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第2-38話 ワンチャンス

オーナー「どうせすぐ消えるからせめてもの情けで試験は免除したが、それにしても早いな。」

木崎の消滅はどんどん進行していく。当然の結果だ。随分前から致命傷を与えられそれを武召喚数値で止血をし、消滅を遅らせていただけなのだから。ここまで持ったこと自体奇跡に近い。しかし、当の本人はまだ不満のようだ。

木崎印「ふざ、けるな。ここで、何の意味もなく、消えてたまるかよ!!」

四人と同じように木崎も立ち上がる。立つというより両足で上半身をギリギリ固定しているという感じではあったが。

オーナー「もういい。」

その言葉とともに木崎の目の前にはオーナーがたっていた。その瞬間オーナーは木崎の身体を軽く押す。木崎は全身を倒し、再び立ち上がろうにももうその気力が残されていなかった。

オーナー「お前は俺に傷をつけることができる貴重な存在だった。俺に勝てるかどうかはお前に懸かっていたといっても過言ではない。お前のせいで負けたんだ。」

オーナーは剣を取り出し、それを木崎の首に当てる。

我殺狂助「やめろ!!」

我殺に続き伍代、馬銜何、依東もオーナーに向かおうとする。

十六夜鳳至「やらせるかよ。」

しかし、四人とも十六夜によって簡単にあしらわれてしまう。万全の状態であれば一人か二人、助けに行けたかもしれないが、オーナーによってボコボコにされた状態ではなす術なかった。四人もまた地に身体を伏し目の前の木崎の消滅を黙ってみるしかなかった。

木崎印「ふざけんなよ!!お前みたいな、やつに、やられてたまるかよ!!」

オーナー「…ふーん、、そこまでして残っていたい理由なんかあるのか?」

木崎印「俺だけ生き残ったからだ。」

木崎は即答で理由を話す。オーナーはその言葉になんとなくの察しはすれどもあえて尋ねてみることにした。

オーナー「というと?」

木崎印「第七次の際、俺は四人ほどのグループを組んで戦っていた。だが、俺以外全員存在しないことになって、俺がこの手で失格にしたものもいた。あの三人は何も分からないまま消えていった。だから、、」

オーナー「だから俺が真相を掴んで三人が見れなかった景色をみる、と?」

木崎印「あぁ…」

木崎の言葉を遮り、オーナーが想像して木崎の最後の言葉を言う。木崎はその想像が自身の事実の感情だと認め肯定した。

オーナー「勝てもしないくせによく言えたな。自身の弱さを文句だけ垂れて、お前は何かしたのか?」

木崎印「…それは、、」

オーナー「お前のその理想はただ運だけで残ったやつが並べていい理想じゃねえんだ。思い上がることにもな、それ相応の資格がいるんだよ。」

木崎はその言葉に返す余地もなく、黙り込んでしまう。オーナーは木崎のその状態をみて剣を切りつけようとする。そのときだった。

馬銜何劉「黙れよ、傲慢メガネ!」

オーナーの背後には馬銜何劉が立っていた。馬銜何は自身の拳をオーナーに当てる。当然無傷だが、馬銜何劉の拳の勢いは凄まじくオーナーの身体はかすかによろけたのだ。オーナーの手から剣が放され少しだけ木崎と馬銜何から距離ができる。馬銜何はその好機を逃さず、続けて攻撃に挑んだ。先ほどまでの攻撃とは何倍以上のスピード、威力で。オーナーも無傷ではあれどその衝撃はなかなかのもので二発ほど受けたのち、避けることに専念しだした。

オーナー(急になんだ、このスピード?数値で底上げしたにせよ限度がある。…まさか、)

オーナー「ふふふ、、ふはははははは!!!!」

オーナーは馬銜何の覚醒のカラクリに対して予想をたてその予想のことを馬銜何がしたと考えると笑いが止まらなかった。オーナーは馬銜何の拳での攻撃を自身の剣で受け止め、話し出す。

オーナー「なるほど、【それがお前のクラインドか。】」

馬銜何劉「さすが、、気づいたか。」

馬銜何が急激な覚醒を遂げたのは火事場の馬鹿力などではない。馬銜何劉のクラインドの性質が自身の爆発的な身体強化だったからだ。

オーナー「だが、そのクラインドは持続時間は短いはず。ここまで長く戦えるほどお前はそこまでの数値は持っていなかったはず。与えられたんだろ。」

オーナーと木崎が話しているあの十数秒の間に我殺は馬銜何に数値を与えて指示を出した。十六夜の動きを止める係は伍代と依東が引き受ける。ほんの数秒くらいの時間稼ぎはできたのだろう。

オーナー「これも全て我殺の指示か?」

馬銜何劉「大体はな。だが、ここにいるのは俺の意志だ!!」

馬銜何の攻撃はさらに勢いを増す。高速から音速、やがて光速と錯覚させられるほどに。

オーナー「おもしろい。だが、、まだ足りない。」

オーナーは少しだけ自身の力の解放する割合を増やす。その瞬間、馬銜何の攻撃はあっさりと止められオーナーの反撃が始まる。

オーナー「五発だ。耐えろよ??」

一発目、瞬間の如くオーナーから拳が出される。馬銜何はそれをもろに受けて身体が大きくよろける。二発目、よろけた状態でも容赦なくオーナーは殴る。殴られた箇所の身体の骨にヒビができたのを痛みによって理解させられる。

三発目、今度は殴りから蹴りの姿勢へと変更し馬銜何を蹴り飛ばす。馬銜何の身体は盛大に吹き飛ばされやがて壁へと激突する。爆音を奏で、砂ぼこりが舞った。

木崎印「その辺にしとけ。」

オーナー「!?」

オーナーが四発目を繰り出そうとしたとき、オーナーの頭上には木崎が降るように存在していた。オーナーはそれを認識し、この一連のカラクリを理解する。

オーナー「そうか、、さすがに油断しすぎたな。」

オーナーの頭上には木崎の刀が近づいてゆく。オーナーはそれを少し移動することで避けようとする。木崎の身体は地面と平行の状態であり、オーナーの頭と同じ高さに位置している。

木崎印「トウェルブス」

その瞬間、木崎の周りに12個の刀が投影される。その12個の刀は木崎の意思とリンクし、オーナーを追尾する。刀の長さは剣や斧とは当然長く、それを正十二角形でも描くかのようにオーナーに向かって移動する。

木崎印「サーティ」

さらに三十個の剣が増やされる。無数に近い剣の軌道がオーナーを襲う。オーナーはその無数に見える剣の図形をみて少し笑ったのち、言葉をこぼした。

オーナー「フッ、いいだろう。こればかりは打つ手がない。」

オーナーは剣を避けることを諦め右腕を差し出す。右腕には三本ほどの剣が突き刺さる。オーナーは右腕を一回転させ近くに動いていた十数本の剣をなぎ倒す。それと同時にオーナーの腹部に二本の剣が突き刺さる。オーナーは右足を一回転させ残りのすべての剣をなぎ倒す。これにより、木崎の攻撃は幕を閉じたのだ。オーナーの右腕は完全に使い物にならないものとなり、腹部からは出血、右足も傷は深くないにせよ血が滴っていた。

十六夜鳳至「何がどうなってんだ…?」

十六夜は他の三人の相手をしていたが、途中でオーナーに注目し、状況の理解を得られずにいた。

伍代翔地「木崎さんと馬銜何さんが本気を出しただけですよ。」


~木崎とオーナーが会話をしている際のこと~

地に伏していた我殺は伍代に近づき伍代の手を自身の額に触れさせていた。

我殺狂助(伍代、今から馬銜何を覚醒させて木崎にオーナーを倒してもらう。)

伍代翔地(…は?)

十六夜鳳至「おいお前ら。」

我殺と伍代はテレパシーを通じてこの会話だけ行った。その後は十六夜にバレたしまったためアナリストを通じての会話はこのときのみ。我殺と依東は十六夜の相手をし、伍代は我殺のあの言葉の意図を必死で考えていた。

伍代翔地(馬銜何さんの覚醒…?木崎さんがオーナーを…?)

依東ではなく馬銜何である理由。オーナーを倒すものが木崎となっている理由。この二つを考え、伍代は後者の方の疑問の答えに行き着いた。

伍代翔地(木崎さんは瀕死の状態。だからオーナーに傷をつけられるのは木崎さんしかいない。オーナーの隙を作る役割を担うのは覚醒した馬銜何さん…?)

馬銜何がどうやって覚醒し、オーナーの隙を作るのか。その疑問だけは解消できないままだったが、伍代は走り出す。

伍代翔地「ファースト」

十六夜に向かう途中にわざと馬銜何がいるところを通る。伍代は自身のアナリストに対して武召喚を行い、近くを通りすぎる際に馬銜何にテレパシーと数値を送る。

伍代翔地(この数値でオーナーを止めてください。方法は問いません。)

この言葉と40ほどの数値を彼に託し、伍代もまた十六夜との戦闘に加わった。

馬銜何劉(俺が、、止める??)

馬銜何に迷っている暇はない。そのことは反射的に理解していたため馬銜何は立ち上がり、オーナーのもとへ走り出す。

馬銜何劉(どうすればいい?どうすれば俺は…?)

オーナーのもとへある程度近づいたとき、オーナーの言葉が聞こえてきた。

オーナー「お前のその理想はただ運だけで残ったやつが並べていい理想じゃねえんだ。思い上がることにもな、それ相応の資格がいるんだよ。」

馬銜何劉「!?」

そのときに馬銜何は現界でのことをふと思い出した。それは馬銜何が地獄行きとなる原因のような記憶だった。その記憶がフラッシュバックし、馬銜何はその記憶とオーナーに対しての怒りを累乗させ叫ぶ。

馬銜何劉「黙れよ、傲慢メガネ!」

この叫びと同時に馬銜何は一か八か全く試したことのない自身のクラインドを使用した。それは怒りによって身体能力が上昇する無限の可能性を秘めていたものだった。


十六夜鳳至「そんな都合いいクラインドが発動するわけねぇだろ!!」

一連の説明を聞いた十六夜だけは納得できず、荒く叫ぶ。その叫びを意外な人物が鎮めることとなった。

オーナー「その都合の良さがクラインドなんだよ。」

十六夜鳳至「…は?」

オーナー「クラインドがどんな威力を持ち、どんな性質を持っているのかは当の本人が決めることができる。たった一回だけな。この馬銜何という男は初めてクラインドを使用した。俺を止めることができるようなちからを望んだからだ。そんな単純なカラクリに過ぎない。」

十六夜鳳至「あんた、それで納得できんのかよ?」

オーナーはインチキに近いクラインドの性質によって右腕を失い、右足は大怪我を負った。それでも納得できるのかと十六夜は戦闘に対しては敬意を払っているオーナーに対して尋ねる。オーナーは何の迷いもなく答えた。

オーナー「なに、それくらいのハンデはないと俺に勝てないことをこいつらは行動で示した。そのうえ俺に一矢報いることはできても勝つことはまだできていない。【俺は今も勝っているんだよ。】」

オーナーは剣が大量に突き刺さった右足を自身の左腕に握る剣で自ら切り落とす。

オーナー「見事だった。次は?」 

十六夜は完全に黙り、この戦いの行く末をただ見守ることに徹し始めた。

十六夜鳳至(俺はオーナーにだけは一回も勝てたことがない。勝てるもんなら勝ってみろよ。我殺狂助。)

心の中で我殺たちに期待と嫌悪を持ちながら武器を捨て空間の隅へと移動した。我殺たちもまたボロボロの身体で緊張感を再起させる。

木崎印「悪い、、ここまでだ。」

木崎が突如として発言する。その瞬間、全員の視線が木崎へと向き始めた。彼の身体には粒子が舞っていた。消滅はすぐそこだった。

伍代翔地「待ってください、今数値を。」

そう言いながら伍代は木崎のもとへ駆けつける。伍代は木崎の腕時計に数値を送ろうとするが木崎はそれをはねよける。代わりに木崎は自身の数値を伍代に全て託した。

伍代翔地「木崎さん!!」

木崎印「悪い、もう数値で誤魔化せることすら無理な状態なんだ。俺はもう、、ダメだ。」

惜しむように木崎は言葉をこぼす。正面にいる伍代も表情に亀裂が生じているかのようだった。

木崎印「俺がやり遂げたかったことなんだけどな…伍代、、あとは頼んだ。」

木崎は伍代の額に手を触れる。その瞬間、木崎は消滅した。


脱落 


ゲーム開始から一日と一時間

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