挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

50/103

50:マジ、NPCと共闘する。だがそれは罠だ!?

 聖女様サマだぜ!
 彼女は俺たちとパーティーを組むわけでも、直接戦闘をする訳でも無く、ただスキルで支援してくれるだけだった。
 が、それでもさすが聖女と言われるだけはある。

 ステータスALL+10。
 攻撃速度50%アップ。尚俺には恩恵が無いもよう。
 物理攻撃力上昇。尚俺には以下略。
 詠唱速度50%カット。現行、スキル名叫ぶだけなので恩恵は微妙なもよう。
 次回詠唱までの待機時間50%減。サンダーフレアが唸るぜウリリリリリィ!
 物理ダメージ50%カット。俺KATEEEEE!
 持続性MP回復。俺魔法撃ちまくり!
 聖女のヒール回復量。7777!! 俺のヒールいらねええ!
 聖女の範囲ヒールSUGEEEE!
 聖女の持続ヒール以下略!

 これで死ぬほうが無理があるんじゃね? って思えるほどの優遇ぶり。
 だがそこにはそれなりの罠もあった。

「アント追加十匹、きたばい!」
「また!?」
「休む間もないではないかぁ〜」

 セシリアが悲痛な叫びを上げるも、彼女のHPは常にマックスだ。
 聖女アイリスの持続ヒールは、回復量が1000ある。対してセシリアがモンスターから受けるダメージは、一発平均80程度だ。十匹にぼこられたとしても、回復量が上回っている。
 余裕だ。余裕で生きていられる。

「コボルトの団体客、追加で入りま〜す」

 けど、こう追加が多いいとなぁ。

「アント更に来ました!」
「あ、俺レベル上がったばい」
「おめ」
「おめ」
「おめでた」
《ぷ》
「誰だ! 今オナラしたのは!?」

 俺を見て言うな。しかも解ってて言ってるだろ。
 と、冗談を言える気力はまだ残っているようだ。

 かれこれこんな状況が三十分ほど続いている。
 村を出て暫く行くと景色から緑が減り、若干荒れたような土地になってきてからこうだ。
 これ、絶対聖女仕様だろ!
 彼女無しのパーティーだと、絶対この状況を打破できないぞ。
 いや、俺らにしても人数不足で殲滅がギリギリでしかない。その証拠に、まったく休憩できてねえもん。
 それでも荷馬車は進むし、歩きながら戦闘もしなきゃならない。
 なんせ荷馬車から離れると、馬がモンスターに襲われるとかいう仕様だからな。
 理解するまで、何度馬が襲われた事か。

「馬にもHPあるんだもんなぁ」
「ゼロになったら、やっぱり死ぬのだろうか」
「死ぬやろうねぇ。んで護衛クエ失敗扱いになるんやと思うよ」
「まぁ攻撃されんくなって暫くすると、馬のHP回復するけいいけどさっと、次来たぞ」

 ドドンの言葉で全員が溜息を吐き捨てる。
 休みたい――いっそ死んでもいいから休みたい!
 そんな風に思えてきた頃、更なる悲劇が訪れた。





「皆様が必死に戦っているというのに、わたくしは見ているだけなんて……神に使える者として恥ずかしい! 皆様、わたくしも共に戦います!」

 そう言って遂に聖女が戦場に立った!
 これで勝つる!

 そう思ったのは俺だけでは無いはずだ。
 実際ドドンや夢乃さんから歓声があがったしな。

 だが現実とはなんと惨いものか。

「えぇ〜い! とう〜!」

 と、拍子抜けするほど緊張感の欠片もない聖女の声。
 彼女は杖を装備しているわけでもなく、何故か素手でコボルトを殴っていた。
 そのダメージ量――1。
 反撃するコボルトのダメージ量も――1。
 お互い1ダメージずつ出して殴り合っている。

「不毛だ……あまりにも不毛過ぎる」
「予想を斜め下に行ってるな、あの聖女」

 あまりの残念さに、俺とドドンが溜息を漏らす。

「彗星君に感化されたんやない?」
「なんでそうなるんだよ」

 ルークといい、俺に感化されてこうなるっておかしいだろ?
 しかし今はそんな事はどうでもいい。
 聖女が参戦したからって、何も改善されないこの状況――いや、違う。

 ワンワンと五月蝿いゴボルト軍団。
 追加で出てきた奴等を聖女が殴ると、その集団が一斉に彼女の下へ向い、何故か新しい集団が岩陰なんかから出て来て俺達を襲う。
 俺たちを襲った連中が殲滅し終える前ぐらいに、おかわりコボルトが出現。
 これを聖女が叩くとおかわりコボルトが彼女の下へ。そしておかわりその二が出て来て俺達の所へ。

「聖女が二十匹に囲まれてフルボッコされてるぞおいっ」
「それでも20ダメだけどな!」
「わたくしの事はアイリスとお呼びくださいと言ったではありませんか」

 いや、そんな事今この状況で平然と言われても……。

 結局俺たちは常に三十匹近くを相手にするはめに。もちろん聖女――アイリスを襲ってワンワン吠えてる連中含めてだ。

「くっ。MPが無くなってしまうっ」
「セシリア、ポーションはあるか?」
「残り五本しかない」

 俺も途中の村まで来る間に数本飲んだが、元々の総量とINTが高いお陰で自然回復量も多い。その上バフで回復量が底上げされてるからな。
 リターンを使わなくなったのもあって、MPはなんとか節約出来ている方だ。
 だがINTの低い他のメンバーはそうも言っていられないようだな。自然回復量が1か2しか無いところでバフられても、それが2か4になる程度だし。

「俺のポーションを使え。海岸のゴミ拾いしてて集まったのがあるから、数には余裕がある」
「え? し、しかしマジック君だって、必要だろう? 自然回復量だってひく――」
「平気へいき。ほれ」

 これだけのモンスターだ。殲滅力を落とすと、どんだけ数が増えるか解ったものじゃない。
 ほとんど強引にマジックポーション十本手渡す。
 このゲーム、取引画面でアイテムの受け渡しする方法もあるが、こうして直接手渡しという方法もあった。
 ただこの場合、当然手で握るわけだから、一度に渡せる量に限界があるわけなんだが。
 だが戦闘中に取引画面なんか出したら邪魔で仕方ないからな。とりあえず今は十本だけ渡そう。

「うぅ、ありがとうマジック君。きっと生きてここを切り抜けよう。そしてこれが終わったら、倍にして返すから!」

 そう言ってセシリアは俺から受け取ったポーション瓶に口をつけると、それを一気に飲み干した。
 飲み終えたポーション瓶が光の粒子になる。
 すると『1000』と書かれた青い数字が彼女の頭上に浮かんだ。

 1000?
 マジックポーションの回復量って、そんなに多かったっけ?

「わっわっ。すっごい回復した!? ど、どうして」
「セシリアちゃん、それ、課金ポーションばい!」
「え? で、でもこれ、マジック君がっ」
「お? え? は!?」

 言われてインベントリを開くと、『ライフポーション特効薬』と書かれた課金ポーションの横に――何も無かった。
 うん。うっかりして課金ポーションを渡したようだ。
 そうか、取引可能なんだな、あれ。

「マジックくぅ〜ん」
「あー、うん、まぁ気にするな。飲めのめ」

 青い回復数字はセシリアの頭上にまだ浮かんでいる。今度は『50』ではあるが、どうやら即効性と持続性を併せ持っているようだ。なんて高性能なポーション。
 それに気づいたセシリアも、持続性分が勿体無いと思ったのか慌ててスキル攻撃を連発しだした。
 ほほぉ、なかなか賢いじゃないか。

 とはいえ、攻撃スキルといえば剣の初期スキルと、盾の初期スキルしかない彼女。
 正直、殲滅速度はそれほど変わらない。
 俺たちが必死な間も、あの人も必死にやらかしてくれている。

「きゃぁ〜、蛇ですわぁ」

 シャドウスネーク追加。

「きゃあぁ〜、蟻の軍隊ですわぁ〜」

 アント追加。

「えぇい。神の裁きをお受けなさい、このコボルトめっ」

 安定のコボルト追加。

 殲滅速度って、どうやったら速くなりますか?

 そんな時だ。
 一陣の風が戦場を駆け抜け、次の瞬間――

《シャーッボ!》
《アリアリ!?》
《ワンワ、ギャワンッ》

 シャドウスネーク、アント、コボルトの大半が光の粒子となって消えた……。

「ふぅ。間に合ったようですね。大丈夫ですか、皆さん」

 一陣の風と共にやって来たのは、太陽を背にして爽やかに笑う全身鎧の――

「美人ばい」

 ドドンの鼻の下も伸びるほどの、女騎士だった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ