第5話:拾った日常は、簡単に壊れる
ようやく手に入れた、小さな居場所。
やっと落ち着ける日常になると思った。
だがこの世界は、優しくはない。
“弱い者が安心する時間”は、長く続かない。
これは、初めてその現実を突きつけられる物語。
朝。
崩れかけた小屋に、薄い光が差し込んでいた。
「……意外と悪くないな」
目を覚ました俺は、ぼんやりと天井を見上げる。
床には簡単に作ったベッド。
隣ではリナがまだ眠っている。
(ちゃんと寝てるな……)
昨日より少しだけ、空気が柔らかい気がした。
だが――その平穏は、長くは続かなかった。
外から、足音。
それも一人や二人じゃない。
「……起きろ」
小さくリナを揺らす。
「ん……どうしました……?」
「来てる」
その瞬間、扉が蹴破られた。
バァンッ!!
「ここかぁ……“拾い屋”ってのは」
現れたのは三人の男。
昨日のチンピラとは違う。装備が整っている。
“狩る側”の目だ。
「勝手に住み着いてるゴミがいるって聞いてな」
一番前の男が、剣を肩に担ぐ。
「ここは俺たちの“回収区域”だ」
「回収……?」
「価値があるものは回収。ないものは処分。簡単だろ?」
リナが震える。
「……ここ、もう……」
「安心しろ」
俺は一歩前に出た。
「ここはもう、俺の場所だ」
男は笑った。
「ははっ……お前みたいなのが?」
空気が一気に重くなる。
次の瞬間――男が動いた。
速い。
さっきのチンピラとは次元が違う。
「っ……!」
剣が横に振られる。
咄嗟に後ろへ飛ぶが、腕が浅く切れた。
「……ッ」
痛みが走る。
(速い……!)
すぐに理解する。
こいつは“強い”。
拾ってどうにかなるレベルじゃない。
男が舌打ちする。
「さっきの雑魚とは違うか……でもな」
剣先が俺に向く。
「結局はゴミだろ?」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
(ゴミ、か)
ああ、そうだ。
俺はゴミ箱だった。
捨てられる側だった。
でも――
「それがどうした」
地面に手をつく。
壊れた木片、鉄くず、瓦礫。
全部、ここにある。
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
力が流れ込む。
だが――足りない。
(まだ……届かない)
男が笑う。
「何やっても無駄だ」
一歩、距離を詰められる。
死ぬ。
そう思った瞬間だった。
――リナが前に出た。
「やめて!!」
「リナ!!」
男の視線が一瞬だけ逸れる。
その隙。
(今だ)
体を無理やり動かす。
拳を叩き込む。
「がっ……!」
男の身体が揺れる。
だが倒れない。
「……やるじゃねぇか」
男の目が変わる。
「でもな」
剣が振り上げられる。
今度は本気だ。
(終わる――)
そう思った瞬間。
視界の端に“あるもの”が見えた。
壊れた魔道具。
さっきの戦いでは拾わなかったもの。
(あれは……)
手を伸ばす。
『スキル【廃棄吸収】を発動します』
次の瞬間――
身体の奥で、何かが“繋がった”。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第5話では、ついに“強敵”が登場しました。
これまでの相手とは違い、圧倒的に格上の存在です。
そして主人公は初めて、「拾うだけでは届かない壁」に直面しました。
ですが同時に、新しい可能性の兆しも描かれています。
“何を拾うか”によって、戦い方そのものが変わる段階に入りました。
また、リナが初めて主人公を守ろうと動いた回でもあります。
この行動が今後どう影響していくのか――重要なポイントになります。
次回は、この戦いの決着、そして新たな力の覚醒へと続きます。
よければ、引き続き読んでいただけると嬉しいです。




