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急展開過ぎる私

 私はぶすくれながら新たに出されたケーキを食べる。その間、皇太子たちは姉のドレスに合うアクセサリーを見せていた。チラリとアクセサリーを見ると、どれも姉の好きそうなキラキラした物だった。凄く高そうだけど、どんなに貢いだって意味が無いのに、本当によくやるな。


「そう言えば…ニャーゴ、シュノアートの皇女が来週国に帰る事になった」

「ん!?」


 大きなイチゴを一口で食べたタイミングで、皇帝が驚くべき事を口にした。


「……急にどうしてですか?」


 急いでイチゴを咀嚼し、皇帝に向き直る。本当に急過ぎない?皇帝は皇女をシュノアート帝国に返したくないんじゃなかったの?


「大人には色々あるんだよ。お前気にしてただろ?だから教えといてやろうと思ってな」

「そうですか…ありがとうございます…」


 ジッと皇帝を見ても真意はわからない。流石の暴君でも戦争は嫌だったのかな?まぁ、いいか。私が直接あの貴族に突き出してやりたかったけど仕方ない。もう一度イチゴを頬張り気分を変える。シュノアート帝国の事で最近ムカムカしていたが、皇女が帰るなら一件落着だ。もうあの国の事は忘れてしまおう。両親の事だけ覚えていれば十分だ。


 その後、無事姉のドレスもピッタリサイズになり、数日後には皇女も問題なくシュノアート帝国に帰ったと兄から教えてもらった。

 そして、あっという間に皇太子の誕生日がやって来た。皇城には兄と共に向かい、馬車の中でずっと兄は私のドレスに文句を言っていた。


「わかっていた。わかっていたけど腹立たしい。白銀は皇太子の髪色だし、青は瞳の色だ。本来そのドレスは皇太子妃が着るものだろ。あいつ、いつかマジで殺す…」

「いえ、お姉様のドレスも皇太子殿下の瞳と同じ青色ですから」

「青だけだろ?どうせ白銀は入ってない」

「青だけですが、その代わり宝石が沢山付いているんですよ。アクセサリーも沢山用意されていましたし」

「…ミィが気にすると思って言わなかったけど、今ミィが着けているネックレスと指輪、皇家の宝だよ」

「え?まさか」


 姉と違い私はアクセサリーなんて興味がないから、全て皇太子に任せていた。だから言われるがままこのネックレスと指輪を受け取ったが、別に何も言われなかった。だから兄の勘違いだろう。


「そんな貴重な物、私に渡すわけないじゃないですか」

「……どうだろうな」


 不機嫌そうな兄を宥めながら、皇城へと到着した私たちは宴会場へと向かう。会場には沢山の貴族が集まっていて、姉やジェルミー、元婚約者たちも既に来ていた。暫くして皇帝と皇太子が挨拶をして、パーティーは始まった。姉やジェルミーと楽しくお喋りして、恙無くその日は終わると思っていた。でも違った。慌てた様に兵の1人が皇帝の元へと走って行き、会場の扉の所で誰かが言い合っている声がした。兵の報告を聞きながら、皇帝は険しい顔で扉を睨み付けていて、そして、扉はゆっくりと開き出した。

 コツリコツリと、会場に入って来たのは、見た事がある貴族たち。その後に続くように入って来たのは、見た事がある髪色をした女性と、見た事がある目の色をした男性。その男女を見た瞬間、酷い違和感を感じた。男女は真っ直ぐ皇帝の元へと向かって行く。その姿を、私は瞬きも忘れただ見入る。気付いたら、両眼から大粒の涙が溢れ出していた。


「あいつ等なんで…、ミィ、今直ぐ帰っ、…えっ!?どうした!?」


 隣にいた兄が泣いている私に気が付いて慌てて両肩を掴んでくるが、私は息が上手く出来ず声が出せなかった。


「ミィニャ嬢、どうしたの?大丈夫?」

「ミーニャちゃん…?」


 ジェルミーと姉も心配そうに私の顔を覗き込んでくるが、今はそんな2人に構う余裕すらない。私は兄の手を振り払いゆっくりと男女の後を追う。男女を追う事に必死になり過ぎて何度も人にぶつかったが、謝る余裕もない。

 気の所為だとわかっている。そんな事はあり得ないとわかっている。でもどうしても確認したくて足を動かす。

 皇帝が男女に何かを言っているけど、よく聞き取れない。なのに不思議と男女の声はハッキリと聞こえた。


「あの子も絶対に僕たちに気付くさ」

「だから私たちの娘を返して」


 ピタリと私は足を止めて、はは、と乾いた声を出す。知らない声だ。なのに何故か懐かしく感じる声。あの顔だって知らない。それなのに重なる人たちがいる。


「パ、パ…マ…マ…」


 必死に声を絞り出す。小さ過ぎて、誰にも聞こえないような声だった。それでも男女は私を見て、満面の笑みを浮かべ手を振った。


「あ、いたいた!ちさー!パパたちが来たぞー!」

「久し振り〜。元気そうで良かったわ〜」

「……………」


 ぶんぶん手を振る2人を見て、何だか酷い温度差を感じて一気に身体の力が抜けていく。いや、なんか軽過ぎない?そんな事を思いながら、私は意識を手放した。

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