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聖フラグ2-6


「は~。姫川さんって女性だったんだ。全然分からなかったよ」


 混乱して騒ぎ立てる風花ちゃんを落ち着かせ、なんとか事情を説明。

 その後、当然のように持っている替えの制服へと着替えた聖を眺めつつ、床に置いてあるクッションへと腰を下ろした風花ちゃんが感心したように呟く。

 どうやら、聖の男装は彼女の観察眼を持ってしても見抜けない物らしい。凄いな。俺なんて考えていることが一瞬でバレるのに。風花ちゃんが俺特攻なだけ?


「これでもずっと続けているからね。そう簡単に見破られると逆に困っちゃうかな」


 ちなみに風花ちゃんが持ってきてくれた冷たいお茶は聖がすぐに飲み干してました。

 そら、あれだけ汗かいたらそうなるよな。


「うーん。もう少し深く関わっていれば違和感くらいは見つけられた……かも? 言われてみれば肌や髪がめちゃくちゃ綺麗だし、線も細いし」


「女性という情報を得てから改めて姫川先輩を見ると確かに男性的な雰囲気はあまりしませんね」


 風花ちゃんの隣で行儀よく座る無花果さんが頷く。


「やっぱり? これでも、最初はそれっぽく振る舞おうとしたんだけど……」


 男っぽい聖……?

 一人称が『俺』になったり、口調がもっと荒々しい的な? に、似つかわしくねえ……。


「男装しているからと言って性自認までもが変わった訳じゃないし、慣れない事をするせいで気の休まる時もなさそうだしで、すぐにボロが出そうだったんだよね。それならいっそ、自然体で居た方がバレないんじゃないかって」


 実際、クラスメイトが性別を偽っていたという事に全く気付かなかった奴がここに居るんだよな……。一応、去年からそこそこ親密な関係を築いていた筈なんだが。

 まさか演技をしない事が一番の対策になるとは。この俺の目をもってしても見抜けなかった。ん? 今誰か節穴って言ったか?


「あれ? でも、体育は普通に参加してましたよね? 着替えとかどうしてたんスか?」


「そうだよ。幾らお兄ちゃんでも、こっ、このサイズの……くぅ! おっぱいを見たら姫川さんが女性って気付くはずだよ!」


 まず、風花ちゃんは泣くか憤るかどっちかにして欲しい。それほどまでに巨乳が憎いか。

 ……しかし、そうなんよな。プールの授業は何かとつけて見学や欠席していた聖だが、陸上競技系は俺や隼と同じものに参加している。なんなら、更衣室で何度も一緒に着替えている訳なんだが……。


「全然覚えてない」


 不自然なくらいに更衣室で聖と会話をした記憶がない。

 え、何これ怖……! どれほど思い返しても隼と話した内容しか思い出せない。これが神様の言っていたバグですか?


「まあ、ルミナが気付けないのは仕方ないよ。着替え中は隼が露骨に視線誘導してたし」


「あいつのせいかよ!」


 良かった。記憶関連の不具合じゃなかった! そりゃ、あいつとの会話しか思い出せない訳だわ。

 いや、それにしてもすげえな! 手品師もびっくりの技術だよ!


「どうどう。そんなに興奮すると体調がまた悪化しちゃうよ」


 なら、俺にツッコミをさせないでくれませんかね。相変わらずボケとツッコミの比率があってなくて負担がえぐいんよ。

 あ。風花ちゃん、俺の分のお茶も持ってきてもらっていいかな?


「……良かったんスか? それ程までに隠していた事を自分らにも打ち明けて」


「勿論良くはないんだけど……こうやって前よりもルミナと親密に関わり続ける以上、遅かれ早かれバレそうだし、何より……」


「何より?」


「先に言っておかないと二人がルミナを男色家だと勘違いするかもしれないし」


「はい?」


 この子は何を言うてはりまんの?

 ベッドから叩き落とすぞ。


「あー……」


「……確かに」


「なんで納得した?」


 そんな素振り見せたことないでしょう?

 僕は普通に女の子が好きデスヨ?


「だって、アタシ達が幾らアプローチ続けても梨の礫で」


「それでいて姫川先輩と仲睦まじい様子を見せられたとなれば」


「お兄ちゃんって実は男の人が好きなんだと」


「勘違いしてもおかしくは」


「「ないよね(でしょう)!?」」


「息ピッタリやん」


 どこかで打ち合わせでもしてきた?

 疑似とは言え母娘なだけある。


「その点、姫川さんが女性だと分かっていれば」


「あ、先輩はちゃんと異性愛者なんだなって安心が出来るんスよ」


「はは、直球だ。愛されてるねえ、ルミナは」


 ええ。それはもう。なんてったって告白までされてますから。厳密に言えば無花果さんからはされてないけど、ほぼしてるようなもんでしょ、昨日のあれは。

 ただまあ、返事は保留というか先延ばしにしてるけど。うっ、自己嫌悪が……。布団の中に潜り込みたい。


「まあ、愛の度合いならボクも負けてないけど」


「む」


「ふぇ?」


 おっと? 違った意味で布団に潜りたくなってきたぞ。なんで、そっちにハンドル切った? 俺の部屋を戦場にする気か?


「ごほん。その話はいつかするとして、秘密を知られたからこそ、やっとボクは胸を張って文野さん達と同じ土俵に立てるんだよ」


 なるほど。同性として接している限り、そこに気安さはあれど恋愛感情は生まれない、か。

 俺が恋に連戦連敗した前世であれば、聖クラスの美少年に真っ直ぐ好意をぶつけられた結果、全然オールオッケーとなった可能性はある。

 だが、多種多様の美少女にアタックされ続けるこの世界だと、わざわざ好き好んで同性と付き合うメリットはない。そもそも、俺が女の子とキャッキャウフフする為に望んだ世界だしな、ここ。どうして、数ある選択肢の中から男(だと思っている相手)を選ぶ必要があるんですか? いいや、ないね。


「ふふ。これで漸く仲間外れされる事に対してやきもきしなくなるかな。一応言っとくけど、結構妬いてたんだからね?」


 は? ここで上目遣いとか可愛いの権化かよ……。いかんいかん。女子と分かってから聖の一挙手一投足が魅力的に映る。これが先入観……!


「それなのに、アタシがアドバイスを求めた時は真摯に答えてくれましたよね?」


「文野さんのファンというのは本当だからね。それに、ボクを頼ってきた後輩には誠実でありたいから」


「姫川さん……」


 は? イケメンかよ。というか、ちょっと照れ気味に微笑むのやめてくれない? カッコ良いと可愛いの両方が内包されているせいで、俺の情緒が壊れそう。ドMのくせによぉ!


「これが男の娘……? それとも、おっぱいの付いたイケメン……?」


 ほらー。俺と同じ様な思考回路をしている同人作家が混乱しちゃった。

 おかしいな。正しい性別を教わったはずなのに、しっかりと迷子になってるぞ。


「……? ボクは歴とした女だよ?」


「聖、無花果さんの言う男の娘はお前が思っている男の子じゃなくてな」


「?」


「えーと……」


 いや、ムズくね?

 こっち(オタク)側の相手ならともかく、前提知識すらない聖にどうやって説明したらいいんだ?


「端的に言えば、首から上が女の子で身体は男の子の事を言う感じッスね。そして、恋愛の対象は基本的に男性ッス」


 俺が頭を悩ます横で、あっさりと解説していく無花果さんのこの手際。流石、生み出す側なだけある。


「つまり、BLってやつだ?」


「大局的に見ればそうとも言えますけど、一括りにすると過激派に燃やされるんで、大きな声では言わないことをオススメしますね」


「え、こわ……」


 どこで誰が、『なんだぁ、てめぇ……』ってなるか分からないからね。

 こう言った地雷が多そうな話題はサクッと駆け抜けるに限る。


「しかし」


「?」


「聖、BLは分かるんだな」


 男の娘は分からないのに。どこかで偏った知識でも仕入れたのか?


「ああ、それはね……“まあちゃんねる”で見たんだよ」


 ……あの掲示板、そんな俗っぽい事も書いてるのか。いやまあ、表現の自由というのもある。多少の内容なら検閲にも引っ掛からないんだろう。


「中身は漫画と小説だったかな?」


「ちょっと興味ありますね」


 同人作家が食いつきました。


「ユメちゃんが気になるなら、アタシも見てみたいかも」


 メスガキも食いつきました。


「漫画の方は筋骨隆々の男の人同士が絡んでる様な感じだったけど」


「けど?」


「小説の方は隼×ルミナとルミナ×ボクの話もあったよ」


「くわしくお願いするッス」


「くわしくお願いするな」


「ちょっと口だと説明しにくいかな……ぽっ」


「擬音を口に出すな」


「エッチな感じなんですね?」


「確信持って問い質すな」


 急に皆して生き生きするのやめてくんない? ツッコミ追いつかないから。


「それはそうと活動している奴らをいつか潰すから、そのスレッドの情報はくれ」


「ええ……」


 表現の自由? 何それ? 美味しいの?

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