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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション1.01【始まり】
62/268

62:うん!

 引越し先の村にログイン!

 すると直ぐにシステム音が鳴り【引越しの護衛】クエストの報告を行って下さいというメッセージが浮かんだ。

 行くともさ!


 昨夜荷物を運ぶ手伝いをした家に行って戸を叩くと、ここでもダダダダダという元気な足音が。


「ピリカの勇者様〜。いらっしゃ〜い」

「ははは。ピリカは音だけで俺が来たって事が解るらしいなぁ」

「――――うん! 解るの〜」


 今の間はシンキングタイムだな。

 もしかして、戸の前に立ったキャラクターの認識データとかで判断してんのか!?

 データとして俺だって解ってるだけなのか!?

 さすがNPC! 汚いっ。


 まぁ何が汚いんだって事だよな。うん。


「おぉ、ようやっと来たか。まったくせっかちな奴め。依頼の報酬も受け取らんと、帰りおるからのぉ」

「はぁ、すみません。他の三人は?」

「ちゃんとその日のうちに受け取って帰られましたよ」


 大賢者とトリトンさんが出て来てこう言う。

 俺だけ報酬受け取ってなかったのか。

 ま、まぁ、とりあえず受け取っておこう。

 さぁ、何をくれる!


 と、逸る気を抑えて平常心。


「ほれ、これが報酬じゃ」

「それとこれもよかったらお使いください」


 大賢者からは2000エンを、トリトンさんからはアイテムを幾つか貰った。

 2000……なかなかの大金じゃね!?


「それとこれもやろう。儂が若い頃に使っておったノーマル品じゃが、今持っておるお前さんの杖よりは性能が良かろう」

「え? ノーマルがレアより上?」


 受け取った古臭い杖と、今の俺の杖とを見比べる。


◆◇◆◇


 名称:海獣の杖(レア)

 効果:INT+3、魔法攻撃力+20。

     水属性魔法のダメージ+10%。MP+100。

     ヒール量+80。

 必須技能:特になし

 耐久度:5/150

 レベル:8


◆◇◆◇


 名称:ウッドロッド

 効果:魔法攻撃力+25

     MP+150、ヒール量+100

 必須技能:特になし

 耐久度:100

 レベル:16


◆◇◆◇



 おおぅ……水属性うんちゃら以外は完全に負けてるじゃないか。

 っていうか海獣ロッドの耐久度がマジやべーっ!

 そうか、レアは耐久度も高いんだな。

 さすがにレベルの差が出てるんだろうなぁ。

 今は水属性の技能も持ってねえし、素の攻撃力底上げならウッドロッドのほうが上だな。

 ありがたく頂戴しよう。


「大事に使うのじゃぞ。たまには手入れもして、長持ちさせろ」

「手入れは木工技能で使えるはずですから」


 うん。使った事無いけどちゃんとあるよ。


「また何かあったらいつでも尋ねてくるといい」

「私も学者として、何かお力になれることがあれば遠慮せず、言ってくださいね」

「はい! 俺も、また何かあればいつでも手伝いますから!」


 ふっふっふ。もちろんいつでも尋ねるともさ。

 トリトンさんは、何かと物知りで助かってるしな。

 それにまだまだ習得したい魔法技能はたっぷりあるんだからな。特に重力とか重力とか。

 ふふふ。だが焦ってはいけない。

 ここはじっくりねっとり好感度を上げて、向こうから技能を伝授してくれるのを待つのだ!

 時々こそっと下心は見せるけどな。


 三人に別れを告げて家を後にし、レベル上げでもしようかと思って村の外へと向う。

 

 がさがさ――という直ぐ近くの茂みから音が聞こえてきた。

 おいまさか。村の中だってのにモンスターが!?

 速攻で襲撃イベントかよ!


 そして出て来たのは――女の人!?

 普通の女の人!?

 しかもNPC!!


 な、何やってたんだあの人は。


 はっ!

 女が一人、茂みの中。

 ここはファンタジーな世界観。

 

 開拓途中の村といえば、便所がまだ整備されていないかも!!

 つ、つまりあの女の人は……草むらで……ト……ん?

 なんか女の人が手に持ってるぞ。

 はっ!

 ま、まさか、うん!?

 そのうん! を持ったまま女の人は移動し、とある家の軒先にあった笊の中へそれを……置いたーっ!?

 NPCが新種の嫌がらせ行為してんのか!?

 そしてまた移動。

 辺りをきょろきょろしたかと思うと、落ちていた葉っぱを持ち上げじっと地面を見ている。

 そんな所にあるのはだんご蟲ぐらいだと思うぞ?

 と思ったらなんか掴んだ!?


 その後何度か同じような葉っぱやら小石やらを捲っては、何かを掴んで――笊に入れるを繰り返している。


 うんの中にだんご蟲……これはどんな嫌がらせなんだ。

 そしていったい誰に対してなのか。

 NPCとはいえ、こんな悪質な嫌がらせするとか許せないぞ。

 ここはやっぱりGMコールするべきだろうか。


 そんな事を考えてたら、その女と目が合った。

 や、やばい。

 もしかしてうん! を投げつけられるかも!?


「あら、冒険者さん。私の事、気になるんですか?」


 気にならないでか!


「ふふふ。お兄さんかっこいいから、教えてあげてもいいかな」

「え?」


 なんか急に顔を赤くしたりして、何考えてんだこの女。

 っち。ゲームの世界でも女はイケメンに媚びるのかよ糞がっ。うんなだけに。

 が、よく考えたら、そのイケメンって俺の事であって、俺見て顔を赤くしている訳で。


 ふふ。かっこいいか。

 いいな。


 俺の所にやってきたうん! 女は、小声でぼそぼそと囁くように話しだす。

 自分の悪行を洗いざらい話すつもりのようだ。


「隠れている物を見つける事が出来る、『発見』を使っているの。そうしたらね……お兄さん、そこの小石を持ち上げてみて」


 言われて足元の小石を持ち上げた。

 その下にはだんご蟲がいました。

 俺はそっと小石を元に戻した。


 戻した小石を、今度は女が持ち上げる。

 そして徐にだんご蟲を――じゃなく、何故か突然どんぐりのような木の実が女の手に出現した!?

 どうなってんだ!?


「こうやって小石の下に隠れてた木の実を見つけられるのよ」


 いやいやいやいや、今どう見てもだんご蟲しか居なかっただろ!

 女は再び村の中をあちこち動き始める。

 葉っぱを捲っては木の実をゲットし、小石を持ち上げてはゲットし――

 時々先回りして、彼女が手を伸ばそうとしていた葉っぱを先に捲ってみる。

 何も無い。

 なのに彼女が改めて同じ事をすると、その手に木の実が握られていた。


 つまり――技能か!?


 彼女の後ろを追い続ける事数十分。

 笊の中が木の実でいっぱいになる頃――


「もうっ。冒険者さんずっとついてくるんだもの。恥ずかしくって『発見』も捗らなかったわ」

「そうなのか?」

「そうよ。じっと見つめてるんだもの。このままじゃ村の人達の分まで集められないわ。困ったわぁ」


 あぁ、他の家の分も集めてやってるのか。それは悪い事をしたな。

 うん! 女だなんて思って、申し訳無い。


「じ、じゃあさ、手伝うよ」

「あら! 本当? 嬉しい。じゃあついて来てね。私がお手本を見せるから、暫く見てて」


 というので彼女の後を再び追う。

 これじゃあさっきまでと同じだろと思いつつ、彼女がやっていることを注意して見た。


 きょろきょろして――何かを見つけたようにとことこ歩き出し、迷う事無く葉っぱを捲る。

 そして拾う。

 それだけだ。


 それを何度も何度繰り返し、何度も何度もじっと見た。

 段々目が疲れてきた頃――


【『発見』を習得しました】


 というシステムメッセージが浮かんだ。


「うおぉーっ! 習得したぞぉーっ」

「よかったわ〜。じゃあ、手伝ってね」


 といって彼女にウィンクされたのだった。

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