21/117
「前鬼様、危ない!」
「前鬼様、危ない!」
後鬼ちゃんの声に気づいたがもうすでに時遅し。
仲居の一人が私の近くでつまずいて転んだ。
その拍子に仲居は持っていた果実酒の中身を私に向かってこぼしてしまった。
幸い怪我こそなかったが、服はおろか、髪までびしょびしょになっていた。
「大丈夫、大丈夫です!」
目の前の平謝りする仲居に、私はそう繰り返した。
そしてちょうど時間も遅かったので、そのまま抜けて来た。
仲居に案内されるままに、浴場に向かう。
後鬼ちゃんは一度部屋に戻ってから着替えを取って来てくれる。
中居に脱いだ服をそのまま渡し、浴場へと進む。
後鬼ちゃんを待とうとじっとしていると、他の客の目線が気になるのでとりあえず身体を洗い始める。
なかなか後鬼ちゃんが来ないので洗い終えた。
しかたがないので湯船に浸かる。若干熱いが我慢する。
後鬼ちゃんが来ない、着替えがないので浴場から出られない。
先ほど中居に子供用の浴衣を勧められたが、もちろん癪に障ったので断った。
「後鬼ちゃん、まだかな~」
他の人の目線を気にしながら再び湯船にしっかりと浸かった。




