表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/55

第15話:消えた依頼と、見えない影

成長は、環境を変える。

同じ場所にいれば、同じような戦いしか起こらない。

だが一歩外に出れば、まったく違う現実が待っている。

強くなればなるほど、関わるものも変わる。

相手も、状況も、背負うものも。

そして時には、“見えない何か”と向き合うことになる。

これは、今までとは違う“異質な依頼”に踏み込む物語。

「……なんか、少なくないですか?」

リナが周りを見ながら言う。

確かに、人が少ない。

いつもなら依頼の紙の前には誰かしらいる。

だが今日は、妙に空いていた。

「……変だな」

壁に貼られた紙を見る。

数も少ない。

しかも――

(古い)

貼られてから時間が経っているものが多い。

「新しいのが、ほとんどないな……」

「誰も出してないんですかね……?」

「いや」

首を横に振る。

「出してないんじゃない。“消えてる”」

一部だけ、紙が剥がされた跡がある。

雑にじゃない。

意図的に、きれいに。

(……誰かが選んで持ってってる)

それも、“全部じゃなくて一部だけ”。

「……やめときますか?」

リナが不安そうに言う。

「いや」

一枚の紙を指で押さえる。

端に残っていた、少しだけ破れた依頼。

――【旧排水区 調査依頼 詳細不明 報酬:銀貨12枚】

「これにする」

「え……詳細不明って……」

「だからだよ」

普通なら避ける。

だから残ってる。

でも――

(消えてる依頼と関係あるな)

直感がそう言ってる。

「行くぞ」

旧排水区。

街の外れ、ほとんど使われていない区域。

石造りの通路は崩れかけ、湿った空気が漂っている。

「……暗いですね」

リナが小さく言う。

「ああ」

足音がやけに響く。

水の音もする。

ポタ、ポタ、と。

(気配がないな)

普通なら、何かしらいる。

魔物でも、人でも。

でもここは――静かすぎる。

「……変だな」

さらに奥へ進む。

空気が重くなる。

嫌な感じだ。

その時。

「……聞こえませんか?」

リナが立ち止まる。

耳を澄ます。

――微かな音。

何かを引きずるような音。

「……奥だな」

ゆっくり進む。

曲がり角を抜けた瞬間――

それはいた。

「……なんだ、あれ」

人、に見える。

でも違う。

体が歪んでいる。

腕が不自然に長い。

顔は――見えない。

何かに覆われている。

「……っ……」

リナが息を呑む。

そいつは、こちらに気づいていない。

ただ、地面を何か引きずっている。

よく見ると――

(人か……?)

動かない体。

引きずられている。

「……やばくないですか、あれ……」

「やばいな」

即答する。

今までの魔物とは違う。

明らかに異質。

(でも――)

逃げるか?

いや。

ここで引いたら、わからないままだ。

「……やるぞ」

小さく言う。

「えっ……!」

「下がってろ」

一歩前に出る。

足音をわざと立てる。

その瞬間――

ピタッと動きが止まる。

ゆっくり、振り向く。

「……ッ!」

ぞわっとする。

顔が、ない。

いや――あるけど、潰れてる。

目も口も、形が崩れてる。

それが、こっちを“見る”。

「……来るぞ」

言った瞬間。

消えた。

「なっ――!?」

次の瞬間、横から衝撃。

「ぐっ!!」

吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられる。

速い。

見えなかった。

(ゼルと同じタイプか……!)

立ち上がる。

すぐに構える。

今度は、来るのを待つ。

(焦るな)

呼吸を整える。

“見る”。

空気の流れ。

気配。

音。

――来る。

後ろ。

振り向く前に、体をずらす。

ギリギリでかわす。

(いた)

見えた。

ほんの一瞬。

でも、見えた。

「そこだ!」

拳を叩き込む。

当たる。

でも――

「硬っ……!」

感触が違う。

人じゃない。

岩みたいだ。

そいつは少しだけよろける。

だがすぐに立て直す。

「……厄介だな」

普通の攻撃じゃ通らない。

(なら)

足元に意識。

『廃棄吸収』

最低限。

力を整える。

そして――

『再構築』

拳に集中。

硬度を上げる。

一点に。

「……これなら」

踏み込む。

来る。

今度は正面。

「はっ!」

拳を叩き込む。

鈍い音。

今度は違う。

「……ッ!!」

ひびが入る。

顔の一部が崩れる。

「効いてる!」

リナの声。

だが、油断しない。

そいつはまだ動く。

むしろ――

(怒ってるな)

動きが速くなる。

連続で来る。

でも――

(見える)

さっきより、ちゃんと見える。

最小限でかわす。

隙を待つ。

一瞬。

踏み込む。

もう一発。

「終わりだ」

叩き込む。

完全に砕ける。

そのまま崩れる。

動かなくなる。

静寂。

「……終わったか」

息を吐く。

リナが駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか!?」

「ああ……」

軽く頷く。

でも――

(なんだったんだ、今の)

明らかに今までと違う。

魔物でも、人でもない。

「……これ、依頼の原因ですかね」

リナが言う。

「多分な」

でも――

違和感が残る。

一体だけか?

それとも――

「……まだ、いるな」

小さく呟く。

奥の暗闇を見る。

気配は、消えてない。

むしろ――

(増えてる?)

口元が少し歪む。

「……面白いじゃん」

リナがびくっとする。

「え、まだやるんですか!?」

「当然だろ」

一歩、奥へ。

「ここまで来て帰るかよ」

暗闇の中へ進む。

そこにはまだ、“何か”がいる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回は、これまでとは少し違うタイプの敵や依頼の違和感を描きました。

単純な戦闘ではなく、状況そのものに不気味さや謎が混ざってくる形になっています。

主人公も少しずつ戦い方に慣れてきていますが、まだ未知の相手には対応しきれない部分も多いです。

そのあたりの差や成長の余地も、今後しっかり描いていく予定です。

次回は今回の続きとして、さらに奥へ進む展開になります。

物語の核心に少しずつ近づいていく流れになるので、引き続き楽しんでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ