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「後鬼ちゃん、遅い!」

「後鬼ちゃん、遅い!」

「本当にごめんなさい」

「どうして遅くなったの?」

「あの、大変申し訳にくいのですが…」

少し怒っている前鬼様に説明をする。

先ほど急いで前鬼様に着替えを持って行こうと鞄を開けてそこで気づいた。

前鬼様の着替えだけ見つからなかったのだ。

仕方がないので、仲居に子供用の浴衣を貰って来た。

そのことを話した時、濡らされたことを我慢していた前鬼様にとどめを刺してしまった。

「いやっ!大人用着る!」

そう言って聞かない前鬼様に、仕方なく大人用の浴衣を着付ける。

おはしょりでなんとか調節しようと思ったが不格好になってしまった。

「かわいい」

背伸びをしているその姿に、つい声が漏れてしまった。顔を真っ赤にしながら怒られる。

裾を擦らないようにと部屋に戻る。少し歩いただけではだけてしまい、上手に歩けない。

今にも泣きそうだった前鬼様は半泣きである。私は前鬼様をおんぶする。

声には出してないが、涙を流しながら必死に堪えているのが背中から伝わってくる。

朝からずいぶん緊張していたに違いない。その緊張が今にも溶けそうだった。

最後の力を振り絞って私の背中の上で、せめて声を出して泣かないようにしている。

部屋で前鬼様を下ろすと、そのまま脱いで顔を見せないようにささっと布団に入っていった。

「もう、寝る!」

不機嫌そうな声も若干嗚咽混じりだと弱々しく感じられる。

「前鬼様は今日一日大変立派でしたよ」

私も布団に入り後ろから抱きかかえるように励ます。

うまく振る舞えていたのに最後の最後で崩れてしまった。

そんな前鬼様の背中と頭を撫でるように励ます。甘えているのか抵抗はなかった。

気がつけばすぅすぅと心地良い、そんないつもの寝息が聞こえ始めてきた。


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