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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
71/268

71:マジ、火達磨で草原を駆ける。

「マジック、合成って装備品も出来るのかい?」

「装備? そういや、何が出来て何が出来ないって話は聞かなかったな」

「うーん、イベントの景品に面白い物を用意したかったんだけど……ボク、ちょっと偵察してきてもいいかな?」

「偵察?」


 そう言ってシースターは走って行ってしまった。

 ぽんっという音のあと、テキストチャットウィンドウが開き、


『シースター:合成屋に行って話を聞いてくるよ』

『シースター:マジックは好きに動いてくれてていいから。狩りに行くならパーティーも解散してくれていいよ』


 というシースターのメッセージが届く。

 了解とだけ短く返事を入れ、その間に冒険者ギルドで金策クエを探す事にしよう。

 しかし話を聞くって、何を聞くつもりなんだろうか。






 ギルドでは討伐系クエスト五つと、アイテム採取のクエスト三つ。それとギルド職員お勧めで、森の中に居る猟師に弁当を届けろというお使いクエを受けた。

 アイテム採取の方は、十個につき300エンくれるというので大量に集めよう。

 討伐系は森と草原で行える物を、採取系のクエのうち二つは草原に出るモンスターだというので、討伐と重複しているのをチョイスしてある。

 弁当は森なので、渡すついでに討伐もという時間の節約を重視したクエスト選びだ。


 クエストを受けてからアイテムの整理をする。

 今日の分は各自でって事になったし、ぷぅに預けた昨夜の分以外を売却だ。

 合成に使えそうなアイテムもあるが、ひとまず金が必要なんだし売ってしまおう。

 ボスから出た素材だけを残し、全部売り払ってしまうと所持金が万を超えた!!

 ご、合成剤買ってしまおうかな……。とりあえず五十個ほど……。

 雑貨屋から五十個の合成剤を購入し、残金が3000エンちょっとに。


《ぶぶぅ、ぶぶぶぶー》


 ちょっと、何無駄使いしてんのよ!

 とでも言っているのだろうか。

 雑貨屋のカウンター上で、ぷぅは腰に翼を充て俺を睨んでいる。


「お前の餌を美味しくするためでもあるんだぞ?」

《ぷ!? ぷぷぅ〜♪》


 ま!? それならそうと、早く言ってよ〜♪

 的な?


 ご機嫌なぷぅを肩に乗せ店を出ると、すぐにぽんっという音とメッセージが浮かんだ。


『シースター:偵察完了っと』

『シースター:町に入るみたいだけど、合流できるかな?』


 じゃあ町に入って来たときの門前で、という訳で待ち合わせする事に。


 到着するとシースターは既に待っており、やや興奮気味だった。


「えっとねえっとね、まずはこっちに」


 そう言って路地裏にやってくると、合成屋から聞き出した情報を話してくれた。


「まず、装備同士の合成は出来るって事。ただ部位の組み合わせによっては、合成不可もあるんだって。あと、一度合成して成功したアイテムに、更に合成をってのもダメみたい。100%破壊されるんだってさ」


 おぉ、恐ろしい!

 間違って合成成功した装備品とかに、二度目の合成して破壊されたら涙ものだ。

 やっぱり焦げるんだろうか?


「合成は一回きりか。レベルが上がっても、それに適性装備を合成していって、永久的にって思ったんだが」

「でもそれやっちゃうと、壊れ性能の装備が確実に出来上がるからねぇ」


 まぁ確かに。

 例えば、武器と防具を合成する。完成品は当然、攻撃力と防御力を兼ね備えた何かになる。

 といっても、元の性能の100%が引き継がれる訳ではないらしい。寧ろどちらかは劣化するんだとか。

 だがこの完成品に再び武器なり防具なりを合成できるとしたらどうだろう。

 繰り返していけば、最強装備が手に入ることになる。

 まぁバランスが崩れるよな。


「けどさ、例えばだぜ。各防具を武器と合成して、更に武器も装備すれば、相当な攻撃力にならねえか?」

「そのあたりも聞いたんだけどさ、自分は合成屋だからその先の事までは知らない、と言われちゃったよ」


 なんて無責任な。

 こうなったら自分で作って検証するしかないのか。


「あとね、装備品同士の合成は、どっちを形として残すかで装備箇所が決まるらしいよ」

「どっちかを?」

「うん。左が残すほうで、右が能力抽出用だって。わかる?」


 いいえ、さっぱりです。

 丼に入れるときの位置なのか?

 いや、そもそも装備品を合成って、丼に入らないんじゃね?


「その合成屋って、合成するときにどんな器使ってたんだ?」

「ボクが頼んだのはノーマルの短剣と、ノーマルシューズだったけど、ラーメンどんぶりぐらいの大きさだったよ」

「それで装備、入ってたのか?」

「ううん。入れてる様子は無かった。アイテム渡したら確かに器に入れる動作はしてたんだけどね、こう――にゅるっと入っていったよ」


 そう言ってシースターは苦笑いする。

 この辺はゲームっぽいんだねと付け加えて。

 そうか、入るのか。

 左側から入れる、右側から入れる。そんな違いなのかな?


 合成屋をシースターが持ち上げヨイショして入手した情報はこんなもんで、装備同士の合成が出来る事、成功品に更なる合成は出来ない事。だ。

 武器と防具で合成できるって、最高じゃね!


「ありがとう、ソースター。これで合成がより面白くなりそうだ」

「うん、そうだね。それで……今ソースターって言った?」

「……言ったか?」


 ま、まぁ似てるよね。オイスターソースとシースターって。


「言った。絶対」

「お、おう。わるいわるい。で、なんだっけ?」

「オイスターソースとごちゃ混ぜにしないでよね」


 何故バレたし!?


「実はね、イベントを開催するにあたって――」






 必死のレベリングが始まった。

 だが目的あってのレベリングなので、これがなかなか楽しい。

 新しい技能のレベル上げも出来るしな。


 シースターから頼まれたのは、イベントを企画して開催する際の賞品となるアイテムの合成だ。

 もちろん、装備品!

 だが装備を合成出来るようになるのは、合成レベルが20になってからだとか。

 俺も合成装備作って持ちたいし、頼まれなくても技能レベルを上げるぜ!

 その為には合成をしなければいけない。その為には合成剤を購入しなければならない。その為にはお金が必要。その為にはクエストをやらなきゃいけない。

 レベルが上がればモンスターとの戦闘も楽になる。時給での効率が良くなる。

 それは経験値だけじゃなく、金銭面でもだ。


「うおおぉぉぉぉぉぉっ! 金を寄こせぇーっ!」


 草原に出没するカウリスという、カウボーイハットを被ったリス相手に脅迫めいた戦闘を仕掛ける。

 リスといっても全長一メートル程もある巨大リスだ。だがリスとして巨大なだけで、ノーマルモンスターである。

 鷲掴みしてファイアを唱えれば、奴のHPは残り三割弱。

 MP節約の為に杖でと突いてみるが、大したダメージは出ない。残りHP二割。


《カウカウッ》

「お、飛んで火に入る夏のリス!」


 二匹目が現れたので、焔のマントを発動して焼きに回った。

 他に悪いリスはいねぇべかー。

 こいつらの持つ、ドドドングリというアイテムも、クエスト対象の一つだ。

 ドが二つ多いだけあって、そのサイズは無駄にでかい。


 焔のマントで草原を走っていると、突然見知らぬプレイヤーからヒールが飛んできた。

 俺が火達磨になっているとでも思ったのかな。

 人の親切を無にしてもいけないし、お礼を言おうと振り向いたんだけど……逃げられた。

 あれが辻ヒーラーってやつかな。今度俺もやってみよう。


 マント効果が切れるまで人気の無い所を選んで走り回っていると、結局燃やしきれなかったモンスターが数匹くっついていた。

 振り向いてサンダーフレアを唱えれば殲滅完了。

 ドドドングリ何個貯まっただろうか?

 インベントリを開いて確認していたら、唐突に攻撃を食らってHPが減る。


 何!?

 ど、どこからだっ!?

 辺りを見回しても、リスの姿は見えない。ちょっと離れた所にならいるが、あれはまだ索敵範囲に俺を捕らえてない奴だ。

 じゃあ……


《ぷっ》


 肩から飛び降りたぷぅが草の茂った地面に着地すると、《ぷぅー》と一声鳴いて翼で何かを指す。

 もぞもぞと動くそいつは、半透明の緑色をした――


「コスライムかよ!」


 小さくて草に隠れてやがったのか。

 っていうか、こいつ、HP減ってるじゃん。

 誰かと交戦中だったのか?


 踏みつけようとすると、ばうんっと弾んで踏めなかった。

 じゃあ杖でしばく。

 よし、死んだ。


「あいつ、なんでHP減った状態だったんだろうな」

《ぷ、ぷぷぷぷっ、ぷぷぅ〜ぷぷ》


 それはね、あんたがマントで走ってたから、途中で轢いたのよ。

 そう言っているように聞こえる。


 ……今の俺って、なんかやばくね?

 ぷぅの言葉が的確過ぎるほど、脳内翻訳されてるぞ。

 もしかしてそういう仕様なのだろうか。

 だったら……いいんだが。


《ぷるるる》

《ぶるるぅーっ》

《ぷるるんっ》

「げふっ。がっ。ぶふぉっ」


 脳内翻訳に戸惑っている間に、コスライムどもが襲ってきやがった!

 しかもよく見ると、周囲の草が風も無いのにがさがさ揺れてるし、まさかまだ居るのか!?


「そ、そうか……こいつら、移動速度が遅いからぁーっ!」


 今になって追いついた、と。


 草を掻き分け現れたのは、十数匹の緑色コスライムの群れだった。


「あっー!?」

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