207:闘志に燃える運営1。
某東京都のビルの一室。
穴倉はモニターを鷲掴みして絶叫していた。
「何故こうもあっさりハッピーロードを見つけられたんだ!」
モニターに映っているのは、今まさに某プレイヤーの手によって橋が掛けられた光景だ。
左右の壁に掛けられた鍵を手に入れ、床の鍵穴に差せば石造りの橋が壁からせり出す。そんな仕掛けになっていた。
「壁は『ロッククライミング』技能50でも進む事ができない、そんな仕様にしていたっていうのに」
何故だ。
穴倉は映像を巻き戻して確認する。
そして見たのは、『テレポート』の応用と思われるスキルを使って、ピンポイントで鍵を取ったダークエルフの男と、その男が連れていたペットのピチョンが鍵を咥えて飛ぶ姿だった。
「ぬああぁぁぁっ! 飛行系ペットを持つプレイヤーが比較的少ないから安心しきっていたぜぇ」
そう。
あの鍵の正しい取り方は、飛行系ペットに頼んで取って来て貰う、もしくは浮遊系スキルでという方法だった。
ちなみに、矢に紐を括り付け、鍵のチェーン部分を狙い、返し部分に引っ掛けて手繰り寄せる……という、超高等術もあるのだが、99%失敗する。
失敗すれば鍵は奈落の底に落下し、リアル時間で二十四時間経たなければ復活しない。
鬼畜仕様である。
また、この奈落の底。
ダンジョンの階層の高さを無視しており、地面まで百メートルはある。
落ちればHPは1しか残らない。
いや、1でも残るあたり、さすがゲームである。
ただし、地面にはブロックが敷き詰められている。子供に大人気の某ブロックであるが、踏むとかなり痛い。
リアルでも足裏のダメージはあるが、穴倉はこのブロックに、一律5ダメージを与える仕様にした。
落下で残りHP1のところに、ブロックで5ダメージ。
確実にKILL出来る。
「くそうっ、くそうっ! く、っくくくくく。だがここからだ。ハッピーロードがアンハッピーロードとなるその瞬間こそ!」
穴倉は再び視線をモニターに移す。
我先に、いや、他のパーティーより少しでも早く先へと進み階層ボスへと辿り着こうとする、醜い争いが始まっていた。
「ここからだ。ここから、友情破壊作戦が開始されるのだ! はぁーっはっはっはっは」
穴倉、楽しそうである。
そして周囲の他のスタッフらは、一様にして彼に声を掛ける者は居なかった。
思いは一つ。
(穴倉、面倒くせーやつ)




