249:マジ、敗北。
【彗星マジック:俺、ファクトだ】
【夢乃:私もファクトばい】
【シースター:ぼくは港町です】
【セシリア:ふえぇぇ。え、えっと……農村】
何故……。
シースターの港町は分かる。百歩譲ってガッソもだ。
あ、そういえばまだガッソに行った事ないな。今度行っておかなきゃな。
で、なんでセシリアは農村なんだよ!
【夢乃:町から町には転送装置があるけんいいけど、村やったら装置ないやろ?】
【セシリア:うん。大丈夫。自分で『テレポート』できるから】
……はい?
テレポ……できる?
夢乃さんと合流し、転送装置近くでシースターを発見。そして目の前にセシリアが降ってくる。
マジでこいつテレポ覚えてやがる。
毎回俺がテレポしてたアレはなんだったんだ?
「まぁまぁ。テレポなんてたいていのプレイヤーが持ってるから」
とシースターが慰めてくれるが、つまりお前も持ってるってことか!
夢乃さんも笑っている。
つまりあんたもか!
「それにしても、最後のアレは酷かったねぇ」
「倒しても倒しても、どんどん湧いてきやがったな。最後は何頭ぐらいいたんだ?」
〔ぷっぷぅぷぷぅ〕
〔ウミャミャミャ〕
〔ぽんこぽぉ〕
そうか、四十二頭か。随分増えてたんだな……ん?
なんか今、聞きなれない声が混ざってたような?
ふとセシリアと目線が合うと、ちょっと大きくなっているウミャーを抱っこして首を左右に振っている。
シースターを見ても、同じように首を……。
いや、別にお前らの声だとは微塵も思ってないから。
なんとなく予感がして夢乃さんを見ると――。
〔ぽんぽっこ〜っ〕
「たぬたんやん! たぬたんに生まれ変わったんやん!!」
子犬サイズの狸が彼女の足元に居た。
確かにあのボス狸とは違う――気がする。
見た目が愛くるしくなっている。
ただ、何故か二足歩行は変わらず。右に左にステップを踏んで腹を叩いたり、頭や背中を掻いてみたり。
どこかおっさんっぽい仕草なんだが、夢乃さんは大喜びのようだ。
だが俺とシースターはアイコンタクトで頷く。
ダンジョンで見たノーマル狸と比べ、アレが微妙に大きい――と。
「たぬたん可愛いぃ〜♪」
〔ぽっこ〜♪〕
ま、本人が喜んでるんだ。そっとしておこう。
清算の為にファクト中央から少し離れた場所で、買取NPCに素材以外のアイテムを売却。
残念ながら骨は一つも無かった。まぁアンデット居なかったしな。
で、気になったのがボスドロップ。
四階の蝙蝠と五階の狸を撃破したが、装備品はゼロ。またもや素材ばかりだった。
「なんか遺跡ダンジョンだと、装備品がドロップしないとかあるのか」
「いや、ドロップ調整というか、レベル30超えあたりからちょっと変わってきたんだよ」
「変わった?」
夢乃さんは狸に夢中で会話にならない。食わせるのも課金ペットフードだ。
リアルブルジョアめ。
「30超えてくるとレベルが上がりにくくなってくるだろ?」
「あぁ。そういや今回の狩りでやっとレベル35にあがったな」
二日ぶりな気もするレベルアップ。話を聞きながら早速INTに全振りっと。
「一日1レベル。人によっては二日、もしくは三日で1レベル。もう少し上がってくると――」
「週1とかになってきそうだな」
頷くシースター。
ボス一匹倒してレアだのレジェンド装備だの出ていたが、それも一日二日で着替える事になってた。それだけレベルの上りが早かったからな。
だからこそ、簡単に手に入らないといけなかった。
だがレベルの上りが遅くなったらどうだろう。
次のレベル帯の装備集めにしても、今までと同じドロップ率だったらすぐに揃ってしまっていただろう。
自分の分が揃ってしまっても、着替えレベルにはまだ到達していない状況になる。
となると、今度は売る目的でレアやレジェンドを欲しくなるもの。
「そうやって大勢のプレイヤーが、レアやレジェンドを売りはじめたらどうなる?」
「安くなってラッキー?」
「うん、まぁ買う方としては嬉しいね。でもそうやって先行組がどんどん供給していったら、後発組やプレイ時間が単純に少ない人たちなんかは、どうやってお金を稼げばよくなるかな?」
どうやって……えぇっと、ドロップアイテム売って――は先行組が既に……じゃあ、生産?
だが安く装備が売られてるんなら、生産品を買う奴も居なくなるな。そもそも素材だって安く売られてしまってるだろうし。
「で、調整されてるんだよ。35以降のボスは素材がメインになって、装備のドロップは5%以下になってるって話だよ」
「生産もねぇ、素材の必要数がぐっと上がってるけんねぇ。ねぇ、たぬたん」
〔ぽっこ〜〕
あの返事はきっと「しらんがな」と言っているに違いない。
しかしほぼ素材ドロップになってんのかよ。
まぁそうでもしないと、生産職の価値がなくなっちまうもんな。
ドワーフ軍団が装備ドロップするボスを目の仇にしてたぐらいだし。
今回ゲットできた素材は全員分のを合わせて、レアが三つ。レジェンドが二つ。ハイクラス四つ。
「マジックとセシリアさんがレジェンド。残りをぼくと夢乃さんで分けていいかな?」
「オケ。どうせ36装備作って貰う時に渡すだけだしな。で、具体的に素材ってどのくらい必要なんだ?」
「えぇっとね――レジェンド装備作りたいなら――」
製造可能な装備の一覧でも開いてるんだろうな。
シースターが宙をわさわさしながら、素材の数をいろいろ教えてくれる。
まず武器だと、元の素材になるものは基本的にハイクラス素材でいい。
杖だと木が必要になるんだが『〇〇の木』だの『〇〇の木片』だの。
そこにレジェンド素材を複数ぶち込んで製造すると、レジェンド杖の出来上がり――と。
「レベル28ぐらいまでは、レジェンド素材一つだったんだけど、32で二つになったんだよ。ウィキ情報だと40から三つになるって」
「36はまだ二つか……武器は二ついるし、四つだな」
「失敗の事も考えてあげて」
「四つだな」
「鬼だ。鬼の王子様が居るよ」
「セシリア先生曰く、悪い王子様だからな。ぐへへへ」
だが笑っていられない状況でもある。
武器一つでレジェンドなりレアなり、どの等級でも二つ必要だという。
防具に関しては上半身で二つ。下半身でも二つ。手足は一つずつだ。
俺は上半身を合成するので、二着必要になる。
単純に、全部一発成功したとしても……十二個かよ!
えぇっと、手持ちが――ディオの村と前回の遺跡ダンジョンでのドロップも含め……レジェンドが三つ。レアが四つ。
レジェンドで揃えるにしても、どれかをレアで妥協するにしても、全然足りねぇ。
「遺跡ダンジョンのボス部屋で張り付くか」
「え? 出来ないと思うけど」
「え?」
「マジック君、知らないの?」
〔ウミャミャ〕
な、なんだ、このセシリアとウミャーのドヤ顔は。
「遺跡ダンジョンのボスはね、一度倒すと出てこないのだぞ」
「え?」
「パーティーにまだ倒してない人が居れば出てくるけれど、あのボスは階層エレベーターを利用する為のキーモンスターなだけなんだぞ」
「それ、執事に聞いたのか?」
「うん!」
〔ウミャ!〕
何故だろう。
物凄く負けた気がするのは。
お読み頂きありがとうござます。
ブクマや評価が増えるとモチベ上がります!
更に書籍が売れると続巻チャンス到来!?




