表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法の王国戦争 仮  作者: マイノス
4/5

動き始めた3つの物語

<< マール 13歳 >>


そんなある日、大陸の東に島があり、そこには、小型だが、多くの野生馬が生息しているという噂を聞きました。

私には馬の知識がそれなりにあり、大陸の西方から大型馬がやってきますが、それは気性が荒く、扱いにくかった。

一方、小型馬は、走行力では劣ったが、気性も穏やかで扱いやすかった。

大型馬は戦闘では圧倒的に有利で、私自身は大型馬を乗りこなせるように、日々訓練していましたが、一般の兵士には、小型馬が必要だとは思っていました。


マイノスさんは、村の人に、東の島に行って、馬を連れてこないかと提案しました。

東の島は、年に数度、海流の流れが緩やかになり、人も馬も泳いで渡れるとのことでした。

大陸からはほとんど見えないほど、遠い場所にあるので、泳ぐのは無理だろうとか、馬を扱える人もそう多くないとか、懸念する声が多く出ましたが、マイノスさんは、心配ないと村の人を説得しました。

1週間、村の兵士が馬に乗れるまで訓練するように、マイノスさんは私に指示をし、そしてラドさんは、葦で船を作るように依頼しました。


私は船に乗ったのは初めてでした。

海はとても怖い場所だと父から言われていたので、私は小さい頃は海に連れて行って貰えなかったのです。

大きくなってから、泳げる必要があると、海に何度か連れて行ってもらった時は、楽しい旅行になったので、海は嫌いではなくなっていました。

しかし、船に乗ったのは初めてでした。


葦の船は、私でも作り方を教われば作れそうなものでしたが、命に関わるものだからと、ラドさんは呼び寄せた漁師に大金を与え、彼らに任せました。

船は一週間で2艘作られ、漁師から更に3艘買い取って、合計5艘で出向しました。

一つの船には二人乗り、航海は3日間を予定していました。

食料と水は、2週間分積んだのですが、乗り手は漕手でもあるため、計画以上に食料と水を消費しました。

ただ葦の船には、実は多くの微生物や虫が乗船して、きのこが生えていたり、船底には魚が集まったりしたので、飢えることはありませんでした。

また乗船時の便意は、海の中で済ませたが、私は女性だったので、船はその時は最後尾にしてもらいました。



島は大きな島でした。

私たちは上陸前に、海岸線を更に3日かけて回りながら、島の様子を探りましたが、その島は無人島ではありませんでした。

少なくとも海岸沿いには3つの村が点在し、内陸にも村がある可能性はありました。

ただ、村からの攻撃はなかったので、友好的に交渉することは出来そうでした。

マイノスさんは、彼らに黄金や鉄製の農具を提供し、一つの村の領主と交渉しました。

その過程で、その島の様子も知ることが出来ました。

島には7つの小さな村があり、接触はあまり無いとのことでした。

内陸には野生の馬以外にも、多くの動物がいて、樹の実も豊富で、ここでは米も取れるようでした。

また島の北側には、石を採掘できる岩場もあるようでした。


しばらくして、交渉は成立したようで、マイノスさんは、ドノフという中年領主から、小型馬20頭を買い付けることに成功しました。

またドノフは、ギルドに参加してくれることになり、村を息子のレノフに任せて、私たちのギルド拠点に、兵士15名と共に来てくれることにもなりました。


帰る時には、ドノフからの提案で、馬を縄で繋ぎ、その周りを船で囲って、誘導する形で、海を渡りました。

馬が海を上手に泳げることには驚きました。

潮の流れが大陸に向けて、強くなり始めて、船では帆を上げたこともあって、帰りは一日もかかりませんでしたが、馬は相当疲れたようで、途中からは船に繋いで大陸まで連れて帰りました。


私たちは購入した馬で、訓練や繁殖を試みました。

兵士の乗馬訓練の方は成功しましたが、繁殖の方は成功しませんでした。

馬にとっては、島とは環境が違い、あまり心地良い場所ではなかったかも知れません。

私たちの村は、連れてきた馬の3頭を軍事訓練用に使いましたが、残りの17頭は父に預け、交易に使用されました。

主要交易路は4本と倍増し、市場も拡大されました。

私たち村は、日に日に賑やかになっていきました。


そして、それはギルド拠点に集まる近隣の村にも波及して、近隣には50ほどの村が出来ましたが、週に一度の集会では、始めの頃は、マイノスさんが話しかけても、ほとんどの人は、マイノスさんの指示を聞くだけでした。

それは、私たちの村の発展に、他の領主が驚いていたせいもありました。

どうしたら、そんなに繁栄するのか、他の領主はそれを知りたがっていました。

ただそんな中で、私が気になって女性領主、その人はルナさんという人でしたが、マイノスさんから提案や指示が出た時は、賛成とか了解とか大きな声で話すので、注目せざるを得ませんでした。

悪い人ではない、そう思うのですが、私の心に重いものが乗っているような気持ちになりました。

また、ロドリゲスやパクさんは、ギルドの軍事作戦について、マイノスさんと個別に話しているようでした。



<< 主人公 マイノス >>


翌々日の昼頃に、私は仕事から帰宅した。

スーパーで買った食品を冷蔵庫に詰め込み、作業着などの衣類を洗濯機に入れて、洗剤と柔軟剤を入れて回し、シャワーを浴びて、電子レンジで弁当を温めた。

ゼロカロリーのジュースをコップに入れ、机や椅子にも、ベッドにも向かえず、床に倒れ込んだ。

「疲れた」

「もう何もしたくない」

私は一昨日、スマホゲームでギルドを設立していた事を思い出した。

開いてみるか。


スターネイムがギルドに参加しました。

マフナドがギルドに参加しました。

ボレへゴがギルドに参加しました。

クエティパリカがギルドに参加しました。

ロドリゲスがギルドに参加しました。

ロドリゲスがギルドを退出しました。

メリークリスマスがギルドに参加しました。

ディア ロボシンクがギルドに参加しました。


ギルドチャットには、ほとんど何もコメントが無く、チュートリアルに沿ってゲームを開始したばかりのプレイヤーが、黙々と日々のミッションをこなしているように見えた。

というか、私がそれしかしていないので、そう想像するしかなかった。


このゲームは、世界中に配信されている、多国籍ゲームだ。

自動翻訳は付いているものの、うっかり発言し、ダメ男な自分が発覚して、リーダーとしての威厳を失いたくない。

「こんにちはも控えるか」

と、英雄とは程遠い行動を取る私だった。

そんな日が2,3日続く中で、私がギルド員の勢力値を見ていたら、人数はギルド員数の上限50人に近い46人になっていたが、その中に、私と同様に、遊んでいる痕跡のあるプレイヤーが一人いることに気づいた。

ルナというプレイヤーだ。


私はたくさんいるプレイヤーのうち、何名かは、運営側が自動操縦しているプレイヤーもいるのではないかと、疑い始めていた。

なぜならギルドチャットには、ほとんど何もコメントが書かれていないからだ。

そうすると私は、昔の一人プレイのゲームをしているのと変わらない。

それはネットゲームの面白さとは別のものだ。

私は怒りが込み上げてきて、ギルドチャットにコメントしてみた。

「こんにちは、みんな。ゲームは楽しんでいるかい?」

そう書き込んで、私は疲れから、その場の床で寝入ってしまった。

洗濯物も乾かすこと無く、温めた弁当にも手をつけずに、3時間ほど寝た昼下がり、私は目を覚まして、弁当を温め直して食べながら、スマホを開いた。


「リーダー、こんにちは。ゲーム楽しんでいます。私もギルドを作ってみたい。私にも出来るかな?」

それは、ルナさんだった。

日本人のようだった。

運営が自動で作るコメントではなさそうだった。

私は返信を書いた。

「作るなら、早いほうが良いです。この手のゲームは、サーバーには始めだけ人が入って、しばらくすると人は入らなくなり、過疎化するだけだから。」

私はこの手のゲームを何度かやっていたので、出来るだけアクティブな人を残そうと、ギルド設立後は、ログインしない人を次々と追放し、新しい人と交代していた。

「わかった。考えてみる」

と、ルナさんは言ったものの、ギルドに留まっていた。

それは、ギルドチャット内で少しずつ会話が発生し、共同戦争なども勃発して、ゲームが楽しくなっていたからだと思う。

ギルド内には、私以外にもう一人、パクという課金者がいて、私たちのギルドは活気が出ていた。

また、ロドリゲスという人は、課金者ではなかったが、サブアカウントを複数作り、とても強かった。


仲間が集まるまでは、数日を要した。

その間も、ブレイクナイトは近隣で暴れまわり、アキレスは、私のギルドに加わる前に、領地を捨てたように見えた。

最後のメッセージは覚えている。

泣き顔のスタンプが送られてきたので、ギルドを作っている、みんなで力を合わせて戦おうと返したのですが、返信がなく、アキレスの村は廃墟になっていた。

地域交易の中心地のようになっていたアキレスの領土が、他のプレイヤーから復興支援を受けるような状態になって、私だったら、やる気を維持できるだろうかと自問した。

無理だろうなというのが、私の結論だった。


ギルドには、上限の50人の仲間が集まり、私たちは何度か、共同攻撃というのを実験した。

ギルド仲間の村に部隊を集めて、共同で行軍して、敵と戦うというものだ。

最初は、村レベルの低い、早々にゲームを止めたと思われる人を攻撃した。

ゲームを止めた人なので、応戦はなく、村に突入して、自動配備された部隊と戦った。

自動配備では自宅に籠もるだけなので、一斉攻撃や側面攻撃などが簡単に出来た。

私はこれは、ゲームとして失敗なのではないかと思った。

相手がログインしていない時に攻撃すれば、簡単に敵を倒せると。


「その問題はないようです」

新しく稼働したギルドチャットで、メンバーに加わったパクは言った。

「施設の中に城塞という場所があります。これを強化します。柵、堀、塔、門。これを全てレベル1以上にすると、籠城戦が発生します。これは、移動マップの村を攻撃した時と、その中にある自宅でも発生します。籠城戦が発生すると、一斉攻撃や側面攻撃などの効果が無効になります。また城塞を攻撃しても、城塞値が0になるまで、敵の部隊は、ほとんど損害を受けないです。つまり一方的に攻撃側が損害を受けます」

「城塞の耐久は、レベル1だと、どのくらい保つの?公共施設レベルと同じレベルまで上げれると説明があるので、私はレベル3まで上げれるみたい」

と、ルナさんが聞いた。

「まだきっちり検証していませんが、城塞の数値に関しては、同レベルの部隊の、最大兵士数と同等にあるようです。ただ中に籠もる部隊の攻防値が、部隊の数だけ加算されているように思えます。複数の部隊が籠もる村は、俺の部隊でも被害が大きくて、ほとんど城塞値を削れない」

パクが答えると、

「包囲戦いう命令あるな、これが解決策か?」

と、ロドリゲスがチャットに加わった。

複数の部隊で村を囲むと、確かにその命令が可能になった。

「でも、城塞値は減らないな」

と私。

「確かに。包囲戦はどういう効果があるのかしら?」

ルナさんが、考えるスタンプを送信した。

それから数時間して、

「あ、少し減った。。」

と、パクが発見した。

「この減りだと、1日(ゲーム内時間で8日)はかかるね。つまりあれだ。1日1回ログインする人は、籠城出来れば、村を維持できるみたいだな。私は仕事が忙しい時があるから、助かるな」

と、私。

「こちらの兵糧が持たないね。持っていく兵糧を増やさないと。今回は撤退しよう」と、私は退却した。


後から、ネットの攻略サイトの掲示板を使って調べたら、どんなに城塞値が大きくしても、包囲戦では、1日(ゲーム内時間8日)ほどで陥落するように設定されているようだった。

自宅も同様の設定のようで、合計2日接続しないと、自宅まで陥落する危険があるようだった。

ただ、資源倉庫を建設してレベルを上げると、その期間が伸びるようだった。

資源倉庫は、略奪からも資源を守れるということだったが、攻撃されると破壊されて、レベルダウンすることもあり、その時に、上限からはみ出る資源は略奪されるとのことだった。

あまり役に立たない施設のようだったが、包囲戦の城塞減少値を下げる効果は、有効的だと思った。


ちなみに、部隊が積載できる兵糧や略奪物にも上限はあり、最大は兵糧でいうならゲーム内時間で、10日分だった。

これ以上増やすには、輸送部隊を入れる必要がある。


また、村内部での戦闘も、野戦も、通常マップと同様の時間が流れた。

村の各施設には、若干だが耐久度と地形効果があり、その強さは、各施設のレベルで決定された。

またその施設に、自軍の部隊を配置することも出来て、村内部の戦闘では、村のすべての将校が、指揮官として部隊に自動配備された。

その時は部隊数の上限がなく、予備兵力が許す分だけ、部隊が生成された。

その破壊は、相当の戦力の差がないと、困難のように思われた。

自宅が破壊されると、全ての施設のレベルが下がるので、村内部での戦いは、自宅を中心として行わることになる。

配置場所は、各将校に予め設定出来て、自宅で籠城させることも出来るし、各施設に配置させることも出来た。

自宅が破壊されると、一旦、戦闘は終わる。

戦闘を終えても、攻撃部隊は、兵士と兵糧の続く限り、再度、村内部を攻撃することが出来る。

自宅レベルが1の状態で破壊されると、村は消滅するが、放浪軍として、ゲームは続けられる。


ちなみに野戦では、両軍に本陣が与えられ、本陣を奪うと、戦闘が終わる。

部隊が全滅したり、全て戦域外に離脱しても、戦闘は終わる。


そして、野戦も村内部の戦闘も、1時間経過(ゲーム内時間で8時間経過)すると、一旦、戦闘は終わる。


また、大使館という施設があり、これを作ると、村の防衛で他の領主からの援軍を受け入れることが出来るようになるようだった。


そして、練兵場では、兵士レベルを上げたり、自動操縦の行軍パターンを増やせたりした。


私はここまで調べて、城塞や資源倉庫、大使館、訓練場の建設を始めた。


「ブレイクナイトのアキレスとの戦いを見たけど、あいつは本陣を守らずに、3部隊をすべて使って、アキレスの本陣を目指した。共同攻撃で、多数の部隊で戦いを挑み、本陣を奇襲すれば、あいつに勝てると思うけど」

と、私は提案した。

パクは、

「今のギルドメンバーを集めて攻めれば、たぶん問題なく勝てる」

と言い、

「奇襲スキルを持っている人はいるかな?」

と、ギルドチャットに書き込んだ。

半日待っても、返信はなかったが、

「本陣狙う部隊があれば、そこに部隊は残すだろうし、あいつの一斉攻撃や側面攻撃の危険は減るだろう。」

と私は書き込み、

「攻めてみようか」

と、提案した。

ギルドのメンバーは50人近くいたが、グローバルゲームなので、接続している人は8名だった。

ただ、ルナさんやパク、ロドリゲスなどの主要メンバーは接続していた。

みんな、攻撃に賛成してくれた。


私たちのギルドは、ブレイクナイトの村へ進軍を開始した。

ブレイクナイトは、ログインしていないようだった。

「籠城戦になるかも知れないな。輸送隊を組み込んだ方が良かったかな?」

と、心配になったが、王国チャットで、ブレイクナイトのログインが確認された。

「おぃおぃおぃ。俺の村に、なに攻撃しようとしてんだよ?雑魚が」

との書き込みの後、村の近くまで迫っていた私たちの共同部隊に、ブレイクナイトの部隊がぶつかってきた。


戦いは、予想通り、ブレイクナイトは3部隊で、こちらの本陣を目指してきたが、こちらは、私とルナさん、パク、ロドリゲス、スターネイム、マフナドの6名18部隊の大軍勢で、さらに各個撃破されないように、ロドリゲスが巧みに彼の軍団を調整して移動させたので、さすがにブレイクナイトも、動けなくなり、膠着状態になりかけた。

その時、パクが動いた。

騎兵の3部隊が、ブレイクナイトの本陣に向けて、突撃を開始した。

ブレイクナイトは、慌てて、本陣へ3部隊を引き返したが、パクの部隊はブレイクナイトの防衛線を抜けて、本陣に突入した。

だがその時、ブレイクナイトの本陣に急に部隊が現れ、パクの攻撃部隊は大打撃を受けた。


「あぶねーwお前ら、俺の部隊を良く見とけよ。これが課金オークションで買った、英雄ハミルカル・バルカだ。伏兵スキルがあるんよ。この英雄が死んだら、ハンニバル・バルカが無料で手に入るんだぜ。欲しいか?やらねえよ」

と、一人完結のメッセージを、王国チャットに書き込んでいた。

ルナさんは、鼻くそを飛ばすスタンプを、王国チャットに送信した。


戦いは膠着したまま時間切れになり、ブレイクナイトは部隊を村に戻し、籠城体制になった。

ロドリゲスとスターネイムとマフナドの3名が、ゲームする時間がなく、村攻めするなら、接続を切って自動操縦になると言ってきたので、その日は撤収した。


ブレイクナイトは、私たちの撤収を見届けた後に、王国チャットにこう書き込んだ。

「この辺りの略奪はし尽くしたんで、別の場所に行く」

と書き込んで、翌日見たら、ブレイクナイトの村は廃墟になっていた。

「あいつ、同盟作るか、入るかして、仲間作りするだろうね。一人じゃ勝てないこと知ったろうし」

と私がギルドチャットに書き込んだら、ルナさんが

「彼がギルドのリーダーになれるなら、私でもなれるね」

と、ニヤリとしたスタンプを送信した。


後から思ったことがある。

彼は、競合他社からの破壊者ではなかったかも知れない。

彼との勝利したことで、私は陰謀論に支配されずに済んだ。

そして私は、彼が運命論に支配されている姿を思い浮かべた。

彼には仲間がいなかった。

彼はもしかしたら、永遠に一人ぼっちの運命を信じているかも知れなかった。

尊敬される英雄としてあるまじき行為だが、私は勝利の雄叫びを上げたことを、ここに白状する。



<< マール 13歳 >>


大きな転機というのは、特に無かったと思うのですが、交易路が増えて、村の発展が早くなったからでしょうか、マイノスさんは、より積極的に、ギルドの仲間に声をかけ、都市で大きな依頼を引き受けて、その達成に取り組むようになりました。

それは思い返しても、楽しい時間だったと思います。


村の発展は、城塞や大使館など、一通りの建物(私が思いつく限りのものですけど)を建設した後は、発展が難しくなる時期に来ていました。

酒場に関しては、お酒や食事を提供して、お客さんに満足してもらうだけでなく、人の交流の場、人材登用の場としても利用するようになってから、お店を拡張するに辺り、掲示板を用意したり、カウンター席や、軽食や簡易的な飲み物も用意するようにしたことで、お客さんはとても増えていきました。


また市場に関しては、東の島で、新しい資源である、馬や米などを獲得してからは、荷馬車や取り扱い商品の増加もあって、新しい交易路が2本増えました。

また、葦の船を購入したことで、港を近隣に建設して、東の島との交易も継続することになってはいました。


しかし、私たちの村は、農場・牧場・病院・役所・学校・兵舎など、発展が上限に達するような、行き詰まりも遭遇していました。

マイノスさんは、発展の行き詰まりの問題を、ギルドメンバーに相談しました。

今まではマイノスさんが、ギルドメンバーに指示や指導をするばかりだったのですが、逆にギルドメンバーに教えられることもあり、むしろそれがギルドの発展には良かったみたいで、ギルドの活動はとても活発化していきました。


そして、その中で見えてきたこともありました。

私たちが、比較的、簡単に建設していたものが、他の人には目新しい技術を有するものであり、また他の人は、私たちの知らない建物を建設していることも知りました。

魔法の研究を進める魔術院や、兵士を訓練してより高度な戦術を使用できるようにする中級練兵場、通貨を製造・発行する銀行などは、私たちが保有していない技術が無くては作れない施設でした。



2ヶ月に1回くらい、マイノスさんは1週間ほどかけて取り組む、大きな課題に挑戦するようになりました。

最初に取り組んだのは、牧場の拡大でした。

馬を東の島で手に入れてから、村では牧場経営を始めましたが、繁殖には成功していない状態でしたので、一から牧場経営を学んで行くことにしました。

マイノスさんは、上手く繁殖しない馬にこだわらずに、様々な動物を飼いならして繁殖しようと試みました。

ただ、鶏、羊、ヤギ、ロバ、牛、ラクダと飼育の候補は上がりましたが、近隣からやってきた狼が、羊を食ってしまったことがあり、羊を逃げないように囲う柵ではなく、外敵から守る立派な柵が必要なことがわかりました。

また放牧を全て人間の手で行うことは出来ないので、犬を飼いならしたり、餌となる作物を獲得する必要も出てきました。

そのため、農場も大きくする必要があり、様々な作物の種を探したり、また農業器具や建設器具の開発も行いました。


そんな中で、私たちの村だけでは解決できないこともありました。

血の塊と言われ恐れられていた、赤い狼の群れが襲撃して来た時は、前もって近隣の地域から入手した、炎を嫌うという情報をもとに、ギルドに所属する村の兵士が、総出で篝火を準備して待ち構えました。

それは私たちの想像を超える、恐ろしい光景でした。

その赤い狼の群れは、数百頭や数千頭という群れではなく、数十万頭はいるであろう、人間ではとても太刀打ちできない規模の群れでした。

それは王国中の兵士を集めても、戦うことは不可能なものに思われました。

幸いに赤い狼の群れ多くは、私たちの村からは一山離れた地域を通り抜けて行きましたが、進路に当たった付近の村は、建造物の損壊は少なかったものの、家畜はほぼ全滅し、外出していた人間も、多くの人が食い殺されました。


一方で、その後、牛の群れの情報も得ることが出来まして、これは百頭を超える群れという情報でしたので、同盟メンバーが多くの部隊を出して、その確保に動きました。

40近い村から、1000人近い兵士が集まり、ギルド拠点の広場まで誘導して、各村に数頭ずつ、出来るだけ、つがいで分配しました。


青の港に訪れた商人から、鉄製農具をギルドメンバーで、共同で購入したこともありました。

その商人はオークション形式での販売を予定していたようで、その情報を聞いた他のギルドが、農具の下見で難癖をつけて価格下落を目論んでいたのに対し、マイノスさんはその手の行為には一切関わらず、商人から直接、即決価格を聞き出していました。

そして、そのための資金をギルド資金から準備して、オークション開始と共に、その価格を提示して、即決落札をしていました。

そして、この時、商人と大口契約を成立させたことにより、ギルド拠点には近隣の商人から、近隣都市におけるオークション開催日と目玉商品の連絡が来るようになりました。

近隣と言っても、私たちには知らない都市ばかりでしたので、その場所がわかることは、村の冒険地図を拡大するのにも役立ち、総量や重量がある目ぼしい商品を見かけた時は、マイノスさんはギルドメンバーと共に遠征して買付を行いました。


私たちの世界はどんどん広がり、この世界には凶暴な動物だけでなく、魔物と呼ばれる、異世界から来た凶悪な生物がいることも知りました。

その生命力は、一般的な動物より高く、これを殺害することで、不思議な魔法の粉が手に入ることが知られていました。

そして、その魔法の粉は、文字通り、一部の人間がこの世界で魔法を使う時の原料になり、高額で取引されていました。

そのため、魔物の凶暴性は恐れられてもいましたが、その発見情報は貴重で、多くの人が冒険者として、その討伐に向かいました。



<< バー バッカス >>


<バー バッカス>は開店してから4ヶ月が経ち、順調な客足で営業が続いた。

その理由は、常連となりつつあった人たちの話をまとめると、いくつかあった。

まず、夜仕様のおしゃれな空間での食事が、昼間に低価格で出来る点だった。

いわゆる、カフェ・バーの形態で営業していたのだ。

元々バーとして店を始めたのだが、営業時間を昼過ぎの15時から始めたことで、近所の主婦やサラリーマンが立ち寄るようになった。

近所にはタワーマンションが乱立していて、人口が多い割に、近くに飲食店が少ないことから、バー利用の客とカフェ利用の客が、<バー バッカス>の客になった。

また初期に発生したトラブルを、きちんと捌けたことからもわかるように、この店の従業員の接客スキルは高かった。

昼間の客は全く気づいていないが、風営法に則った出店だったので、接客行為を意図的に行っていたことも、店の印象を良くした。


「教授、あんたの軍団、もう少し強くなんないの?ママにお熱になってないで、少しは課金しなさいよ」

テーブル席でにぎやかに話していた主婦のグループから、カウンターでサンドイッチを食べていた男に、笑い声を伴ったかけ声が掛けられた。

「や、こんにちは。頑張らせて頂きます。米国のギルドは強いんで同盟結びましょう。もっと弱いギルドを探して戦いましょう」

教授と呼ばれた男は、ぼさっとした髪型だが、高級スーツを着た小柄な男で、右足が不自由な男だった。

一方、話しかけた女性は、痩せ型でユニクロでまとめた比較的長身の中年女で、同じテーブルには地味めの大柄な若い女と小柄な笑い上戸の若い女、それとメガネを掛けた細めの女がいた。

「全く、頼りない軍事指揮官だよ。強くなるんじゃなくて、弱い敵を探そうだなんてさ」

長身の中年女が呆れた感じで言うと、細身の女がメガネを押し上げながら、

「昨日、彼はギルドチャットで、『ママは私が守ります』とか言ってました。いいんですか、皆さん。彼に言わせておいて」

というと、中年女と小柄な若い女は爆笑し、大柄な女は我慢して控えめに笑っていたのだが、急に腹を抱えて突っ伏してしまった。

「彼のアバター、とてもイケオジなんです」

と言ったものだから、その笑いは店内に広がった。

容姿に関して笑いが起きたので、オーナーはまぁまぁと言いながら店内を制し、

「ジョン・シルバーを調べてみて。最高の男。教授にそっくりよ」

と言うと、ほとんどの人は知らないのか、キョトンとしてしまった。

しかし、教授だけはニヤリと笑い、

「あと5センチ、背が高ければ、そう名乗っていました」

と言うものだから、オーナーは感心して、

「教授は軍事指揮官ではもったいないね。サブリーダーをお願いしようかしら」

とギルドの人事異動を発表しました。

「え、じゃ、俺は軍事指揮官ですか?俺も教授の米国ギルドとの和平案に賛成なんですけど」

とカズが言ったので、オーナーは、

「じゃあ、多数決を取りましょう」

と、店内を見回した。

店内には他に、入り口近くの女性4名のいたテーブル席から2つ離れたテーブル席に、仕事の休憩に立ち寄った風の会社員2名(どちらも大柄で、一人は50代、もう一人は20代の男性)と、店内最奥のテーブル席にいた老夫婦、カウンターに座っていた背の高い中年男性、学生風の若い女性がいた。

そして全員、スマホゲームの「剣と魔法の王国戦争」ユーザーで、オーナーのギルドに所属しているようだった。

「長老、78年前も、こんな感じで敗戦しましたか?」

カウンターに座っていた背の高い中年男性は、後ろを向いて、高齢の老夫婦に話しかけた。

すると、カウンターにいた学生風の若い女性が、

「ええっ?!タカハシさん、まだ誰も敗戦とは言ってません!」

というので、店内でまた笑いが起きた。

「もう、この人は何も覚えていません。そうよね?」

と老婦人が、老いた夫に話しかけた。

「長老、開戦の先制攻撃には痺れました。タマさんが長老の誤操作と言わなければ、尊敬するところでした」

テーブル席にいた50代の男性が、手だけで敬礼した。

長老は、聞いているのかいないのかわからない調子で、コーヒーを飲んでいたが、賛成とだけ言うと、またコーヒーに手を伸ばした。

オーナーは、長老は賛成と言った後に、

「反対の人はいる?」と聞いた。

テーブル席の女性陣が、今回は仕方ないねと同意したことで、大勢は決まった。

「ジョセフ、強かったなぁ。俺、3回、村が陥落しましたよ」

テーブル席の20代の会社員が、悔しそうな声を出した。

「マコちゃん、まだ始めたばかりで、城塞作ってなかったからね。ごめんねー。つまんないゲーム紹介して」

オーナーは申し訳なさそうに謝った。

「いえ、ゲームはすごく面白いです。サトミさんにも伝えてください。萌キャラ増えたら、課金しますと」

と、マコちゃんこと、20代の会社員は言った。

「米国ギルドは和平に応じてくれるかな?酷いギルドは、潰すまで攻撃してくるからな」

カズは心配そうな顔を見せた。

「私が脱いだら、ジョセフも許すわよ」

テーブル席の長身の中年女が言うと、

「サトガワさん、マコちゃんが課金しちゃうから、まだ脱がないで」

とオーナーが、みんなを笑わせた。


<バー バッカス>では、「剣と魔法の王国戦争」が流行り始め、そして店を繁盛させていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ