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はるか傍らの少女  作者: つづら日和
第二章 転校生
20/63

3.不安要素

「ただいま」


 家に帰ってきた。今日は母が月曜日のため仕事でいない。いつも月、水、金はだいたい七時に帰ってくる。だから、家の鍵が空いていたってことは陽希が家についているということだ。

「おかえりっ!」

 やっぱり。2階から陽希の声がした。玄関まで降りてこないってことは友達と遊んでいるんだろ。…あの汚い部屋に友達が入るのか?

 僕は帰ってすぐにリビングにあるお菓子を持って二階の自室へと向かった。今日は発表用紙を書いたら早く寝たい。…授業最初に発表…あっでも、出席順で言うと犬塚が最初か。

 僕が重い足取りで階段を歩いていると、髪をツインテールに結んだふんわりとした茶髪の子とすれ違った。その子は僕と目が合うと、ペコリとお辞儀をして下へと向かっていった。


「えっ?」

 えっ誰今の子?友達?彼女?めちゃくちゃ可愛かった。


 僕は陽希の部屋を開けた。

 …いつもよりかなりきれいだ。ここまできれいに片付いているということは、押入れと引き出しの中はかなりひどいんだろう。

「あっ兄ちゃんっ!」

 そこには陽希と、僕も見慣れた顔の子たちがいた。近所に住む、りつちゃんとソーヤだ。

「「祐希お兄ちゃん、こんにちはっ!」」

 二人は僕に気づくとプレイ途中だったゲームの画面から顔を上げ挨拶した。昔はよく、陽希、律ちゃん、ソーヤ、浅草で、遊んだものだ。

「どーしたの?」

 陽希が不思議そうに見つめる。いつもは陽希の部屋に寄らずに自分の部屋にさっさと戻るから、珍しく部屋に入ってきた兄が気になるんだろう。律ちゃんとソーヤは再びゲーム画面を見て真剣に操作している。突如「ああっ!」とソーヤが叫んだ。どうやらソーヤが負けたみたいだ。


「いや、初めて見た子だったから。」

「可愛いでしょっ!」

 そう言ってニカッと笑う陽希と、それを睨む律ちゃん、そしてソーヤは顔を赤く染める。

 分かりやすい。

「あの子は今日、引っ越してきたんだ!名前は丸山カエラっていうのっ!」

 引っ越して来た子を早々に誘ったのか…すごいな。

「彼女じゃないよー?」

 陽希は、そう冗談っぽく言って笑った。

「確かに可愛いけど、僕そんなにチョロくないもん!カエラちゃんを誘ったのは、ソーヤがカエラちゃんにひと目惚れ…んっ!?」

 ソーヤが真っ赤な顔で陽希の口を抑えた。

 …ソーヤも色々大変だな。

 実行力の塊の陽希に、恋愛相談をしたのがそもそもの間違いだろ。陽希なら積極的にソーヤとそのカエラちゃんって子と二人っきりにさせようとする…デリカシーもかけらもなく「ソーヤのことどう思う」とか聞くんだろうなぁ。にしても、僕と陽希はたまに同じこと思う。兄弟は似るのかもしれない。

 うーん…あの女の子は丸山って名字なのか。じゃあもしかすると…

「おかえりーっ!」

 陽希が元気良く、僕の後ろに向かって手を振った。カエラちゃんだ。トイレにでも行ってきたのようでハンカチを持っている。その白いハンカチにはお嬢様が持ってそうな花がらの刺繍のついたものでとても似合っていた。ここまで可愛い子はそうそういない。しかも、転校生で同じ「丸山」だと言う…そう思うと顔も似ているんじゃないだろうか?


「カエラちゃんって、丸山りおって言うお姉ちゃんいる?」

 疑問を口にするとカエラちゃんはコクンと頷いた。やっぱり。

「えぇっ!カエラちゃん、お姉ちゃんいるのー?なんで知ってるの!!」

 バッと陽希がくいついてきた。

「転校生。うちのクラスにも来たんだ。」

「えっ!写真見せて見せてっ!!」

 興味津々で写真をねだる。律ちゃんもソーヤも、期待の眼差しで僕を見てくるんだけど…

「わざわざ撮ってくるわけ無いだろ?」

「えぇー。そのためにスマホが持ち込みオッケーなんじゃん。」

 陽希はかなり落胆した様子ではぁ…とため息をつかれ、二人も残念そうな表情をする。いや僕が悪いみたいになってるけど、普通転校生の写真をいちいち撮らないからな?


「私が今度遊びに来るとき…お姉ちゃんも誘ってきましょうか?」

 カエラちゃんがそう申し出た。唐突に何言い出すんだ、この子…。

「ほんとに?やったっー!!」

 陽希、ソーヤの恋愛の手助けはどうした。多分もう、興味が姉のほうにうつっている。

「でも、丸山さんも迷惑なんじゃ…」

「祐希さんは、お姉ちゃんと一緒のクラスなんでしょう?なら多分大丈夫です。姉もクラスに喋れる人がいたほうが嬉しいと思うしっ!」

 しっかりした子だな。 …でもカエラちゃん、そんな心配しなくとも丸山さんはうちのクラスで大人気だよ。僕が近寄りがたいぐらいにね。


「わっ私も遊ぶっ!ねっ!ソーヤも遊ぶよね?カエラちゃんのお姉さんだよ!」

 律ちゃんが、ソーヤの同意を強引に求める。ソーヤは真っ赤な顔で固まっている。これは、カエラちゃんと二人っきりに出来ないやつだな。


「陽希にとられるよ。」

 陽希やカエラちゃんの位置からは聞こえなかったようだが、僕の位置からは律ちゃんがソーヤにそう言って耳打ちしたのがはっきりと聞こえた。

「お、俺も遊ぶ。」

 律ちゃんに脅され、ソーヤも遊びたいと言った。


 こうして丸山さんにとって、全く面識のない小4が3人も遊んでもらうこととなった。


 いいのか…。これ?

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