10ー2
陽希は閉ざされた部屋を見渡した。
部屋にはベットと机が置かれている。
とても質素だが、意外と人間らしい部屋だ。
床にはマットがしかれ、その上にはさっき歩いているときに見かけた機械がせわしなく動き、陽希が動くたびに監視してくる。
「はぁ」
どうしよっかなぁ
陽希はベットに寝そべった。
思ったよりもふわふわで快適だ。
「手錠ぐらい外してくれればいいのに…」
両腕を上げると手錠がガチャガチャと音を鳴らす。
陽希は思いっきり力を入れて両腕を反対方向へと引っ張った。
「無理かぁ」
手首が痛くなるだけで、壊れる気配は無し。
諦めたように腕をおろし、ため息をつく。
何か考えないと。
陽希は外に出るための手がかりを探すためにために、手錠がかかったままの状態で器用にベットから起き上がった。
何しよっかなぁ。
そう思う陽希の視線の先には機械がいた。
ずっと監視されてる。
アイツ、後ろに回ってグシャッとできないかなぁ。
陽希は機械を見てニタァと笑った。
机には引き出しは無い。他に何か手がかりあるとしたら一番目立つのはその機械だ。それに興味もあった。
じっくりと観察させてもらうだけだから!
陽希は、機械が反応できな位ぐらいのスピードでカメラのようなものがついていない裏側へと回り込んだ。
素早く手を伸ばす。
あと少しで機械へと手が届く、その時…
【やめたほうがいいよー】
頭の中では声が聞こえた。
動きが停止する。
1テンポ遅れ、機械が陽希のほうを警戒するように振り返った。
何となく、『余計なことをするな』と言われている気がする。
今の声は何っ?
もしかして、この機械?
しかし、機械は陽希をじっと見ているだけだ。
この部屋には機械と陽希しかいない。
じゃあ、この声は…
「だ【シー!!静かにっ!】
だれ?と聞こうとしたの時、その声に遮られた。
【本来俺は、君と喋っちゃだめだから!】
声はそう言った。
【俺、ニホンゴって初めて使うんだけどしっかりと通じてる?】
分かるっ!!これってどうやって話してるの?
陽希の未知へ対する対応能力は高い。
純粋に、恐怖心とか疑いよりも、好奇心が勝るだけだが。
陽希はベットに座りると、興奮して尋ねた。
もちろん心の中でだ。
一人きりより、誰かと喋れる方が心強い。
しかも、脳内で話すなんてテレビでしか見たことのない事だ。陽希のテンションは上がる。
声は少年に近かった。
実際、誰が話しかけているのか分からないためどんなやつかも判定はできないが、とてもフレンドリーだ。
【それな事より、お前、ここから出たいんだろ?】
えっ?うんっ!!
陽希は本来の目的を思い出した。
そうだ、僕は早く出ないといけない。
【出してやるよ。】
声ははっきりとそう言った。
ほっホントに!?
陽希は声には出さなかったものの、驚きのあまり勢い良く立ち上がった。
側にいた機械が胡散臭そうなものを見るようにジーと見つめる。
陽希はハハハ…と機械に苦笑いしながら、ソローと再びベットに座り直した。
【あぁ。ただし条件がある。】
声は、君の判断次第で出してやれるかやれないかが変わると言った。
【君の体を共有させてほしい。】
さっきの明るい声ではなく真剣さが伝わってくる。
きょう…ゆう…?
陽希は思いがけない言葉を聞いてキョトンとする。
【そう、なんていうのかな…。二重人格みたいになるんだ。一つの体の中に2つ魂が入ってる感じ!】
感じ…と言われても体験したことがないのだからよく分からない。
だけどそれって!
ベルゼみたいなものっ!?
【ベル…えっ何それ?】
声は急に出てきた単語に困惑する。
えっとね!兄ちゃんが見てたアニメだよっ!
主人公のベルゼが精霊と契約して戦うんだ!
ほんとにカッコツいいんだよー!と陽希は言う。
何はともあれ、共有がどんなものかを理解したようだ。
【えっと…それは共有してもいいって事?】
いいよ!する!!
陽希の決断はほぼ即答だった。
この時声の主は、思ったよりあっさり承諾する地球人の自己防衛能力はかけてないだろうか?と少しばかり思ったが、それに救われたことも事実だ。ここで突っ込むべきではない。と思った。
【ありがとな!俺もここ何十年間出れなくて困ってたんだ!これからもよろしくな!】
こうして、得体の知れない声は陽希と一つになった。




