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性格

 明確な敵がいるのでは?

 わたしはそう思い出していた。

 襲撃をかけてきた連中の装備が、単なる賊にしては良い物が揃い過ぎていたからだ。

 流石に魔法の武具は持ってはいなかったが、それでも揃えるとなるとそれなりの金銭が必要となるレベルの物が揃っていた。一部の者が持っているだけならば疑問に思わなかったかもしれないが、全員が持つような容易い物ではなく、そして、それは奴等の実力には似つかわしくない物……

 似つかわしい実力を持った連中ならば、わたし達もただでは済まなかっただろう。

 だが、奴等はその優れた装備を生かす実力を持ち合わせてはおらずに、苦戦すらすることもなかった。気にすることではないのかもしれなかったが、何か嫌な予感がして穿った考え事をしてしまっているのは自分でも自覚していた。

 私は依頼主へとさりげなく視線を向けた。

 今向かっている目的となるユーニの町に住む商人らしい。商売の取引を終えての帰路らしいのだが、帰り道に最近山賊の出没情報があったために、私達冒険者を護衛の為に雇ったとのこと。

 旅の路銀が心許なくなっていた私は、いくつかあった依頼の中で次の街への移動も兼ねることができるこの仕事に受けることにした。

 それほど大きな依頼とは思ってはいなかったが、今思えば相場より報酬が多く思えて、目の前にいる依頼主が普通の商人ではないのかもしれないという考えが頭に浮かんでいた。

 もし、そうだったとしても今更のこと。正式な契約で受けた以上、依頼主の方が違反を犯さない限り、仕事を全うするだけなのだが、もしもの時に備えての心構えだけはしとくことにする。

 そんな心配も杞憂だったのか、その後は何も起こることはなく、翌々日の昼には目的のユーニの町へと到着していた。

 考え過ぎだったかと心の中で安堵する。

 依頼主の屋敷で報酬を受け取った私は、そのまま立ち去ろうとした。他の冒険者も同じ考えだったのだがその前に依頼主に引き止められる。


 「追加の依頼があるのですが、お話を聞いてもらえますか?」

 

 そう言われはしたが、正直私は受けるつもりはなかった。だが、他の冒険者達が話を聞くだけならと立ち去ろうとしなかったため、私も話だけは聞き流れになってしまった。


 依頼を聞いた上で断ればいいか……


 そんな甘い考えは持ってはいけなかった。

 元々嫌な予感がしていたのだから、話も聞かずに立ち去るべきだった。他の冒険者に合わせる必要はなかったのだ。だが、後悔というのは先に立たないもの……

 そんなことを実感することになるのは、翌日になってからであった。





「なぜこうなった……?」


 思わずそんな言葉が口から出てしまった。

 そんな私の呟き反応して向けられた視線を感じたが、私はその後の言葉が出ずに、代わりに大きな溜息が口から出ていた。

 室内に居るのは私を含めて2人だけ。私に向けられている視線が誰のものなのはすぐにわかる状況。

 視線の主は何故か次の依頼も一緒に受けることになったあの美少女魔導士だった。前の依頼では敢えて名前を聞くことをしなかったのだが、今回は2人だけでの仕事ということもあり、流石にお互いに自己紹介し合って、名前を知ることとなっていた。

 彼女はラミルと名乗った。

 歳は私と同じ15歳らしい。

 特に得意とする魔法は無く、様々な魔法を状況によって使い分けるタイプの魔導士だと彼女は言った。

 さも普通のことのように彼女は言っていたが、それは言うほど簡単なものではないと私は知っていた。探せば、そんなタイプのベテラン魔法使いなら見つけることができるかもしれないが、それは経験を積むことにより可能になる領域であり、長くとも2〜3年だと思われる彼女の冒険者歴で辿り着けるものではないと思えた。

 先の賊との戦闘を見る限り、役立たずとは思えなかったが、それは他の実力者がいるからそう感じただけかもしれない。

 通常状態であるだろう、今感じ取れる魔力で見る限りは大した魔法使いには思えなかった。正直言って、単純な魔力の強さだけで見れば私の方が上であろうと感じる。それが魔法の全てだとは思いはしないが、若いうちならそれ魔力の差というのは大きいと私は思っていた。


「どうかしたか?」


 じっと向けられた視線に耐えきれなくなり、私は視線を向けないままそう尋ねた。


 「いえ、随分と大きな溜息を吐かれてたので、どうしたのかな? と……」

 「いや、受けるつもりがなかった仕事を何で受けてしまったのかと、自分に呆れてしまってな……」


 私はぶっきらぼうに思われるように敢えて冷たい口調でそう返した。冒険者として1人で旅に出てから、このような口調をベースするようにしていた。

 女だからと、若いからと、舐められないように、そう心がけているのだった。

 だが、実際は15歳の小娘が生きがってるだけと思われているに違いない。そんな実感をしながらも、いずれはこの対応が自然に感じられるようになるだろうと割り切ってはいる。


 「受けるつもりはなかったのですか?」

 「ああ……」


 横目でチラッと見た彼女の表情を見るに、何を考えているのかは簡単に予想がついた。

 なぜ受けるつもりもないのに依頼を聞く為に屋敷に入ったのか? 

 なぜ依頼を聞いた後に他の冒険者のように断らなかったのか?

 そう疑問に思っているに違いない。

 私自身、その疑問を持っていた。

 受ける理由なんてなかったはずなのに、何故か受けることになった仕事。

 だが、私自身はその答はわかっていた。

 難しい答えではないのだ。

 自分自身の性格を把握しきっている私ならすぐわかる答えなのだから……


 ただ、1人で仕事を受けたこの少女のことが心配だったから……

 頼りなさがな少女1人でどうにかなる仕事とは思えなかったから…….

 そんな彼女を見捨てるという冷たい答えをえらぶことができない。そんな甘さは捨てなければいけない世界に飛び込んだということを判っていながらも、それができない、そんな甘い人間なのだと自分で判っているのだから……

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