220:マジ、救助される。
先住民の村かぁ。
いろいろやりたい事があって悩む。
星見から聞いた、夜限定で出現する幽霊船にも行ってみたい。
遺跡ダンジョンの五階以下にも行ってみたい。
やりたいという訳じゃないが、ペットフードの合成も定期的にやっておかなきゃな。
それ関係で、新しい合成用食材の開拓も……ぷぅが飽きたと言っているし。
そして――
「早くメテオを作りたい」
「メテオ? 隕石落とす気かい?」
今度はシースターにアクセサリーの製造を頼んである。
イヤリングはこの前貰ったが、他のアクセもこの際揃えてみようと思って。
全身ガッチガチに固めてやるぜ!
「でも魔法使いつったらメテオはロマンだろ?」
「ロマンかどうかは分からないけど、まぁたいていのゲームには同種の魔法があるね。でも高レベルになってようやく習得ってパターンだけど」
「今のレベルが34。高レベルというには無理がある?」
「あるある」
ぐっ……俺は早くメテオを撃ちたいのに。まだダメと申すか!
「でもやりたい事がたくさんあり過ぎるってのは、ネトゲとしてはいい事だね」
「そうなのか?」
こくりと頷いたシースターは、どこか遠い目で語り始めた。
「些細なアップデートでも、頻繁にあれば真新しいコンテンツが常に楽しめるんだよ。でも――」
でも、アップデートの間隔が数週間、数か月と開いてくると、その間に実装されたコンテンツはやり尽くしてしまう。
そうなると、
「もう毎日同じことの繰り返しで、それこそ完全に作業ゲーと化してしまうじゃん。そして突然気づくんだ」
ごくり。
な、何に気づくんだ?
「時間の無駄だって……ね」
「うわぁ……」
「だからさ、ネトゲってサービスが始まって数か月ぐらいが一番楽しい時期なんだよね。賑わっている今がさ」
なんかネトゲの悟りでも開いてしまったみたいだな。
うぅん。出来れば数年先まで楽しめるネトゲであって欲しいな。
「そんなシースターは、今、何かやりたい事ってあるのか?」
「うん。あるよ」
「ほほぉ。どんな事だよ」
完成した腕輪≪リング≫を差し出しながら、シースターは「イベント」と短く答える。
「週末にでもさ、PV大会をやろうと思って。でも初めてだから、とりあえずこじんまりしたのでいいや」
「PV? 決闘みたいな?」
「そそ。ほら、町中限定でのPVが可能になってるじゃないか。それを使ってね、やろうと思うんだ」
PVか。STRの無い俺には無縁のイベントだな。
いや、INTの無い連中相手なら、やりようによっては勝てるかも?
属性耐性付き装備で来られたらアウトだが。
「面白そうだな。どこでやるんだ?」
「ファクトは人が多いしね。コールは過疎ってるから、そっちでやろうと思ってる」
コール、過疎ってんのか。
まるで町おこしだな。
どこかで行けるか分からないが、俺も参加してみるかな。
「日時決まったら教えてくれよ」
「見に来るの?」
「いや、参加する」
「あはは。優勝候補だね。あ、日曜日までにでいいんだけど、いろいろ合成して欲しいからいいかな? イベントの賞品にするんだ」
ほほぉ。合成アイテムをねぇ。
じゃあ一肌脱ぎますか。
作成して貰ったアセクサリーの代金を支払ってシースターと別れた俺は、やりたい事を一つずる片付けることにした。
まずは――
「『テレポート』」
で、鉱山の麓にある巨大花畑へとやってきた。
今日も蜂がぶんぶん五月蠅いな。
「シルフさんやい」
〔ひゅるるぅん〕
「じゃあ、やるか」
〔ひゅる!〕
ぶんぶん飛び回る蜂に、巨大トンボ。
まずは飛行系特化手袋を装備っと。
こちらの存在を確認すると、羽音をさせながら向かってくる。
来たところで、
「『暴風竜! ディスク・グラインダー』」
俺を中心に竜巻が発生し、引き込まれるようにして蜂どもが飛び込んでくる。
あっという間に光の粒子へと変貌していくモンスターたち。
くぅぅ。特化武器はいいねぇ。
試しに手袋と火山特化に装備しなおして同様のスキルを――CT明けてから試してみる。
うん。やっぱ一撃じゃ削れきれないようだ。
鷲掴み程度で倒せる程度だが、この手間がなくなるだけでも特化装備を作ってよかったと思う。
〔ひゅるるるるぅん〕
「え、強くなってる? そうだろそうだろ」
正確には、俺は強くなってるわけじゃなく、装備の差なんだけどな。
襲ってくるモンスターどもをバッタバッタと倒しまくり、そのまま森に入って道を進んでいく。
道は東に伸びているから、このまま進めば先住民の村まで行けるかもしれない。
しかしあれだな。
前回来た時には他のプレイヤーなんて見なかったのに、随分と人が増えたもんだな。
人が通れるような、多少なりとも整備された道はいくつかある。
俺が今歩いている道の前にも後ろにもプレイヤーの姿は見えた。
ほとんどはパーティーで来ている連中ばかりだ。
そして道ではない森の中でも何人ものプレイヤーが見える。
もしかして全員、先住民の村を目指しているのか?
とも思ったが、奥へと進むにつれプレイヤーの姿は減っていった。
新しく開放されたエリアでレベリング――そんなところか。
既に今歩いている場所は、俺も未踏だったエリアだ。出てくるモンスターも見慣れない奴ばかり。
えぇっと、レベルは36から38か。
昨日の遺跡ダンジョンでレベルが一つ上がって今は34になってるが、気を緩めてるとこっちがやられてしまいそうだ。
最近は一日1レベルが限界になってきたからなぁ。35を超えると一日1レベルも厳しくなってくるかもしれない。
デスペナ、気を付けなきゃな。
「なんて考えてる傍から囲まれるって……どうよ!?」
前方からコボルトのようなモンスターが三匹。後ろには血を滴らせた斧を振りかざす兎が三匹。そして右から切り株モンスターが!!
それぞれ同時に相手をするのは無理だ。
いったん左に逃げるか。
草むらに足を踏み入れ速足で逃げる。
『脚力』のお蔭なのか、草が生い茂った場所でも普通に走れる。そして逃げ足にも自信がある。盗賊目指しちゃおうかな。なんつって。
背後から迫ってくるモンスターの声もだんだんと遠のいてきた頃、前方にコボルトモドキを発見。
RPGとかでよくあるよな。
戦闘が面倒くさくて逃げてたら、そのうち回避不能なほどの敵に囲まれる事って……。
まさに今がそう。
前方から現れたコボルトモドキ。その数――というか、三匹一組が5パーティーぐらいいるんですけど。
しかも全部が既に俺の気配に気づいて――おいっ、こっち見んな!
戦うか?
いやいや、無理でしょ〜っはは。
「少しでも開けた所でテレポして逃げるかっ」
とにかく走った。
東に行けばどこかで森が途切れているはず。そう思って走った。
だがこれまたRPGでのあるある。
逃げた先は行き止まり……。
「あぁーっ!」
目の前にそびえ立つ崖。
しかも上が見えないほど木々が生い茂っているので、テレポでも出来ない。
いや、この際頭を打ってもいいから、飛んで、木にしがみ付くか? そんな木を登って、空が見えるところに出たらまたテレポして……。
「なぁんて考えてる間に、すっかり囲まれてますってね。くそうっ」
デスペナ、気を付けなきゃなんて考えるからこうなるのか。
とほほ。
〔バウバウ〕
〔ガルルルゥ〕
こいつら『エリートコボルト』っていうのか。レベルは38。
護衛クエで見たコボルトとは違うってことだな。
見た目はほとんど同じだが、眉が太い気がする。さすがエリート。
あと装備もしっかりと整っているようだ。さすがエリート。
「そんなエリートが、雑魚の俺に用はないはずだよな?」
〔ギャワワン!〕
〔ワウワウッ〕
あ、ダメですか。
っく。こうなったらやるだけやって死んでやる!
「うおおぉぉっ『サンダーフレ「『エクスカリバーッ!』」
迫り来るエリートどもに一矢報いようとスキルを唱えた瞬間、俺の視界を二分するかのような閃光が走った。
閃光が発せられた下に視線を向けると、純白の鎧を身に包んだ見慣れた姿の女性が。
「ファリス……さん?」
「ん? ――おぉ、君は」
一瞬シンキングタイムを発動させた彼女だったが、すぐに俺の事を思い出したようだ。
しかもシンキングタイム中にエリートコボルトからガジガジと噛みつかれているのに、まったくダメージを受けてない。
また強くなってませんかねぇ。ねえぇ?
「『神の裁きをっ』」
そんな声が聞こえて、ファリスの後ろから更なる助っ人が現れる。
聖女とこの女騎士はセットなのか。
十字架を手に、がすがすとエリートコボルトを素殴りしていくアイリス。殴り聖女、相変わらず恐ろしい戦闘スタイルだ。
あれ、この二人がここに居るってことは……まさか?
「君も先住民に会いに行くのかね?」
も、ってことは、二人も会いにいくつもり?
〔アオォォォォン〕
エリートコボルトの断末魔が響きまくる森で、俺は一抹の不安を抱くのであった。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。」の書籍版発売日が決定しました。
10月末、ハロウィンの31日です!
水曜日ですね。
おそらく私の地元では11月になってから並ぶ事になるのかなぁ。
並ぶ・・・のだろうか?
書影など届きましたら活動報告、及び後書きで宣伝させて頂こうと思います。
いろいろとよろしくお願いいたします(笑




