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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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49:卵の中身、降臨!

 二階建ての大きなログハウス風に――と思ったが、内装のアイデアが浮かばない。
 クエスト終わってログアウトしてからネットでそれっぽいの探して参考にしよう。
 という事で村の探索をする為にゲーム内にインした。

「まだ誰も戻ってきてないな。ドドンはトイレだと言ってたが、引篭もってるのか」

 視界の端に映るパーティー情報の、それぞれの名前が薄灰色になっているのが見える。ログインしていればこの名前が白く表示され、HPやMPバーにも色が付く。今は全部薄灰色なのでログインしていない事になる。
 じゃあ、ちょっとあちこち見て回るか。

 ・
 ・
 ・

 と思ったが、僅か十軒ほどの建物しかないじゃないか!
 ちっさっ! 村ちっさ!
 その内一軒が宿屋だが、二階建ての民家と代わらない大きさしかない。たぶん中身はMO的な四次元空間なんだろうな。
 残り九軒のうち一軒が雑貨屋みたいだな。他に店らしき建物は無い。
 ガラス越しに雑貨屋を覗いてみるが、商品棚っぽい所に飾られてるのはポーション瓶だけ……。

 あ、むずむずする。
 トイレには行ったばかり。
 いやそうじゃなくって、むずむずしてるのは――

 ピキピキ、パリパリという、何かが割れる音がしたかと思うと――

《パカッ》

 という音と共に孵化器の蓋? が外れた!?

 お、おおぉぉっ。
 孵化したのか? 孵化なのか!?
 あっと、夢乃さんが言ってたっけ。万が一刷り込みシステムなんかがあったらマズい。俺が死ぬ。鳥に突かれまくって死ぬ。
 人の居ない所――うん、普通に誰もいねぇよ。

 ガラス越しに見える孵化器が光の粒子となって消える。
 おっと、肝心の雛はどこだ?
 ガラスを覗き込むが、巣が意外と深くてよく見えない。
 孵化器はでかかったから、巣越しでも余裕で見えたんだけどなぁ。あ――。
 青いピンポン玉が巣に入ってるぞ。
 あ、動いた。

 あぁ、そうか。親鳥がそもそもボールだったもんな。雛もそうなるわけだ。

《ぷ……ぷぅ》

 もぞもぞと動くピンポン玉は、向きを変えてガラス越しに俺を見つめる。
 うん。嘴と目はちゃんとあるな。でもピンポン玉だ。

《ぷ……ぷぷぅ》
「それが鳴き声か……親鳥はピチョンピチョン言ってたがな」
《ぷっぷぷぅ》

 おならかよ。
 翼と呼ぶにはお粗末過ぎるそれをぱたぱた――いや、じたばたしている。
 おい、落ちるぞ――と思った傍から落下してるしっ!

 ここであの一文が蘇る。

――約束を違えると、プレイヤーが滞在するエリア内にいる全ての鳥類モンスターがアクティブ化し、尚且つ索敵範囲が全エリアに及ぶ。――

 鴉に突かれまくって酷い目にあったのを思い出し、同時にあの何十倍もの鳥に突かれまくる光景が脳裏に浮かんだ。
 昔、鳥を題材にしたパニックホラー映画があったようだが、きっとそれ以上に恐ろしいものだろう。
 ここで雛を落として死なせでもすりゃあ、俺はもうこのゲームで生きていけない。きっと、絶対にだ!

「うおぉぉぉぉっ!!」

 じたばたもがきながら、辛うじて落下速度を落としていたお陰で、なんとか救助は間に合った。
 代わりに俺が肩から地面に転がるはめになったが。

《ぷぷぅ〜》
「巣で大人しくしていろっ。俺を殺す気か!」
《ぷ……》

 何故かしゅんとする雛。こいつにも感情があるのか?

「あぁーっ! マ、マジック君、その子は!?」
「お、セシリア。つい今しがた孵化したばかりだ」

 ログインしてきたセシリアが、俺の掌上の物体を見て驚く。その顔はみるみるうちに緩んでいき、じわりじわりと近づいてきた。
 雛を差し出して見せてやると、おずおずと手を伸ばして触ろうとする。
 ――が。

《ぶっ!》
「ぁ痛っ」

 セシリアの伸ばした手に、雛が小さな嘴で突いてしまった。
 んむ。こいつにとってセシリアは、危険人物だと認識されたようだ。俺も最初はそうだったしな。

「むぅ〜。触らせて貰えないぃ」
「諦めろ。そのうち慣れれば触らせて貰えるだろ」
「うぅ〜。私もペットモンスターが欲しい」
「ん?」

 セシリアがシステムメニューを開いて何かを操作しているような仕草をすると、彼女の手に卵が出現した。

「それがモンスターエッグってやつか?」
「うん。港町で買っておいたのだ。マジック君は実装前から持っていたようだが、何故なのだ?」

 うーん、そこが謎なんだよな。
 俺の場合、モンスターから直接託された卵だし、仕様が違うのかも?

「そういえば、一部のレアな卵は実装されていたようだから……それなのかも?」
「まぁそうかもな。でもこいつらって直接戦闘してくれないらしいし、バフ効果は育て方次第だっていうからあんま変わらないんじゃね?」
「むぅ〜。鳥可愛くていいなぁ。でも猫科の大型動物が欲しいし」

 猫科の大型って、ライオンか? いるのか、そんなの。

 そんな話しをしていると、夢乃さんがログインし、最後にドドンがやってきた。
 ドドンのやつ、何分トイレに引篭もってたんだ?

「マジ、なんだそのボール?」
「わっわっ、もっこもこぉ〜。可愛い」

 ドドンの反応は俺にも理解できる。
 夢乃さんの反応は理解できない。
 これ、可愛いか?

 二人揃って手を伸ばすと、突かれたのは夢乃さんだけ。ドドンの手は無事に雛の頭を捕らえ、撫でるのではなく、突いてる。

《ぷっぷぅ〜っ》
「うお! 喋った!?」
「いや、そこは鳴いただろ」

 自分は突くくせに、他人から突かれるのは嫌なようでドドンの手から逃れようとする。
 こいつ……女が嫌いなのか? ドドンに突かれるのが嫌なようだが、反撃はしていない。
 女子が触ろうとすれば問答無用で攻撃だ。
 女嫌いか。前世で何かあったんだろうか。

 なわけないか。
 さて、無事俺への刷り込みも成功したってことで一安心。

「あ、そうだ。孵化したってことは、もう巣も用済みだよな!」

 この糞ださい頭装備ともオサラバ!

 がしかし、世間はそんなに甘くない!?
 は、外せない!!

「マジック君。雛は巣で寝るものだぞ」
「それに彗星君。それ外したらピチョンの羽根装備も外す事になるばい?」
「う゛があ゛ぁぁぁぁっ!」
《ぷっぷぅ〜♪》





 絶望感に包まれながら、雛を巣へと乗せる。
 やがて大賢者達も現れ、出発の準備になった。準備といっても大賢者とトリトンさんが御者台に、ピリカが荷車に乗るだけだ。
 最後にやってきた聖女は、俺たちと一緒に歩くという。

「あ、勇者様の頭の卵さん、鳥さんになったんだね〜」
「あぁ……そうなんだ、ピリカ」
「勇者様どうしたの? 元気ないよ?」
「ふふ、ふふふ。なんでもないんだよピリカ」

 鳥さん可愛いといいつつ、まったく手を出そうとしないピリカ。
 突かれる事をまるで知っているようだな。
 だがトリトンさんは手を出してくる。そして突かれていない。

「ピチョンを見るのは初めてです。親鳥もこんな姿でしたか?」

 学者らしく雛を観察するトリトンさん。
 うーん、親鳥は頭がもっと派手だったが、まぁほぼほぼこんなか。

「そうですか。この子にも薄っすらと飾り羽根のようなものがありますね。ということは、この子は雌ということか」
「雌……女に触られるのを嫌がってるのって、そういう事なんですかね?」
「うーん、どうでしょう? ピチョンにそういう習性があるとは聞きませんが。それよりも、親だと思っている貴方に、他の女性が近づくのを嫌っているのかもしれませんよ」

 なんじゃそりゃ。
 つまり嫉妬で突いてんのか。

「あ、マジックさん。もう行かれるんですか?」
「ん? あ、ルークか。そっちはまだか?」

 ルークの事は未だに思い出せない。いや、なんとなく見たような気はしてるんだ。うん。

「お、本当にマジック氏だ。海岸ぶりですね」
「え? あ、ああ?」

 弓を背負った男が近づいてきて俺に声を掛ける。
 誰だ?

「あの時パーティーに誘って貰った後、なんか縁あってルークとはパーティーをずっと組んでるんだ」
「そうなんです。あの時ドロップした装備を早く着けたくて頑張ってレベル上げして、装備できるようになったらなったで性能の良さにぐんぐんレベルも上がって」
「そ、そうなのか」

 海岸って言ったよな。パーティーに誘って貰ったとも。
 蟹ダンジョンの事じゃないのは解る。あの時のメンバーはケン達だし。
 じゃあ……どこの海岸?

「俺たちは北のファクトに向うんだ。マジック氏は?」
「あ、ああ。俺たちは東の……あ、開拓中の村で名前は無いんだってさ」

 後ろから聞こえた大賢者の言葉をそのまま伝える。
 思い出せ、彼らは誰だ?

「そっか。また会えるといいな」
「マジックさんの戦い方に感化されて、今、僕もSTRに振ってるんですよ」
「え?」

 STR? 何故?

「こいつ、殴り神官になるって言ってるんだぜ。まぁINTもそこそこあるし、俺は後衛だから前衛居てくれる方が助かるんだけどさ」
「へへへ。殴って支援もできる。そんな神官目指してます」
「そ、そうなのか」

 何故俺の戦い方に感化されて殴りになるんだ?
 まさか、俺が前に出て魔法をぶっぱしてたのが原因?
 いやだからって何故殴りに。そもそも俺は殴りじゃないぞ。

「あ、そうだマジック氏。あの時のアザラシさ、あれからまた遭遇したんだ。ルーンと二人で」
「あの時みたいに海岸にやってきた新規の人をパーティーに誘って、無事に倒せましたよ!」
「まぁ俺らのレベルが8だったし、あん時より条件よかったけどな」
「フラッシュってばまた地獄に落ちようぜとか言うから、何人かに逃げられましたけどね」

 アザラ……シ?

 結局誰なのか解らず仕舞いか。

「それじゃあ」
「じゃ!」

 そう言って二人は仲間のパーティーの下へと向う。

 ちっちっちっち、思い出し中。

 二人を含めたパーティーと馬車が動き出してようやく思い出した!

「殺人的な可愛さのアザラシ討伐ん時の!?」

 思い出した!
 アザラシに追いかけられて死んだプレイヤー。
 彼を助けてアザラシ討伐に乗り出したが俺一人では厳しそうで、その辺のプレイヤーを巻き込んだんだっけ。
 その時の真っ先に死んだのがヒーラーで、名前はルーク。
 次に強引に誘ったのが弓使いのフラッシュ、だっけ?

 確認しようにももう二人は居ない。
 思い出したが、ちょっと間に合わなかったようだ。

 そうか、その時の二人かぁ。
 立派になったもんだなぁ。
 しみじみ。

「あの二人の装備、レベル18のやつだな。モンスタードロップのだろ、あれ。ウィキに情報あったぞ」
「そうやね。18超えやね」

 18!?
 え、あの二人って、俺よりレベル低かったよな?
 俺、村に到着するまでにレベル上がっても15なんですけど!
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