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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

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14/103

14:マジ、かいじゅうと戯れる。

「じゃあ調合は私に任せて」
「あぁ。俺はもしもの時用に、塩ワカメをもう少し集めてくるよ」
「うん、助かるばい。これで調合のレベルも上がるだろうし、新しい素材も扱えて感謝するとよ」
「いやいや、こっちこそ。じゃ」
「行ってら〜。私は工房で調合しとるけん、適当に集めたら戻ってきてね〜」

 見送られながら町を出て行くと、再び夜の浜辺へと向った。
 町を出て西にすぐの浜辺だ。さっきもここで塩ワカメを集めてたんだが、こんな町から目と鼻の先にモンスターとは。
 住民が襲われたりしねえのかな。
 まぁノンアクティブばっかりだし、自発的に襲ってくる事もないのかもしれん。

 なんて考えながら塩ワカメを集める事三十分程。レベルも7になってワカメも三十本、集まった。
 その間も海から続々と現れる水死体――じゃなく、オープニングイベントを終わらせたプレイヤーたち。
 そうか、海岸モンスターがどこもかしこもノンアクティブなのは、イベント終えたばかりのレベルの低いプレイヤーが流されてくるからか。

 今まさに浅瀬からざばざばと歩いて岸にやってきたプレイヤーも、安心して町に向えるって訳だな。
 うん。

 って、倒れたし!?
 こけたのか?
 いや、光の粒子になってんじゃねえかっ。つまり死んだ??
 あ、セーブポイントって、浅瀬になってんだな。すぐ近くにリポップしてきたよ。

《きゅきゅー》

 ん? なんか可愛い声が聞こえるな。
 アザラシっぽいシルエットの何かが、浅瀬にリポップした死に戻りしたばかりのプレイヤーに向って行く。
 向って、行く?
 まさかっ。

「アクティブか!?」

 リポップしたばかりのプレイヤーも気づいたのか、慌てて逃げ始めた。こっちに向って――。
 俺とそのプレイヤーとの間に、また別の漂着したばかりのプレイヤーが現れる。
 故意じゃないにしろ、あのままだと擦り付けてしまう!

「そこの人っ、逃げろっ!! うおおおおぉぉぉっ」
「え?」

 擦り付けてはマズいと思ったのか、逃げてた奴は岸にではなく横に向って移動しはじめる。
 俺もざぶざぶと海に入り「こっちだ」と叫んで誘導した。

「こ、これ、レベル8なんです!」
「任せろっ」

 アザラシとすれ違い様に『サンダー』をお見舞いすると、ダメージヘイトであっさりこっちにターゲットを移してくれた。
 そのまま岸に向い、戦いやすい位置まで戻ってきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇

 ☆おどけたブラックシール/ LV:8

◆◇◆◇◆◇◆◇


 名前の前にある星マークはなんなんだろう?
 アザラシの頭上に浮かんだ名前に視線を向けたことで、一瞬隙を作ってしまう。

《きゅきゅーっ》

 可愛らしい声とは裏腹に、物凄い速さで体を回転させたアザラシ。その尻尾が俺の腹に打ち付けられる。
 ぐふっ。
 これはちょっとじゃなく、結構痛いぞ。
 それもそのはず。俺のHPが――235|(370)――まで減ってるしっ。
 これ、三発耐えられねえぞ。

「『ヒール!』」

 慌てて回復するが、次の攻撃が飛んできて反撃する暇がねぇ。

「ボ、ボクも手伝いますっ。『ヒール』」
「おぉ、助かる」

 回復量は俺のに比べると少し劣るが、でもお陰で反撃する余裕も出来た。

《きゅ〜》

 糞っ。
 月明かりに照らされて見えるアザラシの顔ときたらっ。
 黒く大きなつぶらな瞳。ぽっちゃりとした体。
 水族館とかでみるゴマフアザラシそのまんまじゃねえかっ。可愛いよ、可愛いよっ。

「げふっ」
「だ、大丈夫ですか!? 『ヒール』」

 危ない危ない。
 萌えてたら思いっきり尾でしばかれた。

「ごめん。見た目が可愛くて、つい悶えてしまった」
「あぁ……なんとなく解ります。ボクも可愛いなぁとか思いながら、アクティブかどうかも気にせず近づいてしまったんで」
「プレイヤー殺しだな」
「そうですね……」

 そんな会話の間も、可愛いアザラシは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
 距離を取って逃げたり、まともに食らったりを繰り返しているが、こっちも負けずに反撃はしている。
 しているんだが、元々のHPがでかくて、一撃お見舞いしたところで2%ぐらいしか削れていない。

「おい、そこのあんた!」

 少し離れた所でこっちを見ていたさっきのプレイヤーに声を掛ける。

「は、はい」
「俺、レベル7だけどあんたは?」
「え、っと、3です」

 この『IFO』の経験値公平圏内は5と、なかなかシビアな設定だ。公式サイトにそう書いてあった。
 7と3。公平オッケーだな。

「じゃあパーティーを組んでくれっ。俺は手が離せないんで、そっちで作ってくれないか?」
「え? あ、はいっ。解りました。でもどうして?」
「どうしてって、ヒールしてもらってるのに俺だけ経験値貰うのは悪いだろ。あと――」

 奴の攻撃の合間を見ながら、海から上がってくるプレイヤーを探す。
 よし、いた!
 パーティーにも入ったし……

「そこの人!! レベル2以上あるなら手伝ってくれませんかっ」
「え? お、俺?」
「そうそう、そこの法衣来てる人に、パーティーに誘って貰ってくれっ」
「あ、そういう事ですか。マジックさんは戦闘中で手が離せないから、代わりにボクが。じゃあ、要請出しますので、承諾してくださいね」

 パーティーに入った事で、法衣を着たプレイヤーが『ルーン』、今強引に誘った相手が『フラッシュ』という名前である事が解った。
 二人ともレベル3だな。

「俺、弓なんだけど遠くから撃ってればオケ?」
「オケ」

 弓というならDEXが高いから、レベル差があっても当たるだろう。
 シュっと飛んできた弓は、見事にアザラシに命中。
 やっぱ弓職は格上相手にも、余裕で攻撃当たるからいいよな。

《きゅ、きゅぅぅぅっ》

 矢が刺さって痛がるアザラシの声が、なんとも胸を締め付ける。
 これ絶対プレイヤー殺しだろ。

「なぁ、これって動物虐待――」
「言うなフラッシュ君! こいつはモンスターなんだ!」
「そ、そうだよ。さっきボクを瞬殺した奴なんだからっ」

 こんな事で躊躇してたら、ゲームなんてやってられないぞっ。
 そんな話しをしながら、お互い戦う決意を固める。
 俺たちは動物虐待をしているのではない! モンスターを駆逐するだけだっ――と。
 更に仲間を増やすべく、イベントを終えたばかりのプレイヤーを道連れにしていった。

「そこの人っ」
「手伝ってくださいお願いしますっ」
「さぁ、一緒に地獄に落ちようぜっ」

 フラッシュ、その言い方じゃあ逃げられるって。
 ほら、逃げられたじゃないか。

 だがまぁ人数は集まった。パーティーに参加できる上限数、六人になった。
 盾持ち、弓持ち二人、ヒーラー二人、そして俺。

「俺タンクなのに、ヘイト取れなくってごめん」
「いや、もう俺が魔法で何度も攻撃した後だし、レベル差あるからしゃあないですよ」
「ボク達が交代でヒールしてるから、大丈夫ですよっ」
「マジックさん本人もヒール持ちですし、なんとか耐えれてるから頑張りましょう」
「命中率だけはいいけど、レベル差あるとダメージでないわね」
「うん、そうだな。でもほぼ必中だし、少しずつでも削っていこうぜ」

 全員が力を合わせて強敵を向かい合う。
 くっ。ダメだ。まじまじと見つめてたら、きゅんきゅんしてしまう。
 しかもこいつ、俺が右手を振りかざすと前足で顔を覆ってチラ見とかしてきやがるしっ。
 なんて高度な人工知能なんだっ。

 あまりの可愛さに右手の力が緩む。
 奴はそんな俺の弱さを見逃さなかった。

 両の前足からチラ見していた黒くつぶらな瞳が一瞬にして真っ赤に光ると、これまでにない速さで回転しばじめた。
 ヤバいっ。

「マジック! うおおぉぉぉっ『シールドバッシュウウゥゥッ』」

 物理前衛職が格上に攻撃をヒットさせるのは、そう簡単な事じゃない。
 俺も経験があるだけに、その事実はよく知っている。

 だが運は我らに味方したっ。

 ガッという重い音と共に、アザラシが一メートル程吹っ飛んで、そのままヒヨコマークを頭上に浮かべたのだ。
 これ、失神状態だよな?
 ピヨってるよな?

「今だ、マジックッ」
「任されたっ! 『サンダーッ!』」

 目を回しているアザラシに渾身の力を込めて魔法を放つ。
 与えるダメージはいつもと同じだと解っているが、どうしても気持ちが入ってしまう。
 これがフィニーッシュ!

《きゅきゅいーん》
「くっ。ダメージが足りなかったかっ。糞っ」
「まだまだーっ」
「雀の涙でも、必中攻撃がこっちにはあるわっ」

 掛け声と共に飛んできた二本の矢は、見事にアザラシの額へと突き刺さった。

《ぎゅっぎゅーっ》

 それがアザラシの最期の断末魔となった。

 恐ろしい。
 なんて恐ろしいモンスターを生み出したんだ、ここの開発陣は。
 こんな可愛い動物をモンスターにするとか!
+注意+
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