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日輪の防人と精霊の姫君 第一章 王国と大地編  作者: Yudai


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第一話 無力な王女

※こちらは以前に書いた小説を内容や設定を変更して、新たに書き直した物になります。

 ファルシオン王国、王都ヴァルディオール。

 広大な城壁に囲まれた王都の城下町では、数千人の住民が暮らしていた。

 その中央に、輝く程に白い大理石でできた二つの城が立っていた。中程位の建物は、この王都を警護と治安維持を任されている『王立騎士団』の本部である。


 そして、王都で最も大きい建造物こそが、ファルシオン王家が暮らす王城である。王城と騎士団本部は、渡り廊下で繋がっており、この二つのが武功を重んじるファルシオン王国の象徴である。

 その王城内にある長く広い廊下を、ファルシオン王国第二王女であるアリシア・エル・ファルシオンは封書の入った木箱を両手に抱えながら歩いていた。

 琥珀色の瞳にウェーブかかった桃色の髪を靡かせ、質素な白絹の衣装に身を包んだ彼女の足音が廊下に響いていた。


「あら、アリスじゃない」


 不意に聞こえた声に、アリシアはビクリと身体を震わせた。

 恐る恐る振り返ると、そこには赤毛の女性がいた。その後ろには、彼女に付き従う数人の侍女達の姿があった。


「……エリシアお姉様」


 エリシア・ローズ・ファルシオン。アリシアの姉にして、ファルシオン王国の第一王女である。

 アリシアの着ている衣服とは違い、エリシアは煌びやかな黄色のドレスと宝石のアクセサリーを着飾っていた。


「こんなところで何をしているのかしら?」

「……ラザフォードお兄様へお手紙をお渡しに、騎士団の執務室に行く所です」

「ふ~ん、兄様のお手伝いねー」


 エリシアがまじまじとアリシアと抱えている木箱を見る。その表情には、どこか不気味な笑みを浮かべていた。


「……それでは、私は行きますので……」


 アリシアは軽く会釈をして、その場を立ち去ろうと踵を返しす。


「ウインド」


 突然、アリシアの後ろから突風が襲い掛かった。


「きゃっ!」


 強風に煽られたアリシアは、前のめりに転倒した。木箱は彼女の手から離れ、封書の束が床に散乱する。


「あらあら、大丈夫かしらアリス?」


 エリシアは、床に倒れ込むアリシアを見下ろして言った。頬を緩ませて薄ら笑いをゆがませる。

 アリシアは察した。姉は魔法を使ったのだと。

 エリシアが、アリシアに向けて魔法を発動させるのはいつもの通りだった。


 魔法にはそれぞれに属性との相性があり、エリシアは主に風魔法を得意としている。幼いエリシアが初めての魔法を覚えると、試しと称してアリシアは魔法の実験台にさせれらた。それ以降、エリシアは事あるごとに魔法を向けてきた。

 当初は、突風でアリシアを転ばせてからかう程度であったが強風を起こして壁にぶつけたり、風の刃が肌を掠めて切り傷をつけるなど、段々とエスカレートしていった。


 そして、しまいには魔法で階段からアリシアを転倒させるにはまで至り、アリシアは数日間気を失ってしまった。

 流石に「王女としての品格がなっていない」と父親である国王に咎められてた為、大怪我をさせるような魔法は使ってこないが、それでも魔法による陰湿な虐めは続いていた。


「早くしないと兄様に迷惑がかかるわよ」


 そう言い残して、エリシアは侍女達を連れてその場から立ち去っていった。


(……早く……拾わないと)


 アリシアは痛む身体を我慢して、床に散らばった手紙を拾い集めた。

 これが、第二王女であるアリシアの日常であった。



               ◇


「残念ですが、第二王女様には魔力が全くありません」


 王宮の魔導士からそう告げられたのは、アリシアが五歳になった時であった。

 マルスティア大陸では大小に関わらず、誰もが体内に魔力を宿しているのが当たり前であった。

 一昔前では、魔法を使用する際に、呪文や魔術式といった手間の掛かるものであった。

 それが大陸内で採れる『魔法結晶』と呼ばれるものが発見され、それらを媒介して魔力を魔法に変換する技術が浸透していった。

 魔法を使って戦う場合は、『魔法結晶』が付与した剣や杖等の武器を用いることで即座に魔法が発動され、鎧などの防具に加工すれば、筋力や持久力といった身体能力が向上する。

 更に『魔法結晶』は魔道具にも用いられ、かまどの火を起こしたり照明を灯したり等、日常生活にも活躍されている。


 しかし、魔力の状態を確認する儀式を行った際、アリシアには全く魔力が備わっていないことが判明された。即ち、魔法を扱うことのみならず、日常的な魔具の使用もできない事を意味してきた。

 父親である国王は落胆し、母親である王妃は嫌悪感を示した。

 『王家の者に、魔力の無しの出来損ないが生まれてしまった』と。


 以来、アリシアは両親から爪弾きにされていた。国王からは王務に関すること以外は話すことがなく、王妃からは会話するのさえ避けられた。

 兄であり王太子であるラザフォードとは、今のところ普通の会話はできているが、彼の関心は次期国王となることに邁進しており、アリシアの存在は彼にとって役に立つかそうでないかの認識でしかない。何よりも去年に騎士団の団長に任命されてからは、日常会話が少なくっている。

 姉のエリシアは王族の中では一番の魔力が多かった。そのことを鼻にかけて、魔力のないアリシアを執拗に弄んでいた。


 それでも立場上はファルシオン王国の第二王女という身分には変わりはない為、政略結婚目的として王城内で養われるに過ぎない。でなければ、とっくの昔に遠方の離宮に飛ばされているか、もしくは修道院に送られている。


 そして、その歪んだ空気は、周りの従者や騎士達にも及んだ。ほとんどの人間が魔力を持つことが当たり前である彼らにとって、アリシアは異端な存在であった。彼らは国王等の王族からお咎めがない事をいい事に、アリシアを陰口を言っては見下していた。

 あろうことか、本来ならば使用人がやる筈の雑用さえ王女であるアリシアに押し付けていた。先程の手紙の配達も、下級騎士がアリシアに無理やり頼み込んで行わせたものだった。


 だが、アリシアは拒まなかった。下手に反発してしまえば、従者や騎士達からは更に陰湿な嫌がらせを増発させてしまうからだ。

 様々の悪意にさらされたアリシアに出来ることは、ひたすらに我慢をして耐え忍ぶこと。それがアリシアが学んだ処世術であった。

 

 このファルシオン王国(場所)には、アリシアの味方をしてくれる人間は誰一人としていなかったのだ。

こんにちは、作者です。


この度、タイトルや設定等を改変して新たに投稿を始めました。

更新は日曜日を予定にしていますが、もしかしたら不定期になると思います。

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