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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バーション0.00【オープンベータテスト】
36/268

36:マジ、炎と雷を操る。

◆◇◆◇


『サンダーフレア』

 属性:炎雷

 効果:火と雷二つの属性を併せ持つ攻撃魔法。

    射程内任意の場所に雷を纏った火柱を発生させ、半径一メートル内の

    敵対象に対し、多段型の攻撃を行う。範囲内にいた対象だけでなく

    火柱発生中に範囲内に踏み込んだものにも有効。

    対象が植物系モンスターの場合、発火による追加ダメージあり。

    対象が水棲モンスターの場合、感電による追加ダメージあり。

 消費MP:100

 射程:15


◆◇◆◇



 新しくスキルも増えた。小範囲魔法なうえ、多段HIT型だ。

 しかも相手が植物系や水棲モンスターだと追加されるって事だし、これかなり強いんじゃね?

 なんか思ったのと違う技能を修得しちまったが、結果オーライかも。


「マジック君。『火属性魔法』を修得したのかい?」

「え? 攻撃技能増えたん?」

「うん、まぁ増えた。けど火属性じゃなくって、炎雷えんらいって属性魔法だったよ」


 採取、及び採掘の手を休める事無く尋ねてくる二人に答えると、夢乃さんのほうは首を傾げて綿花を掴んだまま固まった。


「うーん、聞いた事ない属性やね。クローズドで情報が出たのは、初期に取れるの以外やと『空間移動魔法』だけやったし」

「あぁ、それも持ってるよ。大賢者に教えて貰った」

「うわっ。もう持ってるん。この技能、クローズドでは拠点になってた町で修得できるんやけど、地図見る限りここからだいぶ北に行かんといけんのよね。そもそもクローズドとオープンとでは、スタート地点からして違うけん」

「え? そうだったんだ?」


 夢乃さんとドドンが頷く。

 ドドンもクローズド組なのかと思ったら、ここでも抽選漏れして姉である夢乃さんにいろいろ情報を貰っていただけのようだ。

 他にも掲示板やウィキ、VRMMO情報サイトも漁っていたんだとか。

 クローズドの時から、オープンベータとスタート地点が違うと運営から事前告知もされていたという事なので、特に問題として取り上げられる事もないらしい。

 そこまで公式サイト内、よく見てなかったから俺は初耳だったが。


「まぁその方が、クローズド組も新鮮味があって楽しめるんやけどね」

「マジ、新しい属性をどうやって修得したか知らんけど、他には情報を流さん方がいいぞ。せっかくオンリーワンになるかもしれん技能なんやけん」

「オ、オンリーワン!」


 な、なんてむねあつな響きなんだろう。

 俺、これからは炎雷マジって名乗るわ。






「『サンダーフレアアァァ!』」


 ウッド相手にスキルの練習を積み重ねる。

 なんせこのスキル、魔法を唱えると勝手に体が動いて右手掌を前に突き出すんだよな。まぁこれが魔法発動モーションなんだろうけど。

 突き出した掌の先に火柱が出てくるし、それにも慣れなきゃいけない。

 目の前でゴォォォォxっと燃え盛る火柱は、俺の身長をゆうに超える三メートル弱。しかもバリバリと放電しながら渦巻いているので、見た目的にもちょっとビビる。俺自身が燃えやしないかとかも、無駄に心配になるし。

 だが、魔法を唱えてビビって手を引っ込めると、その時点で魔法が解除されちまうんだよな。

 あと俺が燃えるなんてことも無いので、そこは安心できる。


 とにかく慣れだ。

 使いまくって慣れるしかない。


「なぁマジ」

「なんだ、ドドン」


 セシリアと強力してウッドを倒していたドドン。ドドンと夢乃さんも、今は戦闘に専念してレベル上げを優先してくれていた。


「マジにさっき聞いたスキルの説明だと、射程内のどこかに火柱を発生させれるんだろ?」

「おう、そうだが」

「じゃあ、なんで至近距離から撃つん?」

「俺の任意可能射程がこれだからだ」


 だってノーコンですから。仕方ないじゃあないか。


「あぁそうか。至近距離じゃないと拳当たらないもんな」

「そうそう。まぁ拳じゃなくていいんだけどな」


 別に殴ってるわけじゃないが、拳が当たるぐらいの距離ならノーコンでも当たるって事なんだよ。

 納得したドドンが、次の得物を見つけて矢を放つ。

 夢乃さんにドドン。二人の弓使いのお陰で、途切れる事無く得物をおびき寄せられる。

 いいよなぁ。遠距離から狙ってちゃんと当てられるんだから。

 俺なんて一時間投げても当たらなかったんだぜ、魔法。

 まぁ新しい戦闘スタイルを発見したし、問題ないけどな!


「マジ、四体来た」

「来たんじゃなくって、釣ったんだろ」

「そうとも言う」


 そうともじゃなくって、そうとしか言わないんだよ。

 段々ゴォォォォ、バリバリバリィーッにも慣れてきたもんで、確実に魔法を発動させ敵に放てるようになってきた。

 一確ってのもあって、多めにモンスターを釣ってこられても対処できる。

 ただ難点があるとすれば――


「スキルのCTクールタイムが長いことだな」


 消費MPも100と多いが、そもそもCTが長いので連発も出来ないし、息切れは今のところまだない。

『サンダーフレア』のCTが六十秒もあるので、その間は今まで通り『サンダー』と『ライト』を交互に使って対処している。

 夢乃さんとドドンが釣ってくれるので、ほぼ固定砲台みたいなもんだ。おかげでじっとしている時間も少しあるから、その間にMPも回復できる。


 以前のVRMMOでも、魔法使いが固定砲台していたが、これほど楽だったとはなぁ。

 魔法技能取ってよかったぜ。


「よし、CT切れ! 『サンダーフレアァァ!』」


 今じゃアバターの自動行動じゃなく、自分の意思で右手を突き出して魔法を完成させられる。突き出すついでにウッドを鷲掴みすれば、手の置き場にも困らない。


「やったばい! レベルアップしたよ」

「糞。姉貴に先越された。俺もたぶんあと二、三体で上がるけん!」

「よし、ガンガン行こうぜ!」


 ウッドを倒しまくり、更に森の奥へと入ってウルフを倒しまくり、毛皮がドロップすれば夢乃さんは狂喜乱舞。

 こんな所にもいたゴブリンを倒しまくれば、こいつらは鉱石類を落としてドドンが狂喜乱舞。

 気づけば俺のレベルはあと少しで12というところ。

 セシリアに至っては12になってるし、姉弟は揃ってレベル10まで上がっていた。


「もうちょっとで彗星君のレベル12装備が拝めるんやねぇ。ふひひ」

「まさかこのコートよりエロかったりしないだろうな?」

「そうしたかったけど、今のレベルやとそれが限界やったんばい」


 それを聞いて安心したような、不吉な予感が新たに生まれたような……。

 早く新装備に着替えて、パワーアップしたのを実感したい気もするが、いかんせん、結構長いことログインしっぱなしだ。

 昼飯時間も気になるし。


「飯、どうする?」

「連続プレイ限界時間に引っかかるから、俺は一旦ログアウトして三十分したらまたINするばい」

「連続プレイ時間って、確か上限六時間だったよな。六時間越えると警告メッセージでて、五分後に一番近いセーフティーゾーンに強制移動させられるんだっけか」

「そうばい。六時過ぎからINしとるけん、そろそろやばいと思う」


 夢乃さんは逆に、随分前に三十分ログアウトをしているから大丈夫だとのこと。

 じゃあ一度町に戻るか。昼飯後にまたこの森で狩りをしてレベルを――13だ、13まで上げるぞ!


「じゃ、町に戻ろうぜ」


 俺がそう提案すると、夢乃さんとドドンが驚いた顔になる。


「今から戻って、また昼から狩りって、移動時間勿体なくね?」

「往復したら三十分以上かかるけん、ここでログアウトでもいいんばい。ここ、ノンアクティブエリアやけん、セーフティーゾーン扱いやし」

「いやでも、俺、『テレポート』持ってるし」


 そういうと、二人が納得した顔で手を叩いた。


「「そうやったね」」


 ――と。






 全員で港町に到着し、人通りの少ない、それでいて工房に程近い路地裏にて清算を済ませる。

 夢乃さんはこれからセシリアの装備作りに取り掛かるという。戦士系なんだし、鍛冶で作る重装備なんじゃね? と思ったが、あの手の装備はAGIや回避にマイナス補正が付くんだとな。

 でも防御力も必要なのは前衛なら当たり前な事で、胸部だけのブレストアーマーをドドンが、他を夢乃さんが作るという。

 俺もそのうち木工レベル上げて、杖を作りたいな。

 が、今は正式サービス開始に向けて、レベル上げを優先させないとな。


「えっと、今の時間が――お、リアルだと昼の十二時前だな。じゃあ十二時半集合でいい?」

「俺はそれでいい」

「私もいいばい」

「私は……」


 セシリアが俯く。

 あ、やっぱ女の子に三十分で飯食えってのは厳しかったか。

 じゃあ一時にって事で、工房で集合って事にしよう。待ってる間にせっかくだし、俺も木工やってみようと思うから。


「うん。ごめんね。買出しに行くところからしないと、お昼ないもんだから」

「あー、そういう事か。オケオケ、気にしないで。あ、INしたら二人を大賢者の所に連れて行くよ。護衛クエ、受けなきゃいけないだろ」

「あぁ、そうやった。どうやってクエスト受ければいいのか、解ってなかったもんね」

「これで護衛クエ受けれなかったら、涙もんばい」


 そうならないよう、俺からも大賢者に頼まなきゃな。

 そう思っていたら突然、後ろから男に声を掛けられた。


「護衛クエって、もしかして開拓民のクエストの事ですか?」


 うげっ、しまった……。人の少ない場所だと思ってたんだが、それでもうっかり喋るもんじゃないな。

 そ知らぬ振りしてやり過ごそう。


「開拓民? いや、俺がいう護衛クエストは、商人の――あ、あれ?」


 見覚えのある顔。相手も俺に気づいたのか、口をあんぐり開けてこちらをじっと見つめている。

 その男の後ろにも見覚えのある顔が……


「あ、マジックさん! やだ何その装備、ステキ過ぎますぅ。特に鎖骨ぅ」


 純白の法衣っぽい装備をした女の子が声を上げた。

 アコさんだ。

 最初に声を掛けて来たのはケン。後ろにいたのはシフスにランス、ロビン。そして魔法使いっぽい女の子だ。

 あれからずっと、パーティー組んだままだったのか。

 ちくしょう、仲良いじゃないか。羨ましいぜ! 


よぉ!

俺はドドンだ。

渋いおっさんドワーフなんだぜ。

リアルじゃ身長168センチあるもんで、ドワーフやりはじめた最初の三十分ぐらいは違和感ありまくりで苦労したよ。横にも広くなったしさ。しかも、あーでこーで、それでどーで。

(以下十分ほど彼の苦労自慢が始まる)


姉貴の知り合いと友達になったんだけどさ、こいつって変わった殴りマジなんよ。

殴りなのに魔法の属性技能取りたがっとるし。

でも強いんだぜ。

殴りなのに、一確で敵を倒せるんだからな。

まぁたぶん素で攻撃したらギリギリ倒せない火力なんだろうけど、そこは超微妙な魔法攻撃を上乗せして

止めを刺してるって感じだな。

そういう意味で魔法技能を揃えようとしてるってんなら、なかなか知能犯ばい。


ただどういう訳か、魔法の範囲攻撃が殴りにも左様してるっぽくって、その辺りは謎だ。

もしかしてそういう技能を何か修得しとるんかもしれん。


何にしても、面白そうな奴だから良い友達になれそうだ!



ただ姉貴に遊ばれそうで、ちょっとかわいそうでもある。

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