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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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74/103

74:マジ、ダークエルフに同情する。

 清算が終わると、それぞれ解散になった。
 夢乃さんは調合技能を上げる為に。ドドンは鉱石を探しに彷徨う為に、セシリアはウミャーと暫くじゃれているんだとか。

 俺はファクトに行き、魔法攻撃力かINT補正のある手袋を探した。
 懐も潤ったし、レアでも買ってやるぜ!

 えーっと、INT+6、地属性ダメージアップのレア手袋が8000エン。
 INT+6で魔法攻撃力+10の素材が違うものが9500エン。
 補正がINT+6だけのハイクラス手袋が3500エン。

 え、えーっと、靴は材料不足で作れなかったっていうし、じゃあ靴でも。

 AGI+5、足技ダメージ補正? そんなものもあるのか。
 8500エンね。
 うん、却下。
 AGI+1のハイクラスが3000エンで売られてるな。防御力とHP補正がノーマルとほとんど変わらないが、今のレア靴と比べると……あ、ワンランク下でもレアのほうが補正いいな。

 ふ……レベル20の装備に備えて節約しようってことで、何も買わないっと。

 新しい装備に足以外を包み、ファクトから東の森方面に向けギリギリ行ける所にテレポする。
 出てくるモンスターのレベルは18から19と、やや上がってはいる。
 だが、見た目はハレンチでも、性能は神装備!
 うぉー、奴等の攻撃が痛くないぜーっ!

《ギュイィーン!》
「げふっ」

 嘘です、少し、いや結構痛いです。
 カマキリのような見た目のモンスターが、持ち上げた鎌ならぬ、ドリルで俺の腹を攻撃してくる。
 そこに身を守る布は一切なく、直接腹をドリドリされて痛い。
 いや、特にクリティカルとかいう訳じゃないんだが、気分的に、な。

 これ古い装備のままだったら、結構危なかったかも。
 性能には感謝し、合成でこのハレンチなのを打開しよう。

 危ない目に合いつつも、なんとか森まで到着する。すると、一人のダークエルフが俺に向って手招きをしていた。
 くっ、これは罠か!?
 ダークエルフといえば汚い手段で人を騙し、寝首をかく! が常識だもんな。
 だからこそ奴は――ん? 女ダークエルフだな。
 だからこそこの女は、妖艶な笑みを浮かべてるんだ!!
 そして口を開けば甘ったるい妖艶な声で――

「やぁ、やっと来たですの。君の事はシルフから聞いていましたですの。だから、ここで待ってましたですの」

 ですの?
 どこのギャルゲーヒロインですの?。





 手招きしていた女ダークエルフに連れられ、俺は森の中を歩いていた。
 真っ直ぐ歩いているように思えるのに、振り返ると今通って来た道はくねくねと曲がっている。
 どういう事?

「あぁ、それはですの。この森自体に魔法が掛かっていて、我々と同じダークエルフしか入れないのですの」

 その魔法の影響で、道がくねくねしているように見えるんだとか。
 外部の人間を中に入れさせないための魔法なのか。さすがダークエルフ。人間嫌いがぱねぇ。

「それで、シルフってのは?」

 どこの女だ――と思ったら、俺の頬をすぅーっと風が撫でる。
 そして半透明の全裸な女の人がががががががっ。

「ひっ」
「あははははは。外を知る同胞は、精霊を怖がるですのねぇ」
「せ、精霊っ」

 そうか、シルフって風の精霊の名前だっけか。
 半透明な全裸な女性。しかしその身長は俺の掌ほどしかない。
 全裸だと思い込んでいたが、よく見ると(いやらしい意味ではない)全身タイツのような、シルエットのような、とにかくやらしい部分などはなかった。
 残念だとはこれっぽっちも思っていない。思っていないからな!

「精霊はちゃんと見えているようですの。という事は、一応魔法の素養はあるわけですの」
「属性魔法なら幾つか使えるぞ。えーっと雷に火、土と、炎雷。それから神聖ま――」
「ちょっとちょっと、待ったです。炎雷? しかもまさか神聖魔法も?」

 なんで驚くのか理解できないが、使えるのは事実なので頷いてみせる。

「ダークエルフ族が神聖魔法なんて、聞いた事が無いですのぉ」
「いや、そう言われても」

 キャラ作成の時に、別に何も言われなかったし。
 随分驚かれたが、それもこれも「外で暮らすダークエルフだからか」の一言で自己解決された。
 よっぽどこの森のダークエルフは、世間と隔離された生活を送ってんだろうな。

 それにしてもこの人の喋り方、なんか独特と言うか、変。
 ここの開発はこういう変語が好きなんだろうか。

 森を進む事十分。

「さぁ、あそこが我らの第二の故郷となる、シュトナの集落ですのぉ〜」

 そう言って彼女が指差す方角には、こぢんまりとした山小屋風の建物が幾つも建ち並ぶ、なんとも薄暗い集落だった。
 なんだろう……凄く……貧乏臭がする。

 そんな集落に近づくにつれ、俺の思いは確かなものへと変わる。
 もうね、木の板で作られた家なんてね、小屋だよ小屋。せいぜい一部屋か二部屋あるかないかの大きさしかない。そのうえ、あちこち痛んでいるようで、小さな穴がいくつも見える。窓ガラスも割れてるし。貧乏だろこの集落!
 そこに住んでいるのだろうダークエルフ達の服装も、あちこちほつれてたり、つぎはぎだらけだ。
 もんぺみたいなズボンにランニングシャツ姿の、どこからみても農夫スタイルなダークエルフまでいる。

「さぁさぁどうぞ。この大陸に移住して僅か十年だけど、同族の客人が訪れたのは初めてですます。外で暮らしていたのなら、ダークエルフならではの事もあまり知らないでしょう。なんでも聞いてくれたまえです。なんでも話してあげるのです」

 キタコレ。
 新しい技能のオンパレード間違いなし!!





 ダークエルフ達の一日。

 朝。遅くまでぐっすり眠り、世の奥様方がそろそろ昼食の支度でもと動き出す頃に起きる。
 そして遅すぎる朝食のあと、狩り畑仕事などにそれぞれ出かけていって、食うに困らない程度の実りを持ち帰ってくる。
 持ち帰った素材なんかは加工し、時折やってくる人間と取引しているらしい。

 そんな、極々日常的な話を何人ものダークエルフに囲まれて淡々と聞かされた。

 違う。
 俺が聞きたいのはそういう話じゃないんだ!

「この森は我々が掛けた魔法によって隔離はされているが、北のほうにいけばコスライムが大量に生息しているんだ」
「そいつから取れる素材を使って、いろんな物を作っているんだよ」
「森の東に行けば古い遺跡もある。地下にも続く遺跡でね、ここでもいろんな物が取れたんだよ」
「あぁ、でも。今回やってきた移民船には、多くの冒険者が乗っていると風の噂で聞いたからね、もう我々は行けないだろう」
「そうだな。人様に迷惑をお掛けしては申し訳無い」

 め、迷惑?
 どういう事だ?

 自分達の先祖の裏切りによって、世界に混乱を招いた。そして甚大な被害も齎した。
 だから、我々ダークエルフはこれ以上、人に迷惑を掛けるような生き方をしてはいけない。
 今生かされていることに感謝し、影に生きる。
 それがダークエルフという一族なのだ、と。

 そんな事をしんみり語らないでくれよ!
 ここのダークエルフ達はどこまで腰が低いんだ。

「あ、ほら冒険者さん。彼がさっき話していた、我々と取引をしてくれる人間の方だよ」

 一軒のダークエルフ宅に、所狭しと集まった連中の間から窓の外を覗く。窓といっても、この窓にはガラスが無い。修理できないのか、買えないのか、とにかく悲壮感漂う家だ。
 そのガラスの無い窓から見えたのは、麦藁帽子を被ったダークエルフに付き添われた人間の中年男性だった。

「彼が我々から素材や加工品を買取ってくれるおかげで、この集落はなんとか生き延びている」
「ありがたいことだ」
「まったく」

 ダメだこのダークエルフども。ダークの『ダ』の字すら無い!
 歩いてるだけの人間の男を拝んだりしてるし、ダークエルフの誇りはどこに行ったー!?

 再びダークエルフの日常話に戻り、暫くするとさっきの男は再び麦藁帽子のダークエルフに連れられて集落を出て行った。
 麦藁帽子のダークエルフ……激しく似合いませんけど?

「いったい何を売ってるんだ?」
「いろいろだね。我々が必要としない素材や食材。それに分解粉やポーション、合成剤なんかを取引しているよ」
「合成剤……だと?」

 一筋の光明が見えた!!
 ここから直接買ったら、雑貨屋より安く仕入れられるんじゃないか?

「その合成剤、俺にも売って貰えないか?」
「君に? いや、残念だが売ってはやれなんだ」
「なんで!?」
「彼――合成屋のドナルドさんとの約束なんじゃよ。大罪を犯した我々ダークエルフなんかと取引してくれるような人間は、そうはおらん。いや、実際彼伝えに町の商人組合の方々と取引をしたいと持ちかけたが、返事はノーじゃったし」
「そこで彼が、自分には必要ではないアイテムも買ってくれて、ご自分の店で販売してくれているんですよ。そんな彼との約束で、自分以外の物と取引はしないで欲しい、と」
「私達はその約束を決して違えないと誓ったのだよ。彼が我々を裏切りさえしなければね。くくく」

 うっ。今一瞬、ダークエルフの深い闇が見えた気がする。
 そのドナルドって合成屋との約束ってのが――

「利益重視ではなく、人様に優しい低価格での販売です。我々は大罪を犯しました。ですから、せめて我々が作る品ぐらい、安く、お求め安い価格でご提供したいのです!」
「せめてもの罪滅ぼしに!」
「罪滅ぼしに!」

 ……なんかどっかのキャッチフレーズみたいなセリフが入ってたな。
 しかし、大昔の大罪をいまだに引きずってるって、どんだけネガティブなんだこの種族。
 俺もそんなダークエルフなわけですが。

 うーん。安く仕入れる事ができないとなると……

「ちなみに君は、販売する為に合成剤が欲しいのですますか?」

 俺を集落に案内してくれた、他のダークエルフより若い雰囲気の彼女が尋ねてくる。

「いや、自分で使うためだ」
「つまり合成技能を持っているですの。なるほど」

 しまった。うっかり喋ってしまった。
 まぁ外部との接触の無い彼等なら、知られても……って、さっきの男が合成屋って事は、トリトンさんが言ってた『悪い意味の知り合い』じゃないか!

「ああ、あ、あの。俺が技能持ちって事は、他の人には内緒で。特にさっきの合成屋とか」
「うんうん。言わないですの。あの人、自分と同じ技能を持っている人が居るのを、凄く嫌がるですの」
「実は我々ダークエルフも合成や分解技能を持っている者が数人いるんだが、彼の気分を損ねるといけないから黙っているんだ。だから君もこの事は秘密にして欲しい」

 お互いがっつり頷きあって秘密を共有すると、さっきの若い女ダークエルフが良い事を教えてくれた。

「合成剤も分解粉もね、調合で作れるですの。まぁレシピは我々ダークエルフしか知らないですけど、材料を自力で取ってくるなら調合はしてあげるですの」

 もしくは調合技能を持っているなら、レシピを教えてやるですのと言われた。
 持っていないし、取るつもりも無い。取ったところで技能レベルが低いとダメだというし、作れるようになるまで技能上げしてたら時間が掛かってしまう。
 俺は生産キャラじゃないし、趣味の合成を上げるだけでいいや。

「じゃあ材料になるアイテムを教えるですの。まずはスライムやコスライムが落とす『ジェル』。これはコスライムなら『コスライムジェル』といい、スライムなら――」
「『スライムジェル』か」

 うんうんと頷く彼。
 外の世界では素材として取り扱われていない物だから、間違って捨てたりしないようにと念を押された。

「もう一つ。甲殻類から取れる甲羅や、貝殻といったアイテムですの。これも素材として扱われてない物ですの。ジェルと甲羅類、それぞれ一つずつあれば合成剤が出来ますの」
「アバウトだなぁ。実際外でも素材扱いになってるのもあるけど」
「うん。そういうのは使ってないのです。外の人にとっても必要な物だからですの。私達が横取りするなんて……」

 そう言って、また大罪を犯した身だからとネガティブ発現が始まる。
 確かにダークエルフがポジティブってなんか違うけど、でももう少し前向きでもいいと思うんだよ。うん。

「ま、まぁ話を戻して。ここから直ぐ東の遺跡に向う手前に、地図にも載っていない小さな川があるですけど、そこに生息する『沢ニッパー』というモンスターが落とす甲羅は、合成剤の材料になるですの」
「コスライムなら集落の北側に群れてるが、その川にも少数だが生息しているじゃ。そこで集めると効率もよいじゃろう」

 ならその川に行くか。
 ふっふっふ。川って事は水属性モンスターだよな。
 つまり、久々に俺の雷が唸るぜぇ!

 意気揚々と集落を後にしようとする俺に、後ろから彼女が声を掛けてきた。

「あそこには時々主が出るから、動きやすい格好のほうがいいですのぉ〜」

 動きやすい格好?
 うーんよく解らないが、別に今の装備も……と思って改めて自分の今の格好を見てみる。
 シャツ無しでコートを着る、ただの変態です。 
*18話に登場する「ピッピ」の容姿を、お腹は白くから、全身真っ青に変更しました。
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