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ゴミ箱に転生した俺、世界を食って最強になる  作者: haruz
第6章:崩れゆく世界の理
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第37話:ずれ続ける世界

崩壊は、音を立てて始まるわけではない。

むしろ逆だ。

静かに、気づかれないように進む。

昨日と同じはずの景色が、ほんの少しだけ違う。

その違いに気づいたときには、もう元には戻らない。


最初に違和感を覚えたのは、音だった。

「……なんか変じゃないですか?」

リナが足を止める。

森の中。

風が葉を揺らしている。

そのはずなのに――

「遅れてるな」

アッシュが短く言う。

葉が揺れてから、音が来るまでにわずかなズレがある。

ほんの一瞬。

だが、確実に。

「気のせいじゃないですよね……?」

「いや、完全にズレてる」

アッシュは空を見上げる。

雲が流れている。

だがその動きも、どこか引っかかる。

滑らかじゃない。

“繋がっていない”。

ゼルは少し離れた場所で立ち止まる。

「始まっている」

その一言。

リナの顔が強張る。

「始まってるって……何が……?」

ゼルは視線を上げる。

「観測の歪みが表に出ている」

アッシュは舌打ちする。

「つまり?」

「この世界が“維持できなくなり始めている”」

沈黙。

その言葉は軽くない。

リナが小さく首を振る。

「でも……急にそんな……」

ゼルは続ける。

「急ではない」

「お前たちが“外側に触れた”時点で、ずれは発生している」

アッシュは笑う。

「俺のせいってか?」

「一因ではある」

あっさり肯定される。

だが責めるような響きはない。

ただの事実。

その時――

視界が一瞬だけ“飛ぶ”。

「……っ」

アッシュが目を細める。

リナも同時に顔をしかめる。

「今……見えなくなりませんでした……?」

「ああ」

ほんの一瞬。

世界が“途切れた”。

ゼルが言う。

「記録が追いついていない」

その言葉と同時に――

木の一本が消える。

「え……?」

リナの声。

さっきまでそこにあった木が、跡形もなく消えている。

音もない。

倒れたわけでもない。

ただ、“なかったことになった”。

アッシュはゆっくりその場所に近づく。

地面に触れる。

「……痕跡もねぇな」

ゼルは静かに言う。

「消去ではない」

「“未記録化”だ」

意味は分からない。

だが、危険なのは分かる。

リナが震える声で言う。

「それって……私たちも……?」

ゼルは少しだけ間を置く。

そして――

「可能性はある」

その一言で、空気が凍る。

沈黙。

アッシュは数秒考える。

そして、軽く笑う。

「面白ぇじゃねぇか」

リナが思わず声を上げる。

「全然面白くないです!!」

「まあ聞け」

アッシュは手を軽く振る。

「要は“記録されてないと消える”って話だろ?」

ゼルが答える。

「近い」

アッシュは頷く。

「だったら――」

拳を握る。

「消えないくらい存在すりゃいい」

リナは言葉を失う。

「そんなの……」

ゼルが言う。

「理屈としては間違っていない」

アッシュは笑う。

「だろ?」

その時――

遠くで“歪み”が発生する。

空気が引き裂かれるような感覚。

だが今回は違う。

“自然発生”じゃない。

「来るぞ」

ゼルの声。

次の瞬間――

空間に“裂け目”が現れる。

そしてそこから、“あれ”が現れる。

だが、前とは違う。

数が多い。

そして――

“形が揃っている”。

リナが息を呑む。

「増えてる……」

ゼルが低く言う。

「対処に入ったな」

アッシュは一歩前に出る。

「いいじゃねぇか」

軽く首を鳴らす。

「さっきの続きだろ」

だがゼルは首を振る。

「違う」

「これは“排除”だ」

その言葉。

空気が変わる。

“それら”が同時に動く。

一斉に。

狙いは――

アッシュ。

「っ!」

踏み込む。

“位置を捨てる”。

“触れている状態”へ。

一体目。

ズドンッ!!!

当たる。

崩れる。

だが――

次が来る。

二体、三体。

同時に干渉。

「チッ……!」

アッシュの体が揺れる。

維持が不安定になる。

ゼルが動く。

一歩だけ。

その瞬間――

空間が固定される。

“それら”の動きが鈍る。

「下がれ」

アッシュが言う。

「まだいける」

「違う」

ゼルの声が強い。

「ここで消耗する意味はない」

リナが叫ぶ。

「アッシュさん!」

一瞬の迷い。

だが――

アッシュは舌打ちする。

「……分かったよ」

後退する。

ゼルが前に出る。

手を軽く上げる。

それだけで――

“それら”が止まる。

完全に。

「……相変わらず規格外だな」

アッシュが呟く。

ゼルは短く言う。

「時間を稼ぐ」

「ここはもう持たない」

その言葉通り――

周囲の空間が崩れ始める。

地面が歪む。

空が途切れる。

世界が“維持できていない”。

リナが震える声で言う。

「どうするんですか……!?」

アッシュは前を見る。

そして――

笑う。

「決まってるだろ」

拳を握る。

「もっと上行くしかねぇ」

ゼルがわずかに頷く。

「それしかない」

三人は同時に動き出す。

崩れ続ける世界の中を。

“観測の外”へ向かって。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回は“観測崩壊”が具体的な現象として現れ始めた回となりました。

これまでの違和感が明確な崩壊へと変わり、世界そのものが維持できなくなりつつある段階に入っています。

また、上位存在側も明確に排除行動へ移っており、物語は完全に対立構造へと移行しました。

ここからは一気に展開が加速していきます。

引き続きお楽しみいただければ幸いです。

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