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冒険者(女)と主夫  作者: やよい
19/41

そのまま寝かせておきましょう



 クリスは硬直し、その後ろで跪いている閣下とアイン、ニコラス。

 悪さをしている最中の子供が、見つかって言い訳を考えているような間の悪さ。


「えぇっと、お邪魔してすみません閣下。どうしても用事があったものですから」

 

 まずエリスは閣下に詫びてみた。


「いや、お気にされずとも良いことです」


 跪いたままの姿勢で閣下は答えた。ちら、とクリスを見るとぷいっと顔を逸らした。

 拗ねているようで、ちょっと可愛い。

 エリスとしてはクリスの誤解を解いて、閣下以下騎士団員への八つ当たりを阻止しなければならないのでここは心を鬼にしなければならない。


「ねえ、クリストフ殿下?何をしていたのかな?」


 びくっとクリスの肩が震えた。

 そおっとエリスの方を向いて、だってエリスさん池に落ちて寝込んだって聞いたから、騎士団は何をやってたのかって聞いてたところだよ、とぼそぼそ言った。


 はあ、とエリスはため息をつき叱るのではなく、説明して説得することにした。

 クリスは、怒られることを恐れている。呆れられ、エリスの気持ちが離れてしまうのではないかと怯えているのだ。


「私は大丈夫だよ。野宿だって経験しているし池に落ちるくらい何ともないし問題はそこじゃない。ルーから受け取った鏡に問題があるんだ」


「でも寝込んだって・・・」


 言いすがるクリスも可愛いが事実はそうではない。


「このお城へ来てから体がなまってたんだ。久しぶりに走って池に入ったら眠たくなって寝てしまったんだ。これは本当だよ。だから心配しないで」


 ややあってから、クリスもため息をついて閣下の方へ向き直った。


「モーリス閣下。私が間違っていたようだ。悪かった。立ってくれないか」


 は、と閣下は頭を下げ立ち上がった。その後ろのアインとニコラスにもクリスは声をかけて立ち上がらせた。うん、いい子だ。


 そのまま退出しようとする面々に待ってくれ、とエリスは声をかけた。

 アインの視線が露骨に、面倒に巻き込むなと訴えてくるが無視だ。


「あの鏡のことで相談したいことがあるんだ。意見を聞かせてほしい」


 エリスは池に落ちた時と眠った時に無意識下でスーに会ったことをかいつまんで話した。その内容も。

 そこで、話が長引くと判断したバトラーに導かれて一つのテーブルを囲み、全員が着席しお茶が優雅なカップに供された。


「まったく、あのドラゴンは油断も隙もないですね」


 クリスが優雅にカップに口をつけ、忌々しそうに眉間にしわを寄せた。


「鏡に意識を封じ込まれたのかと思っていたら、自分から閉じこもって我儘言ってるだけじゃないですか」


 突っ込みが的確すぎるぞクリス。

 閣下が目でクリスに発言の許可を取って、控えめに言った。


「もしくはわざとその鏡に封じられたという見方もありますな。抜け目のないドラゴンだけに」


 あれ?クリスに追従?スー、いささか旗色が悪いよ。

 クリスがこっちを見てにっこりと言った。


「あのバカドラゴンはそのまま寝かせておきましょう」


 まさかの放置!そして閣下、問題解決とばかりにお茶を飲み干さないで!

 今度はエリスが食い下がる番だった。


「いや、もちろん私も番になどなるつもりはないんだが、できればスーをドラゴンの里か仲間のところへ帰してやりたいんだ」

 

 ここで話を終わらせてはならん、とエリスは全員を見渡した。

 クリスは渋い顔、閣下は聞き分けのない子供を見るような困った顔、アインは呆れた顔、ニコラスは・・・


「じゃ、ドラゴンを帰省させる時には俺が一緒について行くよ!」


と、明後日の答えを導きだした。違う、それは求めていない。

 ややあってクリスが言った。不本意そうに。


「意識体へ魔術を使って干渉するという方法はどうでしょうね」


 なにそれ。すごく本格的になってきた。

 閣下が、魔術を使うのなら陛下に許可をとらなければ、とか許可を得るのに10日ほどかかるとか誰に任せるかとか色々話をつめてくれている。エリスはちょっとわくわくした。

 そこへ、アインがものすごく申し訳なさそうに発言を求め、許可された。ちょっと緊張しているようだ。


「あの、本体に危機が訪れたら鏡から出てきませんか?」

 

 クリスの目が光った。(ような気がした)

 クリスに促されて、具体的な方法を述べるアイン。


「だから、えーその、川に流すとか、口に激辛香辛料突っ込むとか・・・」


 ちょっと待てぇい!

 クリス、良い笑顔になってる!まずはそれから試そうとか可哀相でしょ!

 エリスの反対に賛同してくれる人は誰もいなかった。

 陛下の許可を待つ間に、それを試すのがいいんじゃないかという話になっている。

 ごめん、スー。私の無力を許して。




 

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