

 何匹か倒したし、インベントリを確認しておくか。

 うん。
 それらしいアイテムがまったく入ってない。それどころか、蟹ドロップらしき他アイテムも一切無いぞ!?
 どういう事だ!?

《ぷっぷ、ぷぅ》
「何? コスライムがいただと。どこだ!?」
《ぷっ》

 ぷぅが羽で指した川原に、動く石が見えた。
 水色の石……

「そこかぁーっ! 毬栗『サンダーッ』」
《ぷるっ》

 サンダー一発で蒸発か。相変らずHPが少ないモンスターだな。
 さて、インベントリは……

「無い!? 何も入ってないっ。どういう事だ?」
《ぷ?》
「ドロップが一切無いんだよ、こいつら」
《ぷぷぅ》
「は? お前が全部拾ってる? どれ」

 ぷぅのリュックに触れると、清算してスッカラカンになっているはずのぷぅインベントリにアイテムが数種類入っていた。
 そうか。こいつが率先して拾ってるのか。
 どうやって?

 と、システム的な事は突っ込まないでおこう。
 安心して狩りに励む事一時間。随分と材料も集まったな。
 コスライムがやや少ないのでジェルの集まりが悪い。まぁそれでも合成剤百個分ぐらいになったか。

 もう少しでレベルも19だし、もうちょっと頑張ってから戻ろう。
 次の得物だ! とばかり振り返ると突然、辺りから沢ニッパーの姿が消えた。

 波紋が広がる川面。
 ぶくぶくと泡が立ち、突然大きな水しぶきが上がるっ。
 な、なんだっ。何が出てくるんだ!?

 噴水のような水しぶきが収まると、そこには巨大ナメクジが……いや、あれはっ――

「なまこ!?」
《じゅるるーん》

 全長三メートルほどのピンク色をした派手ななまこが登場!

「おい、お前! そんな巨体が水深十センチあるかないかの川で、どうやって潜ってたんだよっ」
《じゅる!? ――じゅるるるる〜ん》

 スルーかよ!
 理不尽過ぎるだろっ。

 ピンクなまこの『沢の主、べっとべとのモモコ』が巨体を持ち上げ、行き成り口? から液体を飛ばしてきた。
 やばいっ。まさか酸攻撃か!?

 躱す間も無く、まともに液体を全身に浴びてしまった俺。
 あぁ、本日二度目のデスペナか。まぁ集めるものは集まったし、いいか。

 な〜んて事を思ったが、いっこうにダメージを食らう気配がない。
 服も溶けていない。
 一瞬、心の中で舌打ちする。
 溶けてくれればよかったのに――と。

 ん?
 服……溶けないが……

「ぬ、ぐ……か、体に張り付いて、う、動けないっ」

 液体が服に付着し、それが体に纏わりついて動き難いなんてものじゃなく、まさに動けない!?
 なっ、なんて攻撃だ!?

《じゅるるるぅ〜ん♪》
「ひぃ、やめろっ。こっち来るなぁっー! 『カッチカチィ』」

 巨体で突進してくるモモコに対し、バリアを展開して防ぐ。
 正直、なまことか触りたくないです。

 だが無情にもバリアは一瞬で割れ、モモコのぬめっとした感触が頬を撫でた。
 ぐ、ぐひぃー!
 やっぱカッチカチはボスやネームド相手に効果が薄いな。

 しかし、動けないのにどうやって戦えってんだ!

「おい、お前! 卑怯だぞっ」
《ぷ、ぷぷぷう!》
「ぷぅもそう思うだろ」
《ぷ!》
《じゅるるん》

 くそっ。まだ動けない。どうすりゃいいんだ。
 そうか。これがあるから「動きやすい格好」と忠告してたんだな。
 けど動きやすいって、具体的にどんなだよ!
 どんな服着たって、液体まみれになれば体に張り付いて動きを封じられるんだろ。どんな服着た……
 え……

「おぃ、嘘だろ。まさかこの為のアレなのか!?」
《ぷぅ?》

 どうしたのよと尋ねるぷぅを横目に、俺の脳裏に最悪の物が浮かび上がる。
 くっ。こんな所でアレを……アレを装備しなきゃならないのか!?

《じゅるるる〜ん》
「ふわあぁぁぁっ、来るなっ『焔のマント!』」

 ごおぉぉっと燃え上がった俺に向って、臆する事無く突進してくるモモコ。
 そりゃそうだよな。水属性モンスターなんだし、火なんて怖くないよな。
 一桁ダメージエフェクトを上げながら、マントをぶち破って来やがったっ。

「ぐはっ――」

 い、痛い。
 五メートルほど吹っ飛ばされたか。今のでHP半分持っていかれた。
 しかもこっちは未だに動けないし、次の攻撃で死ぬ!?
 急いでポーションを飲み、ヒールで全快にする。

「ふおおぉぉぉぉぉっ!! 誰も居ない! 誰も見ていない! 居てもこれはゲームだ! 本当の俺じゃない! だから……」

 意を決してインベントリに収まったアレをタップする。

「俺、覚醒!!」

 一瞬にして黒いロングコートが消え、はいていたズボンも消え、手袋も、靴も……着ていた物が消えうせ、代わりに――
 清潔感漂う白い布が股間を覆い隠す。
 ……ダンディー水着という名のふんどし。
 なんとなく、お尻に布が食い込んでいるような……うっうっ、誰も見てないよな? な?
 くそうっ。

「ぬおおぉぉぉぉぉっ。羞恥心を捨てるんだ! 捨てるんだあぁぁっ!!」
《じゅるるりら》
「涎垂らすんじゃねえぇ!! 毬栗『サンダーッ』」

 再び奴の口から液体が飛んできたが、この姿だからか、被っても行動を妨げる事はなかった。
 反対にこちらは奴の弱点攻撃だ。
 放電するトゲトゲを突き刺せば、小さな雷が奴のぬめっとした体の表面を駆け巡る。

《じゅ、じゅるうぅぅっ》
「ふはーっはっはっは。こっちも食らえっ『サンダーフレア!』」
《じゅじゅっじゅーっ》

 火属性のダメージは少ないが、雷属性のダメージはサンダーよりもでかい。
 うーん、雷属性の単体攻撃魔法も増やしておくべきだったなぁ。
 あれも作りたい、これも作りたいで、やっぱIMPはガッツリ必要だな。

《ぷっぷぷぅ》
「なに? 奴が膨らんでいる? いやいや、お前じゃあるまい――ふえぇ!?」

 肩にとまったぷぅに視線を向けた瞬間。陽の光が遮断され、何か巨大なものによって大きな影が生まれた。
 見上げればそこには巨大なまこ。
 うそんっ。





 さすがにネームドモンスターを一人で倒すのは至難の業だな。
 手持ちのライフポーションも残り僅か。あとはライフマジポか……。ポーションの回復量が少なくって、一本じゃHP全快しないんだよなぁ。
 そのくせ、食らうダメージは通常攻撃でも四割近く飛ぶし。

《ぷっぷっ》
「わかってる。奴のHPもあと三割削れば倒せるんだっ。ここで諦めてたまるか!」

 巨大なまこことモモコを前に仁王立ちした俺は、拳を突き上げ天高く吠えた。

 ピロリンっというヒールを使った時の様な音が聞こえ、俺の傷が癒える。
 更にぴろぴろりんっという音が鳴り、赤い光のエフェクトが俺の体を覆う。
 これ、何かのバフスキルか?

《んじゅるぅーっ》
《ぷっぷぅ!》
「くっ。『サンダーフレア!!』」

 嫌だが、物凄ぉーく嫌だが、奴の体のどこかわからない部分を鷲掴みし、力を込めて魔法をぶっぱなす。

《げじゅるぅっ》

 魔法ダメージ以外に『60』という数字が出てるな。
 あぁそうか。これ鷲掴みのダメージか。あんまり気にしてなかったが、こうなったら鷲掴みしまくって物理ダメージも入れていくかっ。

 右手でぐわしっ。
 すぐさまサンダー。そしてぐわしっ。
 うん、こうなると左手に装備した杖が邪魔だな。だからって装備を外すわけにもいかないし。

《じゅるるんっ》
「ぐふっ。余計な事考えるんじゃなかった。躱しそこねちまった」

 が、すぐに俺の体が緑色の光によって癒される。
 も、もしかして、これは誰かがヒールを掛けてくれている!?

「あ、ありがとうっ!」

 今は戦闘中なので、相手を探す事もできない。が、背後の茂みががさがさ聞こえるので、たぶんそっちに居るのだろう。
 ありがとう、マジありがとう。
 出来ればもう暫くヒールください。

 その願いが届いたのか、モモコからダメージを受けると間髪居れずヒールが飛んでくる。
 更に二種類のバフも飛んできた。

 一つは物理攻撃力上昇バフ。
 もう一つは攻撃速度上昇バフ。

 うん……俺にはなんの恩恵もありませんね。
 でも折角のご好意を無駄にするのも失礼ですよね。

「ふおりゃあぁぁぁっ!」

 右手で掴んで、サンダー撃って、左手の杖でど突いて――あ、なんか杖が凄く軽い。
 サンダーフレアしてサンダーして、CT明けるまで掴んでど突いてまた掴んで、そしてサンダー!
 時々杖で二回攻撃とかしちゃったりして、これ楽しいな。

「これで止めだ! 『サンダーフレア!』」

 突き出した右拳で鷲掴むと同時に、イカヅチを纏った火柱が奴の体を覆う。

《じゅる、じゅ、じゅじゅっじゅ……》

 黒こげになったモモコの巨体が倒れ、川の水がジュっという音を立てて瞬蒸する。
 白煙が上がったがそれも一瞬だけ。
 すぐさま光の粒子へと変貌し、その瞬間、俺自身が光ってレベル19になった。
 やがて小川は元の静寂さを取り戻――

《カニカニ》
《ぷるるん》
《カニカニカニ》

 蟹タイムが始まっただけだった。
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