予選A(馬皇)
連続更新です。良かった読んでください。
闘技大会予選。今日会場はある種の異様な熱気に包まれていた。
『さぁ。今年もやってまいりました。闘技大会です‼ 闘技大会ですよ‼ みなさん‼ 楽しみにしてたか~‼』
「「「「「「「「ワァァァ!」」」」」」」」
スピーカから発せられる女性の声に会場は盛り上がる。会場の四方に大きな映像を映すためのテレビにはアイドルっぽい衣装を着た女性となぜかクマのキグルミを着た人が座っている。
『ノリのいい反応ありがとう~‼ 今回も解説役と実況をするよ~‼ リンで~す』
リンと名乗った女性は観客席に向かって手を振ると会場の人たちの一部が盛り上がる。
「「「「「リンちゃ~ん」」」」」
『声援ありがと~。で隣にいるのが、……クマのキグルミさんです』
頑張って紹介しようとするがキグルミを着た誰かはスケッチブックをどこからともなく取り出すとすさまじい速さで何かを書いて画面に映す。
【クマです。よろしく】
丁寧な字で書かれていることは分かるが喋る気はないというのがよく分かる。リンの口元をヒクヒクと動かすが「仕事。これは仕事よ‼」と小声で言い聞かせて笑顔で話し続ける。
『クマさん。よろしくお願いしますね~。それでは、闘技大会についてのルール説明を簡単に行いますね』
リンが手を差し出すとクマも手を差し出す。リンの内心では「こんな変な奴、解説に選んだの誰だ‼」と怒り狂っているがアイドルなので顔には出さない。ファンからもよく腹黒そうとかギャップありそうとか言われているが絶対に出そうとはしていない。だが、時々その部分が漏れているのか毒を吐いたりする。その度に炎上したりすれが出来たりするが今はその話はいいだろう。
『この大会では予選はバトルロワイヤルです。死んだり、気絶したりすると会場から出されます。ちなみ、入る条件はこの身代わりの宝玉と呼ばれる玉を持っていることです。参加者には入場の際に全員に手渡されます。中に入ったら開始と同時にスタート♪ 何でもアリの勝負となります。最終的に2人残るまで続きます。ち・な・みにたとえ全員残らななかったとしても出る時間は記録されてますので遅かった順に2人が選出されます』
予選について一気に喋るとクマが新しく何かを書いたのかスケッチブックを上げる。
【本戦は? どんな感じなの?】
『ちょうどいい質問ですね。本戦はバトルロワイヤルから1対1に変わるだけで大きく何かが変わることはありません。シンプルでしょ? それじゃあ、さっそくだけど予選のAグループから始まるよ。選手たちの入場です』
言われると同時に予選の最初に出場する選手たちが登場する。観客席から大きな拍手が沸き起こる。
そんな中で由愛は1人観客席から馬皇たちを探す。確か一番最初は馬皇のはずだ。気合と入れて馬皇を探しているとすぐに見つかった。異能者と言っても体格などは様々だ。馬皇の体は日本人の平均を比べてもかなり大きい。それが一番の要因だった。ゼッケンには6の番号が掛かれていた。由愛が小さく手を振ると馬皇は直ぐに気が付いたのか手を振り返す。そのことに由愛はうれしくなる。
『それにしても、予選の最初から濃い面子ですね。なんでモヒカンとか世紀末的な人たちまでいるんですか……。ま、まあ、気を取り直して解説のクマさん。予選Aグループの見どころのありそうな選手は何番ですか?』
リンには誰が強いそうとかは分からないためその辺はクマに丸投げする。クマは少し悩んだ後先程と同じように数字を書きはじめる。
【1、6、13、20辺りですね】
「ほう。その基準は?」
【1と13はこの大会の本戦常連ですね】
「フムフム。じゃあ、6番と20番は?」
大会の常連と言うことはそれなりに強いことが分かる。ならそれ以外の人は何なのだろうかリンは聞き返した。
【勘ですかね】
『かんっ‼』
曖昧な答えに思わず突っ込みを入れるリン。
【それはそうと、入場が終わりましたよ。開始の合図入れなくていいんですか?】
『えっ? あっ‼ そ、そうですね‼ 入場したみなさん‼頑張ってください‼』
クマに指摘されて全員の入場が終わったことに気が付くリン。選手たちは会場のある結界の中に入って虎視眈々と狙う相手を探しているようだった。
『それでは、皆さん準備は整いましたね‼ それじゃあ……』
リンは思い切り息を吸って溜める。
『スタート‼』
リンの声に選手たちは相手に襲い掛かっていく。
「ようやく始まったか」
馬皇は好戦的な笑みを浮かべる。馬皇は開始早々に炎や氷の礫、砂や鉄などいろんなものが飛び交うのを避けながら戦うであろう相手を見ていく。
「死ねぇぇぇぇぇ‼」
巨大な岩に乗って操っている男が馬皇をつぶそうと急接近してくる。
「簡単にやられるもんかよ」
馬皇はそう言うと右の拳を握り岩に殴りかかる。それと同時に岩が一瞬停止する。
「えっ?」
男は間抜けな声を上げると岩は大きな音を出して割れる。
「悪いな」
そう言っていつの間にか男の前にいてその拳が眼前に迫っていた。そして男を倒すと馬皇は体を捻って横に転がる。
「すげぇな‼ 完全に不意を打てたと思ったのに」
「そうか。姿も消せるんだし気配も消せよ。違和感ありまくりだったぞ」
「そう……か、よ」
そうこうしている内に不意打ちしてきた奴にも同じ一撃を加える。馬皇は複数がなるべく同時に来ないように位置を注意しながら次々と倒していく。
『すごい‼ すごいです‼ ゼッケン6番‼ 次々と相手を倒していきます』
あらかた片が付くの残ったのは最初にクマが宣告した通りに1、6、13、20番のゼッケンの選手が残っていた。
『……すごい。クマさん残った人全員当てましたよ……』
クマが言った番号の選手が残りリンは唖然とした。言った通りになったことに馬皇は驚く。「あのクマのキグルミ何もんだ?」と。馬皇は油断せずに相手を見る。前にいた身長がデカい男と小さい男の2人が目で何か合図をすると同時に馬皇に襲い掛かってきた。
「チッ‼」
デカい男が棒を巧みに使って馬皇を追い詰めていく。馬皇は紙一重で攻撃をかわして一歩下がる。
「今だ‼」
「うおっ‼」
小さい男がそう言うと鉄で出来た手で馬皇の体を完全に包み込む。
「鉄の塊に押しつぶされてしまえ」
手で握りつぶすように小さい男も力を入れる。デカい男は大声で駄目押しとばかりに大声で叫ぶ。
「磁力も追加だ喰らえ」
鉄の手で潰す力も強いが馬皇を中心に引き合うように磁力を向ける。そうすることでまずこの一撃で助からないだろうと男たちは確信する。
「うん。良い攻撃だ。やっぱり戦いはこうじゃないとな」
鉄の手の中からありえない声が聞こえた。馬皇である。確かに磁力が聞いているはず。しかも周りは鉄に囲まれているのである。力にすると常に10t近い力が加わっているはずなのである。決め技が決まらないことにうろたえていると鉄の手は消える。動揺している内に戦いに参加していなかった20番がコンビの13番を倒していた。
「お前の戦い方も面白かったぜ」
鉄の手から解放された馬皇が速攻で1番のゼッケンに一撃を加える。動揺していたためなすすべなく馬皇から攻撃を貰い1番が倒れる。
『しゅ~りょ~‼ 勝ち残ったのは6番の馬選手と20番の閃光選手です。それにしても馬ってあんた……』
実況のリンですら体を震わせてその変な名前に吹きだしそうになる。ネタにされそうなことに馬皇は恥ずかしくなる。
『ですが、予選の最初から盛り上げてくれた選手たちに拍手を』
リンの一言に盛大な拍手が沸き起こる。熱い拍手に馬皇は登録ネームは置いといてもこの拍手は悪くはないなと感じたのだった。




