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037 光と夜の町 そして現実へ

昼から夜へ。

 とりあえず噴水のあった場所あたりまで戻ってから、ゲームを終了させる事にしましょう。

 人の出入りというか出現が激しい噴水周りならば、次回ゲームを始めた時に私が出現しても、あまり目立たないで始められそうですからね。


 そういえば、人通りの多そうなところでログアウトして、次回ゲームを始めた時、同じ座標に人や物がある状態で再開する事になった場合は、一体このアバターはどうなるんでしょうね?

 VR以外の普通のゲームで良くあるような、同じ座標に重なっても大丈夫! とは行かないと思うのですが。


 後から来る人の出現位置がずれたりするんだろうか。

 まさか混ざったりしないよね? ちょっと気になる。


 それにしても、このゲーム内で未だに時計らしき物を見かけていないのですよね。


 生産スペースで借り受けた識別札は別としてですが。

 あれは時計というよりアラームの様な物でしたからね。


 出来れば、腕時計みたいな携帯できる大きさの時間が確認できる道具が欲しい。それか普通の置き時計でも良いので。自宅で使ってる目覚まし時計位の大きさなら妥協できます。


 ああ、でも時計をアイテムボックスに入れておいたらカウント止まっちゃうかな?

 うーん、悩み所ですね。


 今日は太陽の位置でなんとなーくですが時間帯を判別出来たので、一応問題は無かったですけど、やっぱり正確な現在時間を確認出来た方がプレイしやすいのです。

 知り合いにお会いするタイミングを計るのにも使えるでしょうしね。


 まぁ、主に町の門の開閉時間の確認的な意味合いが強い様な気もしますけれど! 安全第一!


 などと考えつつも、特に迷う事もなく無事予定通りに噴水前まで到着致しました。

 流石に歩いた回数が違いますので、中央通り付近の道は覚えてきましたよ。


 まぁ時計の事は今考えても仕方ありません、次回ログインした時に知り合いの誰かに聞いてみよう。ガルドスさん辺りならきっと教えてくれそうですよね。


 自分で自分を町の案内板代わりだ、と豪語するお方ですし。


 いまだ噴水周りにはたくさんの露店や屋台が立ち並んでいますね。

 皆さん初日なのに頑張るなぁ。寝なくて大丈夫なんでしょうか? まぁ私も大分長時間プレイしていた感じですし、もうちょっとプレイしたいなーとも思うのです。


 あはは、人の事は言えませんね。

 明日明後日は土日ですし、皆様ある程度無理が利くのでしょう。


 それではログアウトしよう、とメニューを開いてゲーム終了の項目が何処にあるか探し始めたタイミングで。


 視界の端に見えていた安寧の女神様の神殿の上層のほう? から空に向かって細い一本の光の柱が出現したかと思うと、その柱を中心に綺麗な淡い光がぶわーっと町中に波のように広がって行きました。うわぁ、一体何事でしょうか!?


 それを追うようなタイミングで、カラーン……カラーンと澄んだ鐘の音が鳴り響き始めます。


 唐突に起きた現象にビックリしつつも、メニューから顔を上げて視線を神殿の方に向けます。


 聞こえてくる音から察するに、恐らく建物上部に飛び出すように突き出ている、塔のような部分から音が発生しているのかな? 光の柱もその部分から出現しています。


 よく見る鐘楼のように鐘の部分が露出している訳ではないので、建物の内部で何かの機械が音を鳴らしているのかもしれません。光の柱が出たりしているし、魔法か何かだったりするのかも。


 ふと周りを見回してみますと、先ほどまで様々な音が発生していた噴水前が、鐘の音以外には殆どなにも聞こえない程に静まり返っています。

 他のプレイヤーさんや、露店を営んでいた方々も手や足を止めて空を見上げ、楽しそうだったり、驚いていたり、様々な状態で神殿から伸びる光の柱を見上げ、響く鐘の音色に耳を傾けていました。


 その後、数えてみましたが合計10回鐘の音が始まりの町に鳴り響いたようです。


 これは時報の変わりに鳴らしているのでしょうか。

 そろそろ夜になる時間だよーと言った意味合いの。


 この音の大きさならば、東西南北の門の辺りにいるプレイヤーさん達にも聞こえたのじゃないかな。


 神殿から広がった光に呼応するように、道端に規則正しく建っている電柱? のようなものの先端が光り輝き始めました。


 ああ、移動中に視界に入ってはいましたが、あまり気に止めていなかったので判りませんでした。

 あれは街灯の支柱だったんですね。


 鐘の音が遠くへ消え去り、光の柱がすーっと掻き消えた後、急速に日が落ちて暗くなり始めました。

 見慣れた町並みは昼間とはまた別の顔を見せ始めます。

 あぁ、程よい街灯の光と空の星の輝きが相まって、とっても綺麗です。


 ざわざわと、徐々に雑踏のざわめきが戻ってきます。

 露店を再開する方。メニューを開いて何かしている方。楽しそうな表情で門へ向かって足早に移動していく方。


 夜の町もなかなか活気がありそうですね。お店とかは何時ぐらいまで営業しているんでしょうね?

 コンビニみたいな店舗もあるのでしょうか。


 おっと、細かい考察は次回に持ち越す事にして、早くログアウトしないとね!


 さてさて、ゲームからログアウトするにはどうすれば良いのかなー?


 メニューを呼び出してゲーム終了の項目が無いか確認します。

 恐らくはシステムの項にあるのでは、というのが私の予想ですが。

 ああ、メニューを開いて気がつきましたが、なめし革作成の影響なのかスタミナが半分くらいになってますね。


 意外と体力を使う仕事だったのか。モミモミしていただけのような気がしますけれども。


 さて、予想通りといいましょうかシステムの項目内に『ログアウト』の文字を発見いたしました。

 ここをタッチで良いのかな?


 メニューを突っつくと目の前にいつもの透明パネルが出現いたします。


『ログアウトしますか?  はい いいえ』


 うん、問題なくゲーム終了できるようです。そして、アレイアさんの話から鑑みるに、安全な場所以外だとこの表示が出るまで1分掛かる、という事でしょうね。


 ではログアウトしましょうか。迷わずに『はい』の部分を突きます。


 足元の方から波が寄せてくるように広がる真っ白な世界。

 音がゆっくりと消失。

 重力も消えて一瞬浮遊感を感じ。

 先ほどまで私の身体だったアバターが光になって消え、意識のみが浮き上がって行きます。


 徐々に暗くなっていく視界に、白い文字が浮かび上がりました。


 『 ログアウト完了 』

 

 ゆっくりと意識が覚醒していきます。


 ……先ほどまで目を開けて石畳の上に立っていたはずなのに、そのまま動かない状態で今は目を閉じて横になっている事に違和感。


 背中に使い慣れたベッドの感触。


 ああ、VR空間から現実に戻ってきたという実感がわいてきました。


 ゆっくりと目を開きます。おっと、視界の端で蛍光灯が爛々と輝いています。

 いけません、電気付けっぱなしでしたね。


 今度からゲームを始める時にはちゃんと消灯しないと。

 開始時にアレコレ考えながらそのままVR空間へ移動したので、すっかり忘れておりました。うーむ。


 まぁ電気代を少々無駄遣いした所で、お父さんが怒ったりする事はないのですけれどね。私の気分の問題です。


 身体を横たえていたベッドから上半身を起こすと、うーんと両手を上に伸ばし、腰をぐいぐいと捻ります。枕元においてある目覚まし時計を確認すると、夜10時を少し過ぎた辺りでした。


 あれ? ゲーム内での経過時間から逆算して、確実に0時は過ぎてると予想していたのだけれど。あちらでは夜になっていましたし。うーん、感覚だけじゃヤッパリ把握しづらいですね。


 まぁ時間に猶予がある事は良い事です。ひとまず何かお腹の中に食料を放り込みましょうか。

 適当に冷凍食品のオニギリでも温めて食べますかね。


 それにしても一人でいる事自体はいつも通りなのですが、先ほどまで回りに沢山の人が居た、という感覚が残っていてチョッピリ寂しく感じてしまいます。

 この静寂とVRゲーム内での喧騒を比べても仕方の無い事なのですけれど。しんみり。


 さて、ぼけっと突っ立っているわけには参りません。お風呂にも入らないといけませんからね。

 冷蔵庫から食べなれている冷凍食品の2個入り焼きオニギリを取り出すと、ポイと電子レンジに放り込んでボタンをプッシュ、時間指定をしてキッチンテーブル横の椅子に腰を落ち着けます。


 動作している電子レンジを見ていると、生産スペースに設置されていた加速箱を思い出しますね。あれは旧式のレンジっぽい作りでしたけれど。ふふ。


 椅子の背もたれに身体を預けつつ、両手両足をだらーっと伸ばして、ぼけーっと電子レンジのカウントが進むのを眺めます。そういえば【システマ】さんの事について運営にメールを送らなければなりません!

 ふふふ、大事な事なので幾ら迂闊な私でも、ちゃーんと思い出せました。


 そうだ、生産スペースの出入り口に関しても、添付で一文を添えておかなければなりませんね!


 受付のお姉さんからの説明云々はひとまず置いておくとして、初回利用のプレイヤーでもある程度出入り口の場所がわかるように、案内版というか矢印みたいな物でも良いので設置して頂きませんと!

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