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皇太子な私

 パーティーの最中、突然押しかけてきたシュノアートの皇帝たちは、ジェルミーが用意したミィナそっくりの令嬢が偽物だと気付き、本物を返せと言ってきた。おかしい。ジェルミーも父上も偽物だとバレる心配はないと言っていたのに。私自身、シュノアートの連中が気付くとは思ってもいなかった。それ程、ミィナの偽物はミィナにそっくりだったのだ。

 私が内心動揺していると、突然シュノアートの皇帝たちは招待客の方を向き笑みを浮かべた。


「あ、いたいた!ちさー!パパたちが来たぞー!」

「久し振り〜。元気そうで良かったわ〜」


 突然何を言い出すんだと彼等の視線の先を見ると、涙を流しながら佇むミィナがいた。


「……………………」


 ミィナは何かを呟くと、そのまま倒れてしまった。

 幸い、ルーディスが直ぐにミィナを抱きとめたので床に倒れる事はなかったが、私は慌ててミィナの元まで走った。


「いったい何が…顔色が悪いな…まさか、体調が良くなかったのか…?」

「いや…さっきまでは元気だった…ただ…」


 ルーディスはチラリとシュノアートの皇帝たちを見て顔を顰めた。


「…今日はここまで。全員とっとと俺の城から出て行け」


 父上のその一言で、招待客たちが慌てて宴会場から出て行った。一番目障りな連中は出て行こうとしないが、気にせず私は使用人たちに指示を出す。


「直ぐに休める部屋の用意を。それと神官を呼んできてくれ」

「かしこまりました」


 ルーディスが治癒魔法を使ったのか、ミィナの顔色は直ぐに良くなったが目は覚まさない。心配になりミィナの頬に触れようとした時、シュノアートの皇帝たちが私を押し退けミィナに手を伸ばした。


「ちさ!ちさ!起きないと遅刻するぞー!」

「このままじゃ朝ごはん抜きになっちゃうわよ〜」

「授業中にお腹が鳴って恥ずかしくなってもいいのかー?」

「今日の朝ごはんは生ハムメロンよ〜」


 シュノアートの皇帝と皇后は無遠慮にミィナの身体を揺すり、意味のわからない事を叫びだした。ルーディスがミィナを2人から遠ざけようとしたが、それよりも早くミィナの手が皇帝と皇后の手を払い除けた。


「アラームしてるから!せめてアラーム鳴ってから起こしてよ!後朝から生ハムメロンとか食べたくないって言ってるでしょ!メロンはメロンだけで食べたい派だっていっつも言ってんじゃん!!」

「えー?美味しいのにー」

「オシャレなのに〜」

「美味しくてもオシャレでも関係ないの!生ハムはパンに挟んで食べたいし、メロンはメロンだけで食べるのが一番美味しいの!!もう絶対アラーム鳴る前に起こさないでよ!まだ寝る時間…」


 シュノアートの皇帝と皇后に叫んでいたミィナは突然口をつぐみ、キョロキョロと視線を動かし出した。


「……あれ?…夢?」

「起きても夢を見るなんて、ちさはあわてん坊のサンタさんみたいだな〜!」


 ルーディスに支えられながら立ち上がったミィナは一度自分の頬を抓ると、シュノアートの皇帝たちに視線を向けた。


「……マジで?」


 先程と違い、恐る恐る話しかけるミィナにシュノアートの皇帝たちは満面の笑みを浮かべた。


「マジだぞー!パパ生まれ変わって皇帝になっちゃったよー!」

「ママは皇后よ〜」

「………その国大丈夫なの?滅びかけてるんじゃない?」

「流石ちさは頭がいいなぁ!」

「鳶が鷹を生むってこういう事ね〜」

「……………………」

「…ミィナ、また顔色が悪くなっているぞ。部屋を用意しているから少し休んだ方がいい」


 青ざめるミィナの顔を覗き込みそう声をかけると、ミィナはゆっくりと頷いた。


「…はい…ありがとうございます…」

「よし!じゃあ家族水入らずで積もる話でもするとしよう!」

「それじゃあ私たちはこれで失礼しますね〜」


 言うが早いか、皇帝はミィナを抱き上げると、皇后と共に脱兎の如く部屋から飛び出して行った。


「は!?ちょっと待て!!」


 ルーディスが慌ててミィナたちを追いかけようとしたが、父上がルーディスを制止した。


「どうせこの城から出る事は出来ないからほっとけ。………それより聖女に話がある。部屋を移動するぞ」


 父上は珍しくミファナに声をかけると、そのままミィナたちが出て行った扉へと歩き出した。ミファナもいつもの穏やかな笑みを消し、黙って父上の後をついていく。私も迷う事なく2人の後を追う。

 ミファナ程ではないが、私もミィナについてはよく知っているのだ。だからミィナたちの態度を見ればわかる。シュノアートの皇帝と皇后は、幼少期のミィナがいつも恋しがっていた前世の両親なのだろう。


「…面倒な事になったな。全ての計画が丸潰れだ。こんな事になるんだったら、替え玉なんて用意せずにシュノアートに戦争を仕掛けるべきだった」


 私の後ろをついてくるジェルミーが忌々しげに呟いた言葉に、私も頷きたくなった。

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