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第拾参記 若草と散る鴉

第拾弐記を見て追加でこの話も見に来て頂きありがとうございます!

それでは、お楽しみ下さい!

「死ぬって、今、解毒の実をくれたん……おええええええ!!」


 曝は嘔吐し体はピクピクと痙攣し始めた。


「何食わせたんや!」


「あれ? 普段から召し上がってますよね? イチイの実ですけど?」


「イチイやと? 知ってる味と違うし今まで何ともなかったで」


「それは普段良く噛まないからでしょう。イチイの種は猛毒です。それを先程良く噛み砕いて召し上がったのですから……フフフ、あなたが私の抱籠の崩壊を待つように、私も、今この瞬間を待っていました」


 俺が今までに見たことのない不気味な笑みをよっちゃんは浮かべる。

 このよっちゃんに、似つかわしくない状況について二柱に事情を聴いた。


「よっちゃんって、あんなキャラなの?」


「ウチは、あんなに怖いよっちゃんは知らないのじゃ。おばちゃまは知ってたのかの?」


「うーん、なーんか時々変な時はあった気がすんだけど、気のせいかなくらいにしか思わなかったんよね」


 よっちゃんの第二人格と呼んでも過言じゃないこの実態を見るのは、何万年と過ごしてきたあーちゃんですら片鱗を臭わす程度だった模様。

 だが、あーちゃんは動じなかった。


「まぁ、あれはあれでいいんじゃないの? トヨはトヨだしね。カカカ! それにほら、最近流行りの言葉あるじゃん? 何だっけ……そうよ! ダイビングシティよ!」


「おばちゃま、それを言うなら多様性(ダイバーシティ)じゃ」


 どっちりと構えるその風貌はまさに最高神に相応しい。

 ただ、先程のサンドイッチの卵マヨネーズが口元に付いている点が気になるところではあったが。

 再度よっちゃんにカメラを向ける。


「散り際は、しかと目に焼き付けますね。最期のその時まで生きるとは何かを私に見せて下さい」


「うえぁ……おえ……毒な……んて……卑怯や……」


「卑怯? 植物にも植物なりの生存戦略があるのです。ある種は食べられ、ある種は風に乗り、また、何百年も発芽する時を待つ種もいます。そして、食べられないようにすることに特化した種。つまり、毒を持つ種もまた未来を生きるために身に備えた力です」


「はよ……楽にしてくれ」


「それはできません。私は豊穣神ですので、攻撃の術を持ち合わせていないのです。たかが植物と侮り、警戒もせずに燃やしたことがあなたの敗因です。何の罪も無いのに業火を浴びせ、苦しませたのですから、あなたがその毒で苦しまずに死ねる道理がどこにあるというのでしょう」


「ぐ……」


「さぁ……さぁ! どんな気持ちですか? 侮った相手の毒を一身に浴び、追加でさらに毒を貰い、今まさに最期の時を迎えようとしているあなたのことが私は知りたいです! 毒の味は? 臭いは? 毒を盛られる気分は? 体内を侵されるその感覚は? これだけ私の知らないことをあなたは知っているのです! 故に教えてください。生とは……何ですか?」


「く……狂って……る……」


「狂ってなど、おりません! 純粋な知的欲求なのです。あぁ、でも、苦しむあなたの姿が大変愛おしく感じてしまうのは、少しだけダメな感情なのかもしれませんね」


 金色に輝く見事な体から次第に光が失われていく曝。

 ついに、体色は元の黒に戻りピクピクと痙攣していた体は動きを止めた。


「はぁ、壊れてしまいましたか。復活したら教えてくださいね」


 曝の亡骸は少しづつ小さな光の玉になり、若草をなびかすそよ風が終わりを告げるように散りゆく曝を連れ去った。

 その様子を最期まで見届け。立ち上がりこちらに振り返るよっちゃん。


「フフ、私の勝利です!」


 いつもの口元に手を当てて上品な笑いをするよっちゃんに戻っていた。

 俺はふと、よっちゃんの発言を思い出す。


「待て、そういえば、煙が毒って俺ら大丈夫なのか?」


 二柱にも動揺が伝染する。


「はい、もう大丈夫です。先程言い忘れましたが、私の二つ目の能力が認知できる限りの植物の召喚。そして三つ目が毒。つまり、瘴気の操作ができます。二重抱籠が破られる前に何とか間に合いました」


 豊穣神、いや、守護神としての役目を終えたよっちゃんは誇らしげにピースを見せる。

 よっちゃんは怒らせない方がいいなと心に留める俺であった。


 曝の亡骸が去ると若草のコロシアムの中央に第三層へと誘う鳥居が出現する。

 しかし、俺たちは歩を進めなかった。

 きっかけは俺の発言だ。


「鳥籠はうーちゃんの鋭爪憑狐なら防げるって言ってたけど本当に防げるの?」


「はい、問題ないです」


「ほほう、ウチは舐められてるみたいなのじゃ。なら試してみるのじゃ!」


 うーちゃんは颯爽と天之仙狐招現笛を空から取り出し、鋭爪憑狐を纏う。

 それに呼応してよっちゃんも天之豊瘴國守之杖を取り出すと、鳥籠を俺たちから数メートル程離れた所に展開した。


「いいわね、この企画。煌にしては有能じゃない」


「ほら、最近の動画っておまけとかあるからさ。こういうのもいいのかなって思ってね」


 俺はうーちゃんの活躍を収めようと、運動会で我が子を撮影しようとするお父さんのようにカメラを向け、OKの合図を送った。



 うーちゃんは大地を蹴り付ける。



 二歩、三歩とドンドン加速する。



 速度が上限に達したところで鳥籠に思いっ切り振りかぶった。



 バキッ!!



 結果は、鋭爪憑狐が折れて武装が解けた。

 鋭爪憑狐自体は白い気で、できているためうーちゃんにダメージは無い。



「もう一回やらせるのじゃ!」


 納得のいかない結果に頬を風船のように膨らますうーちゃん。

 もちろん俺はその顔にズームインだ。


「いいですよ」


 よっちゃんもチャレンジャーの再戦を快く受ける。



 うーちゃんは再度、鋭爪憑狐を纏う。



 そして目を閉じた。



 開かれた目は眼光鋭く、紅蓮に染まる。



 攻撃特化の三狐眼だ。



 踏ん張って蹴った大地はえぐれる。



 やはり先程とはパワーが違う模様。



 鳥籠目前の最後の一蹴り。



 思いっ切り振りかぶる。



 白光りする爪が唸りをあげる。




 ズシャァァァァァァァァァァァァァァァァ……ゴンッ!




「痛いのじゃぁぁぁああああああああああ!!」


 そこにあったのは、何かにつまづいてヘッドスライディングで鳥籠に突っ込む憐れな白狐の姿だ。


「誰じゃ! 草なんぞ結びおって!」


 左手だけ武装を解除して赤々としたたんこぶを抑えるうーちゃん。

 その様子は愛し気なのに目が爛々(らんらん)としているせいで雰囲気が和みきれない。


「フフッ……」


 後ろ向きで腹を抱えて笑うよっちゃん。

 相当ツボに決まったようで、復帰が困難な模様。

 絶対確信犯だこいつ。


「カカカカカ! ウカ! ナイス撮れ高! 本っ当にあたしの姪っ子は有能ね。カカカ!」


 こちらは隠す気も無く指をさして大爆笑。

 ちょっとは心配してやれよと思いつつも俺も笑いを堪えられなかった。


「ええい! ウチのこと馬鹿にしおって!」



 パリン!

 


 右手を握りしめ鳥籠にやつあたりのように放った拳はいとも容易く鳥籠を破壊した。


「お見事です。次は抱籠チャレンジですね」


 よっちゃんは先程と同様に数メートル離れた所に抱籠を展開した。

 うーちゃんも左手の武装をその間に整える。


 抱籠vs三狐眼アタックモード鋭爪憑狐、開幕。


「ちょっと待つのじゃ。先に草刈をするのじゃ」


 前回の反省を生かして抱籠までの道を作るうーちゃん。

 何気に頭がいい。



 準備を終えて満を持して大地に足の爪を穿ち蹴り出すうーちゃん。



 ドンドン加速する。



 今度は両手で引き裂かんとクロスさせる構えだ。



 そして到達までの最後の一歩。




 ズシャァァァァァァァァァァァァァァァァ……ガンッッ!




「クッソ痛いのじゃぁぁぁああああああああああ!!」


 

 何故か綺麗に刈り取ったはずの鳥籠までの道に二本の若草が結ばれていた。


「どっちじゃ! どっちがウチをはめたんじゃ!!」


 たんこぶの上にたんこぶを作るうーちゃんは怒り心頭。


「今のは私ではありません! フフッ!」


 その発言さっきの自分だって言っているようなもんだろよっちゃん、心で突っ込む。


「あー、なんかさっき神石拾ったのたまたま緑のだったから投げといたわ」


 犯人はあーちゃんだった模様。


「おばちゃま! 許さないのじゃ!」


「その抱籠壊せたらあたしのこと殴っていいわ」


「その言葉忘れるでないぞ」


 

 気を取り直してうーちゃんは抱籠へと向かう。



 両手をクロスして切り裂く。



 結果は、バキッ! バキッ! 鋭爪憑狐の負けである。



「あたしにもやらせてよ」


 悠然と抱籠へと向かうあーちゃん。


「ちょっと本気だすかな……ハッ!!」



 バキバキバキ! ガッシャァァァァン!


 

 少しだけ腰を入れた正拳突きだけで抱籠を破壊するあーちゃん。


「おばちゃまはやっぱり化け物なのじゃ」


「伊達に最高神やってないのよ」


 この寄り道の後、第三層へと歩をようやく進めるのであった。


――飛輪の八咫鴉討伐完了――


最後までご覧になって頂きありがとうございました!

また、次回もよろしくお願いします!

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