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【コミックス第二巻4/30発売】その政略結婚、謹んでお受け致します。〜二度目の人生では絶対に〜【書籍全二巻発売中】  作者: 心音瑠璃
番外編

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73/78

二度目の人生では幸せに *Lisette side

番外編、最終話です!

「……リゼット」

「!」


 不意に名を呼ばれ……、私はハッと目を覚ませば、困ったように二つの真紅の瞳が揺れていた。

 そんな彼の顔を見て、私はガバッとベッドから立ち上がって謝った。


「ご、ごごごめんなさい! 私……」


 結婚式、それからお披露目パーティーもそこそこに、私はある“準備”を整え……、いつもとは違う部屋で彼が来るのを待っていたら、気が付けば眠ってしまっていたらしい。


(……うぅ、ヴィクターのこと、ちゃんと待っている予定だったのに……)


 そう、今日は……、特別で、大切な夜。

 ヴィクターと夫婦になった、初めての夜だから。


(準備をして待っていたら……、うっかり眠ってしまうだなんて)


 花嫁にあるまじき行為だ、と叱られると思ったら……、ポンっと私の頭に大きな、温かい手が優しく乗って。


「……!」


 そして驚く私に向かって、彼は目を細めて笑った。


「すまない、疲れている君を待たせてしまって」

「っ、ううん、そんな……」


(ヴィクターの方がよっぽど……、疲れているのに)


 彼に気を遣わせてしまった。

 私が思わずギュッと拳を握っていたことに気が付いたのか、ふっと私の体に影が差す。

 へ、と驚いたのも束の間、視界が反転して……。


「!? !?」


 気が付けば、彼にベッドに横たえられていた。

 そして彼は、驚く私に向かって……、ふっと笑みをこぼすと、私の隣に寝転がった。


「そんなに驚かなくても。

 ……漸く、この日が来たんだ。 君と結ばれる今日、この日を……、ずっと待っていた」

「……っ」


 まるで慈しむように、そう言って私の頰に手を添わせた彼に……、私は思わず赤面してしまう。

 恥ずかしさを誤魔化そうと思いを巡らせた時……、ふとずっと前から気になっていたことを思い出して口を開いた。


「あの……、一つだけ、質問しても良い?」

「? 何だ?」


 ヴィクターは頬杖をついて、首を傾げた。

 そんな彼に向かって言葉を続ける。


「前から、気になっていたんだけど……、その。

 ヴィクターは、私に“一目惚れ”したっていうのは本当?」

「!?」


 真紅の瞳が、大きく見開かれ……、顔を赤くさせながら彼は怒ったように口を開いた。


「そ、それは誰から聞いた! サイラスか!?」

「え!? ふぇ、フェリーシナ様と、ウォルター殿下から……」

「……っ、人の心を読みやがったな……」


 悔し紛れにそう赤い顔をして文句を言う彼に……、私は思わず笑ってしまう。

 そんな私が笑ったのを見て、彼はムッとしたように口を開いた。


「何故笑っている」

「え? だって……、ふふっ、愛されてるなあって」

「なっ……!?」


 私はそっと……、彼に抱き着いて口を開いた。


「……それを聞いて、凄く嬉しかったの」


 ずっと、気になっていた。

 どうして私は、和平交渉の交換条件に組み入れられてしまったのだろうと。

 私の魔力が欲しかったから?

 マクブライドの戦力を削ぎたかったから?

 気が付けば、どんどん悪い方にばかり考えていて。


「ずっと……、ヴィクターと思いが通じ合うまで、どうして此処へ来たんだろうって思っていた」


 それは、前世の時から疑問に思っていたことだった。

 初めて彼と二人きりで話し突き放された時、あぁ、この婚姻には愛なんてものは存在しないんだと。

 彼には愛されることはないんだと、前世の自分は諦めた。


「だけど……、一目惚れだと聞いて」


 私の目から一筋、涙がこぼれ落ちる。


(もし、前世のヴィクターも同じだったとしたら……)


「……素直に、君に告げていれば良かったんだな」

「! ヴィク……っ」


 彼の唇が、そっと私に重なる。

 触れるだけの優しいキスに、私の心に温かな気持ちが広がっていく。

 そして彼は……、そっと私の頰に流れた涙を拭いながら言った。


「サイラスにも……、同じことを聞かれた」

「! サイラスに……?」


 突然幼馴染の彼の名が出たことに驚けば、ヴィクターは頷きながら言葉を続けた。


「彼にも……、どうしてリゼットを、和平条約の交換条件になんて出したんだと尋ねられた。

 それについては……、俺も酷いことをしてしまったという後ろめたい気持ちがあって」


 それでも話しておけば良かった、と彼の言葉に驚いている私の髪を手に取りながら、そっと口を開いた。


「君のいう通り……、一目惚れだった。

 いつか前に、君を“戦場で見かけた”と言ったことがあるだろう?

 ……この金色の髪が、陽の光を浴びて煌めき、凛と立つその姿を初めて見た時、俺は……、一瞬で恋に落ちていた」

「……!」


 初めて聞く話に、私は相槌を打つのも忘れてヴィクターの瞳をじっと見つめてしまう。

 彼はそんな私の目を見て照れ臭そうに笑いながら、そのまま言葉を続けた。


「そして、父さんにある日告げられたんだ。

 “そろそろ結婚相手を決めろ”と。

 ……その時、自然と口にしていたのが……」

「私の……、名前だったの?」

「あぁ」


 “リゼット・ラザフォード”

 彼の形の良い薄い唇が、私の名前を紡ぐ。

 そんな彼を見て……、私はまた涙ぐんでしまう。


「っ、ごめんなさい、何か今日は、泣いてばかりだわ」


 結婚式でもお披露目パーティーの時も泣いたのに、困るくらい涙が枯れることはなくて。

 そんな私に彼は近付くと、そっと瞼や頰に口付けを落とされる。

 そしてまた、ギュッと……、今度は力強いその腕に強く抱き締められた。


「そんなに……、喜んでくれるとは、思っていなかった。

 つまらない意地を張っていないで、君にもっと早く伝えていれば、不安にさせることもなかった筈なのに」


 すまない。 そう口にした彼に対し、私は顔を上げた。


「っ、そんな!

 私は……、こうして聞けただけで十分、幸せだわ」

「! ……リゼット」


 そう私の名を呼んだ彼の瞳にも……、涙が溜まっていて。


「! ……ヴィクターも、今日は泣いてばかりね」


 私とお揃い、なんて彼の頰にそっと手を添えれば……、不意に視界が反転する。

 気が付けば、天井を向かされ、彼の顔が間近にあって。


「……!?」


 思わず息を飲んだ私に対し、彼は妖艶に笑って……、「約束通り」とゆっくりと口を開いた。


「“結婚したら、歯止めなんて効かせないから”」


 いつの日か言われたその言葉に、私は顔を赤くして良いのか青くした方が良いのか分からず……、咄嗟に口を開いた。


「お、お手柔らかにお願いします……っ」

「! ……ふはっ」


 私が漸く口にした言葉に対し、彼は吹き出す。

 そんな彼に向かって抗議の声を上げようとした私の顔に、彼は顔を近付け……。


「善処しよう」


 そう吐息が触れる距離で言った彼と、今度は深く甘く唇が重なり、私はその熱に身も心も委ねたのだった……―――




 ―――……数年後。


「行くぞっ、ウォルト!」


 王城の広い庭で、そう声を張り上げた少年……、その特徴的な真紅の瞳を持つ彼は、金色の肩まで伸びた髪を揺らし、ウォルトと呼んだ人物に向かって剣を打ち込む。

 それをウォルトが剣で受け止めた瞬間、カキンと大きな音を鳴らし、剣が激しくぶつかり合う。


「っ、ヴィンセント、大分剣が重くなってきたね……っ、でも」

「!?」


 ヴィンセントより少し身長の高い、ウォルトと呼ばれた少年は、同じ金色の長い髪を一つに束ね、ヴィンセントの剣を薙ぎ払い……、その彼の喉元に切っ先を向けた。

 そして、同色の金の瞳を細め、にこやかに笑って告げる。


「勝負あり、だね」

「! ……もう一度だ!」

「えー、流石にもう疲れたよ」


 ウォルトがそう言って両手を上げれば……、そんな二人の元に走り寄ってくる、小さな少女の姿があった。


「ヴィンセントお兄様、ウォルトお兄様〜!」


 その少女は漆黒の髪を三つ編みにし、大きな橙色の瞳をキラキラとさせながら、彼等の名を呼ぶ。


「! リーズ!」


 ヴィンセントはそう妹の名を呼び、怒ったように慌てて言った。


「リーズ、そんなに走ったら危ないだろう?」

「! ……ごめんなさい」

「まあまあ、ヴィンセント。 そんなに怒らないであげて。

 リーズちゃん、どうしたの? 僕等に何か用事があって来たんでしょう?」

「! ウォルトお兄様、よく分かったね!」


 リーズの言葉に、ウォルトは「まあ、僕も魔法使いだからね」と笑って言った。

 リーズはウォルトに向かって「凄い!」と口にしてから言った。


「あのね! 私も魔法を、コントロール出来るようになったの!」

「! 本当か、リーズ!」


 そう嬉しそうに口にしたのは、ヴィンセントだった。

 彼の言葉に、「うん!」とリーズは頷き、人差し指を立てれば……、そこにポッと火が小さく宿る。

 それを見た二人は嬉しそうに破顔したのだった。




 その姿を遠くから見ていた彼等は、そっと口にした。


「みんな本当に……、大きくなったね」

「あぁ。 何だか不思議な感じがするな」


 そう口にしたリゼットとヴィクターに対し、そばにいた二人も頷いた。


「そうね。 しかも、私達の子……、ウォルトが古の魔法使いの血を引いていると知った時は、とても驚いてしまったけれど」

「一瞬彼も“心を読める”と知った時は、私の魔法を継いでしまったかと、ヒヤヒヤしたけれどね」


 フェリーシナの言葉の後、そう肩を竦めて言うウォルターに対し、「でも、」とリゼットが口を開いた。


「どんなことがあっても……、あの子達ならきっと、乗り越えられるわ」

「! あぁ、そうだな」


 ヴィクターはその言葉に同意し、リゼットの手を握る。

 そうして二人、互いに顔を見合わせ笑い合った。




 一度目の前世では報われることのなかった二人の思いは、二度目を経て通じ合った。

 その思いを通して、周りにも大きな“幸福”という名の影響を与えていった二人。

 そんな二人の“幸福”な未来は、これからも続いていく……―――




『その政略結婚結婚、謹んでお受け致します。 〜二度目の人生では絶対に〜』 番外編END

番外編最終話、如何でしたでしょうか…!?

リクエスト頂いた皆様、有難うございました…!期待に応えられていたら、嬉しく思います。

最後に、温かい御感想を下さった皆様、そして最後までお読み頂いた皆様、本当に有難う御座いました…!

これをもちまして、シリーズを完結表示とさせて頂きます。

また何処かで、作者の作品をお読み頂けたらとても嬉しく思います…!

2020.2.24


新作開始致しました!

https://ncode.syosetu.com/n7984ga/

『婚約破棄された令嬢は、ドSな第一王子に翻弄される』


《追記》

この度書籍化&コミカライズが決定致しました!

皆様の応援のお陰です!本当にありがとうございます!!

改めて追加情報など随時活動報告やTwitterにて掲載致しますので、お手隙の際にチェックして頂けたら嬉しいです〜!

宜しくお願い致します。

2021.3.4.



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