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転生した元魔王様の非日常的な学生生活  作者: haimret
第一章 魔王たちは出会う
18/327

2人は魔王

このサブタイトルがやりたかった

 慎重に施設の中へ侵入して警戒しながら1つ目の扉を開けた。そこには大小様々な機材が置かれていた。何の実験をしているのかは分からないが、大量の機材とパソコンの端末が存在しており、その一部は今も稼働している。


 校長はポケットから何かの機会を取り出すと機材の端末にケーブルを差し込んだ。しばらく馬皇は待っていると終わったのか校長は首を横に振ってケーブルを外した。


「ここもはずれか……」


 偽造された端末には表向きの研究のデータしかなく目的の情報を入手できなかったことに校長の声は平坦で分かりづらくはあったが、少しだけ落ち込んでいるようであった。


「次へ行きましょう。校長」


 馬皇は校長に呼びかけた。確かに情報は大切だが、今回の目的は攫われた人間の保護である。


「そうだな。今回は捕まっている者たちの保護が優先だ」


 馬皇の言葉に校長は思考をすぐに切り替えて次の部屋に移動を始める。広い廊下に出て、一番近くの次の部屋へと入ろうとすると悲鳴が聞こえた。


「あああああぁ……」


 その声に馬皇は覚えがあった。真央だ。馬皇は急ぎたい気持ちを抑え校長を見る。校長も馬皇を見るとお互いにうなずいた。


「急ぐぞ‼」

「ああ‼」


 馬皇たちは廊下を走り抜ける。悲鳴が聞こえたという事はかなり危ない状況と見た校長は侵入者用のトラップを銃を使って強引に破壊していく。その後ろを馬皇が走る。強引に突破しているために警告のアラームが作動した。


「走り抜けるぞ‼」


 校長は腰から板を取り出してその中心にあるスイッチを押す。それは全身を覆えるサイズの盾に変形した。盾を構えて校長が先頭になって明らかに日本の防御設備を超えた銃弾の雨を走り抜けていく。馬皇も校長の後ろにぴったりとくっついて走る。


 走り抜けた廊下を出るとそこは大きな部屋が見えた。ガラス張りにされておりその中心には真央を幼くしたような女の子が普通の人間には動かせないようなブロックから生えた鎖に繋がれていた。


「来ちゃダメ‼」


 馬皇たちは直ぐに女の子の元へ向かおうとするが、この部屋に入ることを拒否する真央。


「真央‼」


 それを聞かずに馬皇は飛び出す。一方で校長は真央の言葉で止まった。


「行くな‼ これは罠だ‼」


 校長の静止の声は届く前に馬皇は中に入る。同時に何かのガラスのような何かに扉を閉ざされた。


「しまった‼」


 もう遅かった。校長と分断されたことに気付かずに真央のもとに近付き、鎖を何度も力任せに引っ張る。手はボロボロになるが、少ない魔力を全て込めて全力で痛みを無視して引っ張る事で鎖を引きちぎることに成功した。


 しかし、眼に見えて真央が小さくなっていたことと苦しそうな表情を見せていてどうすればいいのか分からなくなって馬皇は呆然とたたずむだけになった。


『もう遅いですねぇ。ネズミが1匹。1匹は無理でしたが、片方捕まえただけでも十分でしょう』


 放送から声が聞こえた。そして、上の方を見ると男がマイクを持って何かのスイッチを押していた。それと同時に何か白い靄みたいなガスが充満し始める。しばらくすると、中の様子が全く見えなくなってしまった。その上、煙が漏れない様に密封されているのか声も聞こえない。


「中が見えん」


 このガスにどんな効果があるか分からないために校長は捕まった馬皇と真央を助けるために上の男がいた場所を目指した。そして、部屋に入り男に銃を突きつけた。


「手を上げろ」


 白衣の男は悠然と振り向くと馬皇たちのいた位置に目線を向けてから言った。


「素早い判断で。それにしても真田真央さんでしたっけ。彼女の精神力スゴイですね。さっきも体中ヤスリでもかけられているような痛みが有るはずなのに。まあ、中の人たちはもう無事ではないでしょうがね」

「えらく余裕じゃないか? 逃がすと思うか?」


 銃の引き金を引こうとする。しかし、何かのスイッチ見せびらかして指を置く。


「ええ。甘い方だと予想してますから。現にあなたは、ここで罠にはまった仲間を助けるために行動なさっているでしょう。私のいる位置も即座に見つけたみたいですしね。そうだ。1つだけ言っておきますよ。銃を下して抵抗はしないでくださいね。このスイッチ1つで今回誘拐した実験サンプルたちがどうなっても知りませんよ? 確実に私の方が早く押せますしね」


 自信満々で白衣の男は言われたように銃を下す。そして男は校長の手に何かを嵌める。


「これは保険ですよ。下手に何かされても困りますからね。ちなみにそれは別の者がカメラ越しで見ていますから変案事したら爆発しますよ」


 ニコニコと自慢げに話す。優位に立ったことで余裕を取り戻したのか下の方にいる馬皇たちがどうなったのか気になっているようだった。


「チッ」

「おとなしくしてくれて助かりますよ。初めまして。置田(おきた) 道家(みちいえ)と申します。実験のサンプルや試作品類は全て撤収させました。残念でしたね」

「人質たちはどこにいる」

「せっかちな人だ。今実験に使っているサンプル以外は地下にいますよ。まあ、このままだったらあなたもサンプルの仲間入りですがね。異能者がサンプルになってくれるとは私も運がいい」


 そう言って、素位置を持っていない手で近くに置いていたリモコンを手に取り押す。すると、備え付けられたモニターから誘拐されたはずの人や生徒たちが映っていた。実験に使われた後なのかほとんどが小さな赤ん坊もしくは幼児くらいの大きさだった。


「彼らは無事なんだろうな」

「ええ。もちろん。まだ生きていますよ」


 飄々と詳しく話さない置田に校長は睨みつける。


「おお。怖い怖い。さて、我々が作っているのは若返りの薬です。これを開発することで疑似的な不老を手に入れることが出来るでしょう。その実験には多数の出資者がいらっしゃるのでね。そのための実験を行っていたのですが予想よりも早くここを嗅ぎつけられてしまったのでここのサンプルたちは用済みです」


 校長はその言葉からあることを思いつき顔を険しくする。


「まさか‼」

「そう‼ そのまさかですよ。あのガスには人を若返らせる効果があります。それで過剰摂取させるとどうなるかという実験の結果が欲しかったのであなたの仲間さんを使わせてい戴きました。女の子の方には先に薬も投与していますが、いろいろ知っているような状態でしたのでしゃべれなくしてから罠として使わせてもらいました。この薬かなりの痛みを伴いますしね。まあ、どちらにしてももう少しすれば、生まれる前の何も存在しなかった状態になる予定なので死んだも同然ですが」


 そう言ってモニターの中でもがき苦しんでいる2人の影が見える。音は完全に遮断されているためか全く聞こえない。


「負毛‼ 真田‼」


 校長はガラスを撃棟とする。叫ぶがこちらの声が届いていないは先程から分かりきっていることである。置田は校長に見えるようにスイッチを手元で揺らして言った。


「おっと、他のサンプルがどうなってもいいのですか?」

「ぐぅっ‼」


 校長はうなり声をあげて大人しくするしかなかった。そうこうしている内に映像の2人は小さくなっていって完全に見えなくなった。


「ふむ。成果は上々ですね。もう生まれる前ぐらいでしょうね。まあ、中学生ぐらいであればこれぐらいの時間で生まれる前になりますよね。だから、もう目には見えないのですがね」


 真っ白なガスが充満した中ですでに、別の画面に映っているサーモグラフィにも生き物の反応は消失していた。その結果に満足なのか置田は資料をまとめる。このまま逃げるつもりなのだろう。人質がいることによ校長は動くことができない。


 もう駄目かと思われた瞬間。何もない空間から突然何か大きな熱量が観測された。映像の方を見るととても大きな影と小さな影の2つが存在していた。


「……なんだ? この反応は? 熱量がどんどん大きくなっている?計測不能? 何が起きている? なんだ‼ 中でいったい何が起こっているというんだ‼」


 置田はうろたえた。こんな反応今までなかったはずだ。他の何体かで実験してもこんな存在が出てくることはなかった。だから、今回の実験で消失すればこの結果を報告できたはずなのだ。


 しかし、そうはならなかった。何が問題だったのか分からなかった。1つだけ分かったことがある。これは完全に想定外だということだ。


「ははははは。素晴らしい。そんな結果が出るとは予想外だ」


 その想定外に興奮しているのか気色の笑みを浮かべた。想定とは違うが、実験としては喜ばしい例外的な出来事だ。その原因を考えると置田は心が躍った。


 そうこうしている内に止まっていた影が動いた。翼でもあるのだろうか。翼を大きく開き羽ばたく動きが見えた。その動作だけで辺りに充満していたガスを強化ガラスを巻き込んで一帯を破壊した。


「グルルㇽ……」

「……」


 そこから現れた2つの存在は禍々しくも神々しかった。


 最初に目が付いたの大きい方はドラゴンだった。20mくらいであろうか。その体躯は夜の闇より暗い漆黒。2対の巨大な羽。前に伸びる1本と後ろの方にある2本のツノに口元に大量に並んだ鋭い牙。一口で人間ぐらいなら丸呑みできてしまいそうだ。人間と同じく5本の指。全体的にとげとげしくそして荒々しく感じられる。そして、全てを燃やし尽くしてしまいそうな紅い目が置田を見据え唸り声を上げる。


 小さい方は人型をしていたが細部はいろいろと人と異なっていた。まず、真央に似ているが人間離れしたような妖しくも美しい容姿が見ている者を魅了する。黄金を思わせる色の目は見た者に畏怖の感情を与える。体の大きさこそは前の姿と変わらないくらいであろう。服装は派手な黒のドレスであり先程のドラゴンほど人間離れはしていない。しかし、頭にはヤギのような2本の角が生えていた。背中には蝙蝠のような羽。細い尻尾。まさに、空想に存在する女悪魔そのものだった。


「なんだ‼ あれは‼ 私は知らんぞ‼ そんなのいるわけがない‼ 私は夢でも見ているのか?」


 おとぎ話にでも出てきそうな存在が出てきたことを未だに信じられない置田は呆然としていた。


「あれは……。負毛と真田……なのか?」


 あのガスの煙の中から出てきたということはそうなのだろうと校長は無理矢理に納得した。


『戻った。戻ったぞ。一部とはいえ我が体が。その事についてだけは礼を言おう』

「そうね。でも、気の長いことで有名な私でも腹が立つことがあるのよ。私の怒りを受けなさい。虫けら」


 2人の声は大きくはないが喋るだけでこの場にいる者たちの耳に届く。竜の方は喋っているわけではないが何を言っているのは伝わる。その双眸を見るだけで置田の本能があれは戦っては駄目だと冷や汗を流しながら警告する。


 一方で、紅と金の目が置田を見据える女悪魔の視線は目の前の竜ほどではない。だが、魔法陣を一瞬で大量に展開すると大量の氷の塊たちと炎の塊たちが四方を囲む。それは、全て置田の方に向いていた。少しでも動けばこの大量に存在するものに叩き潰され消し炭にされる。そんな未来しか見えなくて置田は震え上がる。


「な、なんなんだお前たちは‼ お、お前たち友人がいるそうじゃないか‼ そいつらがどうなってもいいのか」


 声は震えているが人質がいることを思い出しスイッチを前に出す。さながら盾にでもするようであった。


『ただの魔王だ』

「普通の魔王よ」


 2人は同時に同じことを言った。と同時に置田の四肢を完全に凍った。急激に四肢を凍らされ痛みに声が出る。そして、完全にスイッチも巻き込まれて押すことが出来なくなる。これで完全に人質は意味が無くなった。


「ひっ‼ひぃぃぃ」


 人質がいなくなり恐怖のあまり置田は動きと共に思考も止まる。真央は仕返しとばかりに置田を蹴り飛ばす。その後すっきりした顔で馬皇を見上げた。


「情けない。なんでこんなんに手も足も出なかったのかしら? 私。それよりもあんたデカいわね。っていうか、声が伝わるって感じがするから念話でも使ってるの?」


 あまりの小物ぶりにあっさり興味が失せて馬皇の方を向く。馬皇は鎮座しているままであるが真央の方を向いて話し出した。


『これが本来の姿だからな。実際にはさらに大きいんだが、ここじゃ狭すぎる上に今の力じゃそこまで大きくはなれねぇ。逆にお前らぐらいのサイズになることもできるが。今は面倒だ。それにこの体で普通に人間の言葉が喋れると思うか?』

「それはそうね……。なら、これからあの時の戦いの再開しない?」


 真央の提案に馬皇は喜びの声を上げる。すでに臨戦態勢は完了したのかお互いに正面を向きあいその世界が凍りつくような圧迫感と共に魔力の奔流で世界が悲鳴を上げる。

 

『おう‼いいぞ。せっかく戻ったのだしな』

 

 真央は魔法陣を展開する。そのまま馬皇が上空に行きすぎない様に拘束やらで翼を奪おうとするが、馬皇は翼を開き、強引に翼を絡め取ろうとした拘束の魔法やら屋根やらを破壊して上空へ上昇を続ける。


「常しえより契約せし我が従僕よここに」


 真央は詠唱を始める。馬皇はある程度の高度になるとそこで静止。そして、馬皇の口から尋常ではないほどの光を発生する。


「来なさい。ケロべロス」


 真央の魔法は発動する。魔法陣の中から3つ首の冥府の番犬がここに顕現する。それぞれの頭が真央の事を覚えているのか嬉しそうに真央にじゃれ付く。


「もう。くすぐったいわ」

『もういいか?』


 本当の意味で戦うための魔物を呼び出した真央に馬皇はもういいのかとたずねる。馬皇の方は既にいつでも攻撃できると言わんばかりの様子を見て真央はケロベロスに言った。


「ええ。さあ‼ あなたの力貸してちょうだい」


 真央が叫ぶと人の5倍はありそうな大きさのケロベロスの3つの頭は馬皇の方を向き吠える。無限に存在する冥界の炎を呼び出すと馬皇に向かって放った。ケロベロスの炎は冥界の扉の反対側から生まれる炎を口から吐き出すことが出来る。本来であれば、生き物など塵すら残さない強力な炎である。


 対して、馬皇は迫る炎に対して息吹(ブレス)を放った。収束された破壊の光が相手の炎がぶつかり一瞬拮抗したように見える。

 

 しかし、その均衡はすぐに破られる。ケロベロスの炎はことごとくかき消され破壊の光はケロベロスへと向かう。


 そして、真央共々巻き込んで施設に大穴を開けた。馬皇は様子を見るためにブレスを受けた地面の中心に降り立った。しばらくするとその大穴の土の中からたくさんの球体が出てきた。真央は多少の焦げ跡はありながらも校長とその他の施設にいた人間たちを結界で浮かせて出てきたのだ。


『ほう。これを食らって軽傷か。ますます、面白くなってきた』


 これに耐えられたのは過去に自信を倒した勇者たちの一部くらいだ。そのことに馬皇はうれしくなった。テンションを上げる馬皇とは裏腹に真央は声を荒げた。


「この、バカ馬皇‼ いきなり、そんなブレス出すんじゃないわよ‼ あんたの助けたかった人間諸共消し炭にする気‼」


 真央の苦情にそういえば中に誰かいる可能性があったことを思い出し言い訳をした。


『むう。この姿だとかなり手加減した方なんだが……』

「関係ないわよ。私がいたから問題なかったものの」


 真央は自信満々に胸を張る。転生前も大して胸は無い。完全に悪いのは馬皇自身も分かっているので素直に謝った。


『スマンな』

「まったく。あら?」


 フンッとそっぽを向いた真央は元に戻っていた。


『うお?』


 馬皇もぐんぐんと体が小さくなっていき元の大きさに戻っていた。そのまま馬皇は地面に落下する。


「元に戻っちゃった」

「仕方ねえな。戻っちまったが仕切り直しだ」


 裸のまま戦おうとする馬皇。真央は馬皇が見えないように横を向いた。顔が赤い。


「いやよ。この変態。スケベ。というかあんたは見るな‼」


 同じく裸でさっさと服で体を隠したい真央は見るなという風に近くにあった石をひろって投げる。投げて馬皇を別の方向にむかせた。


「この、大馬鹿どもが~‼ 喧嘩してる場合か‼」


 この爆心地の端から走ってきたであろう鉄に2人は頭を叩かれた。ちなみに校長はブレスの被害にあって気絶してた。


「ひゃん‼」

「うぉっ‼」


 すさまじい痛みに頭を抱える魔王だったものたち。先程とは違い全く威圧感など存在していなかった。


「被害を考えろ‼ 真央はこれを早くこれを着なさい。戻るまでにの繋ぎになるだろう。さっさと逃げるぞ。学校で予備の制服渡してやるからな。後で説教だ」


 真央にジャージの上を投げ渡した。鉄は校長を抱えて撤収し始める。


「は、はい」

「おう」


 2人も戸惑いながら返事をした。離れたところからサイレンの音も聞こえだしていた。そして、校長を抱えた鉄と2人の魔王は大学の裏にある鉄の車の方へ向かって走り出した。

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