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はるか傍らの少女  作者: つづら日和
第三章 浅草百笑
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1.私は幸せだと思う

 私が目を覚ましたのは病室だった。

 目が冷めて、一番最初に思ったのはゆうくんのこととエルゼという謎の単語だった。そういえばあの時、私に何があったんだろう…陽くんは大丈夫かな?お母さんとお父さん…思い出して寂しさが溢れた。

 

 私の名前は浅草百笑…お医者さんが浅草さん名前分かる?と聞かれて頷いた。

「なんで…そんなこと聞くんですか?」

 そう言うと彼はバツが悪そうに一瞬目をそらして「君のお友達の記憶が君がここに運ばれてきた日の3日前分ぐらい無いから、確認だよ。」と言われてドキッとした。

「それは誰のことですか!」

「佐竹祐希くんと陽希くんだよ。でも大丈夫…それより前の記憶はあるから。少し記憶が抜けてて戸惑うことが彼等なりにたくさんあっただろうけどね。でも君は約一ヶ月寝たきりだったんだ。君の方が起きてきて戸惑うことが多いかもしれない。」

 そう、信じられない事に私は一ヶ月寝たきりだったらしい。勉強に部活…出席日数…いろいろと問題はある。…私、助っ人で部活に呼ばれたんだけどなぁ…大会終わっちゃったよね。

 私の体にはどこも別状が無いようで明日にでも退院できると聞かされた。ただ、警察の人がなにか聞くかもしれないとも言われた。はるくん探しは警察を巻き込んでかなり大きく行ったらしい。それにみんなバラバラで変なとこで発見されたうえに記憶がなかったり私のように寝たきりであったり…事件性が高いとして捜査されていみたいだった。今のところは大きな証拠は見つからず事故で処理されるそうだ。

 あの後、お父さんとお母さんがジュースとお菓子を持ってきてくれた。「何か食べたいものはある?」と聞かれて私はお母さんのフルコースと答えたから、退院後はたくさん食べれると思うと嬉しい。「本当に大丈夫?私たちに言えない事情もあるかもしれないけど…。」と二人に念押しされちゃったけどそんな事ない、言えない事情だなんて…私は二人に頼りっばなしだよ。



ーーー

 夕方になりみんなが帰ると私は病室で一人、夕焼けを見ていた。色々あって疲れたし、一ヶ月もたっちゃってて少し心配なところもあるけど改めて幸せ者だと感じた。あんなに心配してくれる人がいるんだと思うと嬉かった。…けど…何でだろう…自分は…自分にはこの幸せは贅沢すぎる気がする。 

「2人ともどうしたの?」

 病室のドアのむこうから声が聞こえた…ものすごく懐かしい声。今のはゆうくんだ。

「あぁ!もしかして緊張してて入れないのー?」

 次にはるくんの声がした。

「しっして無いよ!」

「私は早く入って驚かせようって言ったのよ?」

 とても賑やかで笑みがこぼれる。昔もあんなんだったなぁ。

「じゃあ…入るぞー」

「あぁ!!僕が開けたかった!!」

 ゆうくんが入ってきた後に、はるくんがパタパタと横を通り過ぎて私が寝ているベットのそばに来た。ゆうくんの後ろからはりっちゃんとソーくんも顔を出す。みんなが相変わらずみたいでホッとする。

「みんな、ありがと!」 

「どういたしまして。」

 そう言うとはるくんが何かを差し出してきた。

「はいコレ、色紙。」

 そう言って目の前に突き出してきたのはクラスのみんなからのメッセージ付きの色紙だった。真っ先にユウくんのを探すと端の方に「早く元気になってね」とありきたりな文が素っ気なく書いてあった。

「もっと何か無いのー?」

 と私がジトーとした視線を送ると、

「僕が渡しに来たんだし…。」

 と目をそらされた。

「ねぇーねぇー!!元気?大丈夫?」

 はるくんはいつも元気だなぁ。

「うん、明日には退院できるっていってたよ。」

「良かったです」

 かしこまってりっちゃんが言う。

「昔みたいに敬語じゃなくてもいいんだよー?だってりっちゃん。気持ち悪いもん。」

「なっ!?気持ち悪いって!!」

 頬を真っ赤にするりっちゃんは本当にかわいい。

「うん…たしかに律ちゃん気持悪い」

「祐希お兄ちゃんまで!?ちょっ!?ソーヤ笑わないでよ!!もうっ!もえ姉まで!!」

 みんなが笑う病室、あぁ…楽しいなぁ。なのに何でだろう…すごく悪い気がする…私にはこの空間は贅沢で…こんな所にいると罪悪感で押し潰されそうで胸が苦しい…。幸せなのに…幸せなのに…。


「…っ!?百笑、大丈夫?」

 驚いた顔でゆうくんが私を覗き込んだ。ハルくんにりっちゃん、ソーくんも私の顔を不安そうに覗き込む。

 

 気づいたら私は泣いていた。 

 

 なんでか涙が止まらなくて、同仕様もなくて…、みんなの前で情けないなぁ。

 泣き続ける私の手に暖かくて小さなものが触れた、それははるくんは手だった。その手に続いてりっちゃんソーくんも重ねる。「兄ちゃん!!」とはるくんに怒られ、最後にゆうくんがおずおずと手を重ねた。


「昔、こうやってみんなで手を合わせてヒーローごっこしたよね。」

 唐突にりっちゃんがそんな事を言った。たしかにあったなぁ…懐かしい。

「最近、ゆう兄ちゃんにももえ姉ちゃんにも会わないから緊張してたけど、やっぱりみんな変わらなや。」

 そう言ってそーくんが笑った。

「いつでも僕らを頼ってよ!!」

 はるくんが元気よく言う。

「クサいな…。」

「もう!兄ちゃん!!」

「陽希、高校生になるとこういうのは恥ずかしくなるんだよ。」

 そう言うと頭を掻きながらゆうくんは何か言おうと口を開けかけて諦めて、はぁ…とため息をついた。何を言おうとしてくれていたんだろう気になる。その後ゆうくんは何かしなければいけないと思ったのか目を泳がせると最後に困ったようぎこちなく笑いかけた。いつからこんなに不器用でシャイになったんだろう?でも、とっても嬉しい。


 ここは本当に温かい…私はここが好きだ…この場所が好きで好きで…だから守りたいと思えた…それも百笑のおかげだよ。

 何故か私は私自身の名前を呼びかけた。ほんとに今日はどうかしている。

 久しぶりにこんなに泣いたかもしれない。何か抑えていた感情が溢れ出すように涙がこぼれた。

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