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222/268

222:マジ、幼女ハンター。

 俺は神輿か何かか?

 そんな気分にさせられたかと思うと、突然村人たちは冷静さを取り戻し、一人、また一人と家に戻って行った。

 冷めるの早すぎなんですけど。

 それでも数人は残って、俺を英雄様だなんだと持ち上げている。


「英雄様。あなた様のお話はディオから伺っております」

「なんでも大地の精霊王ベヒモスを素手でお倒しになったとか」

「大賢者も恐れおののき、英雄様には手出しできなかったそうで」


 うん。案の定、いろいろ誤解しまくっているな。

 そのうち眼光だけで大賢者がひれ伏しただの言い始める始末。

 面白いからそういう事にしておこう。ふひひ。


 村人――主におっさん――にちやほやされること数分。


「マジック! 来てくれたのかっ」


 ディオがようやう登場。

 傍らにはピリカより一つか二つ年上かなと思われる女の子が。


「ディオ。その子が妹の?」

「あぁ。さぁティナ、あのお兄ちゃんにちゃんと挨拶できるかな?」


 ディオの後ろにかくれてもじもじしていたティナちゃんだが、ディオに言われると頬を膨らませながらずいっと前に出てきた。


「で、できるもんっ」


 そう言って手を腰に添え、何故かふんぞり返って仁王立ちしている。

 兄のディオはモスグリーンの髪をしているが、妹のほうは鮮やかな緑色だな。瞳の色も同じだ。

 ただ、見た目としてはやっぱり、痩せてて元気少女という印象はない。

 そんな子が大きく息を吸って、そして――


「こ、こんにちはマジック様。兄が大変お世話になっております。亡き両親に代わって、お礼を言わせてください。本当にありがとうございます」


 そう言ってペコリと頭を下げたティナちゃんは、再びディオの後ろに隠れてしまった。


「ディ、ディオ。本当にお前の妹なのか!?」

「それはどういう意味だ?」


 そりゃあもちろん。この兄にしては出来過ぎているだろ!

 っていう意味。

 それを聞いたディオは絶句し、周囲の村人は笑いだす。そしてティナちゃんも。

 が、ひとしきり笑った後は咳き込みはじめ、苦しそうな表情に。


「風邪か?」


 それとも喘息か。

 心配して背中をさすってやると、何故か拒絶される。

 おいおい、顔真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃねえか?

 とオデコを触ると小さく悲鳴まで上げられるし。


 俺、そんなに嫌われてるのか。


 肩を落としてずぅーんと沈んでいると、ディオは「マセガキめ」なんて妹に悪態ついてるし。


「マジック。ティナの事は気にするなよ。まったくあいつときたら……年の差ってものを考えろってんだ」

「年の差? 年の差で嫌われてるのか?」


 どう見ても俺とディオ、外見的には似たり寄ったりな年齢だと思うんだけどな。


「っぷ。何勘違いしてんだマジック。妹はな、お前の事を――」

「わぁーっわぁーっ! お兄ちゃんの馬鹿ぁ。もう言っちゃダメェ、っけほけほ」

「お、おいほら。ディオ、その子咳をしているじゃないか。寝かせなくて平気なのか?」

「あぁ……大丈夫だ」


 さっきまでは明るかったディオの顔が途端に暗くなる。

 気づけば他の村人の姿もどこへやら。

 雰囲気、随分と重くなったな……。


「せっかく来てくれたんだ。たいしたおもてなしは出来ないが、ゆっくりしていってくれよ」

「お、おう」


 ディオに手招きされ彼の家へと向かうことに。

 その間もティナちゃんは時折咳込んでいて、ちょっと心配だ。


 そしてやってきましたディオの……おぅ、初期のブリュンヒルデの家よりも酷い。

 木造の家なのは分かる。

 ただ、板と板の隙間が大きすぎやしませんかね?

 隙間風とかいうレベルを遥かに超えてる気がするんだが。

 グラフィックの手抜きか?


「さぁ入ってくれ」


 ディオに促されて中へと入る。

 あったのはテーブルと椅子。あと食器棚みたいなやつ。

 終わり。

 

 質素すぎ!


「なぁディオ。ティナちゃんは風邪か? それとも喘息か何かか?」


 勧められた椅子に腰を下ろしながら尋ねると、ディオは椅子に手を掛けたまま固まった。

 もしかして、何故咳をしているのかっていう設定がされてないとか?


 止まっていたディオが動き出すと、「あぁ、そうだ。風邪なんだ」と。

 そっちを選んだか。

 まぁ喘息だとか言われたら、俺にはどうすることも出来ないもんな。

 そういや薬なんてあるのかな。それも合わせてあの人――トリトンさんに聞いてみよう。


 さて、ここで本題だ。


「ディオ。もしこの村でも田畑を作れるようになったら……どうする?」

「え、たはタ……田畑トハ、田ンボト畑ヲ意味スル」

「い、いや、俺が悪かった。聞き方が悪かったよな。だから戻ってきてくれ」


 アップデート後の弊害なのかってぐらい、NPCが怖い。


 そこでまずは聞き方を変えてみる。


「この荒れた土地に畑を作って野菜が収穫できるようになったら、嬉しいか?」


 数秒ほどシンキングタイムがあり、それから「嬉しい」と真顔で答えられた。となりのティナちゃんも頷いている。

 次だ。


「食べるものに困らなければ、開拓民を襲う必要もなくなるよな?」


 その質問に真っ先に反応したのはティナちゃんの方だ。


「お兄ちゃん! 危ない事はしないでって約束してたのにっ」

「い、いや、危ない事なんて別に何も……」


 とか言いながら、ディオはティナと目線を合わせようとしない。

 分かりやすい。

 嘘付いてますって、実に分かりやすい構図だ。


 ディオの肩をぽんっと叩き、俺はぼそりと彼に囁く。


「妹に心配かけるもんじゃないぜ」

「マ、マジック……」

「まぁその為に俺も協力するからさ」

「協力?」


 首を傾げる兄妹の二人。

 そこで俺は説明する。


 支配下に治めた開拓村には学者が居る。もちろんトリトンさんの事だ。

 彼に土地を豊かにする方法を聞き、それをこの村でも実行する、と。

 簡単な事だ。

 必要なものがあれば開拓村の村人にも手伝わせる――というのは嘘で、まぁ俺がなんとかするさ。


「なるほど。奴らから直接聞きだせば分かる事だもんな」


 そう言いながらディオは手の関節をボキボキと鳴らし始める。

 いや、力任せに聞き出そうってんじゃないからな。あくまでも穏便に、だ。


「お兄ちゃん! 人を脅しちゃダメ! 移民してきた人とも、仲良くならなきゃダ――ッコンコン」

「ティナの薬も学者に聞いておくよ。その人にもティナと同じぐらいの娘さんが居るんだ。奥さんには先立たれてて、きっとティナの事を話せば親身になってくれるだろう」

「く、薬が手に入るのか?」


 頷いて見せると、ディオ、涙目です。

 うぅん、これは早速飛んで、トリトンさんの所に向かうか。


「じゃあ俺は早速、魔法で開拓村に行ってくるよ」

「あ、ああ。マジック、本当にありがとう」


 スキルを使うべく家を出ると、ディオたち兄妹もついてくる。

 この家もどうにかしてやらないとなぁ。

 あ、そういや俺も木工技能持ってたんだったな。

 護衛クエで橋の修理したっきり、まったく使ってもなかったが。

 ちょっとレベル上げれば、家の修繕ぐらいできるようになるかな。


 ボロ家をじぃっと眺めていると、不思議な物が屋根に乗っかっているのが見えた。

 まるで角のような……


「なぁディオ。あれ、なんだ?」


 屋根の上を指差し彼に尋ねる。

 よく見ると、地面にもいろいろ落ちている。いや、置いてるのか?

 獣の骨や大きな鱗のようなもの。それに毛皮だ。

 めちゃくちゃ乱雑に置かれてるじゃないか。


「あぁ。あれはホルンクレスというモンスターの角だ。屋根が風で飛ばないよう、重石替わりに使ってるんだよ」

「お、重石……」

「ほら。丁度山形になってるだろ。屋根の形にピッタリなんだぜ」

「はぁ」


 適当過ぎ!

 そこかしこに置いてある骨だなんだも、この周辺に生息するモンスターから取ったものだと言う。


「村に近づきすぎるモンスターは倒さなきゃならないからな」

「倒したモンスターから取れる素材を放置してるってことか……」

「あぁ。俺たちの武器や防具を作るのにも必要だからな。だが……」


 ディオは辺りを見渡しため息を吐く。


「必要以上の素材が溜まって困ってもいるんだ」


 どっか他所に捨てろよ!

 更にディオに案内され、素材のゴミ山を見せてもたうことに。

 家二、三軒分のゴミという名の素材が山隅されてるぞおい。


 あ――


「ディ、ディオ。レジェンド素材とかって、この中にないか?」


 楽して素材をゲットすることは可能か!?

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