第6話:喰らい尽くす者
どれだけ積み上げても、届かない壁はある。
努力でも、工夫でも、埋まらない差。
それが“強者”と“弱者”を分ける。
だが――もし、その差すら喰らえるとしたら?
これは、限界の先にある“異常”へ踏み込む物語。
剣が振り下ろされる。
避けられない。
間に合わない。
(終わる――)
そう思った瞬間、俺の手はすでに動いていた。
壊れた魔道具に触れる。
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
次の瞬間――
身体の奥で、何かが“弾けた”。
「――ッ!!」
熱が走る。
今までとは比べ物にならないほどの、濃い力。
流れ込むんじゃない。
“暴れている”。
「なんだそれ……!」
男の声が歪む。
俺自身も理解できていなかった。
ただ一つ、はっきりしている。
――今なら、いける。
「……はぁっ!!」
踏み込む。
地面が砕ける。
自分でも驚く速度で、男の懐に入り込む。
「なっ――!?」
拳を叩き込む。
今までとは違う感触。
硬い。重い。だが――
「ぐぁっ!!」
男の身体が吹き飛んだ。
壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。
静寂。
「……マジかよ……」
後ろの二人が後ずさる。
だが俺は止まらない。
身体の中で、力がまだ暴れている。
「逃げろ!!」
一人が叫び、走り出す。
だが――
「遅い」
足を踏み込む。
一瞬で距離を詰める。
そのまま首元を掴み、地面に叩きつけた。
「がっ……!」
動かなくなる。
最後の一人が震えている。
「ば、化け物……」
その言葉に、少しだけ笑った。
「そうかもな」
自分でも思う。
これは普通じゃない。
だが――
「お前らが決めたんだろ」
ゆっくりと近づく。
「価値がないやつは、捨てるって」
男は後ずさる。
「や、やめろ……!」
「安心しろ」
手を伸ばす。
「お前も、無駄にはしない」
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
触れた瞬間、男の持っていた装備が崩れ、消える。
その力が、俺に流れ込む。
「……これが」
ゆっくりと息を吐く。
「俺のやり方だ」
やがて、静寂が戻る。
荒れた小屋の中。
倒れた敵。
そして――
「……終わった……?」
後ろから、震える声。
振り返ると、リナが立っていた。
無事だ。
「……ああ」
短く答える。
その瞬間、身体の力が一気に抜けた。
膝をつく。
「アッシュさん!!」
リナが駆け寄ってくる。
「大丈夫……ですか……?」
「ああ……ちょっと、使いすぎただけだ」
苦笑する。
だが、はっきりしている。
さっきの力。
あれは――
(ただの吸収じゃない)
もっと深い何か。
強いものを喰らった時だけ発動する、“別の力”。
「……まだ、伸びるな」
小さく呟く。
リナは不安そうに見ていたが、やがてほっとしたように息を吐いた。
「よかった……本当に……」
その顔を見て、少しだけ肩の力が抜ける。
守れた。
今回は。
「……ここ、直さないとな」
壊れた小屋を見回す。
戦いの跡でボロボロだ。
だが――
「まあ、材料には困らないか」
床に散らばる“素材”を見る。
リナが小さく笑う。
「そうですね」
その笑顔に、つられて笑う。
さっきまでの地獄が、少し遠く感じた。
だが忘れない。
この世界は――
簡単に壊れる。
だからこそ。
「もっと強くなる」
誰にも聞こえない声で、そう呟いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第6話では、主人公の初めての“覚醒”と逆転を描きました。
これまでの吸収とは違い、強い力を取り込んだことで、新たな段階へと踏み込んでいます。
今回の戦いで、主人公はただの成長ではなく、“異常な存在”へと一歩近づきました。
しかしその分、リスクや限界もまだ見えていません。
また、守るべき存在としてのリナの存在も、より大きくなってきています。
力を求める理由が、少しずつ変わり始めている段階です。
次回は戦いの後処理、そして新たな展開へ。
この力が周囲にどう影響していくのかも描いていく予定です。
よければ、引き続き読んでいただけると嬉しいです。




