第四話 激励のために
ラピスラズリのような美しい青の髪と瞳を持つ、氷のような女。それが、世間一般での私へ向けられる目だ。
顔立ちは、自分で言うのもなんだが、美人だと思う。しかし、だからこそ、無表情でキッパリと物事を告げる私は、冷たく見えるらしい。
宰相閣下からの招待状の中身は、文官達の就任パーティーだった。
このヴァイラン魔国では、文官になると、それを祝う会が設けられる。そして、そこでは宰相閣下や宰相補佐達からの激励も行われるとのこと。
そこそこ忙しい宰相閣下は、その役目を私に与える形で、お見合いを目論んでいる、ということね。
そんなことをしても無駄なのに、と思いながら、私は激励のための得物を手に取る。
「騎士ではないとはいえ、ヴァイラン魔国の文官であるならば、弱いことは許されないものね」
そう、実際に、私も文官見習いから文官に上がった際、当時の宰相補佐から同じ激励を受けた。ただ、例年と異なるのは、私がその宰相補佐と拮抗する実力を有していて、競り合っていたことかもしれない。
『うふふ、久々に戦うから勘が鈍っているんじゃないかしら?』
招待状の中身を確認した直後、そう言ってきたデリクさんに対して、私は、意図してニコリと笑ってみせた。
『では、勘を取り戻すため、再起不能にならない程度に叩きのめしてきますね』
そう言えば、デリクさんはヒクリと頬を引き攣らせていたが、先に挑発したのはデリクさんだ。せいぜい、その後のケアはしっかりしてもらおう。
城の一角を借りて、美味しい料理を堪能しているであろう新人の文官達の元へ向かいながら、今後のことを思ってほくそ笑んでいた私は、ふと、足を止める。
「っ……」
その香りは、あまりにも芳しく、一瞬にして全身が痺れるような、天にも昇るような感覚に囚われる。
「リッシャール宰相補佐殿?」
いつの間にか立ち止まっていた私へ、先導していたメイドが訝しげに声をかけてくる。
「何でもありません。さぁ、行きましょう」
この時点で、嫌な予感はしていた。しかし、たとえその時が、来たとしても、私が変わるつもりはない。
そう、覚悟を決めて、今にも駆け出したくなる気持ちに蓋をして、会場へと足を踏み入れた。




