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第十二章 繰り返し


2ヶ月後


あれから、玲は利佳子の事や健の事を、理解してくれて…。


今は、新しい恋をしているらしい。


それに比べて、利佳子は、恋をするなんて考えてもいなかった。


健以外の他の男の人を好きになることも…。


冷たい風が肌にあたる。


もうすぐ、冬だ。


ん〜よく寝た。


今日は日曜日!!


何もないのに、朝早くに目が覚めた。


今、何時だろう??


携帯を見ると、裕から…たくさんの着信履歴。


掛かってきたのは、昨日の深夜。


昨日は早く寝たから、全く気づかなかった。


今の時間は、朝の5時。


裕は起きてるかなぁ―??


「もしもし」


「朝早くゴメンね↓↓昨日電話気づかなかった。何か、あったの??」


「今から…たまり場来れるか??」


「えっ!!うん。大丈夫だけど…」


「じゃあ、待ってるな」


裕の声が、いつもと違う。


とっても疲れてるみたい、よほどのことがあったのかな??


何があったんだろう??


ピンポーン


「ゴメンな。呼び出して…」


「おじゃまします」


部屋の中は、いつものみんなのテンションが嘘のように、静まり返っていた。


「とりあえず、座って」


「うん」


「あのな、今から言うことは、もしかしたら…


お前に言うべきではないのかもしれないし、


言ったらまた、お前を傷つけることになるかもしれない。


それでも、言っても良いか??」


少し悩んだ。


だって…もう、傷つきたくないもん、でも、やっぱり知りたい。


「教えて…」


「昨日の夜、海斗と隆がライブハウスに行ったんだ…


そこに、警察が来て海斗は逃げたんだけど、


未成年で隆が捕まった。そこまでなら、まだ、良かったんだけど…」


「あいつ、そのライブハウスで、薬を密売者から買っていたんだ」


「それで、お願いがあるんだ…


俺らは1回薬に手出してるから、面会に行くことはできないんだ。


代わりにあいつに、会いに行ってもらえないか??」


「うん。分かった」


こういう時、あなたなら、何と答えますか??


いきなり、聞かされた目の前の事に対して、あたたなら何と答えますか??


本当は、「行かない」と言うのが正しいのかもしれない。


すぐに答えを出したわけじゃない考えたよ。


でも、利佳子が辛かった時、助けてくれたのは、裕達そして隆だった。


だから、素直にみんなの助けになりたい。


そう思ったの。


「ありがとうな」


「うん」


「じゃあ、行くか??」


「うん」


「警察の前まで、一緒に行くから」


「うん」


警察署の前に着いた。


「じゃあ、行くね」


「ちょっと待って!!」


海斗が止めた。


「これ!!あいつに持っていってあげてくれないか??」


海斗が差し出したのは、タバコ1本とライターだった。


「分かった」


「じゃあね」


「待ってるから!!」


「うん」


本当は、みんな隆のことが心配で、会いに行きたいんだと思う。


だから、みんなの分まで…隆のこと励ましてあげよう!!


受付に着いた。


「あの、神崎 隆に面会したいんですけど…」


いろいろ、受付とかをして、隆の居る部屋に行く。


「着いた…」


ノックして部屋を開ける。


中にいた隆はまるで、別人のようだった。


隆が薬で捕まったという事を、改めて突きつけられたような気がした。


「隆??」


「利佳子か??」


「うん。大丈夫??」


「あっ!!コレね…海斗が隆に渡してって預かってきたの。」


隆は利佳子の手から、タバコとライタ―を奪いとりタバコに火をつけた。


怖い。


どうしよう。


その瞬間、利佳子の腕を掴んだ。


「何!?何すんの!?」


口に加えていた、タバコが利佳子の腕に近づいてくる。


「やだ!!やめてよ!!」


タバコの火が利佳子の腕に焼き付いた。


熱いとも、何も感じない。


こんなの隆じゃない!!


利佳子を助けてくれた、優しい隆の姿はどこにもない。


部屋を飛び出した。


跡が見えないように手を隠しながら、裕達の所に戻る。


「ただいま」


頑張って明るくする。


絶対に今、起こったことは言わない。


裕達を心配させたくない。


「隆どうだった??」


「元気してた??」


「うん!!元気だったよ!!」


「そっか―良かった!!」


それから、また、たまり場に戻った。


「りかこ…ちょっと外行かないか??」


「うん。良いよ」


裕と外に出る。


近くの公園のベンチに座った。


「どうしたの??」


「前に俺がりかこに、俺には絶対に嘘つかないで


悩んでる事があったら、何でも話せ…。


って言ったの覚えてる??」


「うん。覚えてるよ」


「今、俺らに嘘ついてることないか??」


裕は、すごいね。


何でもお見通しだよ。


…ありがとう。


「ゴメン。正直に話すね」


「ゆっくりで良いからな」


「隆ね…元気何かじゃなかった。


変わっちゃってた。隆じゃなかった。


隆に海斗から預かってたタバコを渡したの…」


もう、この先言いたくないし、跡を見られたくない。


「もしかして…。右手貸して」


さっきから、洋服で隠していて、跡を付けられた方が右手だった。


裕が右手の洋服を捲り上げる。


「やっぱりな…。何で、言わなかった、何で、黙ってた。


また、一人で悩んで…ゴメンな」


「だって、言ったら…裕達行けないのに、


心配かけちゃうし…あたしはいくら、傷ついても大丈夫だから…」


裕がりかこの頭を自分の肩の上に引き寄せてた。


「強がんなよ…りかこまだ、中学生だろ、俺の前では泣いて良いから」


せっかく、我慢してたのに…裕の馬鹿。


裕の膝に涙が落ちる。


「怖かった…」


「ゴメンな」


裕が悪いんじゃないよ。


裕は跡がまだ、生々しく残っている、傷跡の所にキスをしてくれた。


利佳子はずっと、ずっと、裕の腕の中で泣いた。


もうすぐ、夕日が沈む。



3日後


利佳子はたまり場に来た。


隆の事があってから、みんな…あんまり寝てないみたい。


健…。


りかこに出来ることあるのかなぁ??


「海斗…携帯鳴ってるよ!!」


「はい」


海斗に携帯を渡す。


「もしもし」


何か、深刻そうな顔で話している。


誰からなんだろう??


海斗が電話を切り、その場にしゃがみ込んだ。


「誰からだったんだ??」


裕也が聞く。


「…病院」


「隆に何か、あったのか??」


「屋上から、係員が目離したすきに飛び降りて…死ん…だ。」


みんなが凍りついた。


「とにかく、警察に今から、行って来るから…」


「俺らも…行く」


「お前らはここで待ってろ!!」


ドアを閉め、車に乗り海斗は行ってしまった。


りかこだって、みんな…隆が心配だし、飛び降りた何て、信じられない。


でも、きっと…一番悲しいのは、一番近くで見ていた。


海斗だよね。


海斗は、事情があって隆の親替わりをしていた。


隆の父親は隆が小さい時から居なくて、


ずっと、母親が育っててきたんだけど、隆が小学5年生の時に癌で亡くなった。


それで、小学校の親友である、2コ上の海斗と一緒に暮らしてきた。


だから、誰よりも…信じたくないと思っていると思う。


あの時の利佳子のように…。



この日をもって隆は還らぬ人となった。





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