【魔王独白】独白23 レイク城の戦い①
宇宙にいる何者かへこのメッセージを送る。
我が名は魔王ヨクラトール。神によって生み出され、惑星テアトロンの支配者である。
「魔王様、入ります」
「まおう、はいるよ」
シンディとリリリスが到着した。
我の左側にはガストール、そして右側にはデミデスタが立っている。
この二人にも、状況の共有が必要と判断し、呼び出しておいたのだ。
シンディは、左腕と左足がない。断面は血が出ているのでもなく、まるでそれが普通かのように綺麗なものだ。
ミッシングゼロは消滅の魔法。腕や足は切断された訳ではないのだ。文字通り、消滅した。
半身が消滅と聞いておったが、消滅したのは腕と足だけのようだ。身体が消滅していないのは不幸中の幸いか。
リリリスは、シンディの左側を支えておる。
報告では、ミーナ、ステラ、そしてこの二人のみが生存者。レイク城の主として送り込んだデストーンはミッシングゼロを発動して消滅したということだが…
「さて、シンディよ。よくぞ戦いの記録を持ち帰った。二度のミッシングゼロを経験しながら、こうして報告の場にいることを嬉しく思う」
「魔王様…お恥ずかしい姿で失礼いたします。今回は無傷という訳には参りませんでした」
前回、ステラが興味本位でミッシングゼロを放った時、シンディは決戦前の勇者パーティー観察のため、城外に居たのだ。城と周辺は消滅したものの、シンディはギリギリ無事だった。
「それに、リリリスよ。お主が大人しいところを見ると、余程の目に合ったようだな」
「そりゃ、そうだよ。メロがたすけてくれなかったら、しょうめつしてた。それに、ステラのまほうだって、いちかばちか、だったから」
成程。ミーナが…デスメロディがリリリスとシンディを救ったのか。ステラがこの二人を助けたという部分が引っかかっておったが、デスメロディが絡んでおったのか。
「ともかく、聞きたいことは山程あるのだが…」
「はい。魔王様。語るよりも、記憶を再生した方が早いかと」
「うむ。まずは状況を正しく把握させてもらおう」
シンディは記憶再生の魔法を放った。
レイク城で何があったのか、じっくり聞かせてもらうとしよう。
「では、今から、ご報告いたします」
—---
レイク城に、勇者ミーナと大魔法使いステラが到着したと報告がありました。
城の玉座の間には、魔王様より守護を命じられたデストーン様とリリリス様が待機。
城の中にも、選りすぐりの軍勢を配置して待っておりました。
しかし、一向に勇者一行が来る気配がない。
不思議に感じた私は、カメラコウモリを確認しようとしましたが、何故か全てアクセスできませんでした。
そこで私は、城の入り口に向かったのです。
そこに居たのは、ミーナ、ステラ、そして人間がもう1人。
「久しぶりだな。デスメロディ…いや、今はミーナ、だったか」
「あなたは…カリス…くん?」
「俺のことを覚えていたか」
「何年ぶりかな。大きくなったね」
カリスと呼ばれた人間は、ミーナと面識があるようでした。
親しげに話すミーナとは対照的に、ステラは警戒しておりました。
「カリス…?」
「大魔法使いステラ、かな?俺はカリス。カリス・ミデラ・コラプティオだ」
「ミデラ・コラプティオ…コラプティオ神官の一族なのか」
「そうだ。そこにいるミーナ…いや、デスメロディに父を殺された者だ」
「デスメロディに執行された?どんな理由で」
「それは、俺じゃなくミーナに聞いたらどうだ?」
ミーナは少し困った表情で小さく笑った。
少し楽し気で、少し悲し気な、不思議な表情でした。
「デスメロディが執行したのは、カリスくんのお母さんから依頼されたからだよ」
「どういうことだ?自らの夫の殺害を、デスメロディに依頼したのか?」
「そういうことに、なるね」
ミーナは背負っている斧を撫でながら答えました。
執行に使ったであろう斧を撫でながら。
「何度も断ったんだけどね。どうしてもって言って聞かないから」
「結果、父は殺され、父を失った母は迫害されるようになった」
「そうなるよって、言ったんだけどね…」
「母はいつも『覚悟していた』と言っていた。だが、俺は納得していない」
カリスは杖を取り出し、ミーナに向ける。
杖が光った矢先、ミーナの後ろの木が真っ二つに切り裂かれました。
何をしたのか、私にはわかりませんでした。
「カリスくん…わたしを殺そうとしてるの?」
「本意ではないが、理由があってな」
「そうなんだ…うーん、困ったなぁ」
「ミーナ、何悠長なこと言ってるんだ。そもそも、ここは魔王軍の拠点の一つ。人間同士が争ってる場合じゃない」
ステラは、カリスと戦うべきなのか迷っている様子でした。
反面、ミーナは明らかに戦う気がないという感じ。
カリスという人間が、なぜミーナを、デスメロディ様を狙うのかもはっきりしていませんでした。
「やれやれ、何が起きているのかと思えば…」
城の門から出てきたのは、ガストール様でした。
「本来は、玉座の間での戦いを支援するつもりだったのだが…」
「ぱ…ガストールさん…?」
「勇者ミーナよ、久しいな。そしてステラもな」
「ガストールがここで何をしてるんだい?」
「少々野暮用でな。しかし、魔王様を傷つけたという人間が、この場に来たとは驚きだ」
「何だお前は?」
「カリスと言ったか。俺の名はガストール。魔王軍の幹部にして、執行者の長をしている者だ」
「そんな偉いヤツが、何の用だ?」
「今回、レイク城では特別な催しが開催予定でな。その邪魔をして欲しくないのだ」
ガストール様は右手で斬人盾を構え、カリスを見つめておりました。
「ミーナ、ステラ、お前らはレイク城に行くがよい。こいつは俺が相手をする」
「魔王軍幹部のお前は、俺がミーナを殺した方が得なのではないか?」
「それがそうもいかなくてな。それに、ゴーマ・ミデラ・コラプティオの執行については、デスメロディの上司である俺の責任でもある。あの執行は、魔王軍として正式に行われたものではないからな」
「俺はミーナとステラを倒さねばならない。邪魔はしないでくれ」
「カリスよ。俺にとってお前は邪魔であり、お前にとって俺は邪魔である。となれば、やるべきことは一つ」
ガストール様は、盾を構えたまま、左手で背中から斧も取り出し、その先端をカリスに向けて告げました。
「さあ、かかってこい」
カリスはガストール様とミーナを交互に見ていましたが、ガストール様を回避する方法がないとわかったのか、視線をガストール様に集中しました。
「パパ…ガストールさん、ありがとう!わたし、行くね!」
「ガストール、この借りは近々返す」
ミーナとステラはそう言って城の中に侵入していきました。
私は睨み合いを続けるガストール様とカリスを横目に、玉座の間へと急ぐことにしました。
デストーン様、リリリス様との戦いを、見逃さないために。
(つづく)




