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第13話 マフィアの対立と武闘大会

 しばらく歩くと薄暗く、人気のない路地に入った。

 隠れてはいるが、20人近くのマフィアがセイを観察している。

 (そりゃあそうだろう。傍から見たら俺は武器を何も持たないただの観光客だ)

 そこでセイは大胆に行動することにした。マフィアを何人か釣り、四肢でも切りながらあの老人について聞くのだ。戦艦に傷をつけるほどの実力者ならある程度は知られているはずだ。

 「ここはマフィアがいっぱいいるらしいけど何もいないなー」

 めっちゃ棒読みになったが十分だ。1人釣れた。


 「ここにマフィアがたくさんいるのは本当だぞ? 危ないから俺が安全なとこまで連れてってやろうじゃねぇか」

 身長が190㎝、かなり筋肉がついている強面の大男がクソがつくほど大きい声をかけてきた。

 『今の棒読みで釣れたのならこいつは……』

 おいおい。システムが呆れるなんて相当だぞ。

 「俺はガイだ。よろしくな」

 「あ、ああ俺はセイ」


 一応セイは[未来万視]でいつ襲われるかを確認した。

 「あれっ」

 「どうかしたか?」

 危なかった。咄嗟に声が出てしまった。

 (しかしおかしい。俺が見た未来では、()()()()()()()()()のだ。しかもアジトにまで招待され、その先でも襲われることはなかった)

 こいつはこいつで目的があるのかもしれない、とセイはしばらくついていくことにした。


 定期的に周囲に気配を探っていると、段々周囲の気配が減っていっていた。

 まわりのマフィアが手を引くほどこいつそんなすごいやつなのか?

 そんなことを考えている間に、セイ達はガイのアジトに到着した。


 「すまない。気づいていたんだろう? 俺がマフィアの1人だってこと。それと向かっているのは決して安全な場所ではない事。」

 確かに気付いていたが、セイはもっと気になる事を尋ねた。

 「確かに気付いていたが……なんでわかったんだ? なぜ俺をアジトに連れてきたんだ?」


 ガイはその体に似合わない静かな声で説明を始めた。

 「ナレディアでは3つの組が常に争っているのは知っているか? 翔鷹組、虎牙組、そして俺達、進龍組。まあ、マフィアというより暴力団に近いがな」

 「ちょっと待て、まさかあんた……」

 「ああ、俺は進龍組組長、ガイだ。あんたは……あの飛行船の長だろう?」

 「なんだ。そこまでバレてたのか」


 彼から敵意は感じないし、害を加えてくることはないだろうと判断し少し信頼した。

 ガイは続けた。

 「ちょっとばかしあんたに頼みたい事があるんだ。ナレディアで手ぶらで歩くくらいの強者なんだろ? 多分船を切った奴を探しにきたんじゃねえか? それに関係あるかもしれねぇ事だ」

 「ん? 俺を知らないのか? テレビで俺はかなり紹介されていたはずだが」

 「あんた有名人だったのか?! すまんな。ナレディアの奴にはテレビやらは高級品でな。ほとんど出回らないんだ」

 「なんだ。そうだったのか。じゃあ改めて自己紹介した方がいいな。

 俺はセイ。神話級の[永氷(アイシクル)()支配者(ドミネーター)]だ」


 やはりガイはかなり驚いた。

 「あ、あんたが神話級だって?! すげえじゃねえか! これは頼みを受け入れてくれたら成功は確実だ!」

 高いテンションのままガイは説明を続けた。

 「最近、翔鷹組と虎牙組の上のモンがつながっとるって噂があってな。それと同時に2組のメンバーが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。流石におかしいと思って調べようとしたんだが、あんたの船を傷つけたあの老人に妨害されて、もう少しで殺されるところだったんだ。なあ2組の調査を手伝ってくれないか?」


 『これは船を切った老人に近づくチャンスであると思われます』

 「分かった。手伝おう。だが条件があるんだが良いか?」

 ガイは何でも言ってくれと言わんばかりに聞いた。

 「なんだ?」

 「俺は近々武闘大会に出場するんだ。その後でも良いか? それさえ良ければ報酬はいらない」

 正直、今の所は時間を持て余している。するとガイは勢いよく答えた。

 「ああ! もちろんだ! ありがとう!」


 セイ達は約束をして別れたのだった。

 2組の調査の件はアリスとミカには伝えなくても大丈夫だろう。

 そうしてストラシアの3人は大会当日まで、観光を楽しんだのだった。


 武闘大会当日。

 16名の参加者と200万人を超える観客に決勝トーナメントの説明がされる。

 「今回の決勝は神話級の方を6名含めた16名でのトーナメントです。4回連続で勝利された方が優勝者となり、3億クラムが贈られます!」


 すると産まれてからずっと牢暮らしだったミカがセイに尋ねた。

 「クラムは……お金の単位でしょうか?」

 セイは少し短めの人生経験からそれらしい記憶を漁った。

 「ああ。3億ってことは……1人が一生働いて得られるくらいだな」


 「えっ! すごい大金じゃないですか?!」

 するとセイのシステムがミカにも聞こえるように補足した。

 『「クラム」は、神域戦争にて亡くなった【黄金】を司る神の、グランクラムが由来となっています。また、戦艦ストラシアの製作には8000兆クラムが使われたと言われています』

 そしてシステムはセイにしか聞こえぬようひっそり追加の補足をした。

 『マスターの記憶の中の1円と1クラムはほぼ同じ価値です』

 (ってことはこのトーナメントで勝てば3億円!? すごいな……)


 すると、前回優勝者のテヌドットと第1次元、次元長のファルムが登場し、開会の挨拶を述べた。

 まずはテヌドットのようだ。

 「今年は新たな神話級3人と、神話会より3人が参加する! 想像もできないほどの激戦になるだろう! ぜひ選手たちの活躍と伝説となる瞬間を目に焼き付けてくれ!」


 そしてファルムが続ける。

 「まずは今年も無事に大会を開く事が出来たことを何よりもうれしく思う。テヌドット殿もおっしゃったとおり、今年は例年に比べ多くの神話級が参加してくださった。これはとても誇らしいことだ! 皆もぜひ楽しんでくれ」


 トーナメントの試合順と組み合わせはくじによって決まる。

 大勢の観客の前で、出場者はステージ上に並びくじをひく。

 たまたま隣だったテヌドットがこちらを睨みつけた。

 「科学次元ではどんな手を使ったか知らんが、必ず私が勝つ」


 トーナメントのカードが決まるたび、客席から歓声が上がる。

 全員くじを引き終わり、決勝トーナメントの組み合わせが決定した。

 第一試合、【静夜を呼ぶ者】アリス対【大地の支配者(アース・ドミネーター)】マーシュ・イナトリス。初戦からアリスの出番だ。しかも神話級対神話級。


 快晴の大空にハイテンションの声が響く。

 「初戦からの神話級対決だ!! 大会直前に神話級が発覚した謎の少女! アリス!! 対するは、若くして天才や神童と呼ばれる神話の少年! マーシュ!!

 それでは第199回武闘大会決勝トーナメント第1回戦第1試合! 試合開始!!」

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