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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。  作者: 夢・風魔
バージョン1.02(予定)
186/268

186:マジ、ほげぇ。

「町の周辺にモンスター軍団が現れたようですね」

「えぇ。でも大丈夫です。門には多くのプレイ――冒険者が駆けつけ、討伐に乗り出していますから」

「そのようですね。心強いものです」


 俺も急いで戦場に戻りたいんだが……。こうしている間にもネームドが狩りつくされてしまう。


「マジック様も戦場に行かれるのですよね?」

「えぇ、そりゃあもう」


 もちろんレジェンド装備が欲しい!

 32でも、まだレアの部位があるからな。例え被ったとしても、性能が良ければ着替えるし、どっこいなら売って金にする。36装備が出れば超ラッキーだ。なんなら素材でもいい。

 だから直ぐにでも行きたい。走りたい!

 なのにこの人ときたら、物腰穏やかなのはいいが、のんびりすぎるんだよ!


「ではマジック様、わたくしもお供いたします」

「え?」


 シリウスさんは手にした竪琴を見せてにっこり微笑む。

 一連の工程がゆる~く、今にも俺は走り出したい衝動に駆られた。


「わたくしは直接戦うという事が出来ませんが、演奏によって皆様に勇気と、そして力を与える事ができます」

「はぁ……」


 はよっ。はよっ。


「貴方様の『応援歌』の技能と合わされば――あ、呪いのアイテムのせいで、デバフになるんでしたね」

「……バ、バフはもう諦めましたから」


 ここにきてバフ系技能を習得するとは思わなかったもんなぁ。

 レベルが上がればIMPも増えるから、技能習得は嬉しいんだが……こればっかりは仕方ない。

 そういや俺、デバフ技能もあったよな。

『不運』……バフスキルがデバフになるっていう。これのせいで『応援歌』がゴミ技能になったんだが。でもこれ、対象をモンスターに変えられれば、普通にデバッファーとして使えるんじゃ?


「『不運』技能を媒体にスキルを作って……『応援歌』技能のスキル効果と同じようなのを作る……とか」

「あぁ、それはよいかもしれませんね。しかしそれでは、『応援歌』技能のスキルと『不運』技能のスキルと、無駄に二つのスキルを作らなければなりませんよ。いっそ、『応援歌』技能のスキル効果の対象を、モンスターに変更するというスキルを一つ、『不運』技能で作ればいいのでは?」

「え……えぇぇっ。そ・れ・だ!」


 さっそくスキル作成!

 媒体は『不運』

 効果は――『応援歌』技能のバフ対象を、プレイヤーからモンスターに変更。というものに。

 普通に考えたら、何故モンスターを支援するのかって内容だ。

 だがバフスキルがデバフになるという呪い技能があるから、モンスター相手にバフれば、それもデバフになる! ――はず。

 試してみなきゃ分からない。

 ダメならスキル忘却で消せばいい。そして、二度と歌わなければいい。

 いや、ちょっと残念だけど。


 完成したスキルに『鎮魂歌』と名付ける。

 くぅ~。カッコイイぜ!


「完成したようですね」

「はい。これが上手くモンスターに左様すればいいんだが……まぁダメな時はダメな時で!」

「はははは。マジック様は前向きでいらっしゃる」


 よし、レッツ戦場!






 だがしかし、戦場は遠かった。

 いや、ある意味目の前なんだが、なんせ人が多すぎて前に出れない。

 門の横幅は五メートル程。狭くはないんだが、数百人のプレイヤーが押しかけているので、通れる隙間なんてのがまったく無かった。

 じゃあさっきみたいに壁から飛び降りるか――と階段を見ても、こちらは遠距離職で溢れかえっていて、階段も上れない状態か。

 うん。ダメだな。

 隣のシリウスさんは既に演奏を始めている。


「何の効果ですか?」

「はい。士気を高める効果がある曲です。全てのステータスを1.5倍にし、ダメージは二倍になります。他にもいろいろと」

「へぇ……」


 それなんてチート?

 楽しそうじゃん。俺TUEEEEできるじゃん!

 って、俺の簡易ステータス欄にバフアイコン無いんですけど。


「効果が現れるのはどのくらいなんですか?」

「すぐですよ?」


 だがバフられていない。

 周囲の人を見ると、魔法を撃っているプレイヤーが歓声を上げていた。

 魔法のダメージがでかくなっている、と、喜んでいるのだ。


 俺、仲間はずれ?


「マジック様。もしや呪いのアイテムをお持ちですか?」

「え? それさっきも聞いたセリフ」


 そう言うとシリウスさんが僅かに硬直し、セリフを言いなおした。

 もう一つお持ちですか、と。


 もう一つ……

 あぁぁ!


「ジャックのメダル……バフやヒールが不発する可能性があるっていう、そんな呪いが……」

「あははははは。それですね」


 うぉぉぉ、バフや『ヒール』なんてまぁいいやとか思ってたけど、いざこうなってみると悔しい。

 俺だけバフられてないって、ちょっとしたイジメじゃん。

 ぐぬぬぬ。


「ま、いいか。どうせ前に出れない限り、俺は戦闘に参加できないんだし」

「おや? マジック様は魔術師なのでは?」


 そうなんだけどな。

 ただ遠距離から魔法撃っても当たらないから、前に出なきゃダメなんだ。


「歌ってデバフれる魔法使いです」


 ただ問題は、ここから歌ってモンスターに届くのかってことだ。


『セシリア:マジック君、無事か?』


 お。パーティーチャット。

 無事と言えば無事だが……


『彗星マジック:死に戻りなう』

『霧隠:なむー』

『彗星マジック:なむあり。しかし人が多すぎて門から出れそうにない』

『セシリア:なむーって何?』

『霧隠:テレポは?』


 は!?

 その手があった!!

 いや待て。ヘタに飛んだ先がモンスターの真っ只中だとさっきの二の舞だぞ。


『セシリア:ねぇ、なむーって?』

『彗星マジック:どこか安全な場所はないか? テレポするにしても適当だと即デスペナだ』

『霧隠:拙者らのいる座標に飛んでくればいいでござる』


 なるる。マップを開けばパーティーメンバーは青い点で表示されてるからな、そこに飛べばいいのか。

 うしっ。


「シリウスさん、俺、テレポで仲間の所に飛びます」

「おや、ではご一緒させて頂いてもいいですか?」

「え? いいですけど……」


 と返事した瞬間、パーティーにシリウスさんが加わった。

 うぉう。NPCが参加しちゃったよ。

 そしてレベルが『??』になってるよ。

 公平設定大丈夫か?

 まぁテレポ後に抜けて貰えばいいか。


「んじゃあ、『テレポート!』」


 テレポった先で突然斬りつけられた。

 セシリアに。


「お、おい! スルーしてたからって、攻撃するこたぁないだろっ」

「え? マジック君が突然湧いてきたのだけれど。それで、なむーって何?」


 ……意地でも知りたいんだな。

 死に戻りした人への挨拶みたいなものだと説明したが、いまいち分からないようだ。


「いやぁ、乱戦ですねぇ」


 そう言うシリウスさんは、いつの間にかパーティーを抜けているし!?

 何のために加入したんだ……。あ、テレポのためか。

 乱戦だといいつつ、その表情がどこか楽しそうだ。

 戦闘できないとかいいながら、戦場でにこやかに微笑むとか……実はS属性か!?


「さぁマジック様。せっかくですので、先ほど習得したスキルをお試しください」

「お、そうだった。へへ、じゃあさっそく……」


 コホンと咳払いをし、深呼吸をする。

 ここは戦場。

 ファクトの町を囲む壁の外側であり、東門を出て数メートルの場所。

 多くのプレイヤーとモンスターとが入り乱れて戦っている。


 さぁ、俺の歌が吉と出るか凶とでるか!


「みんなぁ、俺の歌を聞きやがれほげほげぇぇ~っ!」

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